<8日目> カスバ探索とファンタジアを堪能 | |||||
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- ●1999年11月12日(金)
- 9:00 出発。今日は一路、マラケシュへ向けて走ります。ワルザザードを出てすぐにあるのが、ティフルトゥトのカスバ。「アラビアのロレンス」のロケにも使われた、美しいカスバです。そこで、しばし、写真撮影。
これが、今から行くアイト・ベン・ハッドゥの全景。
- 10:00 バスはさらに北上して、アイト・ベン・ハッドゥのカスバに到着。ここはユネスコの世界遺産にも指定された、有名なカスバです。先程の「アラビアのロレンス」の他、いくつもの映画のロケにも使われたところでもあります。ここをゆっくりと見て回ることで、実際のカスバの中がどうなっているのかを知ることができる、というわけです。バスを降りて、川を渡ると(増水していなくてよかった、浅瀬の川の中に、足場がちょんちょんと置いてあるのを、足で渡っていくのです)、目の前に巨大な要塞が立ちはだかります。正面からは入れないので、右の方へ迂回して、脇から村の中に入っていきます。入る手前のところでは、日干しレンガを作っている職人さんがいます。そ、この辺りの建物は、全て、この日干しレンガで造られているのです。昨日、いや、一昨日あたりからバスの車窓から見えている家々は、全て、この日干しレンガでできているのです。土から作ってはるのを見て、あんなんでも立派に建物が建つんやなぁ、と思ってしまいます。門の中に入って行くと、村の中はフェズのメディナのように、細い道がくねくねと続いていきます。しかも、このカスバ自体が山の斜面に造られているからなのですが、アップダウンが結構、厳しかったりします。カスバとは、要塞というような意味で、要は、敵の侵入を防ぐための砦、という意味あいなのでしょう。なるほど、これほどの砦なら、確かに敵も簡単には侵入できないだろう、と実感することができます。ひとしきり登りつめると、ちょっと休憩、そして、さらに上へと登っていきます。砦の頂上まで登ろう、というわけです。力をふりしぼって、歩いて行くと、最後の方はもう、道らしきものがあるようなないような感じで、ほんまの登山というふうでしたが、何とか頑張って、頂上へ。すると、 …むっちゃ、素晴らしい眺めが360度に展開しています。眼下には今登ってきたカスバが広がり、その向こうに川が流れ、そして、広大な南モロッコの大地がはるかかなたまで広がり、ふと北を向くと、オート・アトラスの山々が連なっているのが見える… 壮大なパノラマに、しばし声も出ないような状態でした。息を切らせて登ってきた甲斐があったというものです。この景色を堪能した後、今度は降りていくことになります。
要塞の頂上 頂上からカスバの中を見る 頂上からカスバの外を見る カスバの中の住居の付近
- そうやって、カスバの中を一通りぐるっと見終ると、実際にここに住んでいらっしゃる方のお宅にお呼ばれされます。ベルベル人の暮らしがどんなものなのか、を間近に見せていただくというわけです。玄関をくぐり、普段は寝室として使っているというお部屋に案内されます。質素な雰囲気の部屋で、ベルベルの絨毯がしいてあり、隅には毛布のような布団が積まれています。最近になって電気なども入るようになり、便利になったとのことですが、それまでは、何もない状態。それでよく生活してこれたなぁ、と感心してしまいます。そうしていると、出されるのは、やはり、ミント・ティー。ずっと歩いてきただけに、美味しいですね。そして、何と、奥様が焼いてくださったというパンがふるまわれます。…これがまた、格別に美味しい! 焼き立てということもあるのかもしれませんが、それでも、今までのホテルでの朝食に出てきたパンのどれに比べても、とっても香ばしくって、一番、美味しいです。でも、大人数の我々のために、これだけのパンを焼いてくださるなんて、とても大変だったでしょうね。ありがとうございます…
- お家を後にして、ぐるっとカスバの中を抜けていき、外へ出ていきます。再び川を渡ると、昼食です。アイト・ベン・ハッドゥへの入り口のところにあるレストランです。カレーのような味のスープが妙に印象的でした…
- 13:00 出発。バスはいよいよ、オート・アトラスを越えるべく、走っていきます。ごつごつとした岩肌が続く山道を、くねくねと曲がっていきます。モワイヤン・アトラスと違って、風景の変化を楽しむ、というコースではなく、こちらは、ダイナミックな風景を楽しむ、というコースです。さすがにオート・アトラス、その大きな山がぐんぐんと近付いてくる様は、なかなか壮観であります。
