When the Fortune rings out
天輪の音が響くとき

〜本格的にニューロエイジに踏み出す方のためのプレイングTips&コラム集〜

天輪の音が響くとき
はじめに】【プレイヤー編】【ルーラー編

 プレイングTips、まずはプレイヤー編について述べていくことにしましょう。


★キャストに魂を吹き込もう

 さて『トーキョーN◎VA』を遊ぶにはキャストが必要です。ルールブックを読んで作成すれば、ニューロイジには貴方の分身となって活動するキャストが完成します。場合によってはさらに経験点を消費したり、特定アクトのために経験点を底上げしたキャストを作ることもあるでしょう。
 さてキャストが完成しました。最大達成値は21を幾らか超えつつ30まで行かないように作れましたか? 能力値が一番高いスートに合わせて必殺のコンボは出せるようになっていますか? 戦闘中の手札回しは? コストパフォーマンス、最適化、その他諸々の言葉で言い表されるデータ的なチューンナップは適用されていますか? それは結構。
 しかしながら、数字からしか構成されていないキャストには、時として魂がこもっていないことがあります。ある程度考えられた設定や一定した演出は、貴方のキャストに命と魂を吹き込み、舞台の上で確かな存在感を与えることができます。いくつかの要素について見ていくことにしましょう。


★出身地


 N◎VA生まれのキャストにすれば<社会:N◎VA>のLvが増えるから‥‥という寂しい考え方もありますが、人種や出身地もキャラ立ての重要な要素になります。
 幸いにしてというべきか、ニューロエイジは我々日本人にとって非常に都合のいい世界です。赤道直下に移動した日本列島が世界で唯一の繁栄を勝ち得、我々に馴染み深い漢字やひらがなの名前を持った黄色人種のキャラクターが、漢字の名前の企業を闊歩し、日本刀を手に活躍することができます。サイバーパンクRPGを遊ぶ上での大きな障害だったアメリカン臭さはこれで解決したといえるでしょう。
(まぁ日本が中心の世界と言っても、アメリカ製のTRPGでは世界はアメリカを中心に回っているので、結局はどちらも同じなのですが。/笑)
 いかにもアメリカーンな人物は北米連合人で表現できますし、20世紀の冷戦時代は敵として描写されることも多かったロシア周辺の人々はひっくるめてロシア連邦人です。日本人の考える一般的なヨーロピアンな白人は大抵ヴィル・ヌーヴ人で説明がつきます。しかも更に都合がいいことにメインはドイツ・フランス・スペインなどの西欧で、馴染みの薄い東欧はあまり出てきません。隣人として馴染み深い中国人は夏王朝の人間で表現できますし、ホンコンHEAVENを除けば馴染みの薄い東南アジアはあまり出てきません。世界の三大宗教のひとつではあるものの、東の果てに住む我々にはどうにも馴染みの薄いイスラム文化圏の人々もほとんど出てきません。
 ニューロエイジで一番広く信仰されているということになっている真教もかつては、『重力が衰えるとき』など一連のサイバーパンク作品に敬意を表してキリスト教+イスラム教のように設定されていましたが、これもいつの間にやら黒歴史。
 現在は「漫画や小説などのエンターテイメント作品によく登場する、日本人の考えた表面上がキリスト教っぽい組織のキャラクター」を演じるのに適したものに変わっています。これで安心してシスターが作れますネ! とそれはともかく、日本人の色眼鏡から見た世界に適した世界設定になっているわけです。

 貴方が外国が好きだったり、外国を舞台にした漫画や小説が好きだったり、外国語に通じているなら、そうしたN◎VA外の場所を出身とするキャストも良いでしょう。ネーミングや台詞にもそれらしい要素を入れると面白いかもしれません。
 上の例では現実世界の国を上げましたが、ニューロエイジならさらに幅が広がります。貴方のキャストはいずこかの軌道コロニーで、冷たい死の空から傾いた地球を眺めながら生まれたのかもしれません。あるいは電脳空間の二進数の光の奔流こそを故郷とするAIなのかも知れません。
 あるいは更に妄想を激しくすると‥‥某大宇宙の人のように太陽系外だったり、未来や過去、災厄が起きる前の14世紀のトランシルバニアとか、天国や地獄や魔界やその他絶対に思いつきそうにないスゴイ場所が故郷なのかも知れません。N◎VA出身のキャストがありきたりだと思ったら、時には考えてみましょう。


★性別


 ニューロエイジでも人間には二つの性があり、BIOSの“チェンジセルフ”のように性別を手軽に変える方法はあるものの、概ね現実世界と同じようです。人間の形をしていないアヤカシやヒルコなどならオスやメスもいるし、中性や性別不明もいるでしょうし、中性的な魅力をもったマネキンもいるでしょう。Dのパーソナリティーズでは綴りをニューロタングから戻し忘れて Jender のままになっていますが、英語では Gender です。
 余談ですがツクダ版の1st時代からずっと、このゲームには女性のオフィシャルゲストが割合と多く存在します。音羽南海子や狼王エリスなどが鈴吹太郎氏の考える「強い女性」をテーマにデザインされていることもあるのでしょうか、その歴史はDetonationの時代となった今でも続いています。女性のキャストも同等に活躍できるようにという配慮でしょうか。(えっ、女性ゲスト人気も大事だからだって?)
 萌え美少女なんて存在すらできなさような『サイバーパンク2.0.2.0.』、日本語版でなく英語版のシアトルならなかなかにシビアな『シャドウラン』などに比べると、そういった面でもかなり華やいだ感があります。

 いずれにせよキャストには性別があります。男性か女性かによって、ものの捉え方や考え方も大きく違うでしょう。特に異性を演じる際など、ちょっと考えてみましょう。


★年齢


 さて貴方のキャストは何歳でしょうか? パーソナリティーズでは Aj のままになっていますがこれも Age ですね。ヒルコやアヤカシやAIやロボットやその他諸々の普通でない方々を別にすれば、ニューロエイジ世界でも人間は現実世界とだいたい同じように成長し、年老いて死んでいきます。クローニングや人格カードでの復活、脳だけの完全義体や様々な延命の手段があるので、老いや死の克服は進んでいそうです。老化への対抗手段も多そうなので、女性にはお得かもしれません。
車やバイクの免許、酒、煙草が許される年齢は謎ですが、高校や大学に行くのは概ね我々の世界と同じような年齢で良いようです。
 また軌道人などの特殊な人々の存在、実力主義のサイバーパンク世界なら若くても地位につけるだろうというある意味安直な考え方から、異様に若い重役など年齢が少ないほうにシフトしがちです。現実世界のTRPGプレイヤーに10〜20代が多く、ニューロエイジ世界の分身もだいたいそれに似た年齢となり、そうしたキャストに似合うゲスト陣を出そうとすると、自然とゲストの年齢層も近くなり若い人物が多くなるのも無理はないでしょう。萌え向上委員会の魔の手が迫る(嘘)今、これからその傾向はさらに強まるかもかもしれません‥‥
 また、外見年齢は外世界からの判断基準になります。バーブチカで戦闘訓練を受けたロシア人の14歳の女の子の殺し屋は、暗殺対象には警戒されずに接近することはできるでしょう。しかし“ヤロール”のようなバーや大人の店には入れなかったり、フリーで殺しの仕事を貰おうにもフィクサーに信用されなかったりして、別の意味で困るかも知れません。
 地上人を見下すハイランダーの悪役として10代の少年エグゼクが登場するのは割とよくありますが、何の変哲もない10代半ばの少年が偉そうなことを言いながら後方処理課で働いていたら、どんなに優秀だという設定があってもやっぱりおかしいかもしれません。(まあ、1st当時23歳のメルトダウンはジツは6年前の17歳で千早入社という設定になってはいるのですが‥‥笑) ゲームの中の架空世界とはいえ、やはり職業ごとに似合う年齢というのはあるのです。
 それに現実世界で既に社会に出て働いている方なら分かる通り、経験を積んで年を取っていることはそれ自体が力になります。企業社会で長く生きてきたベテランのエグゼクがそれなりに年を取っているのは至極もっともですし、年を経てまだ生きていること自体が力の証しになるような世界もあります。(犯罪結社や黒社会の大物なら、年を取っていても然るべきでしょう。)

 貴方のキャストは何歳で、それは貴方のキャストの立場や仕事にそぐう年齢でしょうか。もしそぐわない年齢だとしたら、外世界の人々はどんな反応を示すのでしょうか?
 そして、年齢が違えばものの考え方も違います。10代のキャストなら立派なことを言っても、どこかで年齢に相応しい若さや至らなさが出てしまうかも知れません。共演相手に年をとったキャストがいるなら対比を出すため、むしろそうするべきな場面もあるかもしれません。

 なおオフィシャルゲストの年齢などから推測したニューロエイジ世界の年数経過は、以下のようになっています。

1st→2nd: まったく変化なし
2nd→Revolution: 一律5年
Revolution→Revolution Revised: 3〜4年
RR→Detonation: 1〜2年

 実際に調べた多くの方が思ったでしょうが、オフィシャルゲストには年齢計算が明らかに合っていないと思われる人物がけっこういます。(笑)
 筆者も前の時代から生きているキャストをコンバートする際に混乱したり間違えた経験があるのでよく分かりますが、こういうのは何かのきっかけで間違えてそのままになったりしてしまうものです。ニューロエイジに謎はつきものと思ってあまり気にしないことにしましょう。


★名前


貴方のキャストはどんな名前を持っているのでしょう。漢字、ひらがな、カタカナ、それとも外国語のカタカナ表記でしょうか。外国語だったら何語系の名前でしょうか? AIだったら記号にしたり、オメガ・プロジェクトの超AIたちに習ってギリシャ文字にするのもニューロですね。数字のハンドルをつければ、最近だとテラウェアの“ナンバーズ”の一員かとみんな疑ってくれるでしょう。
 あまりに発音しにくい名前はやめたり、ブランクのプロファイルシートに書き直す時に困るほど漢字が難しいなら易しめにするのも手です。オンラインアクトで使うなら、IMEやATOKでいくら変換してもなかなか出てこないような難しい漢字の名前はやっぱり避けた方がいいかもしれません。

