環六高速道路に反対する会ニュ−ス
No.15
1993年4月15日
被告建設大臣に対して裁判官から注意
昨年11月27日,論点整理のための非公開の手続き(準備手続き)が,裁判官と双方の代理人だけの出席で行なわれました。その内容は,裁判が私たちにとって大変有利に進んでいることを示すものですのでご紹介します。
この準備手続きの直前になって被告側は,すでに私たち原告側が準備書面4,5で指摘していたさまざまな問題点についての反論(準備書面4)をようやく提出しました。しかしその内容は,自分たちの手続きが正当である,と繰り返し述べるだけで具体的な論証を回避したものでした。アセスにおける窒素酸化物予測式の不当性に対する反論は一切なく,地盤沈下の危険性が極めて大きいという指摘についても,アセスでボーリング調査をしていないことについても,まともな反論をしていません。この準備手続きはそうした状況をふまえて行なわれました。
「事業の正当性を主張しなくていいの?」
この準備手続きで裁判長は「少なくとも地権者については原告適格が認められるので,実質的な審議を行なう」ことを明らかにしました。これにより審理に入る前に却下せよという被告の主張は受入れず,門前払いの可能性はなくなりました。思惑通りです。その上で裁判長は,被告建設大臣に対して,都市計画決定および認可・承認の手続きについて,証拠をあげてきちんとその正当性を証明する必要があることを明言しました。裁判長がこういう指摘をしたということは,被告・建設大臣のこれまでの主張が不備であると裁判所が認識していることを示すものです。つまり,この発言は「このままでは被告の負けになるけどいいの?」といっているのに等しく,正直なところ,ここまで明確な発言がなされるとは予測していませんでした。
2月2日の準備手続きでも再度注意
11月27日の裁判長の指摘を受けて,被告は私たちの主張に対する本格的な反論を展開してくるものと予想していました。しかし新たに提出された被告準備書面5の中では,既に完成しているのに再度都市計画決定を行なった部分があるという手続き上の問題について,わずか2頁あまりの反論をしてきたに過ぎませんでした。このような被告の態度に対して裁判長もきちんと反論するよう再三にわたって促しましたが,被告はこれ以上積極的な反論はしないと宣言しました。
私たち原告側の主張に自信はありましたし,反論が困難であろうとも思っていましたが,このような被告の態度には真意を図りかねています。裁判官としてはこのような大きな事業について国の負けという判決を書くのはかなり勇気のいることでしょうが,被告が充分な主張をしないのに,それ以上に被告の立場を考慮して負けを勝ちとしてしまうことはできません。被告が何を考えているのか,もう少し見守る必要がありますが,弁護団会議では早期に結審に持込む方が得策ではないかという意見も出ています。
注目の次回法廷は4月21日です
次回法廷は4月21日(水)11時から11時30分まで,東京地裁606法廷で開かれます。裁判長の方から30分の時間をとったのは初めてです。これは議論にのってこない被告に対し,裁判長がその真意を明らかにしようということと思われ,今後の行方を左右する,極めて重要な法廷となりそうです。大勢の皆様が傍聴に参加されますことを期待しております。なお,いつもの通り9時30分に西武新宿線中井駅に集合しますが,直接法廷に行かれてもかまいません(地下鉄丸の内線霞ケ関駅下車,徒歩2分)。また,開廷に先立ち,10時30分から法廷隣の控室にて事前の説明会を行ないます。閉廷後の弁護士による説明会も,11時30分から1時まで,東京弁護士会館の101号室で行ないますので,ぜひご参加下さい。
準備書面6を提出
私たち原告側の弁護団は,昨年12月27日から28日にかけて都内で合宿して,これまでの双方の主張を再検討しましたが,そこでの討議を元に,それまでの法律的な主張を補充すると共に,道路建設により渋滞が減少しても交通量が増大するから窒素酸化物は増加すること,浮遊粒子状物質も悪化することなどを主張しました。
都市計画法の目的に沿わない都市計画は法律違反である
都市計画法は,都市計画事業が都市の健全な発展と公共の福祉の増進に寄与することを求めていますが,被告はそれに縛られることはない,との訳の分からない主張をしています。環6拡幅と地下高速道路の建設事業がそうした都市計画法の目標に反していることはこれまで再三にわたって主張してきましたが,今回は純粋に法律上の主張を展開しました。
公害防止計画は環状道路整備を無条件では認めていない
