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仕事の教え方

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仕事の教え方(Ⅰ) はじめに 実際に技能訓練の場で新入社員に接 してみても、たしかに新入社員の受講生には、「五無(ゴム)主義思想 (無気力、無関心、無欲、無責任、無感動) 」におか されているようにしかみえません」無感動、無欲、まるだしです。 しかし、この覇気のなさは、彼らの未来を彼らはどのように位置づけるのでしょうか。合理的に特質に適用する技法を用いなければなりません。
一、
教え方の原則
いま広く行われている教育方法は、「啓発的な教え方の法則」と称されるものが、教育の基盤にされております。 新しい教育の特徴は、教わる人を中心にして、現実的に、人間性の理解をすることにあります。そして、啓発的な教え方を原則にしております。
二、
教え方の原則と教える技法との関係
以上の原則を具体的に目的にとしているのが教育技法です。つまり教育技法を活用することによって、教え方の原則が実際に生きてくるのです。

全般に関連するものとして、とくに動機づけ、質問法、プロジェクト法、見学、実習調査、視聴覚教材の利用、職務交代委員に任命などほかに、問題法、討議法、ケース・メソッド、ロール・ブレイン、というように、多岐にわたっております。

しかも現実的な実務に適用されるような仕組みの教育技法になっています。

 -1
教育技法の実際と活用
動機づけは、内からの動機づけと、外からの動機づけとに分けることができます。企業内訓練は、まず対象者の欲求(ニーズ)を満足させることができるものにしなければなりません。

会社のニーズを達成するための教育訓練とは、たとえば、原価低減訓練、販売増進訓練、あるいは安全訓練というようなものです。教育担当者はそれを注意深く検討し、それをもとにして教育内容を組むというやり方もあります。

これなどは、事前に受講者を参加させ、教育について動機づけをさせるやり方です。
-2
動機の長続き
学習者の状況によって、適宜提示のやり方を変えるような柔軟性が必要です。。 さらに、動機づけという 見地から、せっかく苦心してなされた動機づけも、教育訓練中持続をしなければ手法が無きに等しくなることに注意する必要があります。
仕事の教え方
(Ⅱ)
対象: 中堅社員、新任管理者、管理者
部下の指導育成で「仕事を教え る」時の基本動作を学びます。受講者各人に考えさせ、グループで研究して、発表させます。

講師は発表された内容にコメントを加え、「仕事の教え方」の基本動作を講義します。研修課題の提示:「仕事を教える」にはどのようにすればよいか。その基本動作を学び、グループ研究:課題を個人で考え、グループで研究して、良いやり方を考え、発表します。

まとめ: 職場で実践できるように、気づいたこと、学んだことをまとめます。
(Ⅱ)
教材の作り方
教材の作り方の基本動作を学びます。またグループ研究として課題を個人で考え、さらにグループで研究して、良いやり方を考え発表します。つぎにグループ研究の発表を講師がまとめ、補足の説明をします。さらに、 結果として職場で実践できるように、気づいたこと、学んだことをまとめます。
(Ⅱ)
教材とその使い方
◎研修課題を提示し、個人の研究に使います。
◎グループ研究に使います。
◎ロールプレイング練習シート。
注=練習シート参照
仕事 の教え方事例研究Ⅰ 「やる気を起こすとは」 やる気のない部下に仕事を教えるとは部下を迎合することとは違います。仕事を教えるには、部下がその日おかれている心理状況をつかんで、それにあった教え方をするということです。

仕事を教えるときは、まず、その"型"(フォーム)をつくります。その上で実行に移すようにします。
その後の成果の評価について、失策や怠慢の叱責や指導を行うときは、慎重に吟味した言語行動が必要になります。
仕事 の教え方事例研究Ⅱ 「仕事に無関心」  「仕事に興味をもたせるには」たとえば、仕事を教える場合、グループ或いは個々別々に、教えるときに教える側教わる側共々『何を教え何を教えてもらっているのか?』の認識が不可欠です。

それに、仕事を教えるということは、実際の仕事の技術を教えることだけを意味しません。仕事上手は遊び上手と言われるように、仕事が出来る人は、仕事と遊びの切り換えが上手です。

