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綾波業務日誌

〜彼女がココロを持った理由(わけ)〜
byけんけんZ



八日目 金曜日



業務日誌 ○月×日


7時30分起床 体調は平常。体温他異常無し。

朝食:サラダ、トースト、コーンスープ

 碇君が簡単なメニューを準備して帰ったので、今朝はそれを食べた。
 トースターを初めて使った。マーガリンとハチミツも。
 手鍋で沸かしたお湯でインスタントのコーンスープ、昨日のサラダの残り。
 食べている最中に、昨日の夕食では碇君が座っていたクッションが目に入る。
 充実した朝食だけど、碇君が足らない。喪失感。

8時30分 平常通りに登校。

 朝、碇君からお弁当を渡された。
 自分の分は作る事が多いから、二人分でも手間は変わらないと言う。
 嬉しかった。礼を言った。「ありがとう」感謝の言葉。初めての言葉。

 授業中、碇君に気付かれないように、碇君の様子を観察する。
 疲れているのか、眠いのか、あくびが多い。
 帰るのは遅いし、朝はお弁当を作ってから来る。
 私よりずっと睡眠時間が少ない事は容易に想像できる。
 申し訳ない。謝りたくなった。「ごめんなさい」これも初めての言葉。
 昼休みに言おう。

12時30分 昼食 碇君のお弁当

 今日も屋上にて二人で昼食をとる。昨日と違うのは献立。
 碇君に謝る。まだ眠そう。顔色もあまり良くない。
 やはり一緒に住む方が良いのだろうか?
 ずっと負担を掛け続けては、碇君が家に来なくなってしまう気がした。不安が募る。
 昼休みの終わりごろに、同級生が屋上に来る。邪魔だと思った。
 碇君はやっぱり何もしてくれなかった。

 午後の授業もずっと碇君を観察する。
 あくびを繰り返し、眠そうな様子。5時間目の後半はほとんど寝ていた。
 6時間目は少し回復したようで、時々目が合う。
 視線が合うと、身体が熱くなった。帰ってからの事を空想せずには居られない。
 家に帰れば彼が触れてくれる。抱き締めてくれる。性交してくれる。
 そう思うと、触れていないのに、濡れてくるのを自覚する。
 多分顔が赤くなっている。心拍も早い。わずかに発汗。息も上がった。
 授業が終わった時には疲労を覚えたほど。
 トイレで確認すると、下着がはっきり濡れていた。
 もう一度身に着けると冷えて気持ち悪いので、脱いで鞄にしまう。

16時 終業

 人気の無い図書館で、6時間目の事を碇君に報告する。
 ちょうど司書の先生が席を外したので、図書館内は二人だけになった。
 書架の影に隠れて、碇君にスカートの中を触ってもらう。あまり濡れて居るので驚いた様子。
 人が来ないうちに指だけで気持ち良くしてもらった。
 ずっと期待していたせいか、内股を伝って靴下まで滴ってしまう。
 声を出してはいけないと言われて我慢する。我慢するのもまた快感を強めるのだと知る。
 あと少しという所で人が来た。椅子に座って調べ物を始めたようなので、碇君に続けてもらう。
 碇君は止めておいた方が良いと思っている様子だった。息は乱れたけど声は出さなかったと思う。
 碇君は「ドキドキしたね」と言っていた。
 学校で気持ち良くしてもらうのは始めてなので、私も満足だった。

 スーパーに寄って帰る。
 気温は暖かかったが下着が無いので少し寒い気がした。濡れていたせいだろうか?

19時 帰宅

 碇君が食事の仕度をする間にシャワーを浴びる。
 そのまま出て行って昨日は注意を受けたので、今日はパジャマを着てみた。
「似合うね。それにして良かった」と言われた。碇君に誉めてもらうのは気持ちが良い。

夕食:お刺し身、卵豆腐、ほうれん草の胡麻和え、味噌汁、ご飯

 碇君がお腹一杯になって私にも食べられるもの、と言う基準で選んだ献立。
 お刺し身は少し臭いが気になるけど、肉よりはまし。脂臭くない。
 クッションに正座していると、碇君は腰が痛いと言った。
 疲労が蓄積しているのだろうか?
 ゆっくり身体を休めていないせいかもしれない。
 お腹がふくれて眠くなったと言う碇君の服を脱がせてベッドに寝てもらう。
 どうしたら気持ち良くなって濡れてきて準備が整うのか、大体理解出来ているように思う。
 碇君にしてもらうように自分で準備してみる。
 手で自分の準備をしながら、口で碇君の準備をした。
 碇君に負担をかけないように、碇君の上で自分が動いて性交する。
 気持ち良かったけど碇君が終わった時私はまだ終わってなかった。
 だからそのまま動きつづけた。碇君は少し辛そうな顔をしていた。
 終わってすぐは刺激されても気持ち良くない、むしろ痛いとの事。
 理解していなかった私が悪い。謝った。
 余り負担を書けるのは悪い気がしたので、今日は泊まっていって欲しいと伝えた。
 でも碇君はやはり帰ると言う。悲しかった。

21時 碇君が帰った

 昨日より早い時間に帰ってもらった。今日は一度しか性交できなかった。不満が残る。
 もう一度シャワーを浴びて、裸のままベットに入る。
 碇君がそこに居てくれると思い浮かべながら、自分でしてみる。
 気持ち良かったけれど、強い快感を得る前に疲れてしまってやめた。
 そうしたら、ひどく空しくなった。罪悪感と、虚ろな感じだけが残る。
 二人で性交する時は、終わっても碇君が隣に居る。
 だから温かさを感じながら、素肌で触れ合っている。
 私が眠りたい時は、碇君は腕枕をしてくれたり髪を撫でたりしてくれる。
 そういう事が無い自分一人の疑似性交(自慰と言うのだと今調べた)は、本当に空しいだけだった。二度としないでおこうと思う。
 そういう時、気持ち良くなりたくて碇君に側に居て欲しいと思っているのに碇君が居てくれない時、どうしたら良いのか?。分からない。明日尋ねてみる。

23時 業務日誌制作

 今日は「碇君」と言う文字を沢山書いた。
 一日の出来事を振り返っているうちに、自慰の空しさが少し和らいだ。
 でも、碇君が隣に居てくれない事への不満はますます募る。
 自慰はもうしない。したくない。けど、ベットで自分の身体を抱き締めて寝るのは寂しい。
 今夜はいつにも増して寂寥感が強い。
 今日は一度きりしか性交できず、それも満足できるものではなかったせいだろうか?
 何度も自慰をして、身体が疲れ切ってしまえば無駄な事は思わずに眠りに落ちるだろうか?
 それともますます空しくなるのだろうか?

 今はただ、隣に居てくれるだけで良い。
 私が負担になるのなら、何もしてくれなくて良い。
 ただ、隣に居てその温もりだけ感じさせてくれたら、あとは全部我慢しようと思う。
 明日会ったらそう言おうと思う。

「温もり」なんて知らなければ「寂しさ」も知らないままで居られたと思う。

以 上






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1999.03.02・初出
1999.03.06/Ver1.10

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