ラージサイズ・レストラン&バー・アーキタイプ/ 日本帝国,東京スプロール,渋谷,センター街入口/ オーナー,ローランド・フォーチュナティ/ 種族偏見なし/ LTG#468(56-0021)/ |
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飲み物を頼んだら、貴方のランナーの言葉をどうぞ‥‥
「無限の夜」の物語が始まろうとしています。
>>>[ひょう・・・しばらくアクセスできない間に色々あったようだな? こっちはデッキが逝かれちまってどうにもお手上げ状態 久々に繋いだらどこもかしこも回線が死んじまってる・・・ ま、また時々よらせてもうよ]<<<[2005/04/03 07:46:52]
>>>>>[このネットワークは生きてるのかい?]<<<<< ――D A >>>>>[とりあえず、データ放置は大丈夫そうだが]<<<<< ――A D[2005/01/05 22:44:04]
>>>>>[ちゅーこって、石頭の掲示板セッションは終了いたしました。]<<<<< >>>>>[どーぞ掲示板としてばんばんお使いください>ALL ]<<<<< >>>>>[このような利用方法を、また快く利用許可を与えてくださり ]<<<<< >>>>>[ましたいわしまん殿、どうもありがとうございましたm(__)m ]<<<<<[2003/01/27 22:06:33]
2058年・アメリカ某所・ドラゴ財団内 「バタちゃん疲れた〜。」 「ご苦労様。」 「もーちょー疲れたよー。フォーム(形態)を一つ壊されたしぃ。 あのべっちーむかつくー。」 「だけど貴方のおかげで”涙”を彼等に渡す事ができたのです。 感謝します。」 「へへへー(照れ)。だけどアレで何とかなったのかな?みんな。」 「報告は入っています。問題は解決したようですね。」 「じゃ、これからナジャはどうするの?」 「そうですね・・・。ニホンにエージェントを送る必要があるでしょう。 ドラゴ財団としても、今回の事件は看過できません。調査し、恐らく はニホンかあるいは別の場所に極東支部を創る必要があるでしょう。 そのための人材も現地で準備する必要があるでしょうね。」 「アラチアおばさんは何か言ってた〜?」 「おば・・・殺されますよ、そんな事を言っていると。そういえば、 この件に関して”彼”も動く事にしたそうです。恐らく既に東京入り したのではないでしょうか。」 「がんばるよねー、道化師。」 「ええ。それは彼の定めですから。」 2058年・国際空港某所。 係員は一人のエルフの入国審査を行っていた。そのニヤニヤ笑いの耐え ないどこか軽薄な感じのするエルフは、係員の審査を待っていた。 係員は尋ねた。 「Sightseeing?(観光ですか?)」 そのエルフはキングスイングリッシュで答えた。 「No.」 そして流暢な日本語で続ける。ニヤっと笑い、しかしその目は 笑っていない。 「遊びに。」 ** 全ては夜の中。1の光に1000億の夜。 かくて、無限の夜がここに始まる。 - END -[2003/01/23 03:19:29]
2058年・東京某所 ローランド・フォーチュナティは自分の身がそこにあるのを知った。 自分は今だ生きている。蝋燭の明かりのみが光る和室の中で、そして 自分が畳の上において裸であり、ある少女が裸体で彼を暖めていたのだ と知った。彼女は腰まで流れる黒髪の、透き通るような白い肌を持った、 どこか冷たい顔をした少女だった。 「起きたか、ローランド。」 「貴方は・・・」 「リュウミョウ。あるいは竜の眷属の一人。わらわの名前はどうでも 良い。阿僧祇(あそうぎ)、恒河沙(こうがしゃ)、服を。」 彼女はそう言うと十二単を見まごうばかりの服を着始めた。その着付け を手伝うのは、10代前半と見える二人の少年と少女の双子だった。 恐ろしいまでの美貌であり、彼等もまた何処か人間離れした雰囲気を 醸し出していた。 「さて、お前は生き延びた。お前はお前が思っている以上に価値が高い。 お前の命は我らが買った。彼処で死んだのはお前のドレイク・・・ それではお前にはわからんか、・・・ドール、”人形”だ。 貴重な人形を一体使い、お前をあの場から助けたのには理由がある。 あるものを探せ、また同時にホラーと戦える人材を揃えよ。マサル、 忌々しい!吾奴も同時に行っているが、わらわも行わねばならぬ。 お前は我らの一員となったのだ、拒絶は許さぬ。お前ほどの力、 ホラーも見逃すまい。お前はこれらかも今まで通りに働くと同時に、 我らの一員として、わらわの命に従え。良いな。」 そう言うと、その少女は襖を開け、姿を消し、二人の少年少女がローラ ンドに服を着せるのを手伝い始めた。[2003/01/23 02:57:08]
2058年・東京某所。 「すごいな・・・。Bが消滅した!本当に消滅したんだ!ははは。 あれを使ったんだね、あれを。なるほど。あれを使われたのであれば しょうがない。僕達の眷属を完全に消滅させる最も簡単な手段の一つ。 しかし”涙”はあれで打ち止めの筈だ。まぁ、あんなものだろう。 馬鹿なヒューマン、愚かなメタヒューマン。忌々しいドラゴン。 いよいよ僕たちのゲームが始まる。あの時あの場所に僕も居たのだけ れども、上手く隠したものだ、あのローランドと言ったかメイジは。 直ぐにBで殺させたが、もうその時は既に僕の手を離れてしまって いた。B・・・ベルゼバブは消滅した。しかしこれからだよ、ゲームは。 第7世界が始まるその寸前、第6世界の終焉までこのゲームは行われる。 僕たちの総数を聞いたら彼等はどう思うのだろう?全世界の全人類の 一人一人をきっちり100等分以上のパーツに出来るほどの数。 面白い事になった!確かに直ぐにも遊べるようでは面白みがない。 ははは。彼等の抵抗がいかなものなのかをじっくり見てから、遊んで も面白い。まぁ、しばらくは・・・アシュタルト。」 「ここに。主。」 「君が出ると良い。ベルゼバブは消滅した。”涙”を使われてね。 このトウキョウはそれなりに遊び場としては最高だ。使えるネーム ギバーが多い。以前鬼堂や東京紛争でも遊ばせてもらったが、これ からも更に遊ばせてもらうことにしよう!」 「主。”母”は何処に。」 「あぁ。アーデリアね。彼女は別の場所に隠している。彼女がいれば 僕の”子供”はいくらでも作れるからね、君達のように。君は”剣”を 探せ。”涙”以上に面倒なあの”剣”。”浄化の剣”と言ったか? あれが必要だ、あれは僕たちにとっての数少ない脅威なのだから。」 「了解。主、”竜を狩る者”ヴァージゴーム」[2003/01/23 02:35:12]
2058年東京某所・装甲リムジン内 「ホラーか・・・。所詮我々にとってはステークホルダー(利害調整者) が一つ増えただけに過ぎない。そう思わないか?Ms.アリシア・ナイト」 「そうでしょうね。それがいかな存在であろうとも、メガコーポに勝てる 道理はありません。我らアレスもこの存在に注視していましたが、 まぁ、犠牲者の数とランナーの能力から鑑み、さほどな問題ではない でしょう。」 「もしあのランナー達が失敗した場合、恐らくは我ら神明院の十二神将 がお相手することになったでしょうな。アズトランとの技術提携により 生まれた国産のサイバーマンシー、十二神将。あれに勝てる存在は 日本には居ない。」 「まぁ、ランナーで相対させるのが丁度良いでしょう。今回のは良い 事例となりました。正規部隊を投入するのはコスト面とその隠蔽に 手間がかかりますが、ランナーであれば丁度良い。これからも、 ランナー達を当てるのが一番良いものと考えられます。」 「結局”協定”はどうなったのかね?」 「締結ですな。”彼”のトレードは成功した。これにより、合同評議会 も解散かもしれません。まぁ、既に形骸化している面も無きにしも あらずですし、いよいよ”八王子の王”も終わりですな。」 「栄枯盛衰は世の習え。これからの世界の変化に伴い、はっきりと”勝ち 組”と”負け組”が出ることになる。まぁ、フチの二の舞にはならない ようにしなくてはなりません。」 「そもそもがダンケルザーンの遺言から発した問題ではあるが、恐らく まだ先がある。ホラーという新たな存在が公になったといえど、所詮 は怨霊と同列の存在でしかない。問題ではない。となればこの先フチ が解体し、合同評議会が解散した後、この東京をどのようにするか、 これが問題になるでしょう。」 「彼女はどうするの?お兄さま」 「そうだね。彼女は彼の側に置くのが良いだろうね。どの道彼女に掛け られた全ての”枝”を払うには莫大なニューエンが必要になる。彼女 を生かすだけで大変な出費なのだ。彼にそこまでの資産があるならそ れでよし、無ければどの道シャドウランをせざるを得ない。そうすれ は私達の耳にも入るだろう。まぁ、しばらくは様子見というところか。」[2003/01/23 02:15:30]