切換がうまくいかず、教えられた仕事をケロリと忘れるのには、部下のほうに責任がありますが、上司の教え方にも問題があるのです。教えたいことをよりよく伝えるためには、まず、教える側がきちんと教える内容を整理しておくことが大切です。  
仕事 の教え方事例研究Ⅲ 「仕事に無責任」  「自らを学ぶ気にさせるには」これは仕事を教えるときも同様です。そこで、単純な仕事から与え始めることでその分、部下には"教わり、学ぶ"責任、自分で仕事をする責任が生まれてきます。そうした場合には「言いたいことを言わせてくれる」環境づくりが、『相手の言うことも聞こう』つまり仕事を教える環境づくりにつながるのはいうまでもありません。

いうことを聞かないから仕事ができないかといえば、こういうタイプの中に仕事が好く出来る人間がいるから正直には厄介です。かわいい部下ほど、自分の責任感が負担になってしまうものです。ですから、自分がやったほうが速い仕事は優先的に部下にさせる手法をとります。  
仕事 の教え方事例研究Ⅳ 「続 仕事に無責任」  「続 自らを学ぶ気にさせるには」部下を指導するのは、あくまで相手のためであり、ひいては自分のためにもなると考える心構えです。欧米社会での生活体験のある人なら、たぶん共通にそう感じたことがあるのではないでしょうか。

仕事がうまくいかないと、すぐ『部下の出来が悪いから』『思ったように部下が動いてくれないから』愚痴を言うような上司の言うことは、だれも聞かなくなるでしょう。教わることで、相手から得るところが大きいのはもちろんですが、教える側に満足感があることで上司―部下の関係がスムーズになることも見逃せません。  
問題解決の技法 問題点解決において重要なものは、手順やテクニックではありません。ものの見方や考え方です。解決に至る思考プロセスがキーポイ ントになります。

仕事の教え方(Ⅰ)

 はじめに
最近の若い者は「つかみどころがない」企業の経営者と話をするとき、よく話題に上ります。実際に技能訓練の場で新入社員に接 してみても、たしかに新入社員の受講生には、「五無(ゴム)主義思想 (無気力、無関心、無欲、無責任、無感動) 」におか されているようにしかみえません」無感動、無欲、まるだしです。悟りきったお坊さんのように、成り行きに身を任せているよう で、若い人たちに特有の溌溂さが見えてこないのです。

 しかし、この覇気のなさは、彼らの未来を彼らはどのように位置づけるのでしょうか。社会環境の変化の影響を幼くして受けた 彼らに対して、仕事を教える責任や教わる責任の所在は、むしろ過去の責任より、新しく受け入れる企業全体にあるのではないで しょうか。

教えて人を育てるということは、万能薬のように全てではありません。合理的に特質に適用する技法を用いなければなりません。 そのためには、単に既存技法の応用に限らないで、組織に適応する新しい技法も開発しなければなりません。 このページでは以上のような考えから、仕事の教え方についての原則や基本の考えを説明したいとおもいます。
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一.教え方の原則
 いま広く行われている現代の教育方法は、「啓発的な教え方の法則」と称されるものが、教育の基盤である。以下、現代の「教 育方法」の教え方の原理を説明する。新しい教育の特徴については、別表の形式教授と経験学習との対比表で明らかであるが、そ のポイとを特に強調すれば次のとおりである。

  形 式  教 授(伝統主義) (a)すでに出来上がっている教材から出発する
(b)現実から離れた抽象的な場で学習する
(c)学習者は受け身で教わる
(d)体系だった知識や技能を覚えることが目的である
(e)主知主義である
(f)知識技能の体系に重きをおく
(g)教科書の中身を詰めこむ
  経 験  学 習(進歩主義) (a)学習者のなまの経験から出発する
(b)現実のなかの具体的な場で学習する
(c)学習者が自分で活動して、知識や技能を身に着ける
(d)行動をし、問題を解決する力を高めることが目的である
(e)行動主義である
(f)学習する人の経験が、連続的に発展していくことに重きをおく
(g)問題を探しそれを解決する努力をする

