東京の鳥⑥ オシドリ
高尾駅から小仏峠へ通じる旧甲州街道は，舗装はされているし往時の面影がある訳ではないが，何となく雰囲気が好きだ．神奈川県側に抜けられないため自動車もそれほど通らず，歩いても苦にならない．都内で最も鳥の多い山である高尾山はケーブルカーが通る観光地でもあることから時には雑踏となるため，人込みを避けて裏高尾のこの道を行くことがある．蛇滝や日影沢から高尾山へ登るコース，影信山へのコースなど，幾つもの選択肢があるのもうれしい．
かつてここでオシドリの群れを見た．オシドリは日本を代表する美しい鳥の一つとして皆に親しまれており，井の頭公園など都会の池でもよく見られるが，むしろ山間の渓流に似合う鳥である．速い流れをものともせず群れをなして泳いでいる姿は，その美しい姿だけから想像される優しさよりも，むしろ逞しさを感じさせる．また，この鳥はその飛ぶ姿の美しさも特筆される．裏高尾を流れる小仏川は渓流というには開けすぎているし，水もそれほどきれいでないが，流れも早くオシドリが似合う．
毎度のことだがここも大きな問題を抱えている．首都圏中央連絡道路，略して圏央道だ．近くを通る中央自動車道との間に，老人ホームをはるかに見下ろす巨大なインターチェンジを作り，高尾山の山腹にトンネルを開けて入り込もうというのだ．かつてオシドリが飛んだ旧甲州街道も，日本道路公団の立札が目立ち始め，何となく落ち着かなくなってきた．ここもやがて騒音，振動，排気ガスが渦巻くようになり，オシドリが棲むどころではなくなってしまうだろう．反対運動に期待したい．