私が気が付くと、全ては終わっていた。よくはわからないが、私が 今だ生きているということはそういうことなのだろう。人気の無く なった廃墟のようなクリスタルヴィジョンの中、それでもなおそこ から見れるその夜景を、私は忘れない。 第六世界の東京スプロールの夜景─クリスタルの中にきらめき、反射し、 混じり合い、舞い踊るように輝いては消えていく、はかない光のヴィジ ョンを。 それは、やはり私に幾ばくかの感動をもたらし、私は恐らくは今宵 限りのビズメイトに側に向かった。・・・出来れば彼に起こして欲 しかったな、と私の何処かが囁いたが、それは無視する事にした。 所詮私はエルフであり、彼はヒューマンなのだ。私の生きる時代を 彼は生きていく事は出来ない。私は愛する者を、目の前で失っても 生きていける程、強くはない。 「Hi、飛鷹。」 この宴の最初も私はこう言った。私は微笑む。しかしその裏にある この慟哭を、彼は知る事は無いだろう。 「さて、これからどうする?どうにもローランドは生きているそう だから、彼と連絡を付けて、報酬を受ける?それとも?」 私はそういってカウンターを見る。笑いながら。 「少し飲んでいく?」[2003/01/09 17:53:08]
階下に降りれば、そこに人は居なかった。まるで何かが終わったように、 そこに人影は一切無かった。そして、一つのカードが置いてあった。 >>>[ おめでとう、シャドウランナー。悪のドラゴンはどうだったかな? 私と妹はこれにて退散させてもらう。秋霜、君の彼女の処遇だが、 もし本格的な医療処置を受けさせたいのであれば、私まで連絡を してくれたまえ。善処しよう。また、アラヤ。言っておこう。 ローランドは生きている。あれは、フェイクだ。別の存在から 逃れるための。今はリュウミョウが彼を預かっている。しばらく すれば連絡が取れるだろう。飛鷹とMs.アシュレイ。ビズが欲しけ れば私にまで連絡を。また、Mr.レーニヤ。君の行動に幾ばくかの 敬意を。これからも努力してくれたまえ。 では、良いお年を。君達の今度の幸運とこれからの日本の将来を 祈って。 ]<<< -サダト・シアワセ- --もう少しだけゲームを続けますか?(yes/no)[2003/01/04 04:41:29]
- 無限の夜 - Presented by Stonehead. 【12】 =============================================================== 「消えろ」 秋霜が魔法を唱える。それにより、ベルゼバブの半身は消滅する。しかし 半身の消滅したベルゼバブは半壊した顔で笑う。 「残念でぇしたぁああ!スペルキャストではあたしにぃ、傷を負わせる事は 出来ても消滅はさせられないのぉよぉお!!というわけで死ね」 残る半身の手が先鋭化した一本の爪になり、秋霜とユリを貫こうとする。 その瞬間。 「Good−Luck,Chummer」 飛鷹は撃った。ベルゼバブの胸に穴が開く。行動を停止し、胸に穴の開いた ベルゼバブは自分の胸に開いた銃弾を見た。 「あ?もうちっと待てや、小僧。最後に殺してやるっつったろーが? ・・・あ?いて。 ・・・。 痛ぇ、いたいぃぃいいぃい、痛い、痛い、痛いぃいいいぃぃい いい、いてぇえ、痛いぃぃいいいいいい!!!!! やだ、まだ死にたくない、まだほとんど殺してない、まだ遊んでない、 もっと多くの死を、多くの絶望を、多くの恐怖を味わってなぃいいいい いいぃぃいいいい」 そしてその瞬間からマイルズ・レーニヤの銃弾がベルゼバブを襲った。肉体 が破片となって消し飛ぶ。 「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い」 ベルゼバブは、その異形から想像も出来ない程のあっけなさでその場に崩れ 落ち、急速に消えていく。 「・・・いてぇ・・・」 そしてその異形を、正確にマイルズ・レーニヤの”鉛のホース”が削ってい く。ベルゼバブは溶けていく。その姿も臭気を漂わせ、消散した。 「・・・」 同時に飛鷹は心臓を何かに捕まれたような、そんな感触を味わった。 ** 戦闘は終了した。[2003/01/04 04:40:29]
[2002/12/29 17:40:06]激しい痛みがアラヤを襲った。 いつ攻撃を受けたのか分からないまま崩れ落ちた彼の視界に シャドウランナー達の姿が映った。 命を乗せた弾丸を装填する飛鷹。 最後まで彼のサポートに徹したアシュレイ。 ユリをかばいベルゼバブに相対する秋霜。 全ての魔力を最後に立つ二人の呪文防御に注ぎ、 アラヤは戦いの行方を見つめた。
崩れ落ちるアシュレイとアラヤ。抱き合うユリと秋霜。ライフルを構えるマイ ルズ。そのいずれもを、俺は無視する。 今がまさに、手遅れになる一瞬前。ほんとの腕利きなら、半瞬前まで堪える事 が出来るのかもしれない、だが俺は。 右腕にかかる重みさえ意識せずに、偽者の頭に照準を合わせる。一発目で頭を 飛ばし、それでもなお動くようなら、二発目を心臓にぶち込む。そう決めた。 この距離ならば、外す事はありえない。 >>>[飛鷹。目標はユリB、その心臓部にある昆虫。]<<< このメッセージさえ飛び込まなければ、そのままぶっ放していたところだ。 言葉の意味を理解する間もなく、視線をずらす。指定された目標を撃ち抜く、 今必要なのはそれだけだ。 「Good−Luck,Chummer」 言い終わらぬうちに、トリガーを引く。 心臓を目掛けて。[2002/12/29 02:19:39]
私は苦痛の中、飛鷹に連絡する。 >>>[飛鷹。目標はユリB、その心臓部にある昆虫。]<<< そう伝えると、私は片膝を落とし、ともすれば意識を失いそうな中、 最後の戦闘を見届ける。この私達のラストアタックが成功しなければ、 このビスは失敗し、”敵”の勝利となる。それは、私の数百年の寿命 の最後としては無様なものかもしれないが、シャドウランナーとして は当然の帰結なのだろう。私はそう考えながら同時にマイルズ・レーニ ヤに対して囁く。 「マイルズ。・・・どうにかしてユリBの動きを止めるか、動きを 牽制して。恐らく貴方のライフルでは奴を止められない。 飛鷹が留めを刺す。・・・急いで!」 さてアラヤにも何か言わなければ、と思うと急に何かがこみ上げ、 軽く咳をした。それを手で拭ってみれば、血だった。さっきの魔法は 私の内臓を傷つけたらしい、私の身体は寿命は長いが頑丈ではない。 どうにも最後の戦いは見届けられないようだ、と思いつつ私は気を失 いその場に崩れた。[2002/12/28 03:30:15]
「放すなよ」 抱き着いてきたユリにそう囁いた直後、秋霜の体は真横へと吹き飛んでいた。 否……それはそう見えただけ。 慣性という物理法則を無視した動きを可能にする呪文……<人体浮遊>という 滅多に使わない呪文で、ユリに化けていたホラーから距離を置き、本物のユリを 背後にかばうと秋霜は告げた。 「一つだけ礼を言っておく。 こいつが生きようとするきっかけをくれて、ありがとうよ」 反閇は効くまい。 相手の力が人一人で何とかできるようなものではないと見て、そう断じる。 ならば、最大威力の攻撃を叩き込むより術は無い。 それにユリを殺そうとしたところを見ると、彼女への呪いは既に解けている のだろう。攻撃を躊躇する材料は既に無い。 呪を口ずさみ、印を切り、 「消えろ」 全身全霊を込めた<魔力波>を撃ち込んだ。[2002/12/27 17:22:30]
アシュレイは気付いた。ユリBの心臓部に当たる位置に、 何らかの異常な生体反応が感じられる。恐らくはあれこそ が、と気付いたと同時にアシュレイは身体に恐ろしい衝撃 を感じ、崩れおちた。ともすれば意識を失いそうになりそ うな中、何らかの魔術が自分を襲ったのだ、という事に気 付くのがやっとだった。 ** アラヤは気付く。ユリBこそがベルゼバブだ。と同時に 凄まじい衝撃をアラヤは感じる。口元から血を吐く。何らか の魔術が自分にかかったのか?あの一瞬で?そうとしか思え なかった。 ** 飛鷹はアシュレイとアラヤが同時に崩れ落ちたのに気付いた。 攻撃魔術なのか?しかし自分には何もこない。どういうこと だ。そして秋霜は自分と同様に無傷のマイルズ・レーニアが 無言でライフルを構えたのに気が付いた。[2002/12/17 21:48:32]