別表

セオリー  ① 教わる人中心。
 ② 現実的に
 ③人間性の理解
 それで、このそれぞれの原則を細かく分けることができる。
 なお、「啓発的な教え方の法則」として次の四つが挙げられている。

 a. 知っていることから知らないこと 
 b. すべてを生徒中心に
 c. あらすじ―詳しく―しめくくりの順で
 d. 学習に問題を結びつけて
 しかし、この四つは、いずれも表1の八つの原則を部分的に説明しようとしたものであり、まだ体系的でないうらみがある。以 下この表の原則を説明し、その中で「啓発的な教え方の法則」の考察をしていきたい。
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(1) 自発・創造の原則
 新しい教育は、教わる人が中心になるのであるから、方法としては、自己活動をふるいおこすこと、そして、その自己活動を正 しく指導することをまず考えなければならない。人間は、自分でやる気になったときにこそ、大きな成果を収めるのであるから、 その意味でこの原則は、次に出てくるすべての原則を包摂する大原則かもしれない。

 自分で活動するということは、つぎつぎに新しいことをやり遂げていくということでもある。たとえ単純作業の一工程であっ て、熟練者から見れば問題にならない、非常につまらない仕事にしても、見習う立場の人間としては、何物にも代えがたい創造の 喜びある。しかも、次の学習意欲をかきたてるものである。
 その意味で良く、「学習は成功の連続でなければならない」といわれる


(2)興味の原則br>

 そのために、学習意欲は成功という問題の成果に充足された満足感がやがて興味を感じるようになり、成功の連続で学習意欲が 強くなっていく。あくびをするなど集中力にかけた講義などの聴講は、どの程度までの自発行動に移されるものか?この原則の大 切さは後で説明するが、動機づけということがやかましく言われるが、それは、この理由からである。

「啓発的な教え方の法則」では、これを「すべてを生徒中心に」といい、その細目としてつぎの項目をあげている。
  ①生徒の考えを把握する
  ②その考えを中心にもちかける
  ③学習の必要性を感じさせる
  ④興味と関心をもたせる
  ⑤積極的に学習させる
 これらの注意事項を実務にどのように応用すべきかは、後で「動機づけ」の方法として説明する。


(3) 個性化の原則
 ところが、人間の考え方は「十人十色」興味のもち方にしても千差万別である。

 教育の目標の一つに個性を伸ばして会社に役立てるということでも、その個人差を念頭におきながらすすめるという、教え方の 原則が出てくる。
 それで、個性化の原則といっても、一対一の教育だけに限られてはいない。例えば、ある研究員を育成しようとする。この人は 特殊分野だからといって、特定の上司の個人指導する必要はない。必要な事項に関してのみグループ全体でそれぞれの各自の所有 する専門事項の知識・経験の指導を行えばよい。
 個性というものは、他の多くの人々に触れて磨かれ発展生育するものである。つまり、全体がなければ個性がないことになる。

 「啓発的な教え方の法則」は、個性化の原則を実務的に展開して、つぎのようにいっている。
「知っていることから知らないことへ」。
 ①相手の能力・経験背景を調べる
 ②相手の能力・経験背景を土台に
 ③既知から未知へ結びつけ
 ④既知のステップから未知へ一歩ずつ
 これは、カリキュラムの編成や内容を提示する場合に、とくに反省されなければならない注意事項となるかもしれない。


(4) 直接経験の原則
 企業内教育は現実的でなければならない。抽象的な講話で「これをどう生かすかは皆様方の努力です」という形式をよく見受け られるが、このような話だけを聞かせるのは「教える・教えられる」目的から大きくずれている。
 新しい教育の基本原理の一つは、「なすことによって学ぶ」である。その為には単に話を聞くだけでなく、直接事物にあたって 観察したり、実際に行動をする。この原則は、その間の経験をだんだん重ね、対象を見る目を深く見通すようにしようというの で、重要視されるのである。
 近頃、頻繁に利用されるいろいろな視聴覚教材は、このための補助手段である。


(5) 活動の原則
 学習する人が生き生きと活動しているということは、その人の自発性が躍動している姿であり、興味とか、直接経験がそれを維 持管理している。
 教育実施の場で、「いまさら俺を教育とはなんだ」「いったい何を勉強しろというんだ、担当者のお手並み拝見」というような 消極的な参加者の態度に悩まされている担当者は、この方法原則をうまく駆使することを真剣に考え直さなければならない。
 「啓発的な教え方の原則」は、これを「学習に問題を結びつけて」と表現し、細目をとしてつぎの項目を府げている。
 ①現場で起こりがちな問題を投げかける
 ②相手に身近な問題を引用する
 ③手ごたえのある問題に挑戦させる
 ④やさしすぎず、難しすぎず
 ⑤成功の喜びを分かち合う


