<9日目>
マラケシュの喧噪
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●1999年11月13日(土)
7:00 起床。今日くらいから、ちょっとは食べても大丈夫かな、ということで、朝食も昨日までよりはちょっと多めにとります。マッシュポテトみたいなのが美味しかった…

9:00 出発。今日は1日、マラケシュの市内観光です。まずは、メラナ庭園へ。ホテルの近くにあって、バスですぐに到着。貯水池の脇に建っているパビリオンが可愛らしいです。はるか彼方には、オート・アトラスの山々がかすかに見えていて、なかなか眺めがいいですね。かつては、スルタンもここでデートをしたのだとか。素敵なところです。池をぐるっと半周する形で歩きます。

クトゥビアのミナレット

 そして、またバスに乗り、今までもずっと車窓に見えていた、マラケシュのシンボル、クトゥビアのミナレットにやってきます。遠くから見ても、きれいなミナレットなのですが、近くによると、その美しさと大きさに、圧倒されます。昨日の夜に、着いた時には、ライトアップされていたのですが、これがまた綺麗でした。まさにマラケシュのシンボルですね。細かな部分の彫刻も、もちろん細やかで美しいです。これもまた、イスラム建築の傑作なのでしょうね。

                          クトゥビアのミナレット →

 次に、またバスで移動して(今日の移動はバスが中心だ…)、マラケシュを代表するアグノウ門を見ながら、サアード朝の墳墓群へとやってきます。サアード朝は、今に至るアラウィー朝の前にモロッコを統治していた王家。メクネスにお墓のあった、ムーレイ・イスマイルがアラウィー朝を起こした時に、このサアード朝のお墓を壁で囲んでしまったために、なかなかその所在が分からなかった、という、ちょっと悲劇的な感じもするところです。墓廟には3つのお部屋があり、王の墓、皇后の墓、子供達の墓となっています。それぞれに特徴がありますが、やはり、王の墓の神々しさには、なかなか圧倒されます。鮮やかなモザイクの壁面と、綺麗な大理石の柱が印象的です。でも、墓廟の外の庭園の部分に出ると、他の観光客とぶつかり合うほどの混雑。昨日のファンタジアも異様に混んでいたとのことで、ひょっとしたら、ここへ来ている観光客の皆さんも、昨日のファンタジアの会場にいたのかもしれませんね。

王墓の中その1王墓の中その2
サアード朝の墳墓群の中を見る

 そして、エル・バディ宮殿を横に見ながら、パヒーヤ宮殿にやってきます。…が、本日は、何と、国王様がこちらへいらっしゃているため、ここの門は閉ざされたまま。私達は中に入ることができません。というわけで、予定を変更して、すぐ近くのダル・シ・サイドへとやってきます。ここは工芸博物館であります。モロッコのいろいろな工芸品が集められているのです。フェズの陶器やベルベルの絨毯など、これまでに見てきたようなものが、ずらりと並んでいます。言うてみれば、ここまでの復習、みたいなものでしょうか。2階の部屋には、家具なども並べられており、婚礼の時に使う椅子、なんてものもあったりして、なかなか興味深いものです。

 昼近くなってくると、私達も昼食をとりに、いったん、ホテルへ戻ります。そう、今日の昼食はホテルで、なのです。でも、その前に、ホテル近くのアクセサリー屋さんに寄って、ベルベルのアクセサリー等を物色します。またお買い物…?って感じですが、でも、見ていると、素敵なものもたくさんあります。懷の具合と相談しながら、私達も、ごく小さなペンダント・トップを買いました。ハート型の、きれいな小さな石です。妻は店員さんに薦められるままに、いろいろとネックレスやらいろいろと試着させられていたようですが(たぶん、若い新婚の奥さんということで薦めてきたのでしょう…)、うん、なかなか似合ってますな。(^^) 買わなかったけど。

12:40 ホテルへ帰ってきて昼食。中庭のプールサイドにあるレストランでです。シチューみたいなスープに、白身魚のソテー、そしてデザート(ケーキ)です。ソテーも結構、さっぱりとした感じで、美味しかったですな。下痢止めの薬はまだ手放せないけど。(--;