 そして、古来より「名は体を表す」と言うとおり、日本語の名前には与えるイメージがあります。
 分かりやすい例を挙げれば‥‥「冴子」と聞いたら何となく知的聡明で仕事がバリバリできそうな大人の女性を想像するでしょう。同じく「聖美」と聞いたら、眼鏡っ娘かどうかはともかく、何となく純粋で清らかな感じがするでしょう。
 日系人のキャストならその辺りを意識するのも手です。桜花道場に通っていたり巫女の血統だったり日系企業の偉い一族出身だったりするなら、やはり雅やかな和風の名前の方が似合います。姓に「千早」が付けば会長一族と血縁がありそうですし、なんとかして名前に「牙」の字を入れれば多くの人は牙一族の一人かと思います。「美門」「御門」「帝」「三門」などがつけば軌道関係かと疑うでしょう。昔の軍人あたりから古風な名前を貰ってくれば、N◎VA軍の士官らしくもなります。(公式シナリオなどで現在までに登場した、N◎VA軍ゲストの名前を思い返してみましょう。)
 同様に外国語の名前もやはりそれぞれが持つイメージや語源があります。それは我々日本人にはなかなか分からない事ですが、人名辞典やWeb上のリソースを漁ってみると、意外な意味が分かったりすることもあります。

 また、外国語の場合は名前やハンドルをそれらしくするのも手です。オフィシャルゲストで例を挙げれば‥‥マーダー・インク筆頭のクーゲルは元はドイツ系の移民でロサンゼルスのファミリーの処刑人だったという設定ですが、クーゲル (Kugel) はドイツ語の“弾丸”という意味です。夜の剣のクロイツェルと旅しているカイルのハンドルに振られたルビのハスタ (Hasta) は、何のことはない、イタリア語で“槍”という意味です。

 そして余談ですが、リプレイやプレイレポートを書こうなどと計画している場合、キャストの名前はより重要になります。互いに似通った名前はないほうがよく、漢字、カタカナ、ひらがななど別々で互いに区別しやすい名前の方が好ましいのです。キャスト以外の登場人物とも被らない方が望ましいですね。
 クーゲルたんが出てきたのでオフィシャルのリプレイ『ナイト・アフター・ナイト』を例に上げると、「クーゲル」「レイ」「重蔵」「ウィスパー」の4人は割合と区別しやすいですね。
 これが千早重工内に潜入中のイワサキのアンダーカヴァーチームが主人公で「山田」「田中」「加藤」「佐藤」の4人だったらどうでしょうか。あるいはキャストが全員AI縛りという勇気あるリプレイで「δ」「ξ」「σ」「ψ」の4体が主人公だったらどうでしょう? アルファに読み物としてプレゼントしたら喜びそうですが、人間が読むなら区別しずらく読みにくくなってしまいますね。そういうことです。


★誕生日

 誕生日もキャラ立ての要素になるよ‥‥というのではなく、ここはただのネタ話。
 ゲームシステム上まったく意味のないこの誕生日という項目、実はツクダ版1stからずっと存在し続けています。多くの無駄な部分がデトネイトされたN◎VA-Dでもまだ生き残っています。何か大いなる謎が隠されているのでしょうか?(笑)


★外見や格好


 プロファイルシートでは身長や体重、髪の色、目の色、肌の色となっている項目です。
 ニューロエイジ世界の人間も身長は我々とさして変わらないようです。未来世界なので日本人は欧米人より体格を小さめに‥‥というのも気にしなくて良いようですね。体重は千早雅之社長のようにサイバーウェアの分を想定して加えているゲストと加えていないゲストがいるので、ここは適当でいいのでしょう。女性キャストなら隠したい人もいるでしょうね。
 髪や目の色はサイバーウェアで簡単に変えられる時代なので、ここも様々でしょう。サイバーアイが一般的なら視力の低下には悩まされないはず‥‥ですが、昔は現役時代から粕川うらら女史、今は聖美・キーファー巡査やメモリ巡査が眼鏡ですから、好みで掛けている人もいるようです。(誰ですか、眼鏡っ娘は重要だと主張する人は?)

 他のサイバーパンク物RPGよりクロームとサイバーの匂いが薄まっているN◎VAでは、サイバーウェアを入れていても人間性やエッセンスの消失も外見上の変化もあまり気にせず、通常の人間と同じようにキャラクターを創造できます。
 あるいは牙王のようにサイバーウェアが外見に影響を及ぼしている人物を作ることもできます。昔の“仁王”やDの“ボーン・レーシング”を入れていればシルエットが人間と異なっているかもしれないし、“零式機械化兵”はともかく人間への完全な偽装を主目的としていない他の義体では、よく見ればどこかに人間と違うところがあるかもしれません。
<※八重垣>や<■二天一流>が持っている武器の数だけ効果を持っていた時代(八重垣は今もそうですが)には、サイバーアームで腕の数を3本以上に増やしたカブトやカタナも時折存在しました。(オフィシャルだとひっそりと復活したキョウ・オオサキがそうですね。)
 そもそも人間の形をしていない義体や、アヤカシの魔器の一族などもいるでしょう。

 あるいは格好や好む服装はどうでしょう。幸いなことにニューロエイジ世界には、防御性能がありつつオシャレも気にできるアウトフィッツが多数あります。さらに嬉しいことに相当品のルールもあって、かなり幅が広がります。
 古い話ですが、銃撃戦をやろうとするとみんなアーマージャケットや防弾コートを着て似たような格好になってしまう『シャドウラン』や『サイバーパンク2.0.2.0』に比べ、N◎VAが格段に進化しているところです。キャラクターの自由度と再現性は非常に高いでしょう。同人誌などでもビジュアル系のキャラクターはよく見かけますし、女性にも人気が出たゆえんですね。オフィシャルゲストにもビジュアル系は多いです。
 例えば悠羽とコンビで根強い人気を誇るイシュタルも、Dの時代ではどこかに健在なのでしょう。黒のゴスっぽい格好で決めたちょっとケバ目(?)の金髪のお姉さんが街を歩いていたら絵にはなりますが、あれも冷静に考えれば不思議な話です。ゴスロリじゃ動きにくそうだし銃器を取り扱う時に明らかに邪魔になります。それに狙撃した後で逃げる時に街中で目立ってしまわないでしょうか?(笑) N◎VAだからこそ存在できる、N◎VAらしいキャラクターの一人ですね。

 さて、貴方のキャストも一通り決めたらちょっとイメージしてみましょう。貴方のキャストはどんな外見なのでしょうか。大体の上背や外見の特徴、好む格好は? 絵心があるならイラストを描いたり、友達に描いてもらったりするのもよいでしょう。イメージソースがあるならその作品や写真を持ってきたり、元の作品を周りの参加者に事前に勧めておくのもよいでしょう。
 キャストは貴方の分身として運命の舞台に立つのです。その姿がイメージできるかどうかでアクト中の行動に関わってきます。

 そしてちょっとイメージが固まったら、彼/彼女が舞台に立っているところをちょっと想像してみましょう。妄想と言っても構いません。『トーキョーN◎VA』の舞台は多岐に渡ります。威容を誇る千早アーコロジーの何処かに隠された後方処理課のオフィス? ブラックハウンド機動捜査課のオペレータールーム? 空きチャンネルにあわせたホロTVの色をした空の下に広がるストリート? ウォーカー部隊が一時の休息を楽しむテンペランスや、瘴気煙る中に佇む聖天使城? 果ては空に聳えるAXYZの軌道エレベータの麓や氷に閉ざされたロシア、粉雪の舞うロンドン。貴方のキャストが似合うのはどんな舞台、どんな物語でしょうか? もしもあるシナリオで、アクトトレーラーやRLからのプレアクト情報で提示された舞台がそのキャストのイメージにぴったりだったら、その時こそ彼/彼女が舞台に上がるべき時なのかもしれません。
 2003年12月のゲーマーズ・フィールド誌にはこの場所設定の記事が載っています。(2004年2月に発売されるリプレイ集『カウンターグロウ』にはこの場所の実例が掲載される‥‥ことになっていましたが結局載りませんでしたね。) こうしたものを利用してイメージを深めるのもよいでしょう。


★ふだんは何を?

 何もしなくても金が入ってくるような一部の特権階級や人間の経済の外側にいるアヤカシ、その他なんだか分からないイキモノを除けば、大抵のキャストは学校に行っていたり、勤める企業や組織があったり、仕事を探してストリートを歩いていたり、悪と戦っていたり善と戦っていたり、依頼が来なくて事務所で暇そうにしていたり、ふだんの仕事や生活を持っています。
 残念ながら何もしなくても生きていけるほどニューロエイジ世界は(本当は)甘くはないはずです。ある程度は決めておきましょう。
 また、ふだんの生活を決めておくと、アーコロジーがぶっ壊れたり軌道衛星が迫ってきたりして世界の危機を救う合間の、キャストの日常が描かれるようなちょっとしたシーンでの演出が考えやすくなります。

 またキャスト作成の際にはオフィシャルゲストやオリジナル含め数人はコネを取るはずですが‥‥そのうちの誰かを仕事の斡旋元や仕事上の繋がりということにしておくのも有用です。
 ちなみに、そういう関係をアクトの前に説明しておくと、大抵のRLさんはオープニングの導入を貴方のキャストのコネ設定に合わせてうまくアレンジしてくれたりもします。


★装備


 特殊技能と並んで重要な装備の選択。ダメージの大きい武器は揃えましたか。アーマーは? アクションランク増加の手段はありますか? 売買判定で届かなさそうな高価な装備は常備化しておきましたか?
 ルール的な考慮が終わったら、個性化の面からも考えて見ましょう。装備もキャラ立ての要素になります。“斬魔刀”を持ち歩いていれば通行人から見てもカタナに見えますし、“クリスタル・シールド”や“マグネット・フォース”があればカブトだろうと安心される訳です。戦闘系キャストなら愛用の武器に、カゼやアラシなら愛機に名前をつけたりするのもよいでしょう。武器オプションの“超巨大武器”や“ワン・オブ・サウザンド”、旧業物級の強い武器、そして何より相当品のルールはそれらの助けになります。
 運命に介入する力のあるキャストでありサイバーパンカーたらんとするなら、シーンの背景に灰色の一個人として埋没してしまわない、オンリー・ワンであることには重大な意味があるのです。何か他人と違うことをしてみましょう。


