『ア・ルア・イーの魔道書』《演劇の書》
「三つの八弦琴の物語」

散策の章

 静かに眠る有角の公女ディーヌと一角獣フラールの夢が封印から漏れ出し、様々な幻視となって一行を導きます。
 多くの深淵のシナリオと同様(‥‥なのかな?)、本編でも情報の多くが夢歩きとして与えられ、それゆえ重要となってきます。
 GMはプレイヤーの出した運命カードの語り部欄を見て、相応しいと思う夢を語ってあげてください。
 色々なイメージを用意したので、取り混ぜて示していくだけでもそれらしく不思議な感じが出ます。数字が大きくなるほど重要=後で与えられるべき夢となります。(順番や内容、台詞などはGMが適宜変えて構いません)
 人物や情景の描写などをあいまいにしておくと(すべては“夢”なのです)、GMが思っている以上に、PCとプレイヤーは色々と迷ってくれることでしょう。

 特に鏡の公女エリシェと有角の公女ディーヌはどちらも「銀髪の女性」なので、何が何だか分からなくなるかも知れません。プレイヤーが初心者の場合は片方は妖艶でまがまがしい魔女のイメージ、そしてもう一方には邪悪な雰囲気は感じられないことを示してください。深淵を知っている方の場合は示す必要はありません。あいまいな描写に留めてしばし悩んでいただきましょう。

鏡の公女の夢。

 立ち込める霧の向こうに見える何か。そこへいくべきであるような気がする。
「さぁ、進むのじゃ‥‥」女性の声が聞こえる‥‥

 君を招く若い女性の笑い声。姿は見えない。視界の隅にちらりと、流れるような銀髪が見えた‥‥

 銀色に輝く大きな鏡が目の前に。その中に、自分の過去が映し出されている‥‥

 霧の向こうに広がる湖。その中心の小島、崩れた城。
「さあ、使命を果たせ‥‥」また声が聞こえる‥‥

 激しい戦いの幻影。輝く鎧を纏い、強力な魔剣で次々と巨人を斬り捨てて倒していく鏡の騎士。いま少しで目指す本陣に辿り着けるところで何かが輝き出し、銀の騎士は結界の中で動けなくなってしまう。

 いずことも知れぬ塔の一室。巨大な鏡の前に傅く銀髪の女。彼女は頭を上げ、「‥‥はい、父君様のためならば」と鏡に向かって微笑む。

 意識が肉体を抜け、飛んでいく。崩れた古城、雑草の中に見えた古鏡の刻印、手を触れるとそのしるしは輝き、地中への階段が姿を現わす。

 松明に照らされる暗い一室。古鏡の魔法陣の上に大理石でできた一角獣の像。そこで君は何かをかざし‥‥

 十二とひとつの塔の聳える何処かの都市。ある塔の一室に視点が移り「無念‥‥鬼将と呼ばれたこの私が‥‥」鏡の中から男の声がする。
(鏡の大公ルドラウ様です)

10 「同じ古鏡の座に属するものなれば、我らの申し出にも応えることでしょう」微笑む銀髪の女性。
 鏡の中に騎士の姿が浮かび上がり、「頼むぞ、エリシェ‥‥我が娘よ」と答える。

11 封印の破壊者の運命を持つPCの故郷や過去が映し出され、その背景で銀髪の魔女が妖艶に微笑む。

アステリエの夢。

 ある貴族の領地、花の咲き乱れるのどかな風景。花畑の中を二人の少女が歩いている。白金の髪をした線の細そうな娘と、彼女に従うように歩く金髪の娘。二人は花束を交換し合い、微笑みあう。その風景が消え‥‥

 風吹きすさぶ平原。青白い柄の短剣を握り締め、アステリエが馬と共に孤独な旅を続けている。

 小さな館で主が臨終の時を迎えようとしている。侍女たちが泣いている。主は金髪の娘を側に呼ぶと「我が娘を‥‥頼む‥‥」と苦しげに囁く。

 ゆらめく蝋燭の明かり。アステリエが一心不乱に薄青の装丁の書物を見ている。視点が移り、書物の一頁へ。彼女の指差す先に、一角獣の挿絵が‥‥

 貴族の小さな館。白金の髪をした儚げな姫が病に伏せり、咳き込んでいる。侍女たちが「死の病だなんて‥‥」「セルシェ姫さま‥‥お可哀相に」と目を伏せる。

 青白い柄の見事な短剣。柄に彫られた一角獣の絵。それが誰かから誰かの手に渡される。

 煙を上げる館。駆け寄るアステリエの前で、誰かが殺されている。鉤爪でつけられた数筋の傷。立ち込める甘やかな香り‥‥
(北方出身のPCなら、悪名高いギュラニン党かもしれないことを匂わせましょう)