オート・アトラスの山々
- 途中で、1回、トイレ休憩。ここの土産物屋でも、いろいろと石の製品を売っています。ぶらぶらと見ていると、妻が、思わず奇麗!と言うて、とあるネックレスに一目惚れしてしまいます。青の石をつなげた、ちょっと数珠のような感じのネックレス、なるほど、確かに、フェズ・ブルーではありませんが、青の色がとっても綺麗で、ちょっとお洒落です。これも必死に値段交渉して(現地ガイドさんの手助けもあって)、100DHでGETしました。
- 15:00 最高地点のティシュカ峠(標高2,260m)に着きます。と思ったら、急に曇ってきて、冷たい風がふきつけ、ぱらぱらと雨が降ってきました。写真撮影もままならないまま、そのあまりの寒さに、そそくさとバスへ引き返してしまいます。
- 峠を越えると、しばらくは、ずっと濃い霧が、バスの前に立ちこめています。本当に真っ白で、何も見えない状態。怖ぁ〜い、と思うていると、いつしか、段々と霧も晴れてきます。と、見えるのは、ぐにゃぐにゃと曲がりくねった山道。バスがこれから降りていく道が、見えるのです。そのカーブのすさまじさは、日光のいろは坂の比ではありません。むっちゃ急なヘアピンアカーブが、次から次へと出てくるのです。これを、この大きなバスで巧みに降りていく、運転手さんのその腕さばきには、ほんと、感心します。さすが、プロではあります。
- 霧が晴れて、さらにしばらく行くと、やがて、車窓の風景が、変わっていることに気がつきます。山肌が赤茶色になっているのですね。そう、この赤色の土が、この地方の特徴なんですね。この土の色をもって、マラケシュは、「赤の都」とも呼ばれるのだそうです。フェズの街並が白かった印象があるだけに、見慣れない者にとっては、この赤色、ちょっと無気味にも見えてしまいます。でも、こんな土もあるのだと思うと、何か不思議な感じもします。そして、改めて大自然の力というものを感じるのでした。途中、雨水が流れているのを見ましたが(ちょうど、私達がここを通る前々日や前日くらいに、雨がたくさん降ったのだそうな)、その水の色も、やはり、この赤土を含んでいるから、赤色。何年か前には、これよりももっと大規模に雨が降って、洪水が起きて、大きな被害をもたらしたのだそうですが、その時の爪痕らしきものも、ちょっと見ることができました。確かに、どこか、もろそうな感じはしますもんね、この土って。雨が降った時は、さぞや大変なことだろうと思います。
- 18:00 マラケシュに到着。ホテルにチェックインします。今日のお宿は、「Sheraton Marrakech Hotel」さんです。さすが、シェラトン、ここも大きなホテルです。
- 19:45 再び出発。え、どこに行くのかって? 今回のツアーの1大イベント、ファンタジアショーを見に出かけていくのです。場所は、マラケシュの郊外にある施設(と言うかレストランと言うか…)。バスで30分ほど行ったところにあるその施設、「Chez Ali Marrakech」さんは、一見、何か怪しい雰囲気を漂わせています。門の前には、ずらりと、騎馬にまたがった騎士達が並んでいて、我々を迎えてくれます。そ、この騎馬軍団こそが、このファンタジアショーの主役なのであります。ファンタジアとは、昔の騎馬軍団の戦いを再現するものなのです。幻想、というイメージから、メルヘンチックなものを想像してはいけません。(^^; その迫力はすごいもの、ということを聞かされ、期待に胸が踊ります。
- そして、入り口を入って行くと、すぐに、ベルベル族の結婚衣装を着た2人組の間に入れられて、一緒に写真を撮られます。私達夫婦も2人一緒に映ったのですが、何かこの撮影というもの、とっても機械的に流している、という印象がしたのは私だけかしらん… そこを抜けて、中へ入っていくと、そこにファンタジアの舞台があります。舞台と言うても、いわゆるホールの舞台ではありません。あるのは、大きなグラウンドです。そ、ファンタジアは野外の土の上で行われるのです。観客はその周りをぐるっと囲むようにして座り(又は立ち)、見物するわけです。既に観客もぞろぞろと大勢、入場してきています。そんな観客達を、迎えてくれるのが、ベルベルの民俗音楽を奏でる、多くのバンド達。民俗衣裳を着飾った女性に、太鼓を鳴らしてリズムを刻む男性、その熱気あふれる演奏に迎えられて、何だか、こちらも気分はハイになっていきます。各バンドの前で写真を撮らせていただいたりして、なかなか先へ進めません。(^^; けど、ここはちょっと我慢して、まずは、自分達の席のあるところへ。席と言うても、ここで座る席は、ショーを見るためのところではなくて、その前に食事をとるところ、です。先の舞台の周りに小屋のような建物が並んでいて、その中が、食事をとる場所になっているのですね。観客達は、まず、それぞれの小屋に入り、ディナーを楽しんで、それから、始まるショーを見るわけです。私達もとりあえず、自分の席に着いて、必要なオーダーをしてから、再び、さっきのバンドの立ち並ぶところへ、その音楽を聴くために戻ります。
