債権法改正 要綱仮案 情報整理

第19 債権譲渡

1 債権の譲渡性とその制限(民法第466条関係)
(5) 預金債権又は貯金債権に係る譲渡制限の意思表示の効力

 預金債権又は貯金債権に係る譲渡制限の意思表示の効力について、次のような規律を設けるものとする。
ア 預金口座又は貯金口座に係る預金又は貯金に係る債権(以下「預貯金債権」という。)について譲渡制限の意思表示がされた場合において、そのことを知り、又は重大な過失によって知らなかった第三者がその債権を譲り受けたときは、(1)アの規定にかかわらず、債務者は、譲渡制限の意思表示をもってその第三者に対抗することができる。
イ アの規定は、その債権に対して強制執行をした差押債権者に対しては適用しない。

中間試案




(概要)


赫メモ

 要綱仮案1(1)イにおいては、譲渡禁止特約付き債権が悪意重過失者に譲渡されても、有効に譲受人に帰属する旨の規律を設ける方針が採られたが、預貯金債権については、特約違反の譲渡後に、当該預貯金口座に入金がなされ、その後に差押えがあると、譲渡に劣後する差押えであるとして差押債権者に支払っても免責されない場合か、譲渡対象外債権に対する差押えであるとして、差押債権者に支払わなければならない場合かが明確でないときがあり、実務に混乱が生ずるとの指摘がなされた。そこで要綱仮案は、かかる指摘に配慮するため、預貯金債権については、現行法下の判例法理をそのまま及ぼし、悪意重過失者への特約違反の譲渡は効力を有さないものと扱う旨の規律を設けた。

【コメント】
 預貯金債権以外にも、譲渡になじまない債権はありうるところであり、預貯金債権のみ、その譲渡制限特約に特別の効力を定める場当たり的なやり方が、妥当であったのか、立法の在り方として疑問であるものといわざるを得ない。
 銀行業界からは、要綱仮案の原則ルールによれば管理コストが増大することが強調して主張されたが、過剰な管理を前提とした議論がなされていたものといわざるを得ない(要するに金融機関は、「預金に差押えがなされた場合において、先行する預金譲渡の存在が疑われる場合には、必ず供託(要綱仮案(3)による供託と執行供託の混合供託)をする」との管理をすればよいだけであり、現在、預金の差押えがなされた場合の手間に比較して、実質的な負担増があるとは思えない)。

現行法


斉藤芳朗弁護士判例早分かり