環六高速道路に反対する会ニュ−ス
No.30
1995年8月18日
8月25日,青島都政になって初めての調停
都の対応に注目!大勢の参加をお願いします
昨年度末の3月22日に決裂したままになっていた公害審査会が,今年度になって初めて8月25日(金)10時30分から都庁第1庁舎南棟33階S6会議室で開かれます.西武新宿線中井駅9時に集合しますが,直接会場に行かれても構いません。大勢の参加をお願いします.
もう一度これまでの経過を振り返ってみます.昨年4月の一審敗訴判決を受けて,私たちは裁判の一方で和解の道を探るため,公害審査会に道路建設を前提とした詳細な調停案を提出し,都や公団に誠実な対応を迫りました.それに対し,都と公団の代理人は,一方で裁判を続けている以上調停には応じられない,裁判を止めれば話し合いに応じる,として全面的に話し合いを拒否してきました.そして,調停委員の説得にも関わらず,結局物別れに終わってしまったのです.当初審査会は,4月に一部の委員が交代になることから5月の連休明けにも審理を再開したいとの意向を示していました.しかし,その後なんの連絡もないままに過ぎてしまい,7月に入ってから,7月27日の判決結果を見た上で審理したいので9月初めに調停期日を入れたいと連絡してきました.判決は9月28日に延期となりましたから,そうなると調停の日程も更に大幅に延期となってしまいます.もっと毅然とした態度をとるよう審査会に対して強く抗議した結果,8月25日に調停が開かれることになりました.
調停を取り巻く環境は大いに変化しています.まず都知事が変りました.都民に隠し事のない,開かれた都政を第1に上げている青島知事が,これまで通り一切の話し合いに応じない,という立場をとることはできないはずです.もう1点は,7月に続いた2つの道路公害裁判の判決です.道路に公共性があるからといって,道路周辺住民が受けた騒音,浮遊粒子状物質による様々な被害は受忍できないものである,として,道路の公共性のゆえに住民が犠牲になるのは止むを得ないというこれまでの図式を否定しています.どうしても道路を造るなら,環境対策を十分にやらなければなりません.公害審査会はそのための話し合いの場となるべきなのです.
調停手続きへの疑問にお答えします
調停手続きについて様々な疑問が寄せられています.これについて会としてこれまで確認されてきたことをもとに整理してみます.
Q なぜ調停を急ぐ必要があるのでしょうか.判決を待ってからでも遅くはないのではないでしょうか.そもそも調停を引き延ばして裁判を優先させてきたのは我々の方だったはずです.
A 確かに一審判決までは私たちは調停は不成立に終わっても構わない,という対応をとってきました.一審全面敗訴後に開かれた調停にも裁判が最終的に終わるまでそのまま継続審議という形にしておきたいという態度で臨みました.しかし,私たちがあくまで道路建設差し止めにこだわるなら調停は続けられない,という強い姿勢を調停委員の側が示したことから,道路建設を前提とした調停案を私たちが提出して調停を継続することにしました.これにより私たちは,裁判を続ける一方,和解の道を探るための調停にも臨むことになったのです.これに対し,都と公団が裁判を取り下げない限り調停に応じられないと,委員会の指導に従おうとしませんでした.私たちとしては少なくとも公害審査会では道路建設を認めるという苦渋の選択をして調停に臨んでいます.である以上,審査会に対して裁判の動向に左右されない,毅然たる対応を要求していくのは当然です.9月28日に判決があるといっても,私たちは敗訴した時のための上告準備をしており,単なる通過点に過ぎませんから,裁判が終わるまで待つのだったら,調停案を出した意味はなくなります.公害審査会は,公害紛争というものが必ずしも裁判になじまないことから,その処理のために公害紛争処理法に基づいて設立された独立の機関です.設立の意義を忘れず,誠意をもって対応していただきたいと思います.
Q 沿道の地権者で訴訟に加わっている者は道路建設を前提とした調停という方針には納得できません.
A 確かにこの点が,最も大きな矛盾です.地権者の方でそこに住み続けたい,営業を続けたいと言い続けるためには訴訟しかないからです.都知事が建設中止を決断することも理屈の上ではあり得ますが,それを引き出すには私たちは運動体として余りに弱体です.裁判と調停との時間的なことを考えると,裁判終結までに調停が成立することは難しいだろうと思っています.それまでは訴訟にも全力を上げていきたいと思います.
Q 一方で裁判を続けている人達と話し合いをすることはできないと都や公団が言っている以上,判決を待ってもいいのではないでしょうか.
