環六高速道路に反対する会ニュ−ス
No.13
1992年9月11日
アセスの欺瞞性を徹底的にあばきだす
− 被告の前回の主張に対する反論,そして新たな主張 −
7月2日午前11時,東京地方裁判所606号法廷で第5回の口頭弁論が開かれました。原告側は代理人のG・W・W弁護士と原告ら20名が出席しました。今回の私たちの主張(準備書面四の一,二)を以下にまとめておきます。
被告の前回の主張は今までの繰り返し
1.道路建設を認可した建設大臣が,東京都の条例に違反しても都市計画法違反にはならない。
2.環六拡幅の環境影響評価(アセス)を行なわなくても東京都環境影響評価条例(アセス条例)違反にはならない。
これに対する私たちの反論
1.条例に違反した都市計画認可は,都市計画法違反である。
都市計画法の中の「都市計画が法令に違反しない場合には認可する」という条文の
”法令”には条例も含まれることを詳しく論証しています。
2.環六拡幅の環境影響評価を行なわなかったのは環境影響評価条例違反である。
@環八ではアセスを行なっているのに,なぜ環六では行なわないのか?
条例では「条例制定当時にすでに着手していた事業はアセスが不要である」(条例附則3項)とされています。環六の場合すでに幅員22mで供用されているし,品川区から板橋区の全長20kmの都市計画全体を見れば40mに拡幅されて完成している部分がある(例えば豊島区要町以北)から着手されていたことは明らかでアセスは不要である,というのが被告の主張です。それに対して我々は,アセスは都市計画全体に対して行なうものではなく,個々の事業に対して行なうものであり今回の8.2kmの拡幅もアセスが必要であるということを論証しています。このことは,計画全体では40kmの環状八号線で,すでに着手・供用された部分があるのにもかかわらず,長さ2kmの未着工部分の建設に対してアセスを行なうための届け出が行なわれている事実により裏付けられています。
A首都高速道路公団は環六拡幅の費用を大幅に負担している
条例では「関連する2以上の事業を合わせて行なおうとする場合には,それらを合わせてアセスを行なう」(条例9条2項)よう定められています。中央環状新宿線の場合,地上の環六拡幅がなくては工事ができません。さらに予算面からみても,地上の拡幅は場所によって少なくとも1/3,場所によっては100%公団がその費用を負担していることから,両者の緊密な関係がうかがえます。公団は,首都高速道路公団法の「高架,あるいは地下に高速道路を作る場合,関連街路の改築が必要な時にはその費用の一部を負担する」という規定に基づき負担するのです。この点からも環六拡幅のアセスを行なわなかったこの事業が,アセス条例9条2項に違反していることは明白です。
私たちの新たな主張
1.事業認可申請手続きに新たな違法性を発見
前回の準備書面の中で被告は,環六拡幅事業の予定区域の中にはすでに40m道路として完成している部分があるから事業に着手していたのは明らかであると主張しています。これは奇妙なことです。今回の事業は,事業が行なわれていないから事業認可を受けて,これから工事を行なおうとしているはずです。問題の場所は環六と甲州街道の交差点の南側,長さ11mの部分です。昭和37年に事業認可を受けており,おそらく京王線の地下化に関連して行なわれたのだと思います。今回の事業認可はこの完成部分を除いてなされるべきで,明らかな都市計画法違反です。これだけでも認可取り消しの理由になります。
2.アセスではさまざまな不当な手法で大気汚染予測値を低く抑えています
@根本的に間違った式による窒素酸化物予測
自動車排ガス中には多量の窒素酸化物(NOX),すなわち一酸化窒素(NO)と二酸化窒素(NO2)が含まれます。この内ぜんそくの原因となり人体への影響が大きいのはNO2で,本件のアセスでもインタ−チェンジ部,トンネル坑口部でのNO2の予測を行なっています。しかし,NOは空気中でNO2に変化するため,NO2の予測にはNOXからNO2への転換式による推定が必要です。いろいろな転換式が考えられていますが,本件のアセスで採用されているのは環境影響評価条例技術指針にも登場しない,数学的にも成り立たないでたらめなものであることが判明しました。技術指針にある正しい手法で再計算したところ,本件アセスによる予測は不当に低い値になっていることが分かりました。
A環六・高速道路からは都内NOX総量の1割以上が排出される?!