(6) 社会化の原則
 再三説明するように、新しい教育は、ただ知識をうまく注入すればよいという古い形式の教授法は大きく異なっている。古い形 式では教育の社会化を考える必要はなかった。
 たとえば、セミナー団体による公開講習を、参加者を一堂に集めて始めても、形は集団学習であるが実質は一対一の学習の様な ものである。参加者の相互間には何等の精神的な交流もないのである。
 ところが、新しい学習では、経験を再構成していくことをね狙うので、受講者同士の経験の交流を基本とする。それは、学習と は、個人が物事を知っていく過程と、集団で経験を交流していく過程との絡み合いによって成立するとかんがえるからである。

 学習の参加者は集団活動を活発にすることによって、行動的な性格が徐々に形作られていく。また、ほかの人の意見や経験に よって刺激されるので、創造的な活動も大いに促進される。
 つぎに大切なことは、集団思考・集団決定などの技法を使うことで、実際に職場の問題を解決することができる。また、集団圧 力を利用して一定の態度を形づくることもできる。
 したがって、通常的に、集合形式の研修や会議を行う場合は、民主的に行われるからと、軽く考えがちだが、実はそうしたもの ではない。集団思考すれば、幅の広い解決ができるし、集団決定すればそれが受け入れられる。かつ実行に移されやすいリスクが ある。そのためには、それが民主的であるというような、流行を追うような気持ちで活動してはならないのである。

 この項目の最後は組織の活性化についてである。集団で学習をやることによって組織は活性化することができる。組織が会社が 大きくなるにしたがって、組織の官僚化が懸念される。その成員はお互いによりかかり合いの結果、意思疎通のパイプが詰まるこ とがある。職位があっても管理者不在同様の状態で機能しないのである。組織のどこにも正しい情報が流れなくなる傾向が出てく る。こうした場合、集団学習を徹底することで、これらの弊害を除去することができる。その組織的なやり方を組織開発(OD) といわれる。


(7) 統合の原則
 統合の原則では、教育訓練の内容の統合と、其の作用の統合とを考えなければならない
 生き生きとした職場での経験をつぎつぎにとさせて、問題を自主的に解決していく力を養うことは新しい教育目標の核心となる ものである。
 ところが、この経験が全くなんの体系もないバラバラであったら、学習者は闇雲の中を這いずってあるくようなものだ。枝道の 多い道で呆然と立ち尽くすようにならないようにするためには、学習内容をしっかり系統付けし、今全体の中のどこをやっている のかを、いつでも解るようにしておかなければならない。
「啓発的な教え方の法則」では、これを、「あら筋―詳しく―締めくくり」といっている。そして、その内容を次のように説明し ている。
 ①全体のあらましや、目標を示し、なぜそうするのかを納得させる
 ②相手の心に全体の絵を与える
 ③最後の目標と、今習うことを結びつける
 ④内容の詳細を提示する
 ⑤全体のまとめと、いままでの進歩の度合いを示す
 このやり方は、講演などの場合にも活用できる。たとえば、つぎのように説明していくのである。①私は今から、教え方の原則 を八つばかりあげたいと思う。これはきょういくほうほうのきそである。②全体は三つに分かれ、細目は全部で八つある。③では まず一番目の原則を説明する。これは全体の原則といってもよい。④自発・創造の原則の説明……(以下各原則を説明してい く)⑤以上八原則はカリキュラムを作る基礎であり、また教育技法の基礎にもなっている。
 つぎは作用の統合である。これは、教えることが、実際と矛盾しないということである。たとえば、安全心得を作業員に教えた とする。ところが、職場のだれもがそのとおりやっていなかったり、また監督者がそれを守っていなかったとすれば、その教育は しょせん効果があがらないであろう。それどころか、上司や教育活動に対する不信を引き起こし、逆効果になるかもしれない。
 よく、教育はトップから行わなければならない。といわれる。これは、トップがまずよく教育内容を会得し、それを用いるよう に部下を督励しなければ、作用の統合を実現することができないからである。教育実施上、とくに注意すべきことである。


(8) 愛情の原則
 教育は助成愛――相手を伸ばしてあげようとする愛情の表現であるといわれる。人間理解にももとづく尽きるところない愛情と ものごとに感じる深い味わいとが、相手の魂を大きく揺さぶり、その人の成長を促進するのである。
 その意味で、この原則はすべての教育活動の底流となるべき原則である、ということてができる。