被告は「中央環状新宿線整備は公害防止計画の施策の一つである”環状道路等の整備”であるから,公害防止計画に適合している」と主張しています。確かに公害防止計画では車の流れを円滑化するための施策として環状道路の整備を上げていますが,そこでは環境保全に配慮して対策を講じることを求めているのです。本件道路建設における環境保全対策が全く不充分であることは再三述べてきたとおりです。その上,交通の円滑化が達成できた場合にどの程度のNOX削減につながるかを計算してみると,中央環状新宿線建設で新たに年間360トン以上のNOX増加が見込まれるのに対し,渋滞減少の効果はどのように多めに見積もっても185トンの削減に過ぎません。つまり175トン以上のNOX増加が起こるのです。渋滞解消によるNOX削減など道路建設による交通量増加の前で吹き飛んでしまいます。このような事業が公害防止計画に適合しているはずはありません。
中央環状新宿線で浮遊粒子状物質もますます増える
浮遊粒子状物質は発ガン物質を含みさまざまな健康被害を起こしますが,環境基準達成の見込が全くなく,極めて深刻な状態が続いています。本件道路建設でもまともな対策がなされておらず,ますます悪化することが見込まれます。しかも,現時点では正確な予測が困難であるとしてアセスすら行なわれていません。しかし,東京都アセス条例の技術指針関係資料集にはちゃんと予測手法が記載されているのです。明らかにアセス条例や,公害防止計画に反しているのです。
印紙代返還訴訟に却下決定
私たちは,この訴訟を起こした時に裁判所から要求された約400万円の印紙代について,返還の要求をしていましたが,昨年12月4日最高裁判所で却下決定がなされました。これにより400万円が返還される可能性が全くなくなっただけでなく,新たに行政訴訟を起こす場合には,必ず人数に応じた印紙代が必要となり,その意味では極めて影響力の大きな決定となってしまいました。国民の裁判を受ける権利を守るためには行政訴訟法で印紙代について明文化する必要があると思います。
これまでの裁判の経過は予想以上に有利に展開しています。多くの方々に支えられてきたおかげで,400万円払ってでも裁判を起こしてよかったと思います。今後,この400万円が無駄にならないよう,皆で力をあわせて頑張りましょう。
1993年分の年会費をご納入下さい
今年の会費未納の方には振替用紙を同封してあります。前記のように昨年末では若干の余裕がありましたが,証人や鑑定書作成に対するお礼,調査研究費など裁判の最終段階へ向けて費用や,ステッカー作りなど,支出が急増することが予想されます。至急納入して下さいますようお願いいたします。年会費は,1世帯(または事業所,学校など)あたり2000円です。
原告に対する不当な圧力
環六沿道のアパートに一人でお住まいの原告Kさん(女性)は,大家さんに原告を降りるよう強く迫られていました。この背景には公団側から大家さんに対して「原告がいるようでは売買の交渉には応じられない」として圧力があったようです。そのような中で昨年12月17日,Kさんが勤務先から帰宅したところ,大家さんによってドアの鍵が無断で取り替えられており,着替えすら持てぬまま追い出されてしまいました。これに対してKさんは,私たちの会や弁護士と相談の上,すぐに現状復帰の仮処分申請を起こし,もとに戻ることができました。私たちの会としては困難な中でもこの裁判のことを考えて原告に留まっているKさんを応援するため,外泊を余儀なくされた際のホテル代などの一部を負担すると共に,今後もできるだけ支援していきたいと思っています。
地権者の方々へ
都や公団の動きが活発となっています。測量に関する連絡がありましたら「立ち退きませんから測量には協力できません」といって拒否して下さい。また,どんなことでもお気軽に私たちの会の弁護士とご相談下さい。
定例会は第4土曜日に変更します
これまで第3土曜日に開いていた定例会を,4月より第4土曜日午後2時から4時までと変更することにいたしました。4月は24日,5月は22日となります。場所はこれまで同様,本会代表宅です。ごく気楽な会ですのでお気軽にご参加下さい。
ステッカーを作りました
順調に進んでいる裁判とは裏腹に,私たちの運動の方はいま一つ盛り上がりに欠けています。反対運動の存在すら知らない人もまだまだたくさんいらっしゃるようです。そんな空気を一新させようと,親しみやすくどこにでも貼れるような小さなステッカーを作ってみました。ご自宅だけでなく,ご近所の方にもお願いして,街中にステッカーであふれさせたいと思いますので皆様のご協力をお願いいたします。ご賛同の方は会の方までお申し出下さい。
おわび
前号のニュース14号が発行されてからなんと5ヵ月が立ってしまいました。発行が大変遅くなりましたことをおわび申し上げます。この間も,本号に掲載したように,準備手続き,準備書面の検討,Kさんの問題への対応など,ニュース作成の余裕がなかったというのが実情です。(その代わりこれまで最高の8ページです)なにとぞご容赦の程お願いいたします。また,皆様のご協力を切にお願い申し上げます。