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向上訓練の研究
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『ロールプ・レーイング技法 ―役割演技法― 』

◆概要
 ロールプレイング技法(Role Plying)は、通常、役割演技法と呼ばれている教育訓練技法の一つです。一般社会の組織活動においては、構成員それぞれが役割(ロール)を分担し、それらが有機的に組み合わされることによって組織目標を達成しています。つまり、「自分はそのほかの人の期待に応じて」「他の人は自分の期待に応じて」行動するとき、組織活動は円滑に機能することになります。
 この関係を特定の状況設定の元でプレーすることによって、プレーする管理者の行動発想、態度、価値観などを変えることを目的としたのがこのロール・プレイング技法です。この技法を基本として、それぞれの目的に応じて、多様なロール・プレイン技法が開発されています。これからの管理者教育にあっても、その管理目的にマッチした技法の開発に心がける必要があります。

ロールプレイング技法の種別

  1. 役割交換法(Role Reversal Technique)
  2. スイッチング法(Switching Technique)
  3. 位置役割法(Role Position Technique)
  4. ものまね法(Imitation Technique)
  5. 代役法(Substitute Technique)
  6. ダブリング法(Doubling Technique)
  7. 応答制限法(Response Control Technique)
  8. 示範法(Model Technique)
  9. 役割交替法(Role Exchange Technique)
  10. ロールレスポンス法(Role Response Technique)
 等があります。

◆技法の背景と特色
 この技法は、一九二三年に精神医学者ヤコブ・L・モレノが開発したサイコドラマ心理劇から発展したもので、医師が舞台監督となって、患者に筋書きのない劇に自発的に参加させ、彼らの様々な無意識的欲求や感情を演技させることを通じて、治療を行っていく集団心理療法でした。
 この技法は主として、受付や電話の応対、セールス技術といった基本的な技術・技能の習得を狙いとして、主に使われるようになってきましたが、この技法の背景を考えると、態度変容や問題解決能力の育成が考えられます。、現在は教育現場でも、この方面の活用が盛んに行われています。


◆学習効果

 ロール・プレイングでは、それぞれの役割遂行を媒介として、人と人とがお互いに対応する場面を通して、次のようなことを学習することが期待できます。
  1. 相手の考えや感情の動きをつかむことのむずかしさ。
  2. 相手の話を完全に聞き取ることのむずかしさ。
  3. 傾聴と共感の重要性。
  4. やりとりを通して状況が変化することをつかむ。
  5. 自分の言動の特徴をつかむ。
  6. 自発的で柔軟性のある行動がとれる。

 実際に自分自身で、所定の役割を演じることにより、納得の度合いも高くなり、受講者の態度変容に大きな効果が期待できます。
そのため、一つのテーマの講義が終了した後、理解の確認と言動への変化を期待してロール・プレイングを実施することがよくあります。また、受講者の参加意欲向上のためにも効果的です。

◆実施手順

 事前の準備の後、一般的には次のような手順で技法を進行させます。
  1. ロール・ブレイングの説明‥‥この訓練のやり方、そして何を習得することを期待されるかなどを説明します。
  2. ウォーミングアップ‥‥始めるに当たって気楽になるような雰囲気をつくります。
  3. 役割の決定‥‥それぞれメンバーの役割を決定します。最低でも次の三つの役割があります。
    1. 進行係=ロール・プレイング全体の進行。(通常はインストラクターが行う場合が多い)
    2. 演技者=登場人物を演技する役割(お客役とセールス役など)。
    3. かんさつしゃ=演技を観察する役割で、演技者以外の全受講生が観察者となるのが普通です。
  4. 実技‥‥役割分担にそってロール・プレイングを始めます。
  5. 分析・討議‥‥演技終了後、観察者は演技者(主たる演技者)にたいするコメントをまとめて発表し、討議をするなど評価します。
  6. 再演‥‥分析・討議の後、再演するかビデオを再生して、問題となったシーンを確認していきます。

◆実際活用事例

 セールス技術の習得を事例にして、ロール・ブレイングの実際的な活用を、準備と実施の段階にそって説明いたします。
 まず、準備段階では、研修ニーズに合致した課題(例=商談技術の向上、とくにクロージングの強化)を設定します。はたすべき役割(例=お客とセールス)、それが演じられる条件(いつ、誰とどんな場所・状況で)の設定、必要な小道具(商談の際に用いるセールスツール一式)の準備、受講生のグループ編成(例=誤認を一桁グループにして、三グループ十五名)、商談作戦表の作成(どんな流れ、どんな攻め方でやるのかという作戦メモ)、ビデオのテスト(試運転)等が最小限必要な事前準備になります。事前準備は効果的な訓練のためにきわめて重要な、作戦表づくりになりますから必ず実行させるようにします。