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二.教え方の原則と教える技法との関係
 以上の原則を、具体的にねらっているものが教育技法である。つまり教育技法を活用することによって、いままで説明した教 え方の原則が実際に生きてくるのである。その意味で、教え方の原則と教える技法との対応関係を心得ておくことが必要になる。 表2は、その一応の対応関係を表したものである。

 表2 教え方の原則と教える技法との関係
 教え方の原則  教える技法
 1 教わる人中心
 (1) 自発創造の原則
 (2) 興味の原則
 (3) 個性化の原則
 2 現実的に
 (1) 直接経験の原則
 
 (2) 活動の原則
 
 (3) 社会化の原則
 
 3 人間性の理解
 (1) 統合の原則
 
 (2) 愛情の原則
   
 全般に関連、とくに動機づけ
 動機づけ、質問法、プロジェクト法
 自習、課題、面接指導、質問法、学会へ入会、留学
  
 プロジェクト法、見学、実習調査、視聴覚教材
 の利用、職務交代委員に任命
 問題法、討議法、プロジェクト法、課題、自習、
 実習(練習)、調査、ゲーム
 討議法、ケース・メソッド、ロール・ブレイン、
 Tグループ会議、社外団体への参加

 講義法、ケース・メソッド、報文提出、ビジネス
・ゲーム
 全般に関連

 ところで、実務上、次のことを注意しておきたい。
 第一は、教え方のげんそくについてである。この原則自体、新しい学習の原理をいろいろの角度から見たものであるから、互い に密接に関連しているものである。例えば、被教育者が生き生きと勉強している状態をその心理面から見れば、興味の原則という ことであろうし、やっている事柄を注目すれば、それは活動の原則にしたがっている。ということになる。

 もちろん、何を学習するかによって、とくに強調しなければならない原則はある。それは、最も適した技法を活用するべきこと である。実際の学習活動は、いろいろな原則の統合の上に進められているので、いきおい技法も前述のように色々なものを組み合 わせて使うことになる。

 第二に、以上のことは、技法についても当てはまる。この表2では、すべて充分ではないがとりあえず教え方の原則と対比させ た。たとえば、プロジェクト法であるが、これは直接経験の原則と対比させてあるが、そのほかに、社会化の原則とも関係がない わけではない。要は、「いま自分が用いようといる技法が、どの教え方の原則と最も深く関連を持つかを理解して、その特色を十 分発揮させるだけでなく他の技法とも組み合わせて応用しなければならない」のである。

表3  学習 の類型、考え方の原則および教える技法の関係
学習の類型 中心になる教え方の原則 中心になる教える技法
 技能の学習  直接経験と活動の原則 実習(練習) プロジェクト法 学習者の個性も考え、飽きないように動機づけに注意、
 知識の学習  統合と自発創造の原則 講義法
報文提出、課題
理解しやすいようにポイントを明示のこと
単なる注入にならぬため問題法、調査、自習なども併用すること
 問題解決の学習  興味、個性化、活動、
 社会化と統合の原則
 動機づけ、プロジェクト法、課題、問題法、調査討議法、ケース
 ・メソッド、ビジネス
 ・ゲーム、他のゲーム
 多面的な技法の活用が必要
 態度の学習  社会化と活動の原則  ロール・ブレーン、グループ会議、討議法、プロジェクト法、グループ会議
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三. 教育技法の実際と活用

1. 動機づけ
(一) 動機づけ
 (1) 動機づけの意味
 われわれが考えている新しい教育訓練は、自分自身で能動的に環境に働きかけることによって、自分の経験を再構成していこう とするものであるから、そのスタートとして、「やる気にすること」(動機づけ)が極めて大切であることは論をまたない。やる 気のない人、関心のない人にかかっては、どんな名講義も馬耳東風と聞き流されてしまう。また、企業側の論理と、会社に入って くる個人の論理とは、そもそも基盤が違う。