 燃え上がる部屋。寝台に駆け寄るアステリエ。寝たきりの娘が弱々しく囁く。「わたくしはいずれ死の翼に迎えられる身。貴方だけでも、生きて‥‥」

 「いつぞやの祭りで、我が父が求めたものです。これを私と思って‥‥私の分まで生きて。さあ。」寝台の側で泣き崩れる娘。

10 炎に包まれ、崩れ落ちる館。少し離れたところで馬にまたがり、館を振り返るアステリエ。意を決したように目を背けると、彼女は馬を駆ってどこかへ消えていく‥‥

湖畔の王国の夢。

 銀の鏡の如く穏やかな水面。美しい城が湖面に映る‥‥

 穏やかな森。一角獣の群れが楽しそうに走っている。背後には湖、聳える城‥‥

 流れるような銀の髪をした穏やかな顔つきの美しい女性が、一頭の一角獣の頭を優しく撫で、語り掛けている。一角獣は嬉しそうに目を閉じ‥‥

 累々と横たわる一角獣の死体。人々の死体。汚れた湖面‥‥

 色とりどりの衣に鎧を纏った美しき騎士たち。湖の中央に城を象った建造物が造られている。魔道師らしき人物が「この地が封印の場というならば、美しき王国の眺めを留め、安らかなる眠りの地としようではないか」と誰かに呟き呪文を唱える。足元の石碑には古代の文字、そして古鏡の紋章が‥‥
(彼らは妖精騎士団です)

 湖の中央の小島、崩れかけた古城跡。PCたちが、古城を照らす月を見上げている‥‥

有角の公女の夢。

 天空を舞うは龍の群れ。様々な異形の軍勢が巨大な城を目指して進む。その中に、一角獣の群れを率いて進軍する戦士公女の姿が‥‥

 累々と並ぶ死体の山の中、ただ一人生き残った女性の戦士とただ一騎の一角獣が放心したようにそれを見つめている。

 白き鎧に青白い刃の大剣を携え、城内を進む女武者が呟く。「許さぬ、神帝リアンドラ。我は七度蘇っても、お前を憎しみ続ける‥‥」
(蒼き死の公女ルハーブ様です)

 墜ちてゆく巨大な城を背景に、何者かが語る。「だが、我らも神々の影、影ゆえに勝てなんだというのか?」「憎しみを糧にここまで来たというに‥‥」それを悲しげに見つめる、額に角を持った女性‥‥

 廃虚の中、龍刀を携えた女性が誰かに語る。「ならば、共に戦おうではないか。そなたは湖畔の王国の最期の一人、私もまた星の民の最期の一人なれば」
(風の公女ピスケール様です)

 何処とも知れぬ一室。青白い刃の大剣を携えた公女が苦しげにうめく。「私の‥‥私の復讐を返せ‥‥!」 彼女を悲しげに遠くから見つめる、もう一人の女性‥‥

 影絵のように見える一連の情景。額に角、蛇の尾、赤子を抱いた不思議な女性が、傅いている若い女性の頭に手を触れる。すると、その女性の額に、従えている一角獣の如き角が‥‥
(蛇姫オラヴィー様です)

 古代の戦いの情景。遠くに見ゆるは巨人の軍勢。それを迎え撃つように、異形の軍勢が野に、空に居並ぶ‥‥

 美しい髪をした女性の将校が軍勢に指示を出し、盾を捧げ持った公女が騎士達に命を下す。側には斧槍を携えた黒衣の美女、鷹を引き連れた龍刀の公女、蒼き魔剣に騎士鎧の公女‥‥

10 居並ぶ公女から少し離れた所で、一人の女性が戦いの時を待っている。腰には剣、率いるは一角獣の群れ。その額には角が生えているが、少しもその美しさを損なってはいない‥‥

11 戦いの幻影。破魔の力を持つ巨人たちとの激戦。様々な軍勢を率いた諸侯たちが次々と憤死していく。そして戦いの中、主を庇おうとした一角獣が巨人の槌矛に倒れ、そして騎乗していた主もまた‥‥

12 西方風の軽鎧をまとい、一角獣にまたがった美しい女性が、森を駆けてゆく。流れるような銀の髪に手をやり、振り返ると銀の鏡の如き湖、そして静かに聳える城‥‥

 

銀の仕切り線なり。
.........『ア・ルア・イーの魔道書』《演劇の書》「三つの八弦琴」の物語.........散策の章(夢歩きのイメージ集).........

前章(湖畔の章)へ戻るなり。     《演劇の書》の目次へ戻るなり。    次章(色数の章)を開くなり。

RI-Foundation > ア・ルア・イーの魔道書 > 演劇の書 > 散策の章