週刊文春2月27日号の記事について

  タイトルは、「悪徳歯列矯正医に気をつけろ」です。よく朝日新聞や週刊朝日を批判していますけど、大差ないですね。言論の自由を主張されるのなら、反論の自由もありますよね。雑誌やテレビ番組は扇情的(センセーショナル)なほうが売れたり視聴率が良いのかもしれませんが、「いくらなんでも...」という節度は必要でしょうね。

 それでは、本文の項目をひとつずつチェックしてゆきましょう。

1.イントロ部分

記事
私の感想、意見
咬合治療に力を入れている○×賢   この方のせいで、悪くなっている患者さんもかなりいるようです。
 他人の失敗を悪く言うのは簡単です。
 群馬の歯科医師会をなぜ除名(クビ)になったか、調べてみてください。裁判までやってますから、探せば見つかると思います。良いことも言ってますけどね。
記事
私の感想、意見
 堅い食物を食べる機会が少なくなった日本人は近年、顎骨が退化している。このため、日本人に「乱杭歯」が増えているのだというのだ。(上記の○×賢氏の話?)  顎の大きさは身長の大きさと相関関係がありますから、身長が伸びた近年では、顎骨の大きさが増大しております。(上記の○×賢氏の出身大学の矯正学教室のHPに出ています。)
 乱杭歯が増えたのではなくて、それを意識する人が増えただけのようです。(昔は学校歯科検診でも指摘されませんでしたからね。)
記事
私の感想、意見
「いい歯医者、悪い歯医者」などの著書  本を書いている、出しているから正しいことを言っているわけではないのです。後に出てくる岸本氏も上西氏も同じ。バイブル商法といって、本を出すことによって、知識の少ない人を騙すというのは、よくある手口。こんなのに引っかかる編集者が情けない。本を読んで判断するよりも、複数の意見を聞いて常識的な線をまず勉強しなくては、治療を評論することはできない。本の受け売りをするだけなら、誰にでもできることだし、本の宣伝(いくらかもらっているんではないの?)と勘ぐられても仕方がない。
記事
私の感想、意見
第一小臼歯抜歯の善悪  歯は、どれも大事です。抜かずにすませられば、それが最善です。歯を抜いて矯正治療をするのは次善の策です。誰も好きこのんでやっているわけではありません。そうしないと治らない場合があるからです。
 第一小臼歯が彼らが言うほど大事な歯ならば、この歯を失った人は、みなさん体調不良になるんでしょうか? 日本人女性ならば、上顎の第一小臼歯で49.1年、下顎の第一小臼歯で52.9年が歯寿命です。「非常に大切な役割」と書かれていますが、みなさんこの歳をすぎても普通に生きているように思いますが。
 この人たちは、「抜歯は良くない。」と言いながら、親知らずは抜くんです。

2.大学では「矯正」を教えない

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私の感想、意見
 「大学では、模型実習程度でしか矯正治療を教えていません。臨床訓練も受けていませんので、大学に残って専門の矯正治療を受けた矯正歯科医以外は素人に近い。見よう見まねで独学で学んで治療をしているので、このようにトラブルが多発しているのです。」  ほとんど正しい意見だと思います。
 独学でも、学んでいる人はまだまし。多くは、適当にやっています。基礎知識もなく、治療技術がなくても、素人さんはだませると思っているんですね。証拠は、こちら(ウチへの転医症例から)でご紹介します。
 
歯科の標榜は医師が自分の判断で勝手に書いてもいいからです。 これも、本当。美容外科、安売りコンタクトレンズもご注意ください。
厚生労働省は目安として、歯学部卒業後5年以上大学などの矯正専門教室で研修した歯科医を、矯正専門医として位置づけている。(中略)専門医を選ぶ目安となるだろう。  厚生労働省は、現在のところ歯科で専門医制度を認めておりません。
 認定医が専門医を選ぶ目安とはならない場合がありますので、ご注意を。認定医でないよりは、認定医のほうがかなり(!)マシですが。
見えない矯正(舌側矯正)  表側からやっても難しいものを、見えにくい裏側からやったら、すごく難しくなります。簡単な症例なら、利点の方が多いでしょうけど、難しい症例では、舌側矯正の第一人者といわれる先生でも前歯4本だけ残して表側にブラケットをつけて治療してます。(そんなのでも舌側矯正治療でしょうか?)