★言葉


 人語を喋れないヒルコやアヤカシ、ネット上の通信プロトコルに準拠したデータ送信でしか意志を伝えられないAIなども存在しそうですが、ニューロエイジの住人のほとんどは我々と同じように会話で意志の疎通ができます。
 ニューロタングは一番最初はこう定義されていました。――N◎VAを代表とする、日本人及び日系人が勢力を持った人種混交地域における標準語のこと。単語を並べるだけである程度意味が通じる。日本語のほかに英米語、仏、独、中国、ハングル、アイヌなどの言語が混合。表記は漢字、カタカナ、ひらがな、アルファベットの混合で、発音重視の独特のスペリングを綴ると。
 これとオフィシャル刊行物での英語の綴りの変え方から、筆者はこう推測していました。現実世界の我々が日本語で会話してロールプレイしているものが、ニューロエイジのキャストたちはこのニューロタングというモノを話していることに変換される。その際“2秒”や“CD”など一連の単語を使ってそれっぽさを出し、英語に関してだけは洋楽ナンバーで時折見られるような綴りの変更( youU とか、LOVELUV とかのような)を行う、と。
 Detonationの時代ではまた設定が変わり、ニューロタングは世界中どこでも使われ、通じる言葉ということになっています。つまりアクト中どこの都市へ行っても言語が通じない問題はとりあえず解決しているということです。
 とはいってもクーゲルやキース・シュナイダーはリプレイで英語を喋っていますし、ハンドルや装備名でも外国語はよく使われています。現実世界の人類の数千年の歴史でも、言語や文化を巡った戦争は何度も行われてきました。災厄後の世界でも約12億人ほどの人類は生き残っているはずです。世界が傾いた後に12億人が話す言葉が統一されてしまったとはどうにも考えにくいでしょう。
(第一、どうせ統一するなら曖昧で奥が深い日本語よりも二十数種類のアルファベットしか使わない英語などにしたほうが遥かに合理的です。)
 きっとN◎VA外の都市ではニューロタングと母国語と両方使われていて、ゲーム上はあまり気にしなくてよいのでしょう。

 余談が長くなりましたが、台詞や口調もその人物を表す大事な要素です。一人称や二人称、語尾の終わり方や他のキャストへの呼び掛け方を考えておくのもよいことです。
 よく言う台詞や口癖を幾つか用意しておくのも役立ちます。独特の口調で喋る人物は印象に残るものです。例えば――商業リプレイですからかなり修正は入っているでしょうが――『ナイトブレイク』に登場する夜の剣クロイツェルはいつ喋っても彼であることがすぐ分かりますね。愉快愉快。
 我々TRPGプレイヤーはプロの俳優や声優ではないので演技には限界がありますが、全てが文字情報のオンラインアクトだとこれが楽です。夜の剣のような古語調や、ふだんの貴方と著しく違う口調で喋るキャスト、ふだんはやりにくい異性のキャストはオンラインでやると面白いかもしれません。
 何回かプレイしているうちに固まることもあるので事前に全て決める必要はないのですが、こうして、最終的にはその台詞を喋ればその人物だと回りが分かってくれるような感じに持っていければしめたものです。
 オフィシャルゲストで例を上げれば、「仕事ですから」「火星じゃ常識だぜ」「おいおい、マジですか!?」「その理由は三つあります」などなどでしょうか。

 また、人に読ませるためのオンラインアクトのログやリプレイを書こうと計画しているなら、口調や一人称の差も重要になります。名前の被りを避けるべきなのと同様、口調や一人称も互いに区別し易い方が望ましいのです。
 日本語で自分を言い表す言葉はざっと上げても「俺」「おれ」「オレ」「僕」「ぼく」「ボク」「私」「わたくし」「わたし」「ワタシ」「あたし」「アタシ」「あたい」「それがし」「拙者」「小生」「小職」「われ」「わらわ」「朕」「ミー」などなどあり、それぞれ受けるイメージが違います。まあN◎VAの住人でいきなり「朕」とか言われても困るわけですが、考えておくとよいでしょう。
 ところで英語だとみんな "I" になってしまいますね。英語圏のTRPGユーザーはオンラインセッションの時どうやって個性化を計っているのでしょうか?


★内面


 貴方のキャストは何を考え、何をよりどころにして生きているのでしょうか。信条はあるでしょうか? 生きる目的は?
 TRPGも、それ以外の映画や小説などストーリー全般に当てはまりますが、内面に何かを持っているキャラクターは立てやすく、共感も得やすくなります。特に内に何かを秘めたストイックなキャラクターはそうでしょう。
 それは金や欲望や、名誉や誇りや愛かもしれないし、他人には見えないものかもしれません。カタナだけど「不殺」とか凄腕のカブトワリだけど「女子供は殺さない」とかカブトで「目の前で傷ついた人は見過ごせない」などなど、いろいろあるでしょう。ちなみに、他のPLにはあまり言わずに行動だけで示した方がかえって際立ったりすることもあります。
 勿論ニューロエイジは全てが歪み、変わり果ててしまった世界ですからキャストの内面は様々でしょう。「面白けりゃいい」「金が全て」「千早が全て」「イワサキマンセー」「司政官様万歳」「眼鏡が全て」「冴子様が全て」などなどなど。い、いや、最後のはネタです。


★強さと弱さを持とう


 さて貴方のキャストは強いでしょうか。肉体戦闘では安定した達成値を叩き出してアクション/リアクションが可能でしょうか。精神戦をやられると一発で沈んだりしますか? アクションランク差で押し切られると弱かったり、社会戦対策ができていなかったりしますか?
 あるいは‥‥公式シナリオをやったせいで仕方なくゲストの女の子を家の居候にしていて、彼女を人質に取られると弱かったり‥‥あるいは二人で一緒のところを顔見知りのトーキーに見られるのが一番の恐怖だったり‥‥(*/∇\*)キャッ フム、ここは蟲の出番で御座るかな? ニンニン。

 N◎VA-Dのルールシステムを熟読して適用すれば、<※泰然自若><※消沈>+幾つかの特技などでかなりのことができますが、何でもできて何にでも対応できる万能キャストはなかなか作れないし、必要ありません。強さと弱さがあること自体が個性であり、それを補い合うチームプレイや、それがあるから生まれるドラマもまた、TRPGの醍醐味だからです。
 能力値を伸ばすのは最小値を底上げするより最大値を伸ばした方が良いように、弱点を消すよりは長所を伸ばしましょう。ルールシステムではなく設定の面で、何か弱みがあることにするのもよいでしょう。
 ちなみに――貴方がリプレイなどでプレイの記録を残そうと思っているなら、完全無欠ではなくてどこかに弱みがあったり、共鳴できる要素を持った人物の方が、読者の共感を誘うことができることもあります。


★イメージソース

 様々な作品を見て「うぉ、こんなキャストやりてえ!」と思い立つ方は多いでしょう。N◎VA者というのは大抵みんなそうです。それどころかオフィシャルのゲストにも割といます。ゲスト以外にもN◎VAにはネーミング等を他の作品から拝借してくる伝統が昔からあり‥‥かくいう筆者もコンテンツ等でもよくやりますし‥‥これについては最近はSeriさんの【Quick Silver】に非常に有用なN◎VA元ネタ一覧集があります。
 とはいえ、オンリー・ワンであるべき貴方の分身が元ネタそのまんまなのはちょっとイクナイですね。たまたま1回のアクトでいくら格好良く決まったって、コピーは所詮本物には勝てないのです。
 それに自分と似たようなキャストが他にもいるのはなんだか気分が悪いでしょう。日本全国のN◎VAファンの誰かが考えた聖母殿系のキャストには、『ヘルシング』のアンデルセン神父のようなキャラはもう絶対います。ニューロエイジのどこかの警察機構には『攻殻機動隊』の草薙素子のようなキャラもきっといるでしょう。(むしろオフィシャルの櫛田千里のモデルかも?)
 ちょっと変えたり、人が真似をしなさそうな脇役をモデルにしたり、複数の作品のイメージソースを合体させたり、貴方のオリジナルの部分を入れたりして工夫しましょう。逆に、ネタキャストは他人に説明するときは、「まあ、ぶっちゃけネオなんで」などと一言で片付くので分かりやすいとも言えるでしょう。

 そして、例えば漫画などで好き勝手にはっちゃけて縦横無尽の大活躍をしている主人公がいて、そんなキャストをやりたいと思い立った時。気をつけた方がよいことがあります。
 その物語の主人公は何人でしょうか。きっとそのキャラ1人(あるいはもう1人ぐらい)で、脇を固める脇役が何人かいるからこそ、主人公は好きに暴れていられるのでしょう。
 ではN◎VAのアクトではどうでしょうか? キャストは他にもPL人数分いますから、全員が主人公格で好きにはっちゃけたらきっとアクトが破綻するか、RLさんがとても困りますね。重要ゲストの分もあるはずです。例えばキャストが4人なら、乱暴な計算ですが貴方の脳内妄想での主人公度と比較して約1/4程度に抑える必要があります。
 N◎VAのアクトから生成される物語は主役級がキャストの人数だけいて、普通の物語と少し構造が違うのです。とめどなく妄想全開なキャストを作るときは心に留めておきましょう。


★住んでいる世界を考えてみよう


 知っての通り、ニューロエイジは様々な超人や異能力が跳梁跋扈するトンデモな世界です。拳銃弾でヘリが落とせたり日本刀で機動戦車を真っ二つにできたりよくレーザーが飛んできたり、ドラゴンが大統領だったり吸血鬼や人狼や妖精に、もはや神までうろついています。
 貴方のキャストはこれら雑多な現象の全てと数々の矛盾を内包した、寛大なるN◎VA宇宙の法則を全て受け入れているのでしょうか?
 事前にイメージをある程度考えているならそうではなく、「このキャストはきっとこんなことが起こせるんだ」「でも、こんなことはしないだろう」などと、一定のラインがあるはずです。
 ここで考えようと言っている住んでいる“世界”は世界そのものではなく、貴方のキャストが属している物理法則や‥‥TRPG『トーグ』におけるアクシオム・レベルや‥‥なんとかコズムとか‥‥そういったものです。
 例えばニューロエイジの住人なら銃を撃つ機会もあるでしょう。キャストが銃使いで、映画になぞらえた場合を幾つか上げてみましょう。

 貴方は過去多数ハリウッドで製作された、刑事もののガンアクション映画の世界に属しているのかもしれません。Freeze !
 この世界ではSSSやハウンドの刑事はみんなお決まりのそれっぽいポーズで銃を抜き、<※フリーズ>をしてきます。撃たれた人はたとえ小口径の弾丸でも大袈裟に手をばたつかせながら倒れたり、ガラスのショーウィンドウに突っ込んだり、悪役はロシア連邦製っぽいアサルトライフルを空しく空に撃ちながら倒れていきます。ヴィークルの防御力は実際より低い効果しか持たず、拳銃弾で撃っただけでもしょっちゅう景気よく爆発してくれます。
 やられてくれたトループさんをよーく見ると‥‥おや、クラシックな『サイバーパンク2.0.2.0』戦闘ルールに載っている“ハリウッド演技過剰表”を参照してダイスを振っているのかもしれません。

 貴方はN◎VA者なら大抵みんなデフォルトで見ている『マトリックス』三部作の世界に属しているのかもしれません。My name is Neo... !
 この世界では弾道を描きながらスローモーションで飛んでくる銃弾を360度旋回するカメラの前で<※緊急回避>で避けたり、<※猿飛>や<※元力:重力>を使って重力を無視して壁や天井を走り回ったり、ビルから墜落しながら撃ち合ったりします。<※消沈>や《天罰》を使うと貴方は救世主として覚醒し、かざした手の前で全ての銃弾が落ちていったり、その他諸々のマーベラスな映像美が夢の中で展開されるのかもしれません。
 エージェント・スミスはみんな1回はキャストやゲストのネタに考えますな。さるシナリオのクサ●ギはヤバ過ぎますね。JGC2003先行発売で買った人はみんな現地であの挿絵に (((( ;゚Д゚)))ガクガク したYO!

