スイスの散歩道


目次 = Table Contents

Part− 1 フルカ=オーバーアルプ鉄道・1(ディセンティス〜アンデルマット)
Part− 2 フルカ=オーバーアルプ鉄道・2(アンデルマット〜ブリーグ)
Part− 3 オーブバルデン地方
Part− 4 スタルデンの村(ヴァリス州)
Part− 5 フィリズールの村(グラウビュンデン州)
Part− 6 スタッツァー湖(グラウビュンデン州)
Part− 7 チェントヴァッリの谷(ティチーノ州)
Part− 8 ステッチェルベルグ(ベルナー・オーバーラント)
Part− 9 プフィコン(チューリッヒ州)


Part−1 フルカ=オーバーアルプ鉄道・1(ディセンティス〜アンデルマット)

フルカ=オーバーアルプ鉄道(FO)と聞いてピンと来る方はかなりのスイス通です。
このFOはヴァリス州のブリーグ(Brig)からグラウビュンデン(グリゾン)州のディセンティス
(Disentis)間の約100kmを結んでおり、他にアンデルマット(Andermatt)と
ゴシェネン(Goschenen)間の支線があります。ディセンティス〜ブリーグ間は、氷河急行の
コースの一部になっているので、無意識にFOに乗っていたという方は、多いのではないでしょうか?
因みに氷河急行は、RhB,FO,BVZの各鉄道の共同運行です。

では、ディセンティスからブリーグに
向かって出発です。ディセンティスは、
ほとんどの地図にDisentis/
Musterと書いてあり、修道院を
中心に発展して来た街です。
大きなリゾートではなく、しっとりと
落ち着いた雰囲気があります。

ディセンティスを出発した列車は深く
切れ込んだ谷に沿って登り続けます!
谷底はラインの源流の一つ、ボーダー
ラインが流れていて、目もくらむ様な
高さです。
最高地点、オーバーアルプ(Ober
Alp=2040m)。6月でも1m
以上の残雪があり、冬季に於ける鉄道
保守の苦労が想像出来ます。
ディセンティス駅 87年5月25日撮影

ここからは下りになり、しばらく走り続けるとアルムの中を大きく曲がりくねりながらアンデルマット
(Andermatt=1436m)に向かい降り始めます。標高差600mを一気に下るのですから
正に圧巻。このルートのハイライトです。底に見えるアンデルマットの街並も素敵です。
アンデルマットはスキーのためのリゾートで、スキーシーズンと夏期のほんのわずかなシーズン以外は
ひっそりと静まり帰っています。そんな時期に訪れるとスイスの素顔に触れる事が出来ます。

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Part−2 フルカ・オーバーアルプ鉄道・2(アンデルマット〜ブリーグ)

FOの本線の運転系統は、アンデルマットを境にして二つに分かれており、氷河急行以外はここで必ず
乗り換えとなります。
アンデルマットからブリーグの間には、かつてフルカ峠
(Furkapass=2340m)越えという最大の
ハイライトがあり、ローヌ氷河(Rhoneglet−
scher)の圧倒的な迫力を楽しむ事が出来ました。
冬季は余りにも積雪が多いため、線路自体を取り外して
しまうというこの難所も、現在は全長約11kmに及ぶ
フルカ・トンネルの開通により通年運行が可能となった
訳です。しかしその代償として最も迫力のあったフルカ
峠越えがなくなってしまい「氷河急行の旅も面白くなく
なった。」と以前を懐かしむ声も聞かれます。

オーバーワルト(Oberwald)から僅かに見える
旧線の跡も少し寂しそうです。しかしこの地域の人々に
とって、このトンネルがどれ程ありがたいのか、そんな
事を考えながら、何度もフルカ・トンネルを抜けました。
列車は今度は、ローヌ河に沿って下り続けます。

途中のフィッシュ(Fiesch)からはエギスホルン
(Eggishorn=2927m)へのロープウェー
が出ているので、時間に余裕のある人にはおすすめです。
アレッチ氷河(Aletschgletscher)と
ベルナーアルプス(Berneralps)を南側から
見れるのですが、その荒々しさは、北側から見るのとは
比べものにならず、恐怖感さえ覚えます。
フィッシュからは30分ほどで終点のブリーグ。
アンデルマットの街並
89年4月19日撮影
ちょっぴり地味ですが、本当にスイスらしいFOの旅。氷河急行で走り抜けるよりも、各駅停車でのん
びりどうぞ。

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Part−3 オーブバルデン地方

チューリッヒから、ベルナー・オーバーラント(Berner−Oberland)に向かうルートと
しては、ベルン経由とルツェルン経由とがあります。
インターシティを使えばベルナー・オーバーラントの玄関、インターラーケンまで、ベルン経由の方が
早いのですが、景色はルツェルン経由の方が圧倒的に美しいと言えるでしょう。
ルツェルンからインターラーケンまでの路線は、SBB(スイス連邦鉄道)の幹線が標準軌幅になって
いるのに対し、山岳部ではアプト式になるためにJRと同じ、狭軌(1067mm)となります。

