1997年8月27日(国税調査官)
業種
所得
指摘事項
対象
看板業
個人事業
特別償却
所得税


非公開の内部通達



青色申告者であれば、認められている特典はフルに活用すべきである。減価償却資産の特別償却もその一つです。



電子機器利用設備を取得した場合の特別償却は、みなさんよく知られているところです。

調査員が、「”特別償却の対象資産である”いう証明書はありますか。」と切り出しました。「その証明書がな無いと、特別償却は認められない。公開はされていないが、税務署の内部通達でそう決まっている。」また、「特別償却対象資産の取得価額は、買い取りの場合160万円となっているが、各資産をバラバラにしたところの価額で判定する。」つまり、入力装置、出力装置など区分して判定するというのもです。



この調査員は、所得税基本通達49−39(法人の場合、法人税基本通達7−1−11)を理解していないか、知らないのではないとしか考えられない。もし、各資産の取得価額をバラバラに判定した場合、今回に限っては特別償却をするより所得の計算上、納税者側に有利に働きます。

例えば、パーソナルコンピュータを考えてみましょう。主な構成は、演算等を行う”本体”、文字など結果を一時的に表示(出力)する”モニター”、演算装置に命令を送る(入力)”キーボード”です。これが一まとまりにならないと何の意味もありません(一部サーバー等は、この場合除きます)。

今回、特別償却した資産の構成は、本体、モニター、キーボード、マウス、外部固定記憶装置(外付けHDD)、スキャナ(画像入力装置)、プロッター(出力装置)、各接続ケーブル、専用ソフトウェアです。以上すべて合わせて一つのシステムとして販売されているものです。ただし、ハードウェアを構成する各電子機器メーカーは、その時々でまちまちです(例えば、モニターはS社、本体はN社などです)。

この場合、問題となるのは、このシステムの本来の使用目的です。本体のROMに内臓してあるBASIC言語でプログラムを組むことでしょうか。違います。スキャナやキーボードから入力されたデータをCADソフトで整え、プロッターに出力し、看板施行に使用する。これが一連の流れです。構成されている各電子機器の一つでも欠けると、先述の作業が最後までできません。従って、この場合、バラバラに評価判定するのでなく、一まとまりのシステムとして評価判定するほうが妥当です。



調査員の指摘に対して、自主修正申告を拒否し更正するよう希望しました。結果は、「今回は、特別償却金額が小さいため修正申告する必要はありません。」とのこと。何とも変な理由である。更正してくれれば、不当な指摘であることを徹底して追求しようと考えていましたが、残念です。



余談


小額減価償却資産の判定金額が、20万円未満(それまでは、長く10万円未満でした)から10万円未満へと増税されました。その要因の一つにパーソナルコンピュータが影響していると言われています。何故でしょう。

前にも触れましたが、最近のパーソナルコンピュータは、そのほとんどがIBMの2代目パーソナルコンピュータ仕様のPC/AT互換機であり、パーツごとに販売されていて、プラモデルのように自分で好きな互換部品を使って組み立てることもできます。

では、パーソナルコンピュータの主な構成部品をモニター、キーボード、本体。さらにこの本体を構成する部品、マザーボード、CPU(中央演算処理装置)、フロッピーディスクドライブ、CD−ROMドライブ、ハードディスクドライブ、メモリー等バラバラに購入するとどうなるでしょう。一つの部品で20万円を超えるものとして考えられるのは、高性能なモニターくらいです。

Windwosの普及と伴に日本の企業もコンピュータ化が進みました。それと同時に低価格のコンピュータも増えました。中には、パーツをバラバラに購入し、自分たちで組み立てることろも出てきました。

今回の調査員ではありませんが、すべてバラバラに評価判定すると、すべて小額の減価償却資産の判定により、一時の必要経費(損金)となります。電気屋さんの領収書だけでは、判断しにくくなってます。

こんなことが流行だしたことが原因かどうかは定かではありませんが、どうやら全く影響がなかったとは言えないようです。

ちなみに、資本的支出と修繕費の「小額又は周期の短い費用の損金算入」の判定では、10万円未満でなく20万円未満のままです。将来的な展望の欠片も無い、場当たり的な政策としか言いようがない。



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