14:30 再び、ホテルから出発。午後は、いよいよ、マラケシュのメディナへと入っていきます。バスで入り口まで連れていってもらった後、メディナを歩きます。同じメディナと言うても、フェズのメディナとはちょっと違いますね。道幅も、フェズに比べれば広いし、割と歩きやすいような感じはします。というか、ガイドさんが、あえて、狭い道は外して案内してくれているのでしょうね、たぶん。道の両側には、やはり、何やら面白そうな店も並んでいて、興味は尽きません。その先の細い道の方は… そこまでは踏み込めていないので、分かりませんが、ひょっとしたら、フェズ以上の世界が待っているのかもしれません。何と言うても、マラケシュにはモロッコの全てがそろっている、と言うくらいですから。だから、こうやって歩いているコースは、ツアーの皆さんも、結構、疲れているのでは、ということをかなり意識して設定されているような気がします。そして、ガイドさんに案内されるままに歩いていくと、とある薬局屋さんに着きます。別に私の下痢止めの薬を買うわけではないのですが(^^;、ここで、しばし、店長さんから、ベルベルの薬について、いろいろとお話を伺います。店内の棚には、ずらりと怪し気な薬の入った瓶が並べられています。これとあれとを調合して、どんな薬を作る、といったお話ですが、中には、何、これ?というような、とぉっても怪しい(?)ものもあったりして、本当に大丈夫なの?と思ったのは、私だけではないでしょう、きっと。(^^;

メディナの中

メディナの中を歩く

 薬局を後に、くねくねとした狭いスークの中を抜けていくと、ジャマ・エル・フナ広場に出ます。フナ広場、こここそが、マラケシュ最大の、いや、モロッコでも一番の見どころ、というところでしょう。まだちょっと早い時間ではありますが、そろそろ、夕方の一番賑わう時間に近付いてきていて、人だかりもでき始めています。何をがあるのか? それは、アクロバットがあり、蛇使いがあり、その他大道芸人が芸を披露し、屋台が立ち並ぶ、とぉっても賑々しい広場なのであります。私達はまずは、この広場全体を見下ろすことのできるカフェに入り、ここから広場をぐるっと見渡します。…上から見るだけでも、何か楽しいですね。いっぱい人が集まっているのって、やはり、その街の元気を表しているようで、見ているこちらも、わくわくしてきます。そして、お待たせの、フリータイム。約1時間、好きなところを見てきていい、ということになります。私達もとりあえず、カフェを出て、広場の方へ向います。行くと、蛇使いが何やらやっている… と、チップをくれへんと見せへん、と言われて、すごすごと引き下がります。(^^; で、せっかくだから、近くのスークの中を覗いてみよう、とスークの方へと入っていきます。今回の旅行で、妻が最初の頃から、欲しいと言うていたものが、実は、イスラム女性のするようなサリーなのです。フェズとかで買うことができたら、と思うていたのですが、なかなか機会がなく、ここまで来てしまったのですが、今日こそは、とスークの中を捜しまわります。…と、店はすぐに見つけることができます。色とりどりの綺麗な生地のものがそろっています。妻の希望するものは、黒地のもの。これは? …ちょっと小さい、他のサイズのは? と店員さんに言うたら、出してきてくれたものが、ちょうどいいサイズ。頭からすっぽりとかぶることのできそうな大きさです。しかも、刺繍みたいなものが施されており、とっても美しいものです。彼女に言わせれば、イランとかで言うたら、かなり派手な感じらしいのですが、それでも、お洒落な雰囲気の一品です。交渉の結果、100DHでGETすることができました。1千円くらいで買えたと思うと、とってもお買得をしたように思います。ついでに、店にいた他の現地の女性のお客さんに、これをどうやって頭にかぶるのかを教えてもらったりして、ちょっとは現地の人との交流も持てた…かな。(疑問)