民俗音楽を演奏してる皆さん
- ベルベルの音楽… 聴いていると、なかなか独特のリズムを持っていることに気がつきます。それは、言葉で言い表わすのは難しいのですが、超「変拍子」といったところ。それを、大小様々な太鼓で演奏していくのです。これは、そう簡単には、私達にはマスターできないのではないかしらん… 太鼓の他にも、チャルメラみたいな管楽器等もあって、そんなのを見ているだけでも、楽しいというもの。一人、何と、ヴァイオリンを縦に持って弾いている人がいたのには、ちょっとびっくり、でしたが… そして、このリズムに合わせて踊るのが、美しく着飾った女性達です。赤や緑など、鮮やかな色の衣裳を身にまとい、複雑なリズムを、いとも簡単にステップを踏んでいるのです。ベルベル人と一口に言うても、実際には、またいろいろな部族がいるのだそうで、そうした部族ごとに、音楽もちょっとずつ違っているのだそうです。なかなか、その辺の違いまでは分からなかったのですが。
- 一通り、ぐるりと回って、食卓へ戻ると、いよいよ、ディナーです。今日のメニューは、とぉっても豪勢なもので、最初は、イスラム教徒が断食明けの時に飲むというスープ。くせのない味で、なかなかいけますね。メインは、クスクス。ここで、ようやく、本場の味を、じっくりと味わうことができます。(お腹の調子もだいぶ良くなったし。)野菜がたっぷりのった、その周りにある細かい粒状のものは、何だろうと思っていると、実はパスタの一種なのだそう。それは知らなかった、と食べていると、その中から、大きな鳥肉が出てきます。へぇ、こんなものが入っていたんやぁ、と皆、驚きながら、食べます。うん、さすがに美味しいですね。そして、最後に、パスティラというものが出てきます。これは、滅多に食べることのできない、超高級なモロッコ料理。何と、ハトの肉をパイで包んで焼いたものなんですね。ハト! そう思うてしまうと、ちょっと怖い面もあるのですが、食べてみると、…とっても甘いんだな、これが。砂糖がかかっているのか、とっても甘いんです。その甘さが、ちょっと腹にキそうだったんで、勿体ないんですけど、ちょっと残してしまいました。超高級料理だというのに、残念で勿体ない話ではあります…(--; そうそう、このディナーの間、さっきの民俗音楽のバンドが、小屋の中に入ってきて、テーブルのすぐそばで演奏をしてくれるのです。民俗衣装の女性達に誘われるままに、踊りの輪の中に入って一緒に踊っているお客さんもいましたが、やっぱり、一緒に合わせて踊るのって、難しそう… 隣のテーブルにいた、ドイツ人(と思われる)のお客さんも、踊ってましたけど、こっちは、やっぱり、日本人とはノリがちょっと違って、ほんまのノリノリでした… 西洋人の方がリズムとか覚えやすいのかな。
- と、楽しいディナーが終わると、お客さんは、ぞろぞろと、舞台の周りの方へと移動していきます。少しでもいい所でショーを見ようと思うのは、やはり、世界中、誰しもが考えることなのでしょうか。私達も、舞台の角の辺りの一番前に陣取ります。結構、いい場所だと思います。既に夜も更けてきて、外気は結構、寒かったりします。寒い中、ずぅっと待っているのって、辛いぞぉ。(全ての観客が、ディナーを終えるまでは、絶対にショーは始まらない…)
- 22:40 いよいよ、ファンタジアのショーが始まります。場内の照明が落とされると、どこからともなく、民俗音楽を演奏しながら、一団がぞろぞろと行進してきます。これは、先程から、辺りで演奏して回っているベルベル族の一隊ですね。グラウンドをぐるっと1周して、さぁ、これから始まるよ、ってなとこです。そうすると、今度は、舞台(グラウンドではなく、あえて、舞台、と書きます)の奥から、何やら大きな台のようなものが動いてきて、その後に馬車が続きます。何だ?と思っていると、大きな台は舞台前面の方にまで出てくると、停止。すると、馬車から美しき姫君(?)が降りてきて、大きな台=ステージに上がります。会場のスピーカーから民俗音楽らしきものが流れてきて、それにあわせて、彼女は踊り始めます。ソロによる、民俗ダンスであります。これだけの多くの観客の前で、スポットライトを浴びながらのダンス、う〜む、なかなか怪しげでいいですねぇ。