 あるいは貴方はカーロスのような色黒の南米系キャラクターで、ラテンの血が騒ぐとバカ映画の極み『デスペラード』の世界に突入するのかもしれません。この世界では“ヤロール”のような酒場もメキシカーンな香りが漂っていて、騒ぎが起こったらもう最後です。
 RR時代の“デニーロ・ホルスター”のようなナニカから貴方の両手には拳銃が飛び出し、はっちゃけポーズで撃ちまくり。窓から落ちたら<運動><■自動反撃>の出番。セクスィに腰を振りながら、振り向きざまに撃ちまくり。“偽装セット”に<※隠し武器>を使えば二重底のギターケースからショットガンや手榴弾が現れ、果てはミサイルまで飛び出してなんていうかもう(゚∀゚)アヒャッ!! 続編の『レジェンド・オブ・メキシコ/デスペラード』も出ます。やっぢまいなァ〜!!ヽ(`Д´)ノ おっとそれは別の映画でした。

 あるいはGX-Dのドラッグ“クラリック”の元ネタでもあり、<※ガンフー>使い必見の『リベリオン』の世界に属しているのかもしれません。
 クールな黒の制服、灰色の世界の思想を統制する警察機構のエリート、グラマトン・クラリック。修得したは射撃と格闘の組み合わさった最強格闘技ガン=カタ!
 両手にクラリック・ガンを抜いたが最後、矢継ぎ早に全方向に繰り出される零距離射撃に周囲の敵は全滅、その性能は<※ファニング>並。日本の「能」を強く意識したガン=カタの流れるような無駄のない動きが悪漢どもを撃ち抜き、最後は、あの無意味にカコイイ決めポーズが出てしまうのかもしれません。
「短いがアクションシーンが格好いい」「マニアックな銃が頻出」など見所がありつつ映画全体としては「ちょっとナニでアレ」という、N◎VAっぽいと誉められる映画の典型です!

 あるいはホンコンHEAVENや中華街出身なら、ウー監督の懐かしの『男たちの挽歌』シリーズを始めとする一連の“香港ノワール”の世界に属しているのかもしれません。海を越え映画の都に渡っても、その世界は『M:i-2』や『フェイス・オフ』に残っています。
 この世界ではたとえ<■禅銃>や<※黒羽の矢>を持っていなくても二挺拳銃を構えることに、黒の喪服で戦いに赴くことに、神に祈りを捧げ教会で撃ち合うことに、重大な意味があります。ニューロエイジの世界はケースレス弾のはずですが全ての拳銃からは薬莢が落ちていきます。RLシーンでは無意味にシビれるスローモーションで悪役ゲストが登場します。
 失われつつある任侠のため、散っていった友のために銃撃戦に赴きましょう。1アクション毎に無意味に格好いいストップモーションが多用されたバレエのような戦いが展開され、そしてシーンの背景では、また無意味に鳩がよく飛んでいるのです。ユンファ兄ぃ!弾丸坊主は‥‥本当にダメだったッ!(;´Д`)ノ

 他には‥‥渋スナイパーなら必見の『山猫は眠らない』『山猫は眠らない2-狙撃手の掟-』や、特殊部隊ファンが涙した『ブラックホーク・ダウン』のような、数少ないリアル指向の映画の世界に住んでいるのかもしれません。All units, Ireen... I say again, Ireen... !
 この世界では、戦闘は2カット以内で終わるのに戦いに赴く前には初弾がチャンバーに入っていることやマガジンの残弾を確認したり、『シャドウラン』でもないのに護衛相手と歩く時は遮蔽を意識したりする、無意味にプロっぽい演出に重大な意味があります。貴方はきっと“スキャッター”SMGや“グリード”防弾ベストを装備に加えたり、意味がなくとも<※戦術>を演出に使ったりしているでしょう。
 ゲストが待ち構える室内に突入する際は貴方は正しいクリアリングの手順を知っているでしょう。<※片手射撃>があってもアサルトライフルは腰だめではなく、左右どちらかの肩で構えて相手をポイントするのが正しいことを知っているでしょう。
 室内で敵ゲストと対峙して煮えた台詞を言い合うような場面に似合うのは小型火器で、“超巨大武器”や“アルティメット・ブレイク”、昔の“サンダーボルト”のようなデカくて取り回しがしづらい長物の銃を持ち込むのは、本当はかなりダサいことも知っているでしょう。
 スナイパーライフルで<※ファニング>? ショットガンの散弾で<※花吹雪>? ボーイズ、はっちゃけワールドでは可能でも、ここは本物のプロの世界です。


 などなど、いかがだったでしょうか。なんだか映画の紹介をしてるだけのような気が激しくしてきましたが、銃を扱う例だけでもこれだけ色々あります。N◎VA宇宙にはこんなバラバラの世界に住んでいる銃使いたちが一緒に登場することができ、そしてどの世界に働いている法則も正しく、どれは間違っているということではないのです。
 RR時代の『二進法のマリア』で語られた電脳聖母事件に登場するハレー彗星を額面どおり受け取れば、ニューロエイジの現在は2061年か2137年頃+D時代までのα年となります。地軸が捻じ曲がった21〜22世紀の近未来世界という緩やかな領域の中に収まってはいますが、N◎VA宇宙は実際には様々な法則がごっちゃになって働いています。
 ネットワーク技術はそれほど進んでいないように見えますし、現実が未来に追いついてしまったN◎VA-Dからはその対策の為に電脳空間が意識体ルールに統合されました。医療技術もそれほどは現実と差がないですし、それにクローニングも実現させた現実世界の技術は一般人が知っているより先まで進んでいます。
 100年以上経っているなら人類は太陽系外まで進出していそうですが、登場するのは地球の周回軌道とせいぜい月、あとは某火星人の妄想火星と某大宇宙の人の妄想(?)大宇宙ぐらいまでです。例に挙げた銃器のテクノロジーも現実と大差ないですし‥‥実はR時代に標準だった9mm弾は、現実世界ではボディアーマーの発達からパワー不足になりつつあります。(それに100年経っているなら光学兵器が実用化されそうですしね。)
 N◎VA宇宙では一定の法則がどこでも働いてくれて「これはOK」「これはきっとダメ」と言えるのではなくて、それぞれのキャストごとに属している世界法則が別々に存在し、それぞれ「これはOK」「これはきっとダメ」が別々なのです。

 どこでその力を学んだのか強さの源を考えたり、そのキャストが仕事をしている様を想像したりすれば、「きっとこんなことをするんだろう」「でもきっとこんなことはしないんだろう」という領域がおぼろげでも見えてくるはずです。
 カブトワリ以外でも例えば貴方がバサラで、《天変地異》の演出にいつも自分の元力に関係するよう決めていたら、それはよい思いつきです。ハイランダーだったらいつも助けてくれる<※隠れバディ>の外見を決めて演出によく使うのもいいでしょう。
 ある程度統一した行動や一貫した演出は、確かな個性と存在感をもたらします。余裕があったら考えてみましょう。そして他の法則が働く世界に住んでいるキャストとひとつのアクトの中で出会ったら、驚いたり腕を認め合ったりするならともかく、無闇に否定はしないようにしましょう。‥‥時には、どうやっても共有できないようなキャストに遭遇することもあるかもしれないのですが。

 こうして確固たるイメージを固めてプレイしていたのなら、さるシナリオで空からナニカが落ちてくる《とどめの一撃》の使いどころのシーンで、イシュタルがいくら「見えてさえいれば届くわ」と言ってくれても、「いや‥‥でも俺は拳銃使いだし‥‥」などと戸惑ってしまうのは‥‥ごく自然なことのように‥‥思います。(;´Д`)


★何人か創って遊ぼう


 『トーキョーN◎VA』を遊ぶ方はたいてい、数人から十人、十数人くらいキャストを作成しておいて遊んでいます。その中で何人かのお気に入りのキャストをとっかえひっかえ使ったり、一時期に使うメインのキャストを1人に絞ったり、ネタを思いつくごとに新キャストを増やしていったり、シナリオのゲストやオリジナル設定のゲストがその後キャストになっていったり、キャストの家族が増えていってやっぱりキャストになったりしていくわけです。
 貴方が初めてN◎VAを遊び、これから本格的に遊んでいく予定なら、そんなに多くなくてもいいのでキャストは何人か作ってみましょう。一人のキャストでは全てのシナリオは遊べませんし、何人かいた方が幅が出ます。
友達のキャストとアクトの中で出会ったら、何かアクトでは語られない関係を考えたり、自分のキャスト同士の出会いを考えるのも面白いでしょう。そんな所から素敵な設定が広がっていって、長く続くこともあります。
 もちろん、人によってプレイするのが得意なスタイルや不得手なスタイルはあるでしょうから、それは除外します。それでも、数人はいた方が様々なアクトに参加できます。

 そして逆に‥‥たくさん作り過ぎるのも実際に運用する上では問題になることもあります。(一人で脳内妄想するだけなら何の問題もありません。/笑)
 これもDの時代では昔話になってしまう余談ではありますが、以前はWeb上のN◎VA界においてもなりきりChat全盛時代というのがありました。(1998年後半〜2000年頃) 有名どころで2軒、CGIで動くチャットが常時稼動し、毎晩のように多くのキャストが出会い、多くの物語が語られ、アクトのようになったり騒ぎがあったりラヴがあったり、人が集まり社会が形成される場の常としてPL同士の衝突が絶えなかったり困ったチャンがいたり‥‥
 その中で、キャストを湯水のようにどんどん新造して送り込んでくる人もいました。どんどん入ってきてロケットスタート並みの速さで他のキャストとラヴになったりして、また新しいのが入ってきて‥‥
 しかし観察しているとそうした量産されたキャストというのは大抵、いわゆる“キャラが薄い”ことが多かったのです。それよりも人数をきっちり絞って活動させている人、Chatに現れる頻度は低いもののしっかりしたロールプレイをしていくキャストの方が印象に残ったり、人気が高かったりしたことがありました。

