ご質問 床矯正(その2)


お答え  最近の床矯正治療のはやりは、「とにかく側方拡大して、歯を抜かないで並べよう。」というものです。「保存科の矯正」なんて書いてあるHPを見たことがありますが、歯科矯正治療は矯正科の仕事ですから、「シロウトの矯正」って、自分で言っているようなものですね。

 歯列の側方拡大の理屈をご説明しましょう。

 

1.歯は裏側からの舌べろの力と表側からの頬の力のつり合ったところに並びます。ここが一番安定した位置になります。(簡単に言えば、ほっといても並ぶ位置)

 前歯でしたら、唇と舌の力関係で位置が決まります。

 

2.矯正装置で歯を押すと歯の位置を変えることは可能です。例えば拡大装置で歯の裏側から力をかければ、表側に傾きます。(専門用語では傾斜移動と言います。)この傾斜移動は、比較的簡単に起こる変化です。表側(頬のほう)に動いた歯は、頬から強い力を受けるようになりますし、舌から遠ざかりますから舌べろからの力は弱くなります。

 装置を入れている間は、この状態が保たれますが、装置をはずしたら、1の状態に戻ります。

 頬の筋肉がたるんで、舌べろの筋肉が強くなるか舌べろの大きさが大きくなれば戻りませんが、短期間ではそんなことは起きません。頬の筋肉がゆるんだら、だらしない顔になりますね。

 理想的には、正中口蓋縫合を開いて拡大した場合は、安定度が良くなります。歯の傾斜移動ではなく、骨自体が大きくなるわけですから。しかし、床矯正装置ではよほどきっちりした装置(つまり、パカパカはずれない)で、しかも痛みを我慢しないと、このようなことは起こりません。床矯正装置では、通常、傾斜移動しか起きません。

 正常位置よりも内側に歯が入っていて、舌べろが上に上がってこられない場合(低位舌といいます)には、側方拡大をして舌べろが正しい位置に来られるように改善します。こういった治療(異常を正常にする)は意味があると思いますし、舌の運動訓練と組み合わせることにより治療後も安定します。

 低身長の人を治療するのはそれなりの理由があります。しかし、170cmの人を180cmにするような治療は行いません。正常なものをいじくる必要はないからです。

 歯列弓の幅が狭い人(狭窄歯列弓といいます)には、拡大治療をします。正常に近づけるための治療ですから、理由がありますね。歯列の幅が正常範囲であるならば、それは異常とは言えません。何でも拡大すれば良いわけではないんです。

 医学には「適応症」という言葉があります。上に上げたように異常な状態を正常な状態にするのは医療的な価値を認めるわけです。何でも拡大すればよいのではなく、適応症を見極め正しい治療法を選択するのが良いと思います。適応症を見誤れば、お金を使って痛い思いをしただけで、結局前と同じジャン!ということになりますよ。

 床矯正のHPでは、拡大したあとに咀嚼訓練をすると書いてありますが、咀嚼をすると歯列は育ちます(大きくなります)。一口30回というコンテンツを以前作りましたが、よく噛むだけで治ってゆくものもあります。


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