A 私たちは敗訴した場合には上告すると決めています.勝訴しても必ず国は上告しますから裁判は続きます.裁判の一方で和解の道を探るのは普通のことですし,判決がどのようなものになってもそもそも審査会は裁判と独立した調停手続きをしなければならないのです.
Q 裁判を取り下げれば調停の話し合いに応ずるというのだから,そうした選択もあるのではないでしょうか.
A 最初から具体的な調停案を提出して調停だけを行なっている中野区の住民団体に対しても,まともな対応は全くしていません.裁判を取り下げれば話し合いに応じてくるだろうというのは幻想です.私たちはあくまで裁判と調停とを平行して進める必要があると考えます.なお,私たちは法律的な面は裁判で,具体的な公害防止策については調停で,という形で明確に区別しています.その点がややあいまいな中野区の団体とは異なり,相手がその気になりさえすれば調停での議論がかみ合わないことはないものと考えています.
Q そもそもなぜ控訴審の判決は延期されたのでしょうか.
A おそらく国道43号線裁判で,7月7日に最高裁による道路周辺住民の公害被害を認める判決が下されたためです.東京高裁はすでに私たちの訴えを退ける判決を書き上げていたのに,この最高裁判決を受けて書き直さなくてはならず,時間が必要となったためと思われます.
Q 調停案のような道路は確かに理想でしょうが,道路は公共性の高いものですから周辺住民も多少の我慢はする必要があるのではないでしょうか.
A 国道43号線裁判では道路の公共性について次のような判断を示しています.「国道43号線は,産業政策上の要請に基づき設置された幹線道路であって,地域住民の日常生活の維持存続に不可欠な道路とまではいえない.一部住民は道路により利益を受けているかもしれないが,住民の利益に比例して被害が増大する,という関係にあるのではないから,道路からの被害を減らす努力が必要であった.しかしそれが十分でないままに住民の生活領域を貫通する道路が開設された.そうすると,地域住民が受けた被害は道路の公共性ないし必要性のために我慢すべきものということはできない」としています.つまりここでは公共性というものを社会一般の利益ではなく,地域住民の利益としてとらえています.中央環状新宿線や環六拡幅を,東京都全体あるいは首都圏という視点から見ることも確かに必要なことですが,地域にとってどのような利益と不利益をもたらすのかの判断が,まさに公共性の判断となるのです.周辺住民が訴えを起こす権利すら否定した一審の判決は,当然見直されなければなりません.
この判決は調停でも意味を持ちます.道路周辺の住民は犠牲に値するどのような利益も受けませんから,私たちの受ける被害は公共性のために我慢すべきものではないのです.一方,私たちの調停案は現在よりも環境を改善させるものです.都や公団は判決の意味を考えて調停に応ずるべきです.ただしそれも沿道地権者の犠牲によるものであることを忘れてはなりません.
9月28日,注目の控訴審判決の傍聴を
道路周辺住民の公害被害を認めた最高裁判決との整合性を検討するために延期となった注目の控訴審判決は,9月28日(木)午後1時,東京高等裁判所824号法廷で言い渡されます.西淀川道路公害訴訟,国道43号線訴訟と続いた後だけに,マスコミも大いに注目しています.大勢の傍聴をお願いいたします.なお,西武新宿線中井駅11時40分に集まっていきますが,直接法廷に行かれてもかまいません(地下鉄丸の内線霞ケ関駅下車,徒歩2分)。
念のため上告審の委任状を集めます
すでに知らせしましたように,念のため上告のための委任状を集めますので,9月15日までによろしくお願いいたします.なお,日付を空欄にしておいてください.
東京都は財政危機で高速道路どころではない
東京都がこのほど16年ぶりにまとめた財政白書によれば,バブル崩壊による税収の減少と,バブル時代の豪華施設の維持費などの経費高騰のため,都は年間2600億円以上の財政不足に陥るといいます.その時代にわずか10kmのこの道路を1兆円以上もかけて造る余裕はないはずです.もちろんその全てを東京都が負担するわけではありませんが,これらの事業を中止すれば,財政の状況は大幅に改善されます.しかも,環六と同様に昭和25年に決定された都市計画道路の半分はまだ未完成ですから,無駄な出費はまだまだ続きます.青島知事は,都市計画道路事業全体を大幅に見直すことで財政危機を打開することができるのです.都市博中止と同様の大英断を期待したいと思います.
スケジュール 8月25日(金)10時30分 公害審査会の調停 都庁第1本庁舎S棟33階S6会議室 (いつもと場所が違います) 9月3日(日)10時,24日(日)10時ステッカー貼り.古くなったステッカーを貼り替えます.参加できる方はご連絡を. 9月28日(木)13時30分 控訴審判決 東京高裁824号法廷 |