(^^; ソロダンスが終わり、舞台から去っていくと、今度は、舞台奥から、4頭の馬が、舞台前面へ、疾走してきます。ちょうど、私達は、この舞台前面の右隅の一番前に陣取っていて、まさに馬がこっちへ向かってくる、という感じです。おぉ、と思っていると、やがて、4頭は、まとまって、舞台奥、第1コーナーの辺りへ引き返していきます。と、そこから1頭がだだだっとまた走ってきます。徐々に加速して、第2コーナーを曲がる辺りで、出ました、騎士の馬上での見事なアクロバット競技。そ、この4頭(4人)は、アクロバットを披露してくれるのです。馬上で腰を思いっきり浮かせたり、体を横に倒したり、鞍にぶら下がるような格好になったり、いろいろと見せてくれます。その度に会場からは大きな拍手。でも、一番、湧いたのは、おちゃらけなのでしょうけれども、いきなりポニーにまたがって疾走(?)してきた時。小っちゃなポニーも一生懸命、走ってきて、その上でも見事にアクロバットを、…ちょっと失敗しちゃったみたいですけど(^^;、ま、これも一興、でしょう。
- そうして、会場が湧いた後、いよいよ、ファンタジア本番です。ファンタジとは、簡単に言えば、馬にまたがった騎士が、向こうから走ってきて、最後に、手に持った鉄砲を、どん、と打ち鳴らす、というものなのです。日本で言えば、やぶさめみたいなものかな、と思っていると、…舞台奥から馬が走ってきます。4〜5頭が舞台いっぱいに並んで、一気に前面へ向かって疾走してきます。見ると、騎士達は手にしっかりと鉄砲を持っています。だだだっと走ってきて、前面、ちょうど私達の目の前の辺りにきたところで、急停止、大音響で、鉄砲を天に向かって、どぉん!と鳴らします。その耳をつくような音の大きさと言ったら!その迫力には身もすくむようです。発砲した後、騎士達は会場の拍手に応えながら、引き返していきます。そして、また別の組が、向こうから走ってきます。また、どぉぉん!という大音響。これが3回くらい繰り返されたでしょうか。いやはや、何ともすさまじいものです。単に、走ってきて、鉄砲をどん、ただそれだけ、と言ってしまえば、それまでですが、なかなか迫力のあるものです。
これがファンタジア本番。馬が疾走してきて、どん!と鉄砲が鳴るのです…
- 一通り終ると、今度は、また民俗音楽隊が出てきます。打楽器を鳴らしながら、前面の方へ出てきて、何が始まるのかと思うて見ていると、一隊の中から順番に出てきてのダンス(というか、アクロバットというか…)の披露です。これはベタでやっているので、ちょっと見づらい、という気もしたのですが、やっていることは、なかなか面白そうなことです。中にはコサックダンスみたいなものもあって、民俗ダンスもいろいろとあるんだ、と思います。…でも、ちょっと長くありません? そろそろ飽きたかな、というところで、ようやく終わり、一隊は引き上げていきます。そして、本日2回目のファンタジア本番。さっきと同様に、4〜5頭の組が次から次へと走ってきては、どん、と発砲します。すげぇ、と思っていると、最後の組がひときわ大音響で発砲したかと思いきや、突如として会場に鳴り響くのは、オルフの「カルミナ・ブラーナ」。(^^; ここからエンディングであります。舞台奥から、次から次へと花火が夜空に打ち上げられます。秋の夜空の花火、花火と言うても日本のもののように、ぱぁっと花が開くようなものではありませんから、玉やぁ!って感じでもないのですが、「カルミナ・ブラーナ」に合せて打ち上げられていくので、何か、ひきつけられますね。(^^; 花火にあわせて、本日の出演者全員が、舞台をぐるりと1周して、お客さん達の拍手に応えています。そして、最後の一発が上がると、全て終了。と思いきや、またファンタジアの1組がだだだっと走ってくるじゃありませんか。何?と思う間もなく、どぉん! うぅ、やられたって感じで、ファンタジア・ショーは終ったのでした。
- 終了と同時に、一度に大勢の客が出口へ向かいますから、会場はラッシュ・アワー状態。人混みをかき分けて、ようやくのことで、添乗員さんの待つところまでたどり着いたのでした。そして、バスに乗り込むと、どうやら、我々のツアーのバスが一番最初にここの駐車場を出るようです。回りを見れば、多くのバスが停まっている… バスの混雑に巻き込まれることなく、一番に出ることができたのは、やはり、せっかちな日本人、だからなのでしょうか…(^^;
- 24:30 ホテルに着いて、一息入れれば、もうこんな時間。早く寝よ…
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