アセスではバックグラウンド補正という奇妙な数字操作が行なわれています。これは,この道路周辺地域の将来NOXの平均的な濃度,すなわちバックグラウンド濃度を求める際の数値に,この道路に起因するものがすでに含まれており,それにこの道路からの寄与分を足して予測地点の濃度を算出すると,寄与分が重複計算されてしまうからその分を差し引く,というものです。それ自体間違いではないのですが,引く量が大きすぎるのです。計算によれば,都内のNOX総排出量の11%は拡幅後の環六と地下高速道路から排出されることになってしまうのです。この補正を正しく行なうと,補正しない場合と数値は変らず,こんな補正は無意味だ,ということが分かります。アセスではこんな手段を使ってまで数値を低く抑えようとしているのです。
今後しばらくは今回のように私たちの主張を具体的に,かつ強力に押しだしていくことになるものと思います。次回もお楽しみに。
第6回口頭弁論は9月17日(木)
前回と同様,東京地方裁判所6階の606法廷で11時から開かれます。なお当日は午前9時30分に西武新宿線中井駅に集合しますが,直接法廷に行かれてもかまいません(地下鉄丸の内線霞ケ関駅下車,歩2分)。弁護士らによる事前の説明が10時30分から行なわれますので,その時間までにお集り下さい。
印紙代返還申し立てに却下決定
「私たちの裁判に対して,原告一人一人について訴訟手数料を求めたのは違法である」として訴訟費用約400万円の返還を求めていた訴え(過納手数料返還申し立て)に対し,7月29日東京高裁は却下の決定を下しました。2月10日の地裁決定に対して私たちが抗告していたものですが,大変残念な結果です。本件は原告が何人でも審理の内容は同一ですから全体で8,200円のはずで,原告の数によって増額するのは不当です。8月3日,特別抗告を起こし,最高裁判所でも引き続き争うことにしました。
最終局面をむかえた公害審査会
7月16日に第8回の公害審査会が開催されました。
冒頭,私たちは,「都や公団が全く譲歩しない態度を取り続け,調停委員会も私たちからの鑑定申し立てや工事差し止め勧告の要望に対して,なんら対応を示さないという状況の中で,これ以上調停を進めることは無意味である」と宣言しました。双方共に不調(調停不成立)にしても構わない,という意志を持っていることを確認した後,委員会と申請人側の和久田弁護士だけとの話し合いが行なわれました。その結果,「委員会は不調をできるだけ避けたいから,他の調停グループとも調整して委員会独自の調停案を提案したい。しかし,もし提案できない場合にはこのまま調停を打ち切る」ということになりました。委員会としても私たちの主張の方が正しいとは考えているようですが,それをはっきりすることもできません。今後,調停委員会の独自の調停案がでてきたときにはその対応を考えなければなりませんが,これまでの経過から考えて,その場合でも私たちの主張とは大きく隔たっている可能性が大きく,調停に期待は持てません。道路計画を調べれば調べるほど,違法性や危険性が次々と見つかる以上,私たちは,この道路計画の中止を求め,裁判一筋に強力に運動を進めたいと思います。
道路をめぐる動き
構造等検討区間として切り離されていた中央環状新宿線豊島区部分1.4kmについての都市計画手続きが急ピッチで進められています。この部分は,当初すべて高架で計画されていたものが住民らの強い反対で地下部分を増やす方向で計画変更がなされました。しかし,地下化しても新たな換気搭ができ,問題が数多く残るのは豊島区以南の区間と同様ですから地元では根強い反対運動が起こっています。この部分の環境影響評価書でも,今回の法廷で提出した準備書面の中で指摘したのと全く同じ不当なNO2予測が行なわれています。豊島区の会員が,説明会などでそのことを指摘しましたが,その問題になると都や公団の職員の対応が全く変わってしまい,一切回答を拒否しています。裁判で提出した私たちの書面が与えた衝撃の大きさがうかがえます。
次回の定例会は9月19日です
裁判や調停への取り組み方など,会の方針はすべて,毎月第3土曜日午後2時より開かれる定例会で決定しています。といっても決して堅苦しいものではありません。場所は本会代表宅です。10畳ほどの部屋でやや狭いものの,かえって肩の張らない気楽な議論ができます。皆様お気軽にご参加下さい。
恒例の秋のリサイクルバザー
道路建設反対運動の資金作りのために,皆様のお宅に眠っているご不用品などの提供をお願いいたします。また,準備や当日のお手伝いなどもよろしくご協力お願いいたします。ご連絡をお待ちしております。
日時:10月25日(日)11時から 2時頃まで (雨天の場合は11月1日)
会場:S駐車場
必見!私たちの活動がテレビに
「東京の地下」 9月22日深夜1時40分 フジテレビ ノンフィックス
都内各地の地下開発の現状と問題点を紹介する1時間番組。中央環状新宿線の問題点とそれに反対する私たちの活動が紹介されます。ビデオにとってぜひごらん下さい。