 複数のキャストをとっかえひっかえ使っていく実際のアクト運用でも、同じようなことが言えます。数人や十人ちょっとならともかく、三十人も四十人も一度に使ったらRLさんや他のPLは名前を覚えるだけでも一苦労でしょう。貴方のイマジネーションがどんなに豊かだとしても(あるいは、豊かであるつもりであっても)、個性は段々弱くなっていってしまうはずです。
 それに――★他の登場人物を知ろう の項でも述べますが、他人というのは得てして、貴方が期待しているほどは、貴方と貴方のキャストを理解してくれないものなのです。


★ゲストコネとの関係


 ほとんどのキャストは誰も知り合いがいない寂しい人ということはなく、コネ技能を何人か取ります。N◎VA-Dルールブックに載っている顔つきのゲストから選ぶ時もあれば、敢えてマイナーなゲストから選んだり(ここで誰を選ぶかで人のN◎VA歴も推測できます)、あるいはオリジナル設定で増えていった人物や自分の他のキャスト、あるいは大切な人だったりアクトの都合で仕方なく(?)タイセツな人になった人物のコネを書くこともあるでしょう。
 キャスト間コネとシナリオ用コネからなるアクトコネクションはアクト終了後に消えてしまうことがN◎VA-Dでは明記されているので、思い出を残すために別に書いておくといいかもしれませんね。
 N◎VAの魅力のひとつはキャラクター回りであり、オフィシャルゲストの誰それとどういう関係でどうのこうのというのはよく見られる光景です。そういう話で盛り上がるのが大好きなミーハーな人もいれば、特に興味を示さない人もおり、このへんは実に様々なのですが。どのような趣味の世界でも、概して男性より女性の方がそういう話は好きなようですね。

 時にはこうしたキャラ人気がニューロエイジ世界の枠の外側のTRPGとしてのメタレベルで影響力を持ち、設定に変更を与えることもあります。
 一番有名なのは元快楽殺人症の後方処理課員、メルトダウンがファンの人気が高かったために都合の悪い設定の幾つかが黒歴史に抹消され、千早雅之社長になったことでしょう。『サイバーパンク2.0.2.0』に登場するアラサカ社がモデルのひとつであり、昔は巨大な悪という印象も強かった千早重工もすっかり善玉のイメージが定着しました。他にも、ファンに人気のあるオフィシャルゲストは(ゼロなどを除けば)大抵は死んだり消えたりすることはなく生き残っています。
 また、ニューロエイジ世界が常に変動していることをユーザーに印象付けるという目的があり、オフィシャルの展開やシナリオではゲストの設定に様々な変化が起こることがあります。特にRR後期で毎度おなじみの「実は浄化派だった」を始め、時に必然性がないほどまでの変化があるのはそのせいです。

 さて恐らくはDの時代に生きている貴方のキャストも、こうした設定の変更、特にコネのあるゲストの設定の変更に影響されることがあるかもしれません。
 貴方がもしオフィシャル設定変動にあまり影響されずにそのキャストを使っていきたいと思っているなら、推奨されるのはそれほど当たり障りのない関係、「他にそういう設定のキャストがいても比較的困らないような」関係です。
 例えば、ハウンドに入って何年かは別にしても千早冴子から信頼されている警官の一人とか、後方処理課で何年やっているかは別としても早川美沙や雅之社長からいざという時よく呼ばれるベテランとか、最近復活したマイケルからよく仕事を回してもらうストリートのフリーランスの一人とか、相手からすれば自分と同じような知り合いが他にも何人かいるかもしれない関係、そういったものです。
仕事の付き合いで時々会うとか、昔の知り合いで今でも時々茶を飲みに行くとか、日本全国のN◎VAファンの作ったキャストの誰かがきっと貴方の大好きなオフィシャルゲストと同じような関係を持っていても、特に支障がない関係です。
 では逆にあまり推奨されない関係は。その通り、日本全国のN◎VAファンの作ったキャストの誰かが貴方の大好きなオフィシャルゲストと同じような関係を持っていたら非常に支障をきたすような関係、「他にそういう設定のキャストがいるととても困るような」関係です。
 例えば、誰がなんと言おうとアルファたんはもうウチの子だとか、誰が何と言おうとカーロスはアタシの無二の恋人だとか(ゲストによっては愛人の一人ぐらいなら問題ない場合もあります/笑)、誰が何と言おうと悠羽たんはボクがもらうとか、誰が何と言おうと冴子さまは(以下略)などなどなど、やァこれはもう幾らでも思いつきそうですね。

 あまり知らない人と卓を囲む時は、「この子、怜呀さまの隠し子なんですぅ(はぁと)」と真顔で言われても、ネタとして一緒に盛り上がれる時もありますが完全にポカーンとされる時もあります。初対面の人と遊ぶときなどは、ちょっと注意しましょう。


★導入を拾えるようなキャストにしよう


 ここで言う「拾う」とは、貴方のキャストのスタイルや設定がシナリオで幾つか用意されている「推奨スタイル」と概ね合致し、そのシナリオを用いたアクトに参加するのが可能であることを指します。

 そろそろ時効ですからちょっとだけ言ってしまいますが、かつて筆者が公認ゴニョゴニョを務めさせていただいた頃。当時のゲーマーズ・フィールド・コンベンションにおけるN◎VAのシナリオは効果的な方法を模索中で、現在のようないわゆるSSS形式の統一した書式もまだありませんでした。
 多種多様なキャストが作成でき、RL泣かせである導入をどう解決するかについて、FEARの鈴吹太郎氏からこんな話を伺ったことがあります。
「普段のアクトは別としてGFコンの場合は、5人分の推奨スタイルを予め決めている。キャスト側はクグツなら千早所属にしてもらい、シナリオ上の敵はイワサキに設定している。レッガーなら河渡連合にしてもらい、敵は秋川になる。イヌはブラックハウンドかSSSの所属をやってもらう」と。
 時間を掛けて準備して臨めるアクトはともかく、時間の限られたコンベンションでアクトを成功に導くならこれも必要なことです。そして筆者がRLを務めた実際の卓でもプレイヤーさんには上の条件に合うキャストをその場で作ってもらったり、持ちキャストから選んでもらったり調整してもらったりしてから、アクトを行っていました。
 そして推奨スタイルを最初に述べたシナリオの記述方法が徐々に一般化し、様々なアクト運営ノウハウが蓄積されて時は流れます。CDドラマ『ナイフ・エッジ』を機にブラックハウンドには機動捜査課というキャスト向けの課が脚光を浴び‥‥秋川は勢力を弱め、千早の新たな敵はイワサキからテラウェアへと変わり、トーキーの所属先がマリオネットからN◎VAスポへ変わり‥‥Detonationの現在があり、現在のような推奨スタイルとトレーラーを装備したシナリオの記述が定型として一般化したのです。

 貴方が幾つかオフィシャルシナリオを見てきているなら、似通った推奨スタイルが多いことが分かるでしょう。その通り、フリーランスの私立探偵や、千早重工後方処理課の非合法工作員、ブラックハウンドの警官、河渡連合の姐さんの手下、マリオネットやN◎VAスポのトーキーなどを用意しておくと、オフィシャルシナリオを遊ぶ際にすごく楽です。
 これら以外のキャストでも、隣の課の手伝いをするとか‥‥コネの一人がそれらの勢力に属していて、貴方のキャストに話を持ちかけてくるとか‥‥何か、シナリオに絡みやすい手段を用意しておくのは非常に有用なことです。自分のキャストを見せられたRLさんの立場になって考えてみましょう。


★でも、縛られすぎず自由に


 導入を拾えるようにしようと述べておきながら、次は逆のことを書きます。(笑)
 シナリオの導入に必要で仕方なく作ったせいで、本当にどこにでもいそうなありきたりのキャストを新造してしまったりしたことはありませんか? さしたる個性もなく任務を尽くすだけのクグツや、お決まりの台詞だけ言って犯人を逮捕するイヌなど‥‥
 サイバーパンカーに“標準的な”ヤツなど存在しません。ニューロエイジの運命の天輪を操る力を持ったキャストは、貴方が創ったからこそ生を受けたオンリー・ワンであることに、大きな意味があります。元より『トーキョーN◎VA』の大きな魅力のひとつは、タロットに象徴されたスタイルと特技と装備の組み合わせから、実に多種多様なキャラクターを創造できることです。筆者も今まで、実に様々なキャストを見てきました。あまり縛られ過ぎないで、想像の翼を広げて自由に面白いキャストを作ってみましょう。
 特殊なキャストでも、上のように何かシナリオに絡みやすい手段を考えておくのはとても有用なことです。あるいは、よくN◎VAを一緒に遊ぶお友達がいるなら、「ねえ、今度ボクの神キャストが入れるシナリオ作ってよ」などと頼んでみるのもいいでしょう。‥‥いや、<※血脈:神族>が活躍できるシナリオって見たことはないですが。(´w`)

 様々な同人誌やWebコンテンツでも、キャストのサンプルは(ないとは言いませんが)あまり見かけないのも上の話と関連しています。そう、誰だってキャストは自分で作りたいものなのです。一方、トループのサンプルというのはよく見かけますし、GX-Dにも似た形で掲載されましたね。


 さて、生を受けたキャストに魂を吹き込む様々な方法はこれぐらいにしましょう。勿論ぱっと作ったキャストで遊ぶのも、それはそれで結構です。しかしそのキャストを長く使おうと思っている時やこれからキャンペーンを始める時、大作シナリオを遊ぼうとしている時は、ちょっと事前にこうしてイメージを深めておくのもよいでしょう。
 多少の手間は掛かりますが、ひそかに流行っている【トーキョーN◎VA 100の質問】さんのキャスト向け66の質問に答えてみたり、【ロケット屋ダンデライオン】さんのナイフ・エッジ・テストやほりのアクシオムを試してみるのも面白いですね。
 オンラインアクトで遊ぶ時も深めに作り込んでおいた方が個性がはっきりします。(情報が文字を通してしか伝わらず、キーを叩いてチャットで発言する中で全てを表現しきる必要があるからです。)
 ここから先は、実際のアクトに関わるところに触れたいと思います。


