債権法改正 要綱仮案 情報整理

第19 債権譲渡

1 債権の譲渡性とその制限(民法第466条関係)
(4) 譲渡制限の意思表示が付された債権の差押え

 譲渡制限の意思表示が付された債権の差押えについて、次のような規律を設けるものとする。
ア (1)イの規定は、その債権に対して強制執行をした差押債権者に対しては適用しない。
イ アの規定にかかわらず、譲渡制限の意思表示があることを知り、又は重大な過失により知らなかった第三者の債権者によって、その債権に対して強制執行がされたときは、債務者は、その債務の履行を拒むことができるほか、譲渡人に対する弁済その他の当該債務を消滅させる事由をもって差押債権者に対抗することができる。

中間試案

1 債権の譲渡性とその制限(民法第466条関係)
 民法第466条の規律を次のように改めるものとする。
 (1) …
 (5) 譲渡制限特約のある債権が差し押さえられたときは,債務者は,当該特約をもって差押債権者に対抗することができないものとする。

(概要)

 本文(5)は,譲渡制限特約付債権が差し押さえられたときは,債務者は,特約を差押債権者に対抗することができないことを明らかにするものであり,判例法理(最判昭和45年4月10日民集24巻4号240頁)の実質的な内容を維持する趣旨である。

赫メモ

 要綱仮案1(4)アの規律の趣旨は、中間試案1(5)に関する中間試案概要のとおりである。
 要綱仮案1(4)イは、要綱仮案1(1)イの規律によると、譲渡制限特約付債権が悪意又は重過失の譲受人に譲渡された場合において、当該譲受人の債権者がその譲渡制限特約付債権に強制執行をしたときの法律関係が問題となることから、当該法律関係を明確にするため規律を設けるものである。差押債権者に、執行債務者である譲受人が有する権利以上の権利が認められるべきではないと考えられるため、債務者が譲受人に対して譲渡制限特約を対抗することができる場合には、差押債権者に対してもこれを対抗することができることとしている(部会資料74A、5頁)。
 なお、中間試案の表現によれば、担保権者が差し押さえた場合にも、譲渡制限特約を対抗することができないこととなってしまうが、これでは、判例の実質的な内容を明文化するものとはならず、内容としても適当ではないと考えられたことから、要綱仮案では、「債権に対して強制執行をした差押債権者」という限定をすることとされた(部会資料74A、5頁、部会資料83-2、24頁)。

【コメント】
 法定担保権に基づく譲渡禁止特約付き債権を差し押さえた債権者に対しては、特約を対抗できないものと解すべきことは明らかである(例えば、動産がA→B→Cと売買され、B→Cの代金債権に譲渡禁止特約が付されていたとしても、Aが、A→Bの代金債権を被担保債権として、B→Cの代金債権を、動産売買先取特権物上代位に基づき差し押さえたときに、Cは譲渡禁止特約をAに対して対抗できないことは当然である)。
 この点は審議の経過上も明らかであったのであったにもかかわらず(法制審部会第83回会議議事録、42頁)、要綱仮案の規律や部会資料に、かかる明らかな前提が何ら示されていないのは、問題であろう。

現行法


斉藤芳朗弁護士判例早分かり