環六高速道路に反対する会ニュ−ス
No.19
1993年12月20日
来年1月13日,いよいよ最後の法廷
ぜひ,多くの方々のご参加を!
私たちの裁判は,いよいよ次回法廷で結審を迎えることになりました。1991年5月に提訴して以来わずか2年半余り,公害裁判の多くが長期化する中で異例の速さで審理を終えます。この最後の公判では,最終準備書面を提出し,私たちのこれまでのさまざまな視点からの主張をもう一度きちんと整理すると共に,充分言い尽くせなかった点も補充しておきます。現在,万全を期すべく弁護士を中心に最終的な検討を行なっているところです。判決は結審から2ヵ月程度で出されるのが普通ですから,3月にも判決ということになると予想されます。
短期の裁判ではありましたが,私たちとしてはやるだけのことはやりました。もちろん,短期結審の理由の一つには被告の側が主張・立証を充分に行なわなかったこともありますが,私たちの方もさまざまな角度から徹底的な検討を加えて,ともかく裁判に勝つことに焦点を絞って主張・立証活動をしてきたことが大きな理由です。これまでにない画期的な判決が出るものと確信しております。
注目の最終弁論は1月13日(木)午前11時より,東京地裁606号法廷で開かれます。いよいよ最後ですので大勢の方の傍聴をお願いいたします。西武新宿線中井駅に集合して9時50分に出かけますが,直接法廷に行かれてもかまいません(地下鉄丸の内線霞ケ関駅下車,徒歩2分)。開廷に先立ち,法廷隣の控え室で事前の説明会を行ないます。閉廷後の弁護士による説明会も行ないますので,ぜひご参加下さい。
切々とAさんの証言
前回,10月22日の法廷では,原告を代表してAさんの証言が行なわれました。Aさんは環六周辺では以前にもまして大気汚染状況が悪化していること,この道路計画の公表以来,都や公団が一貫して住民無視の不誠実な対応をとってきたことなどについて証言しました。最後に現在の気持ちとして,裁判官に対してこの道路を作らせないで欲しい,と切々と訴えました。私たちの気持ちを見事に代弁して下さったAさんに感謝します。
原告側の尋問に続いて,被告側の反対尋問が行なわれました。そこでは,Aさんが証言の中で触れていた,1989年3月29日の中止になった環境影響評価書案説明会の経緯について質問されました。新宿区議会の延期の申し入れを無視して強行されたこの日の説明会は,会場に集った大勢の人々の反対で中止に追込まれたのですが,都は開催したことにして手続きを進めてしまいました。そのことが手続上まちがいではなかったと被告側は主張したかったようです。
最後に,両陪席裁判官から,地域の大気汚染被害状況,原告の中の健康被害者の状況について質問がありました。複数の裁判官が質問するということは極めて異例のことで,裁判所がこの点に強い関心をもっていることの表われです。さきごろ私たちの弁護団が原告の方々にお願いした健康被害状況のアンケート調査はこうしたことを反映したものです。ご協力ありがとうございました。
Aさんの証言の中から
〔弁護士〕お子さんの健康面での影響をお感じになることがありますか。
〔A〕私の子供3人は上2人と下1人とが大分離れております。上の子供が小さい時にも幼稚園にぜん息の子供はいましたが,下の子供のときは以前と比べものにならないくらい多く,ぜん息の話も日常的なこととなっていました。
〔弁護士〕あなたのお子さんはそういう症状があったのですか。
〔A〕3番目の子供が幼稚園くらいのときには非常に風邪を引きやすくて,夜寝る時にゼーゼーとかヒューヒューと気味の悪い音を立てておりました。つい先日,学校の呼吸器系疾患の検査でひっかかりまして,区の検診にいったところです。
〔弁護士〕ご近所の知人の方でぜん息で苦しんでいる方は多いですか。
〔A〕はい。この裁判の初めに意見陳述なさった方ばかりではなく,原告のOさんも大変苦しんでおります。Oさんは2人のお子さんもぜん息ということで,大きな発作が起きますと,気管支がふさがれて,息が吸うにも吸えず,吐くにも吐けないで七転八倒なさって,恐怖を味わうそうです。また,他の原告の一人は,家族そろってぜん息で,とりわけお子さんのぜん息がひどく,発作が起こるとすぐタクシーで病院にかつぐそうです。病院では吸入とか点滴といった治療を受けるそうですが,3時間から長い時では5,6時間はかかるということで,本当にへとへとになって戻られるということです。