>>>[ なぜ、物事が起こるべくして起こるのか。私の知る限り、世界 というのは一つの大きなゲームに過ぎず、我々の行動は全て 運命によって決定されるのだ。 ]<<< --- ダンケルザーン,グレート・ドラゴン - 無限の夜 - Presented by Stonehead. 【11】 =============================================================== 目の前の異常な状況に対し、それぞれが行動する。 アシュレイはマトリックスに投入し、アラヤはアストラルから、敵、 ベルゼバブの位置を探り出す。 飛鷹は一人自問し、秋霜は二人のユリ・アネキに問いかける。 「前から言おうと思っていたんだが…… お前は何故抗わない? 使い捨ての道具のように扱われるのは苦痛だろう。 だがお前は痛みを抱え込んだまま、道具として振る舞う。 その末、今は怪物の操り人形か……。 それでいいのか? もしお前が傀儡のままで良いというなら……残念だが 見込み違いだったということになる。 私はこのまま帰るとしよう。 しかし、傀儡ではない生き方を切に望むなら……」 幾多の命を奪い、血が……死が染みついた手。 今更、拭い去ることはできない。 だが命を救うことはできる。できる、はずだ……。 「死に物狂いで抗って見せろ。 そうすれば、私の全力を持って助けてみせる」 そして。 ユリ・アネキ、その一人(A)は秋霜に答えた。 「私は・・・生き延びたい。お願い、助けて秋霜。」 そしてユリは剣を捨て、秋霜に駆け寄り、秋霜を抱きしめた。そして その瞬間同時にユリBが行動する。彼女の背中から昆虫の触脚とも見 える硬質の黒い鞭が身体を突き破り、秋霜とユリAの二人を捕らえる。 身動きは出来ない。 ユリBは微笑む。それは人の笑みではなかった。 「では、愛する者同時仲良く逝きなさい。楽しかったわ、2050年 代のネームギヴァー。」 そしてユリBはその剣をユリAと秋霜の身体に突き立てようと突進 した。[2002/12/17 21:35:49]
待てといわれて待つ気になるとは、俺も焼きが回ったか。まぁ、待てるのは、 手遅れになる一瞬前までだが。 それまでは、援護でもしてみるか。余計な世話かも知らんが。 「大の男にここまで言わせて、お前はまだ悩むのか、アネキ・ユリ」 あんな化け物の方が好ましいのなら、最早言う事は何も無い。 「穢れていない者など、何処にも居ない。辛い、苦しいと呻きながら、楽にな りたいと願いながら、それでも生き続けている。お前が今しようとしているの は、そうやって自らの罪を贖う人々を、否定し、あまつさえ虚仮にする事だ、 アネキ・ユリ」 行くも地獄、退くも地獄だ。どうせ地獄巡りするなら、大勢でしたほうが楽し いぞ、きっと。[2002/12/14 21:59:00]
[2002/12/07 20:02:28]イニシアティブの低い自分に与えられた機会はおそらくただ一度。 自分が使い得る最高の手段は何か。 残された手段はオーナーの遺品である『鍵』しかない。 オーナーの死後も彼の魔術は生きているはず。 これに賭けてみる。これ以上、誰も死なせはしない。 アラヤは意識を『鍵』に集中した。 ホラーの力の源。命ある者全てに向けられた悪意。 例えどれほど気配を隠すことに長けていたとしても この肥大した悪意だけは隠すことが出来ない。 まして、アラヤはこの悪意に何度も遭遇している。決して見過ごさない。 悪意のオーラをたどったその先にベルゼバブの本体は必ずある。
さて、一通り調べては見たものの微妙な違和感が残る。 呪文も式神も、怪物に惑わされたかもしれない。 ならば…… 「残念だが見分けはつかないな。 悪いが少しの間、攻撃は控えていてくれよ」 他の者たちにそう告げ、私は緩やかに歩み出す。 ユリを傷つけられても困るし、痛覚を共有させる呪いが 未だにユリに施されている可能性がある内は、迂闊にホラー を攻撃することもできない。 もっとも、私にとってはホラーなどどうでもいい事だが。 「ユリ。悪いがこの時点でお前から請けた仕事はキャンセル させて貰う。私はただ使われるだけの道具ではないからな。 だからここからは私の個人的な動機で行動する」 二人のユリを視野に納めつつ、彼女らの丁度中間辺りで 足を止める。 「前から言おうと思っていたんだが…… お前は何故抗わない? 使い捨ての道具のように扱われるのは苦痛だろう。 だがお前は痛みを抱え込んだまま、道具として振る舞う。 その末、今は怪物の操り人形か……。 それでいいのか? もしお前が傀儡のままで良いというなら……残念だが 見込み違いだったということになる。 私はこのまま帰るとしよう。 しかし、傀儡ではない生き方を切に望むなら……」 幾多の命を奪い、血が……死が染みついた手。 今更、拭い去ることはできない。 だが命を救うことはできる。できる、はずだ……。 「死に物狂いで抗って見せろ。 そうすれば、私の全力を持って助けてみせる」[2002/12/07 13:43:51]
>>>>[ 結果は以下の通り ]<<<<< 1.<個体探知>の結果、ユリBがユリと思われる。 2.式神達の探索結果、6体中3体が消滅。残り半分による探索は、 ユリBをユリと判断している。 3.しかし、上記1,2は何らかの魔術的防御策によってベルゼバブ が誤魔化した可能性も否定できない。可能性は半々。 >>>>[ 以上 ]<<<<<[2002/11/30 17:53:24]
予め召喚して置いた六匹の式神に指示を飛ばす。アネキ・ユリの探索。 さらに<反射増強>の勢いを利用して<個体探知>の呪文を紡ぐ。反動を 考慮せずに全力を注いだ。 アシュレイ、飛鷹の声が届く前、二人のユリを目にした時点で既に私は 動き始めていた。 目的の異なる者達と行動を共にしている以上、自分の仕事を果たすため にはなによりも迅速な行動をせねばならない。……特にこんな状況では、 マイルズなどにユリを撃ち殺されかねない。 自分以外の誰かに、ユリを撃たせるわけにはいかない。 どうしようもない状況なら、それは私の『仕事』だ。 だが……まだだ。 ただ命ぜられるままに動き、自分が人形だと勘違いした大馬鹿者を…… 俯いたままで、自分が一人きりだと思い込んでいる小娘をこんな所で 死なすわけにはいかない。[2002/11/25 22:19:31]
なんとも趣味の悪い。 無感動にそう思う。 2人のアネキ・ユリ。どちらが本物なのか、或いはどちらも紛い物なのか。何 にせよ、彼女に近しい者がこちら側に居る以上は、時間稼ぎにもならないだろ うに。 似たような事を考えたらしい。アシュレイがアラヤと秋霜に声をかける。彼ら の眼には、より真実に近いものが映るという事か。彼女もまた、敵の正体を看 破するべく、その能力をフルに稼動しているのだろう。そして俺は。 俺は。 どうしたいのだろう。 アシュレイに問われ、瞬間、考える。 障害は排除すべし。けれども、そうではないものは? アネキ・ユリ。『お前』自身はどうなのだ? 「俺には『お前』を救う理由は無い、同様に殺す理由も無い。ただ、降りかか る火の粉は払う、そのまま共に燃え尽きるつもりは無い。『お前』が俺たちを 殺そうというなら、全力で抗う。逆に『奴』からの解放を願うなら、それはこ ちらの目的にも適う。全力で戦う。 だが『奴』と共に滅ぶ事を望むのなら、アネキ・ユリ。他者に何かをして欲し いと望むなら、それなりの代価を示せ。何も無いなら、俺がしてやれる事も無 い」 言い方を変えれば、『お前』自身に生きる意思があろうと無かろうと、『奴』 は倒す。『お前』が生きたいと望むなら、出来る限りの事はしよう。『お前』 が死にたいと言っても、タダでそれを叶えるつもりは無い。 そんな感じだ。 「で、秋霜。どちらがオリジナルの彼女だ?」 張り詰めた空気の中で、僅かの気配も逃すまいと注意しながら、聞いてみる。 彼らの瞳に映るのは、どんな景色なのだろう。[2002/11/23 23:47:09]
>>>>[ 結果は以下の通り ]<<<<< 1.二人の生体的データは一致(魔術的技術によるものだと思われる) 2.しかし下記のについて誤差が判明 2−a)ユリA頭部にコーテクスボムを確認 2−b)ユリB頭部にコーテクスボムは無し 2−C)ユリA,Bが装着しているスーツにおいて何らかの 微細な生物の付着を確認。昆虫と思われる 2−D)ユリBの胸部、心臓の上部分、胸部中央において、 他の昆虫と異なる種別の昆虫を発見。この昆虫を 銃器で殺害する場合、ユリBの心臓もそのまま貫通 する位置に存在する 2−E)ユリA,Bとも所持している長剣は古美術品として の価値高し、何らかの魔術収束具とも予測される >>>>[ 以上 ]<<<<<[2002/11/23 18:23:46]
馬鹿な。ユリが二人?これはその怪物の力なのだろうか? 私はこの状況の把握を行うため、まず二人の生体情報を確認する事に した。マトリクスに入り、クリスタルヴィジョンの最上階に設置され ている防犯機器を稼働させ、彼女二人の情報を入手する事にした。 そして同時に呼びかけを行った。 「アラヤ。もし可能であれば、マジックで彼女の状態を把握できる? どちらかがフェイク(偽物)の筈よ。」 「Mr.秋霜。どちらがユリなのか、貴方にわかるかしら?わかるので あれば、教えて。どちらがユリなの?」 そして、飛鷹のサイバーアイに以下の文字を表示させる。 >>>>>[ 現在調査中。判明次第伝えるつもり。だけどどうする? 両方とも殺害するの?それとも両方とも捕獲する? ]<<<< 目の前に迫ってくる二人のユリを見、そして銃を向けながら、私は危機感 と焦燥感を感じ始めていた。このような状態は、私の想像を凌駕し始めて いる。果たして、ローランドを倒すような怪物に、私達で勝ち目はあるの だろうか?[2002/11/20 20:43:06]