フナ広場その1フナ広場その2
フナ広場を、テラスから見下ろす

 さらに、スークの中へと入っていき、何かないか、と見てまわります。買うてってやぁ〜、と声をかけてくる店員の多いのは、大阪とかの商店街でも同じようなものなのかもしれませんが、それでも、店の奥からわざわざ出てきてまでして、声をかけてくる人がいたのには、ちょっとびっくり。そこまでするか、と思ってしまいます。そうした客引きも含めて、多くの人々が行き交い、とっても活気づいた街、そういうふうに思うていると、妻は陶器屋さんを見つけて、中に入っていきます。フェズで既にいいものは買っているのですが、その後、どこぞの土産物屋で見かけた、花瓶がとっても綺麗で、印象に残っていて、それと同じようなものがないか、探していたのです。小さなサイズで、花の1〜2本をさしておくのにぴったりなもの、そのようなものを探していたのですが、…なかなかありませんね。花瓶だ、と思うて見てみると、ちょっと大きかったり、或いはディスプレイ用で売り物ではない、と言われたり… それでも、何か、いいものが欲しいな、と見ていると、やはり、店員さんが、何を探しているのか、と聞いてきます。これ、とディスプレイ用のものを指さすと、これは売られへん、と言い、さらに、ちょっと待ち、と、何と、隣の店や向いの店に、同じようなものを探しに行ってくれるのです。何も、そこまでしなくても…と呆気にとられていると、戻ってきて、同じようなものはない、と残念そうに言います。彼も頑張ってくれたのですし、私達も残念に思いながらも、その店を後にします。…と、すぐ近くの店の中に、ちょうどいいものがあるのを発見。これや、これ、と嬉しそうに寄っていく妻。で、そこの店員さんと値段交渉が始まります。最初は300DHとか言うていたのですが、私達も頑張って、何とか200DHに。それでもちょっと高い気はしたのですが、じゃ、お勘定を、と言うと、彼は、何やら、私の胸ポケットに入っているボールペンを指さして、これをくれ、と言うてきます。これまでも、土産物屋とかに入る度に、店員さん達が、やたらとボールペンを欲しがるのを見てきていたのですが、これがまた、モロッコの人達の特徴なのかもしれません。別にボールペンのコレクションをしているとかいうのではなく、勉強とかをするため、或いは一定の社会的基準のひとつで、ボールペンを持つことがある種のステータスになっているのでは、と思うのです。これまでは、要求される度にしぶしぶと断ってきたのですが、今度ばかりは、彼もなかなか熱心だったので、つい、根負けしてしまし、私の胸ポケットのものを進呈することにしました。黒ボールと赤ボールとシャープペンとの3本が1本になったものです。こうして回すと、黒ボールが出てきて、こうすると赤やでぇ、と説明すると、彼は、とても嬉しそうに、あぁ知っている、とペンを回して、3本が一つになっていることを喜んでいるようです。そして、何やら、棚の方からごそごそと、これはおまけや、と、ごく小さなベルベルの鍋のミニチュア(?)を取り出してきます。可愛い!ものなのですが、え、これ、ほんまにええの?と聞くと、ええから持っていけ、と。やったぁ、こんな可愛らしいものがついて、それで200DHだったら、まぁ、ええかな、と。彼にあげたボールペンだって、ローソンで500円くらいで買ったものだし、あんなに彼に喜んでもらえるのなら、むしろ、あげてよかったと思います。ほんと、ボールペン1本で、お買い物も、ずっと楽しくなるものです。今度、モロッコに来る時はボールペンをいっぱい持ってこよう。(って、また来る時があるのだろうか…)

 …と、短いフリータイムでしたが、なかなか楽しむことができました。マラケシュのどまん中で、その喧噪とか熱気とかを直接、肌で感じることができ、ほんと、よかったと思います。そして、またフナ広場を横切り、人込みを押し分けて、バスのところにまで戻ります。サリーをかぶった妻を見て、現地ガイドさん、「Oh!」と声をあげていました。もちろん、添乗員さんや他の参加者の皆さんも、おや、という感じで見ていて、嬉しいような恥ずかしいような…

17:00 ホテルへ帰ってきて、ゆっくりと休憩。こうしたのんびりとした時間を持てるのって、なかなかないですよね… あと少しでこの旅行も終わり、と思うと、妙に切なくなってきます。日本に帰って、時間に追われる生活に戻ることができるのだろうか、と余計な(?)心配もしてしまいます…

19:30 ようやく夕食。今日もビュッフェ形式。久しぶりにたくさん食べてしまいました。メニューもいろいろとあって、どれも美味しかったです。でも、一番は、シェフがその場で作ってくれるパスタ料理。レストランの中に、屋台みたいになっているコーナーがあって、そこで料理してくれているのです。スパゲティやマカロニ、ペンネ等の中から好きなパスタを選び、ボンゴレとかソースの種類を選び、希望に応じてさらに追加の具を選び、それを、シェフが、目の前でフライパンで料理していくのです。それだけ、と言えば、そうなのですが、でも、そうしてできたてのパスタをいただくことができるのです。私はスパゲティにボンゴレでしましたけど、とっても美味しかったです。今までの食事の中で一番美味しいと言うてもいいほどでした。

23:00 さ、今日も疲れました。寝ることにしましょう。

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