01.変異原・遺伝子・発ガン: 地球上の生物は、過去数十億年にわたる自然環境との調和の中で、交配・分化・淘汰等が行われ、変化を遂げてきた。この変化の過程において、不連続現象の一つに、細胞内DNAの塩基配列の変化や破壊等に起因する”突然変異”がある。原始時代の自然環境においては、”突然変異”の原因としては、地球外からの各種電磁波(太陽光、宇宙線など)、地球に存在する天然放射性核種(ウラン系列、アクチニウム系列、トリウム系列)からの放射線、火山の噴火や山火事などに起因する化学物質等が考えられた。われわれヒトの細胞は、このようなバックグラウンドの下に形成されてきた。 さて、このような良好なバックグラウンドで生ずる突然変異よりも、もっと高い頻度で突然変異を起こさせるような物質のことを”変異原物質(変異原ともいう)”と呼んでいる。また、突然変異を起こさせる性質を変異原性という。 化学物質の多くは変異原物質であり、変異原物質の殆どが発ガン性を示す。したがって、変異原性を調べることによって、ヒトの細胞が受けるであろう様々な負の現象、例えば、発ガン性等を予測することも可能となる。ガン細胞をヒトに誘起させて調べるわけにはいかないので、ヒトのかわりに細菌が用いられる。遺伝子レベルで考えれば、ヒトも動物も細菌も皆同格である。さらに、細菌は分裂時間がヒトより圧倒的に短い(大腸菌で1/100)、というのも大きな利点である。 細菌(たとえばサルモネラ菌)を使った変異原のテスト法(B.Ames氏が開発)にエイムス・テストがある。このテストで陽性とされた変異原物質の殆どが、発ガン性を示した。このような実績から、動物テストのかわりに広く用いられている。 山里果園では甲府盆地の環境問題を重視している。その中で扱っている「農薬の副作用」では、農薬名、成分名、用途、変異原性、毒性、発ガン性等に関するデータを表示した。ここで用いられている変異原性のテスト法の一つにAmes試験法が見られると思う。表中の発ガン性の欄が未記入の場合にも、変異原性の結果を重視した方が良いと思う。なにしろ、遺伝子レベルで考えれば、ヒトも動物も細菌も皆同格であるからである。 では、変異原物質によるDNA機能の損傷などについて、いくつかの特徴的な例を02以降で紹介しよう。 |