ご質問 床矯正(その3)


お答え  歯科矯正の歴史を紐解いてみますと、Angleさんが1900年初頭にブラケットを発明するまでは、床矯正装置を使ってばねやゴムで歯を押したり引っぱたり、ネジで歯に力を加えたりして、歯を動かしておりました。ネジは鉄製だと口の中でさびてしまいますので、金(Gold)が使われておりました。

 なぜ、Angleさんがブラケットを発明したかといいますと、それまでの装置(床装置とかですね)は歯の三次元的なコントロールが不可能だったからです。床矯正装置で、十分であったなら、なされなかった発明でしょう。「必要は発明の母」と言いますよね。

 床矯正の欠点は、

1)歯の頭(歯冠)が動くだけで、歯の根っこ(歯根)は動かない。

 →後戻りが起きやすい。

2)取り外しが可能

 →サボることが簡単

3)きっちり動けば、ブラケットを使おうが、床矯正だろうが、歯の痛みは同じはず。(歯に同じ力をかければ、身体には同じ反応が出るはず。)=床矯正だからといって、やさしいわけではない。

 ブラケットというのは、精密な金型を必要とする工業製品です(あるいは、精密な削り出し技術で作られます)ので、旧東欧や発展途上国では作ることができませんでした。アメリカ合衆国、日本、ドイツなど限られた国でしか作られておりません。よって、外貨不足の国では床矯正が主体というか、それしかできない状態になります。中国も最近までは床矯正が多かったのですが、日本やアメリカに留学し、市場経済が発達してブラケットを使用した矯正治療の導入が盛んになってます。日本も昔(昭和40年代以前)は、床矯正が主体でしたし、ブラケットを使って治す技術がありませんでしたから、それしかなかったわけです。

 床矯正とブラケットを使用した矯正治療では、治療のレベルが違うので、比べること自体あまり意味がないように思います。歴史的な進歩とか経済的な理由とか、治療のバックグラウンドが違うんですね。


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