私は道具でした。 企業という巨人の、その最も汚れた道具の一つでした。 私は母を知りません。私が物心着いた時は既に、道具として自分の身体を 使って生きていました。 その時から、その幼い少女の時から、自分は汚れているのです。 私は何度も何度も、自分の手を拭いました。しかしそれは消えてなくなり はしません。私の手は血にまみれています。父は一度も私を褒めたりはし ませんし、暖かい言葉を送りはしませんでした。庶子である私は、母同様、 父の道具なのです。 私は疲れました。そんな時、”彼”からの提案がありました。”彼”は、 私に今までにない、別の生き方を、あるいは私への答えを持っていると 言いました。 彼は人間ではなく、この第6世界においてすら異邦人であると、私には 解りましたが、それを拒む理由はありませんでした。 私は疲れたのです。私を相対する貴方。私の、彼の提示した答えを示し ます。 私を殺してください。 シャドウランナー。 同じ道具である、貴方の手で。[2002/11/20 14:58:47]
クリスタルヴィジョンの最上階はエレベータで直ぐ着いた。そして気付い た。もしかしたら、現在のクリスタルヴィジョンで既に生き残っているの は、あの階の人間と自分達だけなのかもしれない。そう思わせる程の数々 の死体と血の臭いが辺りに漂っているのを、エレベータに乗っている一行 は見た。 ** クリスタルヴィジョンの最上階は全周囲が吹き抜けになっており、そこか ら東京の夜景が一望できた。何も明かりの無い深夜、しかし雲一つ無い空 の中、満月の明かりのみが、最上階を照らしている。 そして、その最上階の中央部において、同じ顔と同じ姿をした二人の女性 が居た。アネキユリ。彼女はそう呼ばれている。そして彼女達は以前のよ うな和服ではなく、そのボディラインをはっきりと示す、そして露出箇所 の大きい漆黒のボンテージスーツを着ていた。 それは肌の露出する箇所と相まって黒と白のコンストラストにより、 まるで欠けた淑女、あるいは闇に喰われた女性をイメージさせた。しかし その女性としての成熟した身体の線、細身であるけれども、スタイルの良 いその姿はっきりと確認できる。 そして彼女達はそれぞれ片手に長剣を持っていた。二人は優雅に一行に対 して一礼する。 「捧げよ。今宵は殺戮の宴なり。」 そうして戦いが始まった。[2002/11/16 09:27:12]
「助力、感謝する。 ただ『陰陽師の旦那』はやめてくれ。秋霜でいい」 秋霜は答えた。しかし、どのように奪い返したものか。さしあたって答え は出ず、またベルゼバブの元へ赴く方法も、飛鷹の言う通りに正面から以 外の方法は浮かばなかった。 ** 「私も協力させてもらおう。」 との声があがる。マイルズ・レーニヤだ。手には既にアサルト・ライフル を所持している。 「このままでは、私の今後にも差し支える。また、Mr.飛鷹。メイジと デッカーでは君の物理的サポートは出来まい?私はフチのセキュリティ で多少の経験がある。君の援護をしよう。 また、アシュレイ。君に銃器が使えるかは疑問だが、一応このアレスヴ ァイパーを手渡そう。フレシェット銃だ。 というわけで、シアワセ姉妹。どうも私もこの行軍に参加すべきと判断 しました。あなた達はどうします?」 サダトシアワセは笑いながら答えた。 「いや、我々はご遠慮させて頂きましょうか、Mr.マイルズ。そのような 荒行に耐えられるような歳ではありませんし!妹がご一緒したい感じで はありますが・・・止めておきましょう!ここらは一発若い者同士で 愛好の意を示して頂きませんとね!!」 ソウコシアワセは何かを言いたそうではあったが、サダトを遠慮してなの か、何も言わなかった。サダトはその姿を見、満足そうに一人頷く。そし てサダトは皆に大仰に一礼した。 「では、皆様。良い旅を。」[2002/11/16 09:23:29]
飛鷹は無意識のうちに、腋のホルスターから拳銃を引き抜いていた。 「どうする、陰陽師の旦那?」 と秋霜に問いかける。 「俺は正直なところお姫様に興味は無い。オーナーの仇討ちをやる 義理も無い。が、あの化け物をほっとくつもりは更に無い。……あい つは、2万の仕事を流してくれたんだからな、それなりに楽しませて 貰うさ。ああ、アシュレイ。俺の背中はともかくも、帰り道を間違っ て迷子になんかなるなよ、気をつけろよ」 アシュレイは頷く。 「そういうわけだから。お姫様のエスコート役が必要かと思うんだが?」 それからウェイターを呼び、ラスティ・ネイルを作って貰う。……初め てこの店を訪れた時に頼んだものだ。半分飲んだところで止め、テーブル に置く。 「さて、片付けようぜ。こいつの氷が溶ける前に、さ」[2002/11/16 09:22:36]
>>>[ おれは何もかも奪い去る死神。宇宙を揺り動かすモノ。]<<< 運命神シュリ・クリシュナ - 無限の夜 - Presented by Stonehead. 【10】 =============================================================== 「ちょっと失礼」 アラヤはそれだけ言うと、秋霜の側を離れた。足早にアシュレイに歩み 寄る。 「これは茶番だ。あなたはそう思わないか? これ以上の犠牲を出したくない。もう誰にも死んで欲しくない。 傷ついて欲しくない。オーナーでさえ勝てなかった相手と戦うなんて 無謀すぎる。 飛鷹はあなたのために戦ってきた。だからあなたから言ってくれれば、 考え直すかもしれない。危険に見合う価値のものはもう十分に 手に入れたはずだ」 アシュレイは微笑み、アラヤに答えた。 「Mr。その任を決めるのは私ではないと思います。それは・・・ そうね、恐らくはMr.飛鷹の意志によるでしょう。知り合いの 女性の一言で終わらせてしまうほど、このビズは簡単なもので はないと思っています。 茶番であれば茶番になりにその終わりを決めなくてはならない と思いますが、如何?」 そして飛鷹に問いかけた。 「どうも、楽しんだようね、飛鷹。どうするの?終わりにする? ローランドも倒すような怪物と正面から戦う程、貴方がロマン チストとは思わないけれど、もし貴方が戦うのであれば、 そうね、貴方の背中ぐらいは私が守りましょう。」[2002/11/16 09:21:50]
むざむざと護るべき者を浚われて平気でいられる訳が無い。 ほんの一瞬だが、自制心を失った。抑えきれない衝動は殺意となって無意味に溢れる。 だが切っ先を向ける相手の一方は目の前に居らず、もう一方は己であったが為に それに気付いた者は少ないだろう。 周囲が動き出した時には、殺気は微塵も残っていなかった。 怒りも憎しみも後悔も自己嫌悪も今は要らない。 そんなものに浸っていては誰かを護ることなどできはしないのだから。 「どうする、陰陽師の旦那?」 ふと見れば飛鷹が私に声をかけていた。 少々ばつの悪い顔から感慨深い表情に変わり、(恐らくは無意味に抜いていた) 銃を懐に納めたときには腹を据えたのだろう。正面を見据えて彼は言った。 「俺は正直なところお姫様に興味は無い。オーナーの仇討ちをやる義理も無い。 が、あの化け物をほっとくつもりは更に無い。……あいつは、2万の仕事を 流してくれたんだからな、それなりに楽しませて貰うさ。 ああ、アシュレイ。俺の背中はともかくも、帰り道を間違って迷子になんか なるなよ、気をつけろよ そういうわけだから。お姫様のエスコート役が必要かと思うんだが?」 どうでもいいことだが……この青年、企業上がりの割に感情が分かり易い。 気楽な酒の席だったなら少々からかっていたかもしれん。 さらにどうでもいいが、私は王子様でも騎士殿でもない魔法使いだから、 彼女がお姫様だというなら『浚いに行く』と言った方がいいのか? ……ふむ、それもいい。 「さて、片付けようぜ。こいつの氷が溶ける前に、さ」 「助力、感謝する。 ただ『陰陽師の旦那』はやめてくれ。秋霜でいい」 礼を述べながら、私は策を練り始めた。 さてはて、どうやって浚い返してやったものか……。[2002/10/26 01:03:34]
目の前で主人が消失したなら。 自らの力の無さを嘆くべきなのだろうか。怒りに震えながら奪還と復讐を誓う べきなのだろうか。なんとも、そんな事さえもわからなくなる。一年間に起き る筈の出来事が、一晩のうちに全て起こってしまったかのようで、……意識と 感覚の一部分が麻痺しているらしい。その証拠に、俺は無意識のうちに、腋の ホルスターから拳銃を引き抜いていた。 「どうする、陰陽師の旦那?」 この店では御法度の銃器を抜いてしまった事に、些かの気まずさと自嘲とを覚 えながら、俺はアネキ・ユリの護衛に声をかけた。 ガキの頃からの付き合いだ。長いんだか短いんだか知れないが、コイツとのパ ーティも今夜が最後になるのかも知れない。通り名の由来ともなったウォーホ ークを軽く撫で、再びホルスターに納める。……柄じゃ無ぇな。 アラヤとアシュレイの会話、それに続く問い掛け。ふん、そうだな。俺がリア リストかと訊かれれば、そうとも言い難いがな。 「俺は正直なところお姫様に興味は無い。オーナーの仇討ちをやる義理も無 い。が、あの化け物をほっとくつもりは更に無い。……あいつは、2万の仕事 を流してくれたんだからな、それなりに楽しませて貰うさ。 ああ、アシュレイ。俺の背中はともかくも、帰り道を間違って迷子になんかな るなよ、気をつけろよ」 悪いな、アラヤ。結局思いつかなかった、他の手段。悔しいが、俺の頭は並以 下だったって事か。正面からってのは、能が無くて好きじゃないんだが、…… だからといって爆弾仕掛けるわけにもいかんしな。 「そういうわけだから。お姫様のエスコート役が必要かと思うんだが?」 2人のランナーとシアワセ兄妹(いや、こいつらについて来いとは言わない。 社交辞令だ)を見やり、階上を指差す。 それからウェイターを呼び、ラスティ・ネイルを作って貰う。……初めてこの 店を訪れた時に頼んだものだ。半分飲んだところで止め、テーブルに置く。 「さて、片付けようぜ。こいつの氷が溶ける前に、さ」[2002/10/20 18:58:31]
