東京の鳥D コゲラ


 

 スズメ程の大きさしかない小型のキツツキにコゲラがある.近郊の山々にごく普通に見られる種類で,地味な茶色の鹿子模様で目立たないが,ギーという独特の声を覚えてしまえば見つけるのは難しくない.この鳥がここ10年ほどの間に急速にその分布を広げている.最初は多磨霊園あたりで発見され,どうも山を降りて人里近くに来ているらしいということで話題になった.今では都内全域にその棲息域を広げており,新宿区内の私の自宅付近,文京区の東大構内でもよく見られる.

 都市に適応し住宅地などで一年中普通に見られる鳥をあげてみる.ハシブトガラス,スズメ,ヒヨドリ,ムクドリ,シジュウカラ,オナガ,メジロ,カワラヒワ,キジバトといったところだろうか.しかしこれらの鳥の消長も一様ではない.例えばヒヨドリは,今から20年程前まではこの中には入らない.冬11月頃低地に降りてきて,5月頃山に戻る渡り鳥だったのだ.今でも一部の鳥はその習性を残しているようだが,なぜかしだいに夏でも居付く鳥が多くなり,都市の中で当たり前に繁殖するようになった.

 コゲラやヒヨドリは確かに都市環境に適応したのだろう.しかし,逆に山の環境が都市と変らなくなってきて,山に棲んでも都市に棲んでも同じということはないだろうか.最近の山を歩いていると,どこまでいっても車が入り込み,人の手が加えられている.東京都が奥多摩の三頭山に作った都民の森のように,自然に親しむためという名目で徹底的に自然を破壊しているという例も珍しくない.”自然”を”観光地”と同格にしか考えられない人達により世の中が動いている限り,鳥たちの生活もますます変っていくことだろう.

 

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