動機づけ

 企業は存続して発展していくために、利潤の獲得を中心にしていろいろの活動を展開する。ところが、そこに入ってくる社員 は、まず自分の満足を第一義に考えてやってくる。これは、大人たちが近頃の若い者はけしからんと言おうとなんと言おうと、厳 然とした事実である。この両者を結びつけるもの――会社に適応し、しかも改善し、同時に自分の能力をも高めていこうという気 持ちにさせるもの――これが動機づけにほかならない。整理していえば、動機づけをする目的は、次の三つである(右図を参 照)。

 a.興味を起こさせる
これが学習のエネルギー源になる。
 b.学習しようとする意欲を起こさせる
(この学習は広い意味で、右に説明した適応、改善、自己啓発の意欲も含む)
 c. 興味や意欲を教育訓練の目的達成に向けさせる


 (2) 動機づけの種類と方法
 動機づけのは、これを、内からの動機づけと、外からの動機づけとに分けることができる。(上図 内外からの動機づけ 参照)
 内からの動機づけとは、学習者の心の中のものを掻き立てることで、これが本命である。外からの動機づけとは、競争や賞罰な どを用いるもので、場合によっては好ましくない副作用を起こすことも考えられるので、使用上細心の注意が必要である。これを 図に示せば上図のようになる。

①内からの動機づけの方法
 a.欠乏感や不満足感を利用する
従業員が、どうもこの仕事は疲れすぎる、結果が思わしくない、失敗が多い、毎日の仕事を十分に処理しきれない、なんとなく不 安感がある、(上司への思惑その他)、もっと能率よくやりたい、と考えたり、仲間に対して劣等感をもっていたりするようであ れば、指導者はこれらの情感を要すべきである。具体的には、研修の初めにこれらの感じを出して話し合いわさせ、ついで、「ど うすれば良いかを考えよう」という目的を掲げて本論に入ったりするとよいであろう。

 b.個人の欲求を満足させる
 人間はいろいろな欲求をもっている。学習を各人がその欲求を満足するように持って行ってやること、および学習によってこれ これの満足が得られるのだ、と周知徹底させることは、動機づけにきわめて有効である。
 企業内訓練は、まず対象者の欲求(ニーズ)を満足させることができるものでなければならない。たとえば、定年前の処遇とい う欲求という意味合いで管理職になった老骨社員を、新任管理者訓練に参加させても、しょせん彼は、やる気をもってこれに取り 組むことをしないであろう。そのかわり、もし、転職訓練や退職金のうまい使い方講習などがあれば、彼は熱狂してこれに飛びつ くことであろう。

 教育担当者や部下を持つ人は、よくよく各人の欲求を把握し、それに適応する教育訓練を実施する必要がある。
ただし、どんな場合にもストレートかつ簡単に欲求を満足させてやれば相手は動機づけられるというものではない。後述するよう に、ST(sensitivity training = 感受性訓練)や対決会議などは、欲求の満足を先に引き伸ばすことによって、学習の効果を高めようとしているのである。

 ②外からの動機づけの方法  企業内教育には、個人欲求(主観的ニーズ)を満足させようとするもののほかに、会社が考えるニーズ(客観的ニーズ)の達成 を狙うものと、社会が要求するところ(一般的ニーズ)に応えようとするものとがある。会社のニーズを達成するための教育訓練 とは、たとえば、原価低減訓練、販売増進訓練、あるいは安全訓練というようなものである。社会が要求するニーズの達成とは、 会社は業務達成という点からは、必ずしても直接的には必要としないのだが、社会一般が要求するからこれに応えようとするもの で、たとえば、成人教養講座、公害関係法規講座の開講などである。

 ところで、主観的ニーズの達成を目標とする教育訓練ならば、その性質上、参加者を比較的容易に動機づけすることができる。 というのは、参加者が、はじめからある程度やる気をもっているからである。これに対して、後の二つの教育訓練に関しては常に 参加者がやる気をもって集まってきているとは限らない。そこで特に、外からの動機づけをすることが必要となる。
 外からの動機づけとしては、金銭に関するものと、金銭に関係しないものとがある。確かに、例えば教育手当や教育出張手当を 出すのも、有効な動機づけの方法であろう。しかし、金の出し方は、とくに各企業の特殊性を考えなければならない問題であるか ら、ここでは、金に関係しないものをおもに説明する。

  a.ほめることと叱ること
 マイヤーの実験によると、次の順で、良い効果をもたらすそうである。
 大勢の前でほめる、個人的に叱る、大勢の前で叱る、個人的にひやかす、大勢の前でひやかす、個人的に皮肉をいう、大勢の前 で皮肉をいう。また、この逆の順序で、悪い結果をもたらしたそうである。
 いずれにしても、ほめることと叱ることは、指導の仕方および学習者の個性によって異なる効果を生むことを銘記すべきであ る。