私は微笑み、アラヤに言った。 「Mr。その任を決めるのは私ではないと思います。それは・・・ そうね、恐らくはMr.飛鷹の意志によるでしょう。知り合いの 女性の一言で終わらせてしまうほど、このビズは簡単なもので はないと思っています。 茶番であれば茶番になりにその終わりを決めなくてはならない と思いますが、如何?」 そうか。ローランドは逝ったのか。私はそして飛鷹に言った。 「どうも、楽しんだようね、飛鷹。どうするの?終わりにする? ローランドも倒すような怪物と正面から戦う程、貴方がロマン チストとは思わないけれど、もし貴方が戦うのであれば、 そうね、貴方の背中ぐらいは私が守りましょう。」 剣は所詮どこまでいっても剣に過ぎない。もし、その目的を忘れれば 後は朽ちて錆びていくしかない。剣は最後まで剣である事を望むので あれば、勝ち続けるか、燃え尽きるまで戦い続けるしかないのだ。 私は昔仲間から言われた、そんな言葉をぼんやりと思い出していた。[2002/10/20 00:47:06]
[2002/10/19 12:59:59]「ちょっと失礼」 アラヤはそれだけ言うと、秋霜の側を離れた。 状況の急転は、礼儀作法を守るだけの余裕をアラヤから奪っていた。 足早に飛鷹の仲間と思われる女性に歩み寄る。 あいさつもそこそこに彼は切り出した。 「これは茶番だ。あなたはそう思わないか? これ以上の犠牲を出したくない。もう誰にも死んで欲しくない。 傷ついて欲しくない。オーナーでさえ勝てなかった相手と戦うなんて 無謀すぎる。 飛鷹はあなたのために戦ってきた。だからあなたから言ってくれれば、 考え直すかもしれない。危険に見合う価値のものはもう十分に 手に入れたはずだ」 アラヤは感情を失ってしまったのではない。 むしろ恐かった。感情に流されて判断を誤ってしまうことが。 彼の本質はシャドウランナーに向いていないのかもしれない。
「余興は終わったようだな、道化師」 その声はアネキユリから発せられた。男とも女ともわからぬ声。 「このオモチャは私のモノだ。もうしばらくは遊ばせてもらわねばならぬ。 幕引きももう直ぐだ。そこまで、このオモチャは私が預からせてもらおう。」 その声が終わると同時に、アネキユリの姿が秋霜の腕の中から消えていく。 「”名付け手(ネームギバー)”達よ。クリスタルヴィジョンの最上階で待って いる。待っているぞ。おまえ達との遊戯を楽しみにしている。」 そういってアネキユリは微笑んだ。以前とまるで変わらぬ笑みを浮かべ。 そして彼女の姿は消えた。[2002/10/09 23:48:23]
サダト・シアワセはリストホンで話を始める。 「やぁ、アネキ。久しぶりだね。君も聞いていたろう?君の可愛い ご息女について話だよ。そうだ。君のご息女をだね、我が社で引き 取りたいのだよ。そのために是非とも君の愛の鞭をだね、外しても らいたい。 見返り?ふむ。そうだね、君も知っているアレについての話はどう だろうね?そう。アレだ。いよいよアレが日本において本格的な 侵攻を開始する。 おかげで、ここクリスタルヴィジョンはなかなかに刺激的な場所 になっているよ。 どうだね?良い話だと思うのだが。更にオマケとして、現在我が社 は貴社に対して行っているシャドウランの2/3を一時的に停止し よう。これでレンラクの下半期業績も一息付けると思うのだがね。 ちなみにNOであれば、わかっていると思うが、既に準備している 我が社のチームと、数十のシャドウランチーム、更には神明院との 協力部隊が君を襲う。君がその程度で死なないのは承知しているが、 さぞかし君の業務は滞るだろうね。そしてその間に他社が君と僕の マーケットを奪うのだ。 まさか、可愛いご息女一人に対してそこまでのデメリットを感受す る程君が愛息家だとは思っていないのだが。 うん。よし。では商談成立だ、本日この時間からアネキユリ嬢は 我が社の協力社員としてシアワセの本社勤務、このサダトシアワセ 直属の秘書課勤務にさせてもらおう。 コーポレイトセクレタリーとしてね。そして彼女の住所も我が社 の方で用意させてもらう。ちなみに、彼女に”枝(追跡調査)”や 彼女を通じてダブルスパイを行う事は不可能だと言っておこう。 ここには非常に優秀なランナーがいてね。彼らの協力で、ユリ嬢 についている全ての余計なお土産は排除させてもらう。先ほど君 の”愛の鞭(コーテクスボム)”を使用不能にしたのもその内の一 人だ。在野にも優秀な人材はまだまだ多いということさ。危険な ね。 では、後ほど。この面白い冒険について語ってあげよう。ご家族 によろしく。」 そして皆を見回し笑みを浮かべた。 「というわけで、ユリ嬢は私の娘になりました!ヒトミ(5歳の娘) が喜ぶなぁ!!」 「違うでしょっ!」 後ろからソウコの盛大な突っ込みが入った。[2002/10/09 23:46:39]
倒れた女性−アネキユリ−の側に在る秋霜の姿はアラヤに切れ味の鋭い一振 の刀剣を連想させた。精霊を通してこちらを見ていたのはおそらくこの陰陽 師・秋霜。アネキユリは現在目を閉じて眠っているように見れる。 「どうかされましたか? 私はここのオーナーに雇われた者ですが、 お困りでしたら何なりと申し付けてください」 秋霜はそのアラヤの挨拶に返答する。 「困ったこと……か。 そうだな、チェックメイトされた状況を覆す手段を探しているのだが、 君ならどうするかね?」 「あなたのキングは生き長らえたいと思っているのでしょうか? キング自身に生きる意志があるかどうか、が重要ではないでしょうか」 無言の秋霜に対しアラヤは言葉を続ける。 「チェックメイトを覆したい、といいましたね。 どのレベルまでですか? 当面の敵はホラーですが、キングの敵はそれだけではないでしょう。 生きようという強い意志に欠ける心を支えなければ、 本当の意味で問題を解決したとは言えない。 この状況を切り抜けても、また危機に陥ってしまうかもしれません」 「あなたがどこまでキングに関わろうとするかで、 話はだいぶ変わってきます。 だが、あなたが何度も危険を冒してきたのは知っているし、 だからこそ協力したい。 私はアラヤ。知っての通り、メイジです」[2002/10/09 23:45:49]
アシュレイはサダト・シアワセに対して言った。近くにはマイルズレーニ ヤが無言のまま立っている。 「サダト。申し訳ないのだけれども、ここにいる女性、アネキ・ユリを 捉えている枷、つまりは脳皮質爆弾を、アネキに言って、外してもら えないかしら?」 「もし外してもらえるのであれば・・・そうね。貴方に対して何らかの 報償を支払いましょう。私自身に関しての。貴方の喜びそうな。」 サダト・シアワセはその言葉に対して軽く口笛を鳴らす。 「それは素晴らしいね。まさか君のような魅力的な女性からそんな お願いをされるとは。まったく最近の僕の女性運はまったくもって エキゾチックかつスクランブルを足して3乗にしてマイナス 4万な展開だよ。」 「兄さん。それは日本語になっていません。」 ソウコ・シアワセが指摘する。 「妹よ、そんな事はささいな事だよ。日本語がプーアであろうと僕の頭 がプーアであろうと、女性運の上昇は大変好ましいことだ。」 後者については些細なことではぜんぜんない、とソウコは思ったがそれを 指摘するのは止めておいた。 そこに飛鷹の冷静な一言が入った。 「但し、彼女の先約は俺だ。割り込みをかけるのなら、相応の誠意を、本気で 見せて頂きたい、ミスター・シアワセ」 その声にサダトは面白そうに飛鷹を見直す。 「申し遅れた。俺は飛鷹。依頼を受け、ある『モノ』を捜していた男だ」 その時、アシュレイも飛鷹を見つめたが、無言だった。 「ほう。ほうほうほう。なるほど!お姫様には王子様が付いているという わけだね。いやこの場合は騎士といった方が確かかな?・・・違うな、 サムライか、なるほどね!お姫様には東洋のサムライが護衛として 付いているわけだ。・・・そして今はその『アレ』の主となっているわけ だね、Mr.飛鷹」 サダトはそう嬉しそうに笑うと、懐からリストホンを取り出した。[2002/10/09 23:44:48]