〔弁護士〕ところで,あなたがこの道路計画のことを初めて聞かされたたときにはどのようなことをお感じになりましたか。
〔A〕ともかく,びっくりしました。また,とても怖かったです。22メートル幅の道路が2倍に拡幅され,世界に例を見ないという巨大な地下高速道路ができる,さらにその下に地下鉄が通るということで,もう本当にびっくりいたいしました。ぜん息の話がひっきりなしに出てくる中で,新しい道路が出来れば空気が悪くなるのは当然で,これからどうなるのだろうととても不安でした。
〔弁護士〕説明会で特に印象に残るようなことはありましたか。
〔A〕住民のお一人が,「反対意見が多かった場合はこの道路は見直しされるのですか」という質問をしました。それに対して,東京都のY街路計画課長は,表情も変えずに「いくら反対があってもこの道路はつくります」と回答されました。私たちは初めて経験する説明会で,私たちの意見を充分に聞いていただけるものとばかり思っていましたが,その答えを聞いて本当にがっくりいたしました。これでは説明会は単なるセレモニーではないかと思い反感をもちました。
〔弁護士〕その後,皆さんはどうされましたか。
〔A〕説明会がこんなものでしたから,自然発生的に反対の会が作られました。会ではまず,この道路計画について多くの住民が全く知らないという状況でしたので,道路の問題性を訴えるビラを作り配りました。それから,区議会に白紙撤回を決議するよう陳情をいたしました。3500名の署名が集まりました。都議会にも同じ内容の陳情をいたしました。それから,環境影響評価書案に対する意見書を住民の方々から集めて,818枚の意見書を環境保全局にもってまいりました。
〔弁護士〕88年の11月に当初の計画から豊島区の部分が切り離しになりましたね。その後,路外換気所も計画変更になりましたが,どういう形になりましたか。
〔A〕中落合3丁目の民有地に大きな路外換気所が計画されておりましたが,そこの住民の猛反対にあいまして,一部計画変更が決まりました。しかし,その時点では内密に行なわれていたようです。それで,一部切り離しをした後,内密な計画変更はそのままにしてアセスの説明会を再びやろうと致しました。3月29日の事です。私たちは中落合の換気所の路内への計画変更ということを知っておりましたから,初めから環境への影響を検討し直して,正しいアセス案を出してほしいと区議会を通して都や公団に要望いたしました。区議会は3月29日の午後に委員会が開かれまして,そこで全員一致で延期を採択してくれました。しかし,3月29日の夜,都と公団はその説明会を強行いたしました。開会宣言をしますということだったので私たちは抗議をいたしました。押し問答をしている内に,都と公団は中止いたします,といいましてその会は流れました。私たちはその説明会が中止になったとばかり思っておりましたら,開会宣言をしたという事で,やったというふうに受理されていたということでした。実質的に何も行なわれていない説明会が手続き上は行なわれた事になってしまったということです。
〔弁護士〕この後,公聴会,見解書の説明会があり,都市計画決定手続きの最後の段階である都市計画審議会があったわけですね。それに対してどのようなことをなされたんですか。
〔A〕この都市計画審議会は,この道路計画が決定される大切な機関ととらえまして,みんな勤めを休んでまで,また赤ちゃんなどをつれてまで傍聴にまいりました。しかし,傍聴はできず,本当に信じられないというふうに思いました。おどろいたことに,当日にアセス書ができ上がり,その審議会のメンバーに配られて,それで決められたということで,なんていい加減な事だろうと思わざるを得ませんでした。解消できない疑問や不安をどこにも訴えることが出来なくなりましたから,都の公害審査会に白紙撤回を求めて申立てを行ないました。審査会は7回重ねましたが,何も得ることなく,調停は成立いたしませんでした。そういうことを経て,1991年3月に本件の事業認可承認処分が出たので訴訟となったということです。