  b.賞と罰
 賞と罰も難しい問題であるが、だいたい次のことがいえる。

 (a).賞は罰よりも有効で長続きするから、なるべくこれを用いること
 その形式は何でもよい。合宿訓練中ならば、ビジネス・ゲームで勝った組に晩酌を一本よけいにつけてよい。どうせその余分の 一本は他の組にもおすそ分けされ、よけいに夕食のざをにぎわすことであろう。
 (b).罰は望ましい行動が起こり、つぎの賞に結びつくようにかんがえなければならない。
 企業内教育訓練ではあまりもちいられぬようであるが、たとえば会期の途中一日休んだならば、あとは参加させないなど、規律 を保持し、教育の効果を高めるような配慮が必要である。
 (c).結果を知らす
 いまどこまで進んでいるか、どんな成績を上げつつあるかを知らすことは、よい動機づけになる。これは本人に成功感を与える ことになる。とくに技能と態度の学習では必要である。
 (d).競 争
 競争させることは、かなり動機づけに有効である。ビジネス・ゲームの面白さはここにある。ただ、競争させると、個人でする 単独作業よりは作業ははやくなるが、質が落ちる傾向が出てくる。だから、競争をさせる内容と、させ方の吟味が必要である。
 (e).参加させ、活動させること
人は決定に参加させ、また活動をさせると、そうでない場合に比べて、はるかに動機づけられる。教育の内容にしても、それを決 めるのは教育担当者の専決事項である、と考える必要はない。例えば課長講習を企画する場合、事前に前課長をいくつかのグルー プに分け、そのグループごとの討議によって現在困っている問題を全部出させる。教育担当者はそれを注意深く検討し、それをも とにして教育内容を組むというやり方もある。これなどは、事前に受講者を参加させ、教育について動機づけをさせるやり方であ る。
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(二) 動機の長続き
 せっかく苦心してなされた動機づけも、教育訓練中持続をしなければ仕方がない。先に述べた額雌雄の類型によって異なる教え 方の原則と技法とを使い分けようという考え方は、実は動機を長続きさせるためのものである。さらにここでは、動機づけという 見地から二、三注意事項をあげておこう。
 (a).心の混乱や、過労などをさせないようにすること
 討議の主題にあまりにもあいまいなものを出したり、重しくない講義を夜間に実施したりしないことなどでする。
 (b).学習者の状態をよく見守り、たえず督励すること
 討議の仕方に工夫を加えるなども、これである。学習者の状況によって、適宜提示のやり方を変えるような柔軟性が欲しい。 OD(組織開発)では、学習活動などの推進を「介入」と呼び、やり方を色々と工夫している。  (C).目標を区切って、何回も成功の喜びを味わえるようにするとよい
 (d).教育訓練計画全体に、バラエティと適当なヤマをもたせること
 二週間、講義と討議の平板な連続などという企画はヤボである。


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仕事の教え方(Ⅱ)

1. 対象: 中堅社員、新任管理者、管理者

2. ねらい
 新人や後輩、部下の指導・育成に先輩社員・管理者の果たす役割は大きいものがあります。特に大切なことは「仕事を上手に教 える」ことです。教え方次第で、部下はやる気になったり、反対に意欲を失ったりするものです。部下の指導育成で「仕事を教え る」時の基本動作を学びます。

3. 教材の作り方
 「仕事を教える」には何が必要でどのようにすればよいか。受講者各人に考えさせ、グループで研究して、発表させます。講師 は発表された内容にコメントを加え、「仕事の教え方」の基本動作を講義します。全員がどうすればよいかを理解すれば、次は実 践できるようにロールプレイングで練習します。いま実際に練習したことから各人ができること、できなかったこと、気づいたこ と、学んだことをまとめます。