>>>[ その子供は臨終の間際に言った。「僕は、皆と同じように生きて きた。だから同じところにいきたい。同じように死にたい。」]<<< - 無限の夜 - Presented by Stonehead. 【9】 =============================================================== さて、僕のお伽話はここで終わる。?楽しかったな? 天地開闢より陰陽師(orメイジorシャーマン)と怨霊が戦い続けている、 よりは少しはヒネってあるように思うんだけれど、まぁ同じようなヒネり の無いありふれた話ではある。 まぁ怨霊は所詮アジア圏に生息するローカルなゴーストに過ぎない、 だから彼らももう少し国際社会で揉まれた方が良いと僕は思うね。怨霊だ けにエンリョしてしてしまうのかもしれないね? さて、どうだい?この後二人だけでベッドの上で二人だけのお伽噺を創る というのは? え、なに?後ろで僕達を見ている怖い少女がいるからまた今度? 行ってしまった。しかしこの冷ややかなこの気配、僕の背後にあるこの感触。 僕はよく知っている。そしてよく知っている気配から放たれた言葉は、愛の 睦言ではなくて。 「兄さん。お話があります。」 オウ。 シアワーセ。[2002/10/09 23:43:30]
[2002/08/31 02:06:27]「困ったこと……か。 そうだな、チェックメイトされた状況を覆す手段を探しているのだが、 君ならどうするかね?」 アラヤは 精巧な日本人形を思わせる無機的な印象の女性に目を落とす。 自分のために生きる者、会社のために生きる者、 多くの人間の生き様と死に様を見てきた。 だがこの人は違う、とアラヤは思う。 「あなたのキングは生き長らえたいと思っているのでしょうか? キング自身に生きる意志があるかどうか、が重要ではないでしょうか」 オーナーからプロファイルを渡された時も、初めて店内で見た時も、 この女性から生きる意志を感じなかった。 彼女は待っていたように見えた。自分を解放してくれる何かを。 「チェックメイトを覆したい、といいましたね。 どのレベルまでですか? 当面の敵はホラーですが、キングの敵はそれだけではないでしょう。 生きようという強い意志に欠ける心を支えなければ、 本当の意味で問題を解決したとは言えない。 この状況を切り抜けても、また危機に陥ってしまうかもしれません」 アラヤは、死に期待しているような人間を守りたいとは思わない。 だが、そんな人間を必死で守ろうとしてきた秋霜をおかしいとは思わない。 誰かの言葉ではないが、 『みんなちがって、みんないい』 ということかもしれない。 社を辞めた今はそう思うことができる。 あるいはこれも彼の影響だろうか、 アラヤの頭にあの飄々とした青年の姿が一瞬浮かぶ。 「あなたがどこまでキングに関わろうとするかで、 話はだいぶ変わってきます。 だが、あなたが何度も危険を冒してきたのは知っているし、 だからこそ協力したい。 私はアラヤ。知っての通り、メイジです」 ホラー。人類を脅かし続ける強大な敵。 一人の女を守るために、自分のスタイルを貫くために、 彼らはこれに対抗するのだろうか。それとも…
あれほど迷ったのが嘘のようだ。実際嘘だったのかも知れない、時間の流れ方 さえ違っていたような気がする。 (アラヤはどう感じたのだろう?) 訊いてみたくは思ったが、既に彼は傍を離れ、アネキ・ユリの護衛を務めてい た陰陽師と「楽しげな」会話を始めた。魔法使い同士、わかる部分でもあるの だろうか。……なんだか、昔見たような場面だ。もっとも、その時の片割れは 俺自身だったような気はするが。 そちらへは軽く視線を流すに留め、俺はシアワセ兄を口説きにかかったアシュ レイに近付いた。 「もし外してもらえるのであれば・・・そうね。貴方に対して何らかの 報償を支払いましょう。私自身に関しての。貴方の喜びそうな。」 ……oioi。 しょっぱなからそれか? 後ろのソウコはどうするよ? 「但し、彼女の先約は俺だ。割り込みをかけるのなら、相応の誠意を、本気で 見せて頂きたい、ミスター・シアワセ」 そうさ。 蟲の親玉、あんたもだ。 彼女にちょっかいをかけるつもりなら、相応の報いを受けて貰う。 全世界がどうこう言う問題じゃない。……そんなのは、くだらない事だ。 「申し遅れた。俺は飛鷹。依頼を受け、ある『モノ』を捜していた男だ」 わかる奴にはわかるだろ。[2002/08/25 19:43:27]
頭の片隅に引っかかっていた名前。随分昔に見た書物に記されていた。 恐怖の代名詞――いや、そのものか。 ホラー。そう称される怪物。 また随分と古い妖が出てきたものだ。 こうなると用意していた切り札も心許ない。 護りきれるか……? 「どうかされましたか? 私はここのオーナーに雇われた者ですが、 お困りでしたら何なりと申し付けてください」 声をかけられて我に返る。……アラヤか。 それに……飛鷹の姿もある。 式神を消されて、見失っていた彼らがここに来るとは……。どうやら 縁があるようだな。 しかし、私に式神で監視されていたことに気付いているはずの彼が、 敵とも知れない私に接触してくるということは、奴に対抗する力を 集めているということか。 だが……見ているな。 気配すら掴めないが間違いない。 脳皮質爆弾はアシュレイのお陰で何とかなるが、ユリの命は未だ奴の 掌の上ということに変わりはない。 「困ったこと……か。 そうだな、チェックメイトされた状況を覆す手段を探しているのだが、 君ならどうするかね?」 残念ながら、私は一つしか思いつけなかった。 即ち盤をひっくり返す。[2002/08/13 00:44:17]
[2002/08/10 16:19:40]倒れた女性の側に在る秋霜の姿は アラヤに切れ味の鋭い一振の刀剣を連想させた。 精霊を通してこちらを見ていたのはおそらくこの陰陽師;秋霜。 アラヤは白々しくあいさつをした。 「どうかされましたか? 私はここのオーナーに雇われた者ですが、 お困りでしたら何なりと申し付けてください」 飛鷹が竜の涙を使う前に奴を倒さなければならない、 そのためにはホラーに対抗する”剣”がいる。 アラヤは静かにそう考えていた。
私は言った。 「サダト。申し訳ないのだけれども、ここにいる女性、アネキ・ユリを 捉えている枷、つまりは脳皮質爆弾を、アネキに言って、外してもら えないかしら?」 「もし外してもらえるのであれば・・・そうね。貴方に対して何らかの 報償を支払いましょう。私自身に関しての。貴方の喜びそうな。」 そういうと、私は微笑んだ。[2002/08/10 03:20:21]
そこに飛鷹とアラヤ達が合流した。さらにはもう一組の合流があった。 「やぁ皆さん、お揃いで。おや、ユリ嬢どうしました?ご気分が悪いようだが。 持病のしゃくでもでましたか。それならば私が良い富山の昆布茶を持ってい ます。どうです駆けつけ一杯?・・・なんかそんな状態ではなさそうです な。」 その後ろには怒りを抑えた感のソウコシアワセが控えている。サダト・シアワセ、 ソウコ・シアワセ。シアワセ兄妹。 ここにいるのは以下の8人。 シアワセ社重役 サダト・シアワセ シアワセ社重役 ソウコ・シアワセ フチ・インダストリアル・セキュリテイ重役 マイルズ・レーニヤ レンラク社エージェント ユリ・アネキ ストリートサムライ 飛鷹 オンミョウメイジ 秋霜 エルフデッカー アシュレイ ストリートメイジ アラヤ その姿を見、ベルゼバブは一人思索に耽る。クリスタルヴィジョンの何処かにおい て。 かくて役者は揃った。[2002/08/02 01:47:31]
アシュレイは秋霜のその行動に驚いた。それだけの価値をこの女性に認めていると いうことなのか。 「顔をお上げなさいな、東洋の魔術師。わかりました。 ユリの爆弾に関して は私が対処します。・・・協力してくれるわね、マイルズ?」 アシュレイは、一瞬にしてユリの脳皮質爆弾の解除を行った。全ては数秒で終わっ た。しかし、アシュレイはその一瞬何らかの違和感を感じた。何か、おぞましい何 かに触れたような。まさか。電子的に結合した瞬間、ユリを通じて”敵”が私に浸 食したのか?それも考えられない事ではない。しかし今は・・・私を見るマイルズ に微笑む。 「さて、マイルズ。このユリを助けるために、ある男に対してお願いをしにいきま しょう。サダトシアワセに対して。」 そして秋霜に対して答える。 「恐らく、彼女の脳皮質爆弾の爆破命令は停止されました。そしてこのクリスタル ヴィジョンに居る限り、もう二度と爆破命令が実施される事はないでしょう。私が この場で出来るのはこれくらいです。後は、サダトにトップ会談をしてもらうしか ありません。」 マイルズはその言葉を聴いて肩を竦める。 「君も酔狂だな、アシュレイ。・・・しかし興味深くはある。優秀なオンミョウメイ ジの依頼でもある。是非とも協力しよう。」 そうして彼は笑った。無機物な仮面のような笑いだった。[2002/08/02 01:46:39]