〔弁護士〕原告の方たちを代表して現在のお気持ちを述べて下さい。
〔A〕まず裁判長と裁判官にお願いがございます。この環状六号線の拡幅と,地下高速道路の事業はしてはいけない,という勇気ある判決を出していただくように心からお願い申し上げます。一昨年からこの裁判が始まり,今日に至るまで私たちの主張をお聞き下さいましておわかりのように,いかにこの道路が大きな問題をもったものであるか,そして,この大きな問題をもったまま事業認可されてしまったこと,またこの道路建設がいかに住民の意見を無視して推し進められてきてしまったものか,またもはやこの道路建設が私たちの幸せに貢献するものではなくて,健康をむしばんで,生活を脅かすものであるかということがはっきりおわかりになったかと思います。私たちはこの裁判所で,被告・建設省が私たちの疑問や意見に対して誠実に率直に回答して下さるものとばかり思っていました。しかしそれはほとんど聞くことが出来ませんで,本当に残念でなりません。私たちの身近には本当にたくさんのぜん息患者や呼吸器系疾患の人達がおり,苦しんでいます。この道路が出来ますと,病人ももっともっと苦しむようになることは明らかです。病人が出てきてからでは遅いと思いますし,犠牲者がこれ以上増えることを止めなくてはならないと思います。取り返しのつかないことは本当に止めてほしいと思います。私たちは道路計画を知らされて以来,不安を訴えてまいりましたがどうにもなりませんでした。それでわたしたちの大きな期待と希望をかけて,この裁判所に良識ある判断をお願いしにまいりました。どうか,私たちのそうした希望と期待を裏切ることのないように,裁判長並びに裁判官の勇気ある判決を心からお願いする次第です。
地権者の方々,公団からの接触にご注意を
拡幅で全面的に収用対象となる地権者原告Nさんは,土地を首都高速道路公団に売りたいという隣家との境界線を確認するための測量に立会うよう公団から通知を受けました。しかし,現在行なわれている手続きは土地収用ではなく任意の売買ですから,隣家を買収する公団とNさんとは全く無関係です。従って立合いは隣家から求められるのが筋で,公団にはそのような通知をする資格はありません。境界線の確認だけなら問題はないのですが,Nさん宅に対して行なおうとしている測量の意味が明確でないことから,弁護士から公団に対して立合いを拒否する旨通告して中止させました。
環六沿道では一部に空き地が見られるようになりましたが,買収済は20%程度のようです。売り急いだ方の分が終わると,買収はだんだん難しくなり相当長期にわたるものと予想されています。地権者の原告の方には公団からいろいろな接触があるかと思いますが,気軽に弁護士にご相談下さいますようお願いいたします。
「アエラ」の記事をご覧になりましたか
12月20日号の週刊「アエラ」(朝日新聞社刊)で中央環状新宿線のアセスと私たちの裁判が取り上げられました。中央環状新宿線のアセスを行なったパシフィックコンサルタンツ社が,同じ調子で滋賀県でのアセスを行なったところ,東京の場合と比べてはるかに厳しい注文がアセス審査会につけられたそうです。これは,中央環状新宿線のアセスのデタラメさを示す,いわば傍証といったところでしょうか。是非ごらん下さい。
12月定例会は中止,次回は1月22日です
裁判への取り組み方など,会の方針を決める定例会は,毎月第4土曜日午後2時より開かれていますが,12月は25日と大変押し詰まってしまいますので,中止といたします。1月からは通常通り午後2時から,場所は本会代表宅で開きます。10畳ほどの部屋でやや狭いものの,気楽な会ですので皆様お気軽にご参加下さい。
バザーにご協力ありがとうございました
恒例の秋のバザーを10月24日に行ないました。雨で1週間のびてしまいましたが,大変な盛況で227,775円もの売上がありました。大勢の皆様のご協力に感謝いたします。
会費納入のお願い
1994年の会費を納入していただきますようお願いいたします。会費は1世帯当り2000円です。私たちの会は会員の皆様からの会費とカンパだけをたよりにしていますので忘れずにご納入下さいますようお願いいたします。振替用紙を同封してありますのでご利用下さい。