東京の鳥C ツグミ


 

 シベリアで繁殖するこの鳥が,越冬のため日本に来るのは11月頃.やや開けたところが好きで,公園の芝生などで少し上向きかげんの,今にも飛び立ちそうな姿勢でいるところをよく見かける.都内では単独でいることが多いが,100羽を越す群れでキッキッとさわがしく鳴きながら飛び回るのを見ることもある.渡りは大群で行なわれるが,その集団がしだいに小さく別れていく途中なのであろう.

 ツグミは古くから霞網猟の対象にされてきた.山林の一部を切り開き,目に見えない網を張るめぐらせる.渡ってきたばかり群れが大量にその網に掛かるのだ.この猟は法律で禁止されているが,違法な猟が跡を断たたない.かつて霞網の販売禁止を求める署名運動に加わったことがある.鳥を守ろう,動物を可愛がろう,というレベルでは都会の人はすぐに賛成してくれるため,結構集めることができた.最近都内でツグミが増えたように思えるが,この猟の規制が厳しくなったからかもしれない.しかし,霞網でツグミを捕るのは伝統的な猟であり,おとりを使うその手法は,かなりの知識と経験を必要とする.一種の文化とさえいえる.鳥は捕ってはいけない,魚はとっていい,捕鯨は禁止すべきだ,昆虫採集はやめよう,カモ猟はかまわない.人にはどこまで決める権利があるというのだろうか.充分な科学的な調査を背景に,自然のもつ生産力を維持し,その種の存続に影響を及ぼさない範囲で野性動物を利用する.資源を浪費し,本来の生態系にも合致しない家畜の飼育や養殖漁業よりは環境保全上も優れていると思うがどうだろうか.

 

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