少女ーバタカップ−は飛鷹とアラヤの目の前で完全に消滅した。 「・・・」 右手にナイフ、左手に弾丸。飛鷹はナイフをアラヤに差し出す。 「俺には無用の長物だ。使ってみてくれ」 それから、ホルスターからウォーホークを取り出し、弾丸を入れ替えた……初弾は 手を触れずに、2発目に件の魔弾を装填する。 「性質の良過ぎる冗談だよな。これ一発でケリがつくんだってさ」 万一しくじったら……ここの面子で心中か? イヤだな、それ。 「ま、良いさ、行こうぜ。お姫様たちが待ってる」 アラヤはその飛鷹の行動に納得しかねた。アラヤは尋ねる。 「まさか使う気なのか、飛鷹?」 そこに驚愕の響きを感じ、飛鷹もまた驚いた。アラヤのように感情を完璧に制御 出来る(良くも悪くも、優秀な企業戦士の証だと思っている)人間が、内面を露 にするとは。 「『まさか』ってどういう事だ?」 だから逆に問い返した。 「彼女の言葉を鵜呑みにしたわけじゃない。だが、限られた時間の中で、これ 以上の手駒が得られるとも思えない」 アシュレイは優れたデッカーだし、目の前のアラヤもまた、優秀な人物だ。ト ップ連中のボディガードについているランナーたちも、それに見合った腕の持 ち主だろう。……手前味噌になるが、この面子でチームを組めば(有り得ない 話だが)、結構な仕事をこなせるとも思う。 だが。 相手が悪過ぎる。ベルゼバブ。ホラー。世界の”敵”か。 「まぁ使わずに済むなら、それに越した事は無いさ。方法は一つだけだなんて 頭の悪い事は言いたくないし」 アラヤは無言だった。そして二人はその場を去り、皆の居る場所へ向かった。[2002/08/02 01:45:25]
=============================================================== >>>[ 「預言者よ。」小鳥は言った。「終わりの時が来ると我々は目も 耳も効かなくなるのです。」]<<<< - SHADOWRUN- 「無限の夜」 - 8 - Presented by Stonehead. =============================================================== 秋霜はベルゼバブがその場から完全に消え去るまで当たりに注意を払っていた。 彼は知った。あの怪物は、彼の知る”オンリョウ(怨霊)”とは別種の存在だと。 オンリョウであればその調伏は可能であり、最終的には巫女による鎮護が可能である。 しかしホラーには不可能だ。ホラー達に調伏はオンリョウのように高い効果をもたら さず、巫女が鎮護しようとすればホラーはまったくその行為を無視して巫女を喰らう に違いない。楽しみながら。 ホラーは、オンリョウのような個人思念の顕現ではない。別次元の存在。 気がつけば会談の場まで戻っていた。 目の前ではアシュレイに抱かれたユリが、激痛に身を捩っている。 だが、現状ではその苦しみを取り除くことは出来ない……。 「ユリは『脳皮質爆弾』を埋め込まれているらしい。 頼む! 何とかして、それを無力化してやってくれ。私はその術を持たない……」 気安く護衛を引き受けておきながら今この瞬間に何もすることが出来ない。 自らの不甲斐なさに歯噛みしながら、秋霜はマイルズとアシュレイに頭を下げた。[2002/08/02 01:43:30]
「まさか使う気なのか、飛鷹?」 アラヤの声。そこに驚愕の響きを感じ、俺もまた驚いた。彼のように感情を完 璧に制御出来る(良くも悪くも、優秀な企業戦士の証だと俺は思っている)人 間が、内面を露にするとは。 「『まさか』ってどういう事だ?」 俺は逆に問い返した。 「彼女の言葉を鵜呑みにしたわけじゃない。だが、限られた時間の中で、これ 以上の手駒が得られるとも思えない」 アシュレイは優れたデッカーだし、目の前のアラヤもまた、優秀な人物だ。ト ップ連中のボディガードについているランナーたちも、それに見合った腕の持 ち主だろう。……手前味噌になるが、この面子でチームを組めば(有り得ない 話だが)、結構な仕事をこなせるとも思う。 だが。 相手が悪過ぎる。 「まぁ使わずに済むなら、それに越した事は無いさ。方法は一つだけだなんて 頭の悪い事は言いたくないし」 もっとも、時間が許せば、だ。 アシュレイ。 あの不吉な予言を、成就させたりはしない。 後悔は、一度だけで充分だ。[2002/07/15 22:15:14]
[2002/07/13 20:05:26]「俺には無用の長物だ。使ってみてくれ」 そういって飛鷹が渡したのは、精緻な細工を施した短剣だった。 触れた瞬間、アラヤはわかった。これが魔術的な迷宮を操る鍵であることを。 同時に疑問が湧き起こった。 「オーナーはこれを使って、 誰かを迷わせたり、店内を自由に移動していたようだ。 ということは俺達もオーナーに迷わされていた事になる。 だが何のために? 自分の手駒を妨害してどんな利益がある?」 疑問は尽きない。そして答える者はいない。 飛鷹を見ると、彼はリボルバーに件の弾丸を装填したところだった。 「まさか使う気なのか、飛鷹?」
「ユリは『脳皮質爆弾』を埋め込まれているらしい。 頼む! 何とかして、それを無力化してやってくれ。 私はその術を持たない……」 まさか、誇り高い魔術師が、このような真似をするとは。私には驚き だった。それだけの価値をこの女性に認めているということなのか。 ・・・少し羨ましかった。 「顔をお上げなさいな、東洋の魔術師。わかりました。 ユリの爆弾に関しては私が対処します。・・・協力してくれる わね、マイルズ?」 そういうと私はマイルズに視線を投げかけ、同時に私自身に内蔵され ているサイバーデッキを起動した。瞬間。私はマトリクスに存在する 自分を確認する。私はOTAKU(デッキ無しでマトリクスに入れる特殊能 力者)ではない。しかし、その真似事であるならば可能であり、私は 全能力をかけて、このユリの爆弾を解体しなくてはならない。脳皮質 爆弾か。 手段としてはレンラクの本社へ潜入し、彼女への発信信号を停止する 方法があるが、それは私にとってすら無謀に思えた。だから次善の策 を狙う。時間稼ぎかもしれないが、この時間は貴重だ。 私はクリスタルヴィジョンのマトリクスへ潜入し、ホストを把握。 そのホストへ命じた。 『この瞬間から有線無線を問わず、送信される信号に対して最大限の ジャミングをかけよ。』 そして同時に彼女の首筋にあるデータジャックと私のデータジャック を有線で結ぶ。ここが勝負。 私は脳皮質爆弾の操作を試みる。 『爆破命令解除。現在、爆破命令は解除された。爆発命令は停止され る。』 全ては数秒で終わった。サムライ程ではないにせよ、かなりの早業。 しかし結果はわからない。だが、上手くいけばこれで彼女の爆弾は一 時的にせよ停止する。息を吐く。有線を解除する。 後は・・・、私を見るマイルズに微笑む。 「さて、マイルズ。このユリを助けるために、ある男に対してお願い をしにいきましょう。サダトシアワセに対して。」 そして 「恐らく、彼女の脳皮質爆弾の爆破命令は停止されました。そして このクリスタルヴィジョンに居る限り、もう二度と爆破命令が 実施される事はないでしょう。私がこの場で出来るのはこれくら いです。後は、サダトにトップ会談をしてもらうしかありません。」 と秋霜に伝えた。腕の中にユリが僅かにふるえたような気がした。[2002/07/12 01:25:29]
「あなた達は生き残りたい?それともアレに勝ちたい?」 少女……何故気付かなかった。かつての主人。傍系とはいえ、俺はいちおうは ヤマテツに名を連ねる企業の出身者だった筈……最低の記憶力だ。敢えて思い 出さなかったのかも知れないと、ぼんやりと思う。忘れられるものなら忘れて しまいたい、過去の亡霊だ。 軽い眩暈を覚えながら、少女〈バタカップ〉の言葉に聞き入る。 「あなたにこれをあげましょう。貴方の命と引き換えに唯一つの望みを適える 奇跡を。」 奇跡なんて、信じた事は無かった。 あったのは、常に現実。 アラヤ。彼女の言葉を聞いているか? 「竜の涙を。」 出来過ぎだ、或いは悪い夢だ。俺は更にぼんやりと思った。 一瞬のうちに姿を消した〈バタカップ〉。 掌に残ったのは重い弾丸。 「……」 右手にナイフ、左手に弾丸。 ……取り敢えず手に入れた順番に見てみる事にする。オーナーが持っていたナ イフは、何らかの魔術が施されているらしかった。自分にも扱えそうな感じだ ったが、それよりは、(オーナーには悪いが)慣れた銃器の方がわかるような 気がした。 アラヤに差し出す。 「俺には無用の長物だ。使ってみてくれ」 それから、ホルスターからウォーホークを取り出し、弾丸を入れ替えた……初 弾は手を触れずに、2発目に件の魔弾を装填する。手に馴染んだ筈のグリップ が、今日に限って妙によそよそしい。……ヒドイ話だ。 拳銃を再び腋のホルスターに戻し、笑う。笑わずにいられない。 「性質の良過ぎる冗談だよな。これ一発でケリがつくんだってさ」 万一しくじったら……ここの面子で心中か? イヤだな、それ。 「ま、良いさ、行こうぜ。お姫様たちが待ってる」[2002/07/09 21:40:29]