(1) ロール・プレイングの説明
 役割の演技者は教材の提供者です。ですから観察の立場に立ち受講生こそが実際の主役になります。分析力・評価力をつける立場にあることを強調して、観察者に厳しい観察とコメントを要求することになります。

      「今回の研修」ロール・プレイングの進め方

        目  的
      (1) 商談技術を身につける。
      (2) 商談技術を学ぶための教材とする。
      (3) 傍目八目をやしなうこと。

        準  備
      (1) 組み合わせを決める。
      (2) なるべく新規開拓をテーマとする。
      (3) 想定を別紙の項目について行う。
      (4) 商談の流れに従い各過程ごとに、あなたの知っている原則を、なるべく多くおり込んで商談の計画を立てる。
      (5) 計画(作戦表)に従って必要な点をパートナーと打ち合わせする。
      (6) 時間は一組10分。

        進 め 方
      (1) 本番の前に、全員の前で想定の説明を行う。
      (2) お客役は舞台の席に着く。
      (3) 全員の拍手で本番にはいる。
      (4) 観察者はコメント用紙に気づいたことをプラス点、マイナス点に分けて記録する。
      (5) コメント発表。(実施者へのプレゼント)
      (6) VTRを見ながら原則を学ぶ。
      (7) まとめ。

(2) ウォーミングアップ
 照れとか抵抗感をなくして、役割を演技させるムードづくりです。少しくだけた自己紹介、軽いたいそう、三分間スピーチなど、大きい声を張り上げて檄文をやることも考慮します。

(3) 役割の決定
 時間の制限もありますが、原則として研修者はセールス役、お客の役を必ず一度はやれるようにプログラムを組みます。とくにお客の役割はお客の立場を理解する上で効果があります。

(4) 実技の開始
コメントの着眼点 実技にはいる前に、セールス役はどのような状況下で自分が演技するかを発表し、また、観察者の質問に答えるようにします。観察者はお客の立場で観察します。それからあらゆるセールス活動についていえることですが、商談には次の三つの計画があります。

 つまり、@誰に会うのか、A何のために会うのか、Bどんな攻め方で話を進めるのか、等です。現場ではとくにBが不明確なセールスが非常に多い傾向があります。Bの意味は、自社の商品(システムでもサービスでも同じ)喉のセールスポイントを使って、お客のニーズ(悩み・問題点・弱点)を解決するかについて、自分なりのストりーを持つことです。
演技にはいる前に、インストラクターは、セールス役にこれをいわせてからスタートさせると良い結果が生まれます。なお、実技のはじめと、終わりに、けじめと激励をかねて、観察者全員で拍手をします。

(5) 分析・討議・評価
コメント表  実技終了後、コメントをグループ単位でまとめます。短時間例えば七分くらいでまとめさせます。その後、グループの代表者がこれを発表します。例えば、良い点を二つ以上、改善点を三つ以上、今後どんな点に気をつければセールス役の商談力が伸びるかについてのアドバイスなどを発表させます。

 各グループのコメントに対して、インストラクターが得点をつけ、それを加算してグループで分析力を競わせると効果的です。甘いコメント、的外れのコメントに対しては、厳しく採点することが全体のレベルアップのためのポイントになります。要するに、観察者のコメントを柱にして、横の統制をしながらグループ間に競争原理を導入して進行させるものです。

(6) 再演
 再演させるのも効果があります。しかし、最近ではビデオなどの活用が多くなっております。
 各グループのコメント発表後、インストラクターはビデオで再生しながら、コメントをしていきます。そして、再生が終わったところで、各グループから出されたコメント内容を評価し得点を発表します。
 最後にお客役から、セールス役にたいする感想を述べさせます。次に、セールス役が自分のロール・プレイングにたいする感想、反省、釈明、今後の決意などを述べることになります。これによって、本人がどう受け止め、成果をどのように生かそうとしているのかがハッキリするので、その後の訓練にも良い影響を与えることになります。
 ロール・プレイングの訓練技法は、時間と場所が必要ですが、観察者を主役として、真剣にやることと、講義法、討議法、事例研究などを併用することによって、非常に高い効果を上げることが期待できます。

注:「下図、NEXTで次ページへ続く」



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