4. 進め方
  1.  研修課題の提示:「仕事を教える」にはどのようにすればよいか。その基本動作を学ぶ。  
  2.  グループ研究:課題を個人で考え、グループで研究して、良いやり方を考え、発表します。  
  3.  小講義: グループ研究の発表を講師がまとめ、補足の説明をします。  
  4.  グループ実習:「学んだこと」を活かすために、「ある仕事を教える」という想定で実演して、現実のものとします。  
  5.  まとめ: 職場で実践できるように、気づいたこと、学んだことをまとめます。
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 5. 教材とその使い方(シート番号)
  1. :研修課題を提示し、個人の研究に使います。
  2. グループ研究に使います。
  3. ロールプレイング練習シート。
  4. 学んだことをまとめさせます。(省略)
シート1

仕事の教え方

課題:「仕事の教え方」

1.個人研究
 これまでに後輩や部下に「仕事を教えた」経験を振り返り、仕事を教えるときに注意していること、あなたの 日頃行っていることをまとめてください。                   思考記入               

2.グループ研究
 グループの人たちも、このテーマについてあなたと同じように考えています。そこで、あなたの考えを発表し て、それぞれの人たちの考えや意見を聞いて、話し合い、「仕事の教え方」を考えてください。

教え方
3.発表
他のグループの人たちも、このテーマについてあなたの野々のグループの日戸達と同じように考え、話し合いをして います。そこで、あなたのグループで討議したことを他のグループの人達に参考になるように発表してください。
記入項目
シート2

仕事を割り当てる

仕事を割り当てるときの基本
 目標を設定し、計画を立案したら、なすべき仕事の種類や範囲を定め、部下の人数と能力を検討したうえで、それ ぞれの仕事を担当する人を決めなければなりません。仕事の成果が最も達成しやすく、しかも部下が積極的に意欲を もってそれぞれの仕事に取り組めるように、人と仕事を結びつけるのです。これは管理者の大きな役割の一つです。
 適切な割り当てをするには、次のことを考慮して行うとよいでしょう。

1.仕事の条件の把握
 仕事をやってもらうわけですが、仕事が要求する条件には仕事の種類、内容、基準や仕事の要求する熟練度、 作業量、その他の資格要件(職務遂行上要求される知識・技能・態度)等がありますから、まず管理者として仕 事からみた要求する条件をよく把握しておかなければなりません。また、その仕事の重要性・緊急性・将来性な どもじゅうようです。

2.部下の条件の把握
 一方、部下の側から見ると、本人の知識、経験、技能、態度や興味、関心、意欲、地震、期待、希望、不安などを 把握し、最適な仕事を結びつける必要があります。仕事を割り当て、分担する際の基本は、期待されている成果にむ かって職場全体の能力をフルに活用し、部下の意欲を高めるにはどうしたらよいかということです。
  1. 必要な仕事は洩らさず特定の個人にわりあてること。
  2. 同一個人への職務割り当ては具体的で同種類・同目的のものであること。
  3. 部下同士間の職務を不必要に重複させず、責任範囲を明確にすること。
  4. 割り当てた仕事の量は少なすぎず、やや多め(適量)であること。
  5. 部下の能力をややオーバーした職務を与えること。
  6. その職務に挑戦し、達成の過程で充実感や能力向上の機会がもてるようなまとまりのある仕事を与える こと。
  7.  あなたは部下に仕事の指示をするときに、このようなステップを踏んで、また考慮して仕事を割り当てていま すか。
シート3

グループ学習ノート

「仕事を割り当て・分担」………あなたの考えや意見、グループで考えたこと、そしてテキストで学んだことを踏ま えて、ここで「ある仕事の割り当て」をグループで立てていただきます。
1.進め方
 ① 課題……「ある仕事の割り当てをする」
 ② グループ学習…グループで話し合って、課題についての仕事の分担をきめます。
 ③ 発表…グループでそれぞれ決めた仕事の割り当て・分担を発表します。
 良い割り当てであるための条件もりこまれているか、良い割り当てにするためにはどうすれば良いか、現実的な題 材で考えます。
2.課題設定
 あなたの職場にこの度の、ある仕事が課せられました。部下に仕事の割り当てをして期日までに遂行してくださ い。
「ある仕事」「人数」「状況」「期日」をグループで仮定して設定してください。 記入欄 3.発表
 グループ単位に発表していただきます。
 割り当ては模造紙に転記して発表してください。
 発表の開始時刻は   時  分です。
記入欄 4.ふりかえり
 発表がおわるごとに、ふりかえりを行い、良い割り当てであるための条件が盛り込まれているかを相互に話し合っ て、研究してください。
記入欄
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