★経験点の差


 『トーキョーN◎VA』では消費経験点が異なるキャストがひとつのアクトに参加することはあり、実際よく起こります。
 持込みキャストに関しては今までのノウハウを蓄積して、N◎VA-Dルールブックに記述があります‥‥注意すべきは消費経験点数そのものではなく、特技コンボや最大達成値、装備などなのです。
 例えば貴方だけ経験点を消費したキャストで、他のプレイヤーが作りたてレベルだったら、アクトの中で不平は出るでしょうか?
 もし貴方がリサーチで毎シーン毎シーン高経験点キャストの強みを見せびらかし続けたり、延々とキャスト自慢を語っていたら、そりゃ誰でも嫌がるでしょう。(キャスト自慢をどれぐらいするかで、その人がどの程度なのかはよく推し測れます。)
 しかし、ここぞという自分の見せ場やキャスト陣の生死が掛かった戦闘の一番大事なところで高経験点ならではのスーパーコンボが炸裂しても、場は盛り上がったり、むしろ感謝されることさえあります。
 要はリソースを意識したり自分の見せ場をわきまえつつ、その中で表現しようということです。そして周りのキャストの能力が低いなら、全員が平等に活躍できるように気を遣いましょう。

 オフィシャルのリプレイ『ナイトブレイク』でも、鹿島アスカ巡査が30点、クロイツェルと千早怜呀が約300点という格差の中でアクトが行われていますが、結果は御覧の通りです。
 筆者も経験点0点の龍一族の少年と経験点1818点の吸血鬼神祖を一緒に相手にRLしたことがあり、しかもアクトは盛り上がったことがあります。
 これはかなり極端な例ですが、参加者が互いを尊重しあう気持ちを持っていれば、キャストの経験点差はあまり問題にならないということです。


★被りを避けて調整しよう


 誰でもアクトをする時、スタイルが同じような被ったキャストは避けるはずです。これはこれでよいことです。しかし防御系神業や打消し系神業など、幾つあっても困らない神業もあります。また戦闘系スタイルはたとえスタイルが同じでも、コンボや得物が違ったりして二人いても別に問題ない場合もあります。
 また、スタイルのほかにも考慮すべき事項はいろいろあります。
 例えば候補に上がってるキャストが全員図ったように20代半ばだったら‥‥それよりは若さ一杯の10代のストリートキッズと渋い初老の探偵と何百年生きてるのか分からないようなアヤカシがいた方が、対比が出て面白いかもしれません。
 候補キャストが全員男性で、なんというかこうムーンと男気が全開な予感(悪寒?)がするなら、女性の一人や二人いたほうが華やぐかもしれません。
 レイ巡査のように悪いことは見過ごせないウェットな熱血漢がいるなら、4人ともそうで熱くなりすぎるよりは、ニューロエイジの乾いた現実こそが似合う冷たいキャストもいた方がいいかもしれません。
 他にも所属勢力や設定、外見の差など、いろいろとあります。

 アニメの設定資料の身長対比図のように、彼らが並んで思い思いのポーズで立っているところをちょっと想像してみましょう。なるべくバラエティに富んだ個性的な面々が揃うようにした方が、アクトはたいてい面白く、またN◎VAらしくなります。
(勿論、時には全員ブラックハウンド所属など、縛りがあるアクトもそれはそれで面白いでしょう。イヌ縛りの『スリードッグナイト』はまさにこれですね。)


★他の登場人物を知ろう


 現実世界でも、他人というものは自分が期待するほど自分のことを理解してはくれないものです。ゲームの中のニューロエイジ世界もまた然り。貴方のキャストは自分の想像の中ではイメージが固まっていて物凄く格好よいかも知れませんが‥‥外世界への表現ができていなくて‥‥他の参加者はジツは全然違うイメージを抱いていた、なんてこともあるかもしれません。
 コンベンション等やあまり面識のない人とのプレイで他のキャストの一人とアクトの最後まであまり接触できずに終わってしまい、結局どういうキャストなのかよく分からなかった、なんてこともあります。よく日記系サイトで自分のキャラクターが今日のセッションでどんなに活躍したかが綴ってあって、でも実際は卓を囲んだ他人から見たら全然違ってた、なんてことも時にはありえます。
 キャストの持っている能力、設定などは1回のアクトでは全ては表現しきれないことが多いですし、たまたまその日のアクト前の自己紹介では言い忘れてしまったこともあるでしょう。

 アクト全体を見渡せる余裕ができたら、その外世界の他者側の方からも、できるだけ他のキャストを理解するように努めましょう。相手がどんなキャストなのか分かれば、それで対応できることもあります。
 例えばあるキャストが決して自分からは言わないので分かりにくいけれど、過去に大切な人を失って復讐を誓っているとしたら。他者側に位置している貴方のキャストからできることはあるでしょうか。何かのきっかけでその事情を知ったのなら、励ましたり協力することもできるでしょうし、貴方のキャストがその失った人に面影が似ているなら、ちょっといい話になるかもしれません。
 何も友好的なものではなくてもいいのです。ハードな世界に生きているキャストならそういうウェットな心を嘲うこともあるでしょうし、実は貴方のキャストはむしろ捜し求める仇に似ているのかもしれません。いずれにせよ互いを理解しあうことで、そこには以前にはないドラマが生まれるはずです。
 例えばリプレイ『スリードッグナイト』に登場する“黄金の記憶”メモリは、自分と母を捨てた父であるウィリアム多聞に復讐するためハウンドに入ったという設定です。これが父の背中を求めているレイとの対比を出すためであるのは、恐らく事前に狙ってのことでしょう。実際、作中でもその対比がうまく生かされています。こんな風に他者を理解しているから成せることもあるのです。


 N◎VAを扱ったウェブサイトは1999-2000年頃に爆発的に増えたことがあったのですが、そんな中でいわゆるキャスト紹介というのはどこでもよく見かけるありふれたコンテンツでした。
 初心者が見るのに例として適切、面白い技能コンボを使っている、経験点も入っててとにかく強い、設定が格好いい、イラストが綺麗、人物として魅力的、そのキャストが登場するリプレイがある、そのキャストになりきりChatやBBSで会える、あるいは実際のアクトで会える‥‥などなど売りがあるものもあれば、本当にただ単に載っているだけのものもあり、実に様々なのですが。
 活用してみるとよく分かるのですがこのキャスト紹介、単なるキャラ自慢の他に「プレアクトの打ち合わせで使える」という隠れた長所があります。
 互いのキャストのイメージを掴むには口で説明してもらうよりはるかに楽ですし、RLから見れば各種データのチェックにも使えます。ネットに繋げる環境の人同士で遊ぶなら、活用してみるのも手でしょう。特に、オンラインアクトで遊ぶ際は用意しておくとすぐ参照できたりして何かと便利です。
 Web上に掲載するならフォーマットは様々です。自作もできますし【N◎VA Fan Beginners】さんや【D-Dragon's NEST】さんのようにフォーマットを公開しているサイトもあります。当方のサイトでも頼まれてフォーマットを贈呈したこともあります。ここまで読んでくれた貴方のためのおまけですが、ジツはブランクシートは ここ にあります。(笑)
 Webから閲覧でき、技術がなくても複数登録と更新、削除が行える機能がCGIで実装されている‥‥という点では、【ガニメデごすぺらーず】さんにある『N◎VAキャラデータベースCGI』がRR版ながら今でもよく使われていますね。本コンテンツRL編の ■電脳のばを考えるの所。 に載せたツールリンク集の中にも、HTMLでプロファイルシートを吐き出せるものがあります。


 そしてこの他の登場人物を知ろうというのは、そのままRLサイドの登場人物にも当てはまります。貴方がよく知らないオフィシャルゲストがシナリオに出てきそうでしかも重要な役回りでありそうなら、思い出しておくと何かの役に立つでしょう。
 プレアクトのテキストにシナリオコネで書いてあったり、RLが説明してくれた人名はきっとそのシナリオの重要ゲストで、貴方のキャストとの接触が極めて重要な役割を果たすのかもしれません。ちゃんと名前を覚えておいたり、どんな人物なのか質問したりすれば、きっとRLさんは喜んで対応してくれるでしょう。


★他のプレイヤーとキャストを尊重しよう


 N◎VA-Dの時代が来る遥か以前からず〜っと同じですが、『トーキョーN◎VA』シリーズはルールに穴を残していたり、解釈を一定に定めないでユーザー任せにしていたり、高い自由度を残して間口を広く取っていたりする部分があります。プレイヤーの自己陶酔を増長しやすい部分もありますし、N◎VAだから許されても他のゲームシステムでは許されないこともあります。Detonation時代でだいぶ整備はされましたが、穴をついた「ルール上可能なこと」と「実際にやっていいこと」の間には、相変わらず曖昧模糊とした灰色の境界で分かたれたラインがあります。その分、遊ぶ側にもモラルが必要です。
 貴方のキャストは強いでしょうか。強いとしたら、負けることはできますか? 自分のキャストに陶酔するのは誰でもできますが、他のキャストを立てる、引き立て役を演じることはできるでしょうか。シーンプレイヤーを尊重することはできるでしょうか。相手が低経験点キャストだったりN◎VAに不慣れな人だったら、気を遣ってあげることはできますか? 相手のプレイヤーが自分と違う考えの持ち主だったとき、それを尊重することはできますか?
 本当に面白いアクトは、参加者が一丸になってよいアクトを作り上げようとした時にこそ生まれるものです。過去の様々なアクトからも、これを強く感じます。貴方も本当は分かっているでしょう。なんだかんだ言ってTRPGで一番大事なのが「一緒に遊ぶ面子」であることを。この事実はきっと、これからも変わらないでしょう。
 例え舞台の上では裏世界の誇りを掛けた銃が二人の間に向けられていたとしても、現実世界のプレイヤーは紳士的に。レディ&ジェントルマンなプレイで行きましょう。

 そして自分の出番がない時に関係ない話をしたり漫画を読んだり、果ては寝ちゃったりするのは一般的にTRPGのマナーとしてよくないと言われていますが、まあ実際そうです。
 人間の集中力には限界がありますから息抜きは必要です。が、それでも、裏舞台で出番がない時は他のキャストが表舞台で何をしているのか、ちょっとは耳を傾けましょう。プレイヤーは俳優ではありますが、同時に観客でもあるのです。