ルツェルンを出発するとすぐに、オーブバルデン(Obwalden)州に入りますが、このあたりは
おだやかな風景が続きます。州都のサルネン(Sarnen)も可愛くて、思わず住んでみたくなると
思うような街です。
サルネン湖(Sarnensee)、ランゲルン湖(Lungernsee)と小さな湖が続き、特に
ランゲルン湖はエンガディン(Engadin)地方の湖を彷彿とさせる、宝石の様な、たたずまいを
した美しい湖です。

ランゲルン付近 (96年7月21日撮影)

線路はランゲルン湖の南側の高台に敷かれており、またランゲルン駅も高台にあるため、湖をはさんで
ジスビラーストック(Giswilerstock=2014m)の美しい姿も良く見えます。
このままインターラーケンまで行くよりも途中下車して、湖のほとりまでぶらぶらと歩いてみたりする
のも楽しいです。
天気の良い日にはジスビラーストックの山頂付近から、多数のハンググライダーが青空に向かって飛ぶ
姿が見られます。

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Part−4 スタルデンの村(ヴァリス州)

ヴィスプ(Visp)を発車したツェルマット行きの電車は、ヴィスプ川に沿って登り始めます。途中
からアプト式になり、ぐんぐんと高度をかせぎながら、葡萄畑の傍を走り、やがてスタルデン=ザース
(Stalden=Saas)の駅に停車します。
ここは有名なスキー・ツァー、「オートルート」の起点
としてご存知の、ザース・フェー(Saas=Fee)
の村が、奥に控える、ザースの谷(Saastal)と
マッター谷(Mattertal)が合流する場所です。
マッター谷の奥にそびえ立つのが、マッターホルンです。
そして、ここから谷を挟んだ高地にある村がスタルデン
です。

この村へは、ポスト・バスでも行けますがスタルデン=
ザース駅から出る、4,5人乗りの小さなロープウェー
で谷を一気に渡るのがいいでしょう。
駅の片隅に、小さなロープウェーを見かけた事のある人
もいると思いますが、そのロープウェーです。
扉は自分で手で閉め、ロックも自分でかけます。 僕は
ちょうど、スタルデンの村に住んでいる、高校生二人と
一緒に乗り合わせたんですが、風に揺れるロープウェー
は、ちょっとしたスリルでした。
眼下遥か下には、ヴィスプ川の流れ...

スタルデンまでは、10分ほど。高校生達とおしゃべり
してたら、学生時代を思い出してしまいました。

村は教会を中心に広がっていて、少し歩けば、葡萄畑や
アルムの中に農家が点在しています。
スタルデンの村
96年 7月25日撮影
何の、さえぎる物もなく開放感にあふれた、のんびりと牛が歩くアルムをぶらぶらしていると、本当に
「スイスにいるんだなぁ...」という気がします。
ハイジの物語の舞台になった、グリゾン州のマイエンフェルトとは遠く離れているのですが、木陰から
ハイジとペーターが笑いながら飛び出して来そうな...そんな気がします。

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Part−5 フィリズールの村(グラウビュンデン州)

グラウビュンデン(Graubunden)=グリゾンの州都、クール(Chur)を出発したRhB
鉄道(Reichenaubahn)のサン・モリッツ(St.Moritz)行きの列車はしばらく
ライン河沿いに走った後、ライヒェナウから南に向きを変えサン・モリッツを目指します。
RhBは、FO,BVZの各鉄道会社と共同でおなじみの「氷河急行」を運行しています。
ツージス(Thusis)等のおとぎ話に
出て来そうな、美しい村々をいくつか走り
抜けながら列車は次第に山間に分け入って
行きます。
そしてクールを出て約1時間、小さな山間
の駅、フィリズールに到着です。

ここは、サン・モリッツ方面とウィンター
スポーツで有名な、ダボス(Davos)
への分岐駅ですが、ダボスへはクールから
直接行く方が便利なため、チューリッヒ等
からの観光客が、この駅で乗り換える事は
滅多にありません。
たまに、サン・モリッツからダボス方面に
行く人が乗り換えるくらいで、列車が停車
した後は、静寂が訪れます。
かつて、日本の山間を走っていたローカル
鉄道の駅を思い起こさせる様な、何となく
懐かしい気がする...そんな雰囲気です。
山間の静かなフィリズール駅
’89年4月20日
駅を出て、裏山に登ってみました。
有名な観光地等と違って、ハイカーの姿も少ないのですがハイキングコースの標識はしっかりしており
迷う事はなさそうです。
山道を歩いていたら、松の木を見つけました。森林限界近くでハイマツを見かける事は良くありますが
日本で見かける様な、”松の木”は初めての経験でした。このあたりの穏やかな山容と併せ、懐かしい
気がしました。そんな風景と、緑の中に鮮やかなコントラストを見せる教会の白壁。「ステキだ!」の
一言で片付けるには、余りに美し過ぎます。

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