3.本当に矯正が必要なのか

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私の感想、意見
 小谷田歯科医のもとを訪れる患者差の9割はすでにこの「見えない矯正」を希望するという。 だって、そういう治療を希望する人が集まるところですもの。9割という数字に驚く必要もない。
その人の歯を本来ある位置に戻してあげる。(岸本氏)  何もしない状態が本来ある位置ですから、この先生の所では、歯科矯正治療はしないんでしょうね。
 よしんば戻すとして、戻すっていうのが、実は一番難しい治療なんです。他の歯科医院でやった矯正を立て直すって言うのは、すんごい苦労です。一人の患者さんに1時間ぐらい治療時間をかけてやってます。この方すごく忙しいらしいですけど、そのような治療時間をとっているんでしょうか?
矯正が原因で、かみ合わせが狂い健康を害するという事実を、矯正大国アメリカでも、やっと認めるようになりました。(丸橋氏) ウソ。「顎関節症の原因は歯科矯正治療によるもの。」というのが10数年前アメリカで言われましたが、「因果関係はない。」という結論になってます。
昔の否定された話を、何度も繰り返して言うことにより、自分の間違いがわからなくなっているのでしょうか?
成人になってからの矯正治療は余り勧めない。(林氏) 成人においても、歯科矯正治療は可能です。問題が出た人はいません。

4.歯を動かさない治療法もある

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私の感想、意見
ハイブリッドセラミックスという材料を歯に貼り付けてごまかす方法  

ごまかすだけです。根本的には治っていない。歯とセラミックスの間の膨張率は違いますから、熱いもの冷たいものを食べるたびに、はがれる力がかかります。隙間ができればそこから虫歯が発生しますよ。「歯にやさしい。」というのは、うそだとわかるでしょう?

スピード矯正 無理をすれば、無理な結果が待っているだけです。理にかなった治療ならば、そういった結果が出るわけです。
バイオプレート治療(上西氏)  この人の所には、こういった人が集まるだけです。このプレートがすさまじく高い!(かみ合わせもすごく高く設定します。) 矯正治療、補テツ治療をすると、またすさまじく高い!
評判の良い矯正歯科医ではこれらのプレートを用いて顎の位置を確認するのだという。 バイオプレートと顎位を決めるためのプレートは思想(考え方)が全然違います。いっしょくたにしてはいけません。
「他の歯科医で矯正をして、かみ合わせが悪くなってウチに駆け込んでくる人に再矯正をすることもまれにありますが(後略)」(岸本氏) 面倒な人は、追い返すみたいですけど..。(ウチに断られていらした人が何人かおります。)

5.自分の治療目的を認識すべし

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私の感想、意見
「患者サイドが、自分の治療目的をはっきりと認識しておくこと」だ。(中略)
その歯科医の矯正が自分の本来の目的に添っているかどうかを見極めるだけの判断力が要求されてくる。
正しい。正論。あと、付け加えるのであれば、類似症例の呈示を求めることです。「百聞は一見に如かず。」 うまいことを言っても、口だけで技術のないのは一杯おりますからね。
審美歯科 ちゃんと仮の歯で、状態を見極めれば良いかというと、そうでもありません。所詮見てくれだけの治療であり、根本的な問題は何一つ解決していない事に気づいてください。(参考:3日で矯正
ただ、欠点を十分理解してやるのであれば、美容整形と同じで本人の責任です。

6.まとめ

 歯科矯正治療に限らず、治療は患者さんが選ぶものです。治療しないという選択肢もあります。いろいろな情報が飛び交っておりますが、正しいと思われることを信じましょう。眉唾ものの説に、だまされてはいけません。今回の記事のような、本を売ったり特定の歯科医院を宣伝するような提灯記事は眉に唾をつけながら読んだほうがよろしいと思います。

 患者さんは、自分に都合の良いように考えがちです。非抜歯を希望されれば、非抜歯治療の情報に目がゆくのは当然です。ブラケットを付けたくなければ床矯正のほうが良い、と考えるでしょう。

 しかし、多くの矯正専門医がその治療を選択しないのは、「それでは治らない」からなんです。患者さんに迎合するのは簡単です。患者さんに嫌われるような都合の悪いことを言っても、それが正しいことならば、私は正直にそれを伝えるだけです。

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