盗聴器を通してユリが痛苦に喘ぐのを聞きながらも、私は相手から目を逸らさなかった。 ……いや、逸らせなかった。 目を離すのは危険だと、勘が告げていた。 哄笑を上げる“怪物”が完全にその姿を消し、気配が消え去るまで身動き一つする事はなかった。 ここまで得体の知れない相手とは、対峙するだけで精神をすり減らすものらしい。 溜息を吐きながら冷や汗を拭う。 しかし……あまりの忌々しさに、少々頭が痛い。 ただでさえ厄介極まりない奴の相手をしなければならないというのに、 まったくレンラクも面倒な真似をしてくれる。これだから企業って奴は……。 しかし今は恨み言を連ねている場合ではない。 出来ることから片づけるしかない。 まずはユリの所へ向かう。 事が魔術であれば対処する術はある。だが『脳皮質爆弾』は完全に専門外だ。 どうすればいいのか……妙案は浮かんでこない。 だが『爆弾』を無力化しなくては“怪物”に手出しは出来ない。 むしろ、ユリの身の安全のためには“怪物”を護らなければならない。 ……気がつけば会談の場まで戻っていた。 目の前ではアシュレイに抱かれたユリが、激痛に身を捩っている。 だが、現状ではその苦しみを取り除くことは出来ない……。 「ユリは『脳皮質爆弾』を埋め込まれているらしい。 頼む! 何とかして、それを無力化してやってくれ。私はその術を持たない……」 気安く護衛を引き受けておきながら今この瞬間に何もすることが出来ない。 自らの不甲斐なさに歯噛みしながら、私はマイルズとアシュレイに頭を下げた。[2002/07/08 23:33:56]
もはや、飛鷹にもわかった。彼女の姿は急速に欠けて、消え失せよう としていた。そして、その欠けた姿で彼女は飛鷹の掌にある物を渡し、しっかりと握らせた。 「あなたにこれをあげましょう。貴方の命と引き換えに唯一つの望み を適える奇跡を。」 恐るべき速さで彼女の姿は虫食いのように掻き消えていく。そして消 えつつその姿で少女−バタカップ−は微笑んだ。 「竜の涙を。」 同時に彼女はその時点で完全に何者かによって掻き消された。 飛鷹の掌にはそれ−竜の涙と呼ばれる存在−があった。それは、 一個の精巧な弾丸だった。[2002/06/29 02:14:29]
「あの女、ユリ・アネキは既に我が手にある。残念だな、ヒューマン。 お前が私に触れようとすれば、その私の痛みをそのままあの女に送っ てやろう。さぞかし見物だろう。」 男の姿が急速に崩れていく。正確にはコートの中身が無くなって行く。 「ついでに面白いことを教えてやろう、ヒューマン。あの女の頭の中 には爆弾がある。”脳皮質爆弾”だったか?面白いオモチャだ。 そしてそれは既に爆破信号が送られていた。しかし私がそれを防い でいる。わかるか、ヒューマン?この意味が。 私を倒せば、あの女は死ぬ!真っ赤な薔薇が咲かせてな! ハハハハ!!!」 気配は消えた。[2002/06/29 02:12:45]
「っ!」 瞬間何が起こったのか誰にもわからなかった。わかっているのは、 ユリ・アネキが喉をかきむしり、苦痛にのたうちまわり、床に転げ ようとしている事だった。 彼女は苦痛の余り声も出ず、床に崩れ落ちようとしていた。 アシュレイは直ぐさま、その彼女を抱きかかえる。 突然だった。 わかっているのは突然会談の最中にユリが突然立ち上がり、喉を掻き むしり始めた、という事だった。一体何が起こったのかを正確に判断 できる者はいなかった。 しかしマイルズとソウコ・シアワセは同時に気付いた。恐らくはこち らを凝視しているコートの男が使った魔術なのだろうと。 ソウコはそれと知ると「後は頼んだわよ」と一声かけてまっしぐらに そこへ向かう。同時にマイルズ・レーニヤはその場に座り、突然の事 件の発生に対して少し動揺したようだったが、彼は短く命じた。 「アシュレイは私とサポートを。ユリ嬢の様子を観る。シロー、君は あの向こうにいる男を拘束しろ。手段は問わん。」[2002/06/29 02:11:13]
「随分熱心にあちらを見ているようだが彼らに何か用かね?」 さっき気付いた、会談を見つめ続ける男の前に秋霜は立っていた。 両手をコートのポケットに入れたままで話すのは不作法だが、気に することなく続ける。 「会談の参加者なら遠慮せずに行くといい。まだ始まったばかりだか らな。もし君が彼らの邪魔をするつもりならこのまま店を出ることを おすすめするよ」 左手に呪物、右手に拳銃を掴みながら秋霜はにこやかに告げた。 「私は今忙しい」 秋霜の男を聞き、コートの男、その性別は定かではないが、笑った。 「ク・ク・ク・・・。つくずくここは面白い。まだまだ楽しめる。 素晴らしいなヒューマン。お前の力を感じる。その力をな。”名付け 手(ネームギバー)”としては大した存在だ。この私と正面から対峙で きる存在は・・・久しぶりだ。」 男はそう言うと更に笑った。恐らく秋霜以外には聞こえないその笑い 声は人間のものではなかった。 「しかし、ここでヒューマン、お前と遊ぶ事はできない。主がそれを 許さない。取り敢えずヒューマン、こんなのはどうだ?」 途端会談側で異変が起こった。[2002/06/29 02:09:45]
そしてその少女はアラヤに言った。 「残念だけど、アレはさほど傷を受けていない。敢えて言うのであれ ば消耗したというところかな?アレは群体だから、フォーチュナリ ティによってある程度の数は減ったかもしれないけれど。」 アラヤは気付いた。この少女は恐らくはこのクリスタルヴィジョンの 結界を破って侵入してきた存在だ。そしてこのような荒業を行える存 在は恐らくは人間ではない。人間の姿をしているかもしれないが、彼 女は・・。アラヤは唐突に彼女の素性に気付いた。 バタカップ。 ヤマテツ筆頭株主。自由精霊。 そしてアラヤはその少女の姿が僅かながら虫食いのように欠け初めて いるのに気付いた。何者かによってアストラル体が喰われているのか。 そして飛鷹はフォーチュナリティの懐から一つの短剣を見つけた。 複雑な紋様の書かれる、古美術の一種なのかと思われた。[2002/06/29 02:08:20]
「言いたい事があるなら言葉で言ってくれ。俺は人生経験が浅いから、 表情から何かを読み取るのって苦手なんだ」 飛鷹が問うと、その少女は笑いながら、さも可笑しそうに笑いながら、 アラヤと飛鷹を見つめた。 「あなた達は生き残りたい?それとも」 少女は微笑みつつ言葉を続ける。 「アレに勝ちたい?」[2002/06/29 02:05:38]
=============================================================== >>>>>[ 私は強大なる時間(カーラ)である。ここに諸世界を帰滅させる ためその活動を開始した。例えお前達が何者であろうとも逃れ る事はできないであろう。 ]<<<<< - ヴァガバッド・ギーター - - SHADOWRUN- 「無限の夜」 - 7 - Presented by Stonehead. =============================================================== さて。”恐怖”との戦闘は長きに渡った。 だが、私は思う。果たしてこれは戦闘なのかと。100万匹の猫 が1万匹の鼠をいたぶる時、それは猫にとって戦闘なのだろうか。そ れは猫にとっては遊戯の一つに過ぎないのではないか。しかし鼠達に とってそれは死に物狂いの戦闘となるだろうとも私は思う。 そして幾つかの休閑期間を得て時代は既に第4世界に移っていた。 今から数千年前、恐らくは7000年〜8000年前の話だ。この時代が恐ら くは最も”恐怖”との戦闘において様々な展開が起こった時代だった。”地球の夜明け(EarthDawn)”とも言われる時代。 この時代、”恐怖”に対抗するため、”帝国”が生まれた。帝国は そもそもが恐怖に対しての抵抗組織として生まれたが、それが時が 時が経つに連れて第4世界全体を支配するための組織と変貌していっ たのは歴史の皮肉と言うべきか。この”帝国”は”セラ(ゼラン)” と呼ばれる。選民思想、奴隷制度を掲げ、覇権主義の元、ドラゴン とすら争った。 そして、この時代は”恐怖”に対して幾つかの対抗策が見つかった。 一つは常時死に等しい耐えがたい苦痛を自分に味合わせる事によっ て、”恐怖”の興味から逃れる、という方法だった。何故ならば ”恐怖”は自らが獲物に与える苦痛こそが喜びなのであり、既に苦 痛を味わっているものに対しては興味を失う。しかし、その苦痛は 生半可なものではなく、それこそ常時、24時間途切れる事のない 永遠の苦痛を味わっていなければならない。そしてそのような方法 により”恐怖”から逃れた者達が居た。 彼等は”血の妖精(ブラッドエルフ)”と呼ばれた。ま、SM好きな エルフ達と言えなくもない。個人の嗜好をどうこう言う趣味は私に は無いが。 そしてもう一つの対抗策は、中南米の国家、アズトランがその形を 引き継いでいる。命によって命を奪う方法。完全なる目的の成就と 引き換えに命を代償とする。 ”血の魔術(ブラッドマジック)”。 それは、そう呼ばれる。[2002/06/29 02:04:31]
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