★ルーラーを尊重しよう


 TRPGという遊びが生まれてから数十年経ちますが、今も昔もあまり変わらず、そしてN◎VA-Dでも変わらない事実があります。なんだかんだ言っても、やはりPLよりRLの方が大変なのです。

 PLはアクトに何を用意してくるでしょうか。レコードシートのコピーを持ってきたり、自分のキャストを作ってきたり、あとはせいぜいアクト中の自分のキャストの格好いい活躍をぽわぽわ〜んと妄想しているぐらいでしょう。
 ではRLは? シナリオを作るにも手間は掛かりますし、アクトの準備もあります。そして一旦アクトが始まれば、物語の中に登場する世界の全てを一人で担当しなければなりません。
 N◎VA-Dを始め様々なFEARエンジン搭載ゲームでは、RLの方が経験点を多めに貰えたり、負担を軽減できる様々な仕組みが工夫されてきています。それでも、RLの方が大変なのは今も昔も変わりません。
 RLは確実に、PLより多くの手間を掛けてアクトを準備してきます。できるところはどんどん助けましょう。願わくば経験点が貰えるからだけではなく、RLを尊重するために助けましょう。

 RLは何を用意してきたのでしょうか? それは空白だらけのニューロエイジ世界を埋める、素敵なオリジナル設定が出てくるシナリオかもしれません。オフィシャルゲストが霞んで見えるような、格好いいゲストかもしれません。夜叉やエリスや千早牙門でも逃げ帰るような奇妙奇ッ怪な最凶コンボや、すごい仕掛けのあるシナリオかもしれません。読んだら誰でも震えてしまうような、どうしようもなく格好いいアクトトレーラーなのかもしれません。
 RLが用意してきたものには、アクトの中で応えましょう。何かとんでもないことが起こるイベントがシナリオに用意されているなら、覚悟を決めて進んで飛び込みましょう。ニューロなことには素直に驚きましょう。
ドラマチックなシーンやロマンスが用意されていたなら‥‥たとえRLの思惑や陰謀通りには行かなかったとしても‥‥気の利いた台詞のひとつぐらい言ってあげましょう。

 こうすることで、貴方が得られることもあります――立場が逆の時です。貴方がRLでそのRLさんがPLに回った時。相手もきっと、貴方を同じように尊重してくれます。


★アクト全体を見渡そう


 さてN◎VAのプレイに慣れてきたら、貴方は「素晴らしい活躍をした」にチェックが入るようになったでしょうか。貴方のキャストはカッコ良かったですか?
 満足できるようになったら視点を広げて、その上に行ってみましょう。自分のキャストの目を通してアクトの中の世界を見る視点からその上、参加者と観客の目を兼ねてアクト全体を見渡す視点です。自分に浸るのは誰でも出来ますが、その上があるのです。
 アクト全体を見渡してみましょう。物語全体は大団円を迎えていますか? 他のキャストが活躍したり、うまく物語をまとめようとしたとき、それを手助けしたり立てたりするようなことはできていますか? 何もキャスト同士が安っぽいオトモダチである必要はありません。キャスト同士は殺し合いをしていても、「他のプレイヤーを助けた」にチェックが入る可能性はあるのです。

 そしてちょっとでもいいですから、全員が楽しめるように、物語がより面白くなるように、配慮しましょう。上でも述べましたが、参加者が一丸となってよいアクトを、よい物語を作り上げようとした時こそが、本当に楽しいアクトになります。


★ルーラーもしよう!


 上でRLは大変だと書いたのは事実ですし、アクトの完成度は、PLの腕よりもRLの腕によって左右される部分が大きいのも事実です。自分はあんまり上手くないし‥‥と尻込みしてRLするのを遠慮してしまうのも分かる気はします。実際、ネット上で活動している人でも、なかなか立派なことを言うわりに割合とPLしかしていない人も見受けられます。
 それでも、RLもして遊びましょう! TRPGの楽しみの半分を体験していないのはもったいないし片手落ちです。ある程度の技術があった方がアクトが面白くなるのは本当ですが、遊びなんですし気張らずにやってみましょう。
 それに、『トーキョーN◎VA』シリーズは明らかに、参加者が持ち回りでRLしていく遊び方を想定してデザインされています。

 そして――RLをして初めて分かることもあります。その楽しみも苦労も分かるでしょう。「自分がPLの時、こういう場面でこうすればRLは助かるんだ」「こう進めていけば状況が打開できたんだ」「こういうことをしてしまうと、RLの準備を殺してしまうことになるんだ」というのが段々分かってくるでしょう。
 実際、RL経験の豊富な人はPLで入る時、RLを困らせるようなキャストや困らせるような行動をあまり取らないものですし、そこでRL経験の有無が見分けられます。
 この見えない協力関係が進むと、分かっているRLとPLの間では、何も言わずとも心が通じる阿吽の呼吸のようなモノが生まれてきて、プレイが一層スムーズになります。


★リソースを意識しよう


 「リソース (Resource) 」には資産や手段や機知、Web上の情報源や環境問題でおなじみの資源など様々な意味がありますが、ここでは、1回のアクトで消費することができるものの総量、特に時間の総量と位置づけます。

 時間無制限でゆっくり遊べることもあるでしょうが――大抵のアクトでは時間はある程度有限で、リソースは一定のはずです。制限になるのはコンベンションの終了時間だったり門限だったり御家族の都合だったり、公共施設やカラオケボックスの時間制限だったり、ポストポストアクトのお食事その他大人の飲み物の会の予約時間だったりするでしょう。
 主人公が複数人、例えばキャストが4人いるアクトで貴方の分身が1アクトのリソースを消費して活躍できるのはどれくらいでしょう? 約1/4ですね。キャストが5人だったら約1/5になります。
 そうです。リソースは有限で、その中でキャストはみな平等に活躍した方がよいのです。厳密に計算はできないことですが、見せ場を奪い合わないように、でしゃばり過ぎないように時には退くことも考えて、互いに配慮しあいましょう。

 例えば貴方の隣にいるPLさんのキャストが、シナリオコネなどで過去の仇が設定されていたとします。復讐を誓うきっかけになった過去のシーンは、降りしきる雨の中で倒れる最愛の人とその脇で冷たい微笑を浮かべる浄化派能天使だったことに。ぽわぽわ〜んとばっちり妄想も済んでいて、アクト中でもヤる気満々だったとします。
 ここで聖母殿の密名を受けてN◎VAに来ていた貴方のキャストが実は強くて、アクト中で獅子奮迅の大活躍をし過ぎて、<※旋風撃>が炸裂してトループと一緒にうっかりその仇の能天使も一緒に倒してしまったらどうでしょうか。仇を討つはずのだった彼がもう瀕死で貴方に「後を頼む」とオートアクションで言ってから [気絶] しているならともかく、これはその人の分のリソースを侵食しているし、観客の目から見たら物語としてもちょっとつまらないですね。
 高経験点を消費した強いキャスト、エグゼクやクロマクなど組織上層部に属するキャスト、都合のいい設定のあるキャスト、PLが目立ちたがりである場合に、つい他人の分までリソースを侵食しがちです。ある程度は意識しましょう。

 こう考えるとすぐ分かりますが、PLが5人の時よりは4人の時、3人の時の方が、1アクトで1人当たりが使えるリソースは多いことになります。
 オフィシャルシナリオや、ゲーマーズフィールド・コンベンションなどのオフィシャルイベントでは、大抵PLは5人を想定しています。まあイベントは一人でも多くの人にN◎VAを遊んで欲しいのですから多いのも当然ですが、オフィシャルシナリオをプライベートで遊ぶときは――導入を調整して4人位で遊んだ方が丁度いいように思える場合もあります。(N◎VA以外のFEAR系システム全般のシナリオでもそうですね。)
 全てが文字情報でしか伝わらないオンラインアクトの場合はさらにPL人数は少なくなります。PLは2〜3人でも十分でしょう。


★他のキャストと絡んでみよう


 GFコンでは同席した互いのプレイヤー、互いのキャストを認知させるためにキャスト間コネをアクト前に持たせる工夫は長らく実行されていましたが、Revolution にはルールとしてはその記述はありませんでした。(というのは Revolution が出た後でゲーマーズ・フィールドが本格稼動したからですね。)
 その後GF誌の記事でこのテクニックが紹介され、RRではルールとして記述され、N◎VA-Dの時代ではこのキャスト間コネはすっかり御馴染みになっています。
 幾分ソフト路線にはなりましたが、ニューロエイジはサイバーパンクRPGの伝統を受け継ぐ厳しい世界です。安っぽいみんな仲良くオトモダチな関係になる必要はどこにもありません。それでも多くのアクトではキャスト間コネはつきますし、オトモダチ以外にも関係は考えられます。
 たとえば貴方が行方不明のボスの消息を捜し求める紅蓮所属の孤高の殺し屋だったら、コネの相手は前のヤバい仕事が見つかりそうだったイヌだったり、裏社会でその腕を認め合った河渡のカタナなのかもしれないのです。

 ★リソースを意識しようでに述べたリソースの話と一緒に考えてみましょう。キャストが4人のアクト。貴方のそのキャストが他の誰とも接触せず、孤独に仕事を果たして舞台から消えていったとします。
 きっとオープニングでクーゲルが殺しの依頼をしてくるのでしょう。せせら笑うマーダー・インクの面々の前でとりあえずシーンの背景にいる裏切り者を一人撃ち殺して孤独な物語は始まります。リサーチシーンでいろいろあって、クライマックスで目標を倒して、エンディングではうちに来ないかという復讐の魔弾の誘いを断り、孤独な殺し屋は独り去っていくのです。うーん、オレのキャストカックイー。ヽ(@▽@)ノ
 この場合、乱暴に計算するとリソースを消費して活躍した量は1アクト総量の1/4になります。

 では、他のキャストの河渡連合のカタナも同じような導入で舞台に上がっていて、出会いがあったらどうでしょう。
 リサーチで何か煮える出会いのシーンがあって、反発しつつ渋々とある程度協力しあって、クライマックスの戦闘で互いが助け合う一幕があったりして。エンディングではきっと2人が互いの腕を認め合う格好いいやり取りがあって、別々の方向に去っていくのです。
「次に会う時は俺の銃の向く先に、お前も含まれているだろう」「‥‥楽しみにしている」とかとか。うーん、やっぱりオレたちのキャストカックイー。ヽ(@▽@)ノ
 この場合‥‥おや、1/4+1/4で総量の1/2、貴方たちが活躍する量がずいぶん増えているではありませんか。

 ここで、1/2をコンビの2人の2で割ったら元の1/4と同じじゃんという考え方もできますが‥‥1つのアクトで4人がそれぞれ完全にばらばらの独立した物語を体験していくよりも、互いの接触、介入があった方が、活躍できる量は確実に増えます。
 機会があったら他のキャストに絡んでみましょう。他のキャストが3人いたら全員に絡むのは難しいし不自然な場合もありますから、1人2人に絞ってアタックしてみましょう。そこから生まれる予想外のドラマやちょっといいシーンもあるはずです。『スリードッグナイト』の欄外にも、ロールプレイの基本は「自分も相手もカッコよく」だとこっそり書いてありますよ。

 それに――面白かったアクトを思い返すとよくあるのですが、一番盛り上がったり笑いを取ったり記憶に残ったりするのは、シナリオの本筋とはあまり関係ない、キャスト同士の絡みの場面だったりすることがよくあります。


★事前の準備をしてみよう


 N◎VA-Dのルールでプレアクトは説明されており、特にRLには欠かせない作業ですが、PLにも大切です。
 プレアクトはアクト開始直前の準備段階と定義されていますが、ここでは直前より以前の段階も含みます。いわゆるプレプレアクトと言った方がいいかもしれません。
 参加者がみなインターネットに繋げる環境にあるなら、コンテンツやBBSで導入の提示もでき、キャストの調整もできるでしょう。メールやチャットでも打ち合わせはできます。繋げない環境でも、携帯電話や直に会うなど、方法はあります。
 他のプレイヤーは、そして他のキャストはどんな面子が揃ったでしょうか。貴方の分身と一緒に運命の舞台に立っているところをちょっと想像してみましょう。彼らとはどんな関係になりそうでしょうか。彼らとこんな台詞をやりとりしたら楽しくなりそうだったり、キャスト間コネに相応しいちょっとした過去の設定を思いついたり、なんだかワクワクしてきませんか?
 そしてアクトトレーラーが提示されていれば、シナリオも想像できるでしょう。親切なRLなら事前にどんな話なのか、ムードや、どんなゲストが出てくるのか、ほんのちょっとだけ教えてくれるかもしれません。
 貴方の分身はそのシナリオのムードに相応しいでしょうか。きっとあんなシーンがあってそこに登場したり、きっとこんなことをしてくるゲストが登場して、そこにこんな台詞を言ったらきっと盛り上がりそうだったり‥‥擬音つきの妄想が広がっていきそうで余計にワクワクしてきませんか?

 そうです。そうやって遊んだアクトは何倍も楽しくなるのです。プレアクトやプレプレアクトの事前の準備には、「気持ちが高まる」という重要な効果があるのです。本格的なシナリオや記念すべきアクトを遊ぶ際には特に、事前の準備を多めに整えましょう。

 余談ですが、当ウェブサイトのセッション・レポートに掲載されているアクトの多くは、見えないところでこの事前の準備を行っています。


★獲得経験点にこだわりすぎないようにしよう


 厳密に経験点消費を数えてプレイしている方には、この項目は除外になります。
 N◎VA-Dの経験システムは、経験点を貰えるような行動を取ればよいプレイになるように工夫されています。とはいえ、常にそれが働くとは限りません。経験点のためだけではなく、よいアクトのためにアクトを遊びましょう。シーン登場回数が埋まらなかったり、神業を使い切れなくても、面白くて仕方のなかったアクトというのは存在します。
 例えばよく言われますが‥‥《死の舞踏》が余ったからと言ってエンディングでなんの脈絡もなくそこらへんの人を斬るのはちょっとナニでアレでしょう。[0以下:ダメージなし]が自由に選べるようになったN◎VA-Dでもやっぱりちょっとナニでアレです。
 えっ、桜華道場に行って悠羽との練習試合で使った? それは‥‥ニューロかも。


★カメラの前は人でいっぱい


 リサーチシーンが始まれば様々なことが起こります。様々なシーンがあって、様々なゲストやエキストラが出てきて、キャストは次々登場したり、カードだけ出しておいて予約したり、虎視眈々と機会を伺いながら夏王朝四千年の歴史に伝わる“登場判定の構え”(嘘)に入ったりするでしょう。
 シーンではどこかでカメラが回っています。登場人物が沢山出てくると一人一人が色褪せてしまったり、元々のシーンプレイヤーが誰なのか忘れてしまったり、キャスト/ゲストが入り乱れて誰が誰に向かって喋っているのか分からなくなったり、混乱することもあります。
 実際、例えばキャスト5人が同じシーンに登場してPL5人が独立して喋っていると、PL一人一人は格好いいロールプレイをしているつもりでも、シーン全体を眺める視点にあるRLから見ればただの烏合の衆にしか見えないこともあります。
 そんな時は出番は次のシーンでGetしようと登場判定の構えは解いて、他に譲るのも手です。そしてそんな時、一旦シーンを閉じて改めて次シーンに行くのも、RLのテクニックです。
 ここで言うカメラとは‥‥次の話で詳しく述べることにしましょう。


★演出の助け舟:銀幕の向こう側を意識してみよう


 さて貴方はアクトの中で自分のキャストのロールプレイをしたり、演出を考えたりしていくことでしょう。ここで助け舟をひとつ。
 そのアクトが映画になったと仮定してみましょう。想像するだけですから出来について心配することはありません。きっとものすごく面白い映画です。
 ならば各シーンでは、どこかでカメラが回っているはずです。カメラがレンズの中に捉えているものは様々です。
 スティンガーとの約束の店を探してうらぶれたストリートを彷徨うキャストを遠景から写しているかもしれませんし、キャストが右手の先にエニグマを召喚する時はそこにズームアップするでしょう。他のキャストが登場したり、闇の中から敵ゲストがゆっくりと登場したら、カメラはそちらに向くでしょう。そしてきっとシーンプレイヤーのキャストの方には、優先してカメラが向くことでしょう。
 そして、出来上がった映画を、銀幕の向こう側で観客が見ているはずです。
 あるいはそのアクトがリプレイになると仮定してみましょう。こちらも想像するだけですから出来は無問題です。きっと読んだ人はみんなまた遊びたくなるような超ニューロな面白いリプレイでしょう。地の文でシーンが描写されて、次に貴方たちが交わした会話が文章となって読み手に伝わっていきます。読み手は仮想的な銀幕を通して、その向こうのキャストたちを見ています。
 あるいは演劇の舞台でもいいです。舞台でキャストたちが演技して、舞台と観客席の間の仮想的な銀幕を通し、一段下の観客席で観客たちが見ています。
 あるいはコンシューマーゲームのRPGの戦闘シーンを。自キャラとモンスターたちが対峙していて、プレステ等のアナログスティックをぐりぐり回すと視点が変わるところを。この時はテレビの画面が銀幕になります。

 この銀幕やカメラを意識して、その向こう側の観客に分かるように仕草や台詞を言ってみましょう。別にカメラ目線になれと言っているのではありません。(笑)
 そのシーンで自分たちのキャストは今どんなふうに映っていて、カメラの焦点は今どこに向いているのか。そんなことをちょっと想像しながらロールプレイすると、なんとなくうまくいくことがあります。シネマティックな映画的アクトを遊ぶなら、意識してみるのもいいですよ。


★ライブラリーを増やしていこう


 多くのTRPGゲーマーは小説を読んだり漫画を読んだり、映画を見たりTVを見たりコンシューマーゲームをやったり音楽を聴いたりその他諸々、様々なものから、ストーリーやシーンの断片、イメージの欠片を得ています。N◎VAを遊ぶ人でもそうです。
 貴方もきっとそうでしょう。それでいいのです。そうやって自分の中の図書館に蓄積されたものを増やしていきましょう。単一の作品の単一のキャラクターをそのままコピーして演じたらそれはパクリでしょうが、複数の作品の様々な断片が交じり合って更に貴方の独自の部分も入っていたら、それはもうオリジナルです。
 そうやって内なる図書館の引き出しから引き出せる蓄積が増えてくれば、こんな場面でこんなことをすれば盛り上がるんじゃないか、こんなことを言えばちょっと格好付くんじゃないか、やっぱりここはこうするのがセオリーだろう、そういうものが自然と出てくることが多くなります。


★究極的な勝利とは:全員の勝利である


 TRPGは勝敗のないゲームだとも言われますが、勝利はあります。そしてそれは――全員で勝ち取った勝利です。N◎VAでも変わりません。
 PLとRLのくだらない対立とか、些細なルール解釈の議論とか、そういうものは脇に置いて全員で勝ちましょう。みんなが活躍でき、みんなが楽しめるようにしましょう。ちょっとした気配りや譲り合いの精神で、アクトはずっと楽しくなるものです。

 2004年に公開した本コンテンツと同時期に発売されたオフィシャルのリプレイ『カウンターグロウ』には偶然ながら似たようなことがけっこう書いてあり、偶然とは不思議なものだと思うところなのですが。
 稲葉義明氏のあとがきにこう書いてあります。掲載されたリプレイはいずれも「参加者全員が楽しむ」という精神を持ってアクトを運営されていると。
 これは当たり前のようでつい忘れがちで、意外に多くの人が知らないままでいることです。この精神があればN◎VAのアクトの勝利条件も自然と上のように定まってきます。この気持ちを忘れないようにしましょう。


★困ったら基本に返って:楽しく遊ぼう!


 さて最後になりました。様々な事項に関し述べてきましたが、全てを常に意識しつつ、N◎VA-Dの正しいルールも適用しつつ、周りの参加者とキャストを認知しつつ、全てを実行しながらプレイヤーとして遊ぶのも大変でしょう。
 筆者もプレイ時に気をつけていることはいろいろありますが、どんなアクトの際も全てが実現できているとは言い切れません。ヽ(´▽`;)ノ
 そんな時は基本に返って――楽しく遊びましょう。TRPGは趣味で、我々は楽しみを得るために時間その他のリソースを消費して、取り組んでいるのです。そしてTRPGは遊び方次第でいくらでも楽しくなります。貴方のイマジネーションをニューロエイジまで伸ばし、とびっきりのアクトを作ってやりましょう。
 楽しく遊んでいる人は周りが見ていても楽しくなるものです。そして回りも一緒に楽しくさせましょう。


 以上でプレイヤー向けのプレイングTips&コラム集は終わりです。
何か少しは役に立ったところはあったでしょうか? あったとすればそれを筆者の喜びといたしましょう。
 それでは、貴方の分身たちの集う舞台の上に、天輪が恵みをもたらしてくれますように‥‥
 
 

When the Fortune rings out

天輪の音が響くとき
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