眼下の敵 [DVD] 眼下の敵 (製作年度: 1957年)
レビュー日:2010.4.25
更新日:
評価:★★★★
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解説(Yahoo映画より):
歌手から役者へ、そして監督・製作業に転向したD・パウエルの紛れもない代表作にして、最高傑作。第二次大戦下の南大西洋を舞台に、アメリカ駆逐艦とドイツ潜水艦の文字通り息詰まる戦いを描く。ワン・シチュエーションの中であらん限りの技巧を尽くすシナリオと、徹底したゲーム感覚の展開も良く、双方の艦長が互いを好敵手と見なす構図なども定石ながら心憎い。ミッチャム、ユルゲンスの対照的なキャラクターも際立っている。


波の上と下の攻防

第二次世界大戦中の南太西洋。大海原の真っ只中で遭遇したドイツのUボートとアメリカの駆逐艦、その二者のあいだで繰り広げられる攻防戦を描いた物語。

前々から名作だという評判は聞いてました。その後のいろいろな作品にも影響を及ぼし、映画「スター・トレック」の元となった「宇宙大作戦」のエピソード「宇宙基地SOS」も、玉木宏が艦長やった「真夏のオリオン」もみんなこの映画のパクリ……いや、オマージュだというくらいですから、いったいどんな作品なんだ、と期待が高まるのも無理ないところ。

……で、ようやく見ました。確かに名作。
波の上と下とで、それぞれ相手の出方を読んで、それを出し抜こうと知力の限りをつくす両艦長。民間出身でずっと部屋に引きこもり、下っ端兵士にまで実力のほどを疑われていたのに、敵の魚雷攻撃のコースを読んで鮮やかにかわして見せ、部下の信頼をかちとるアメリカ側の艦長マレル(ロバート・ミッチャム)も、アメリカ側の執拗な攻撃に追い込まれ、精神に変調をきたして暴れだした部下に向き合ってその眼光と毅然たる態度で相手を鎮め、すぐさまレコードをかけて歌を歌わせ、みんなの心をポジティブに引き戻すドイツ側の艦長シュトルベルク(クルト・ユルゲンス)も、的確な判断力と決断力がすばらしいし、戦い終わって相手の力を認め合うところがまたかっこいい。

もちろん今の特撮技術をもってすればもっと迫力のある画面を作れるのだろうけど、それだけにかえって、よく50年前にこれだけの映像を作ることができたと感心してしまいます。

それにしても、自分の映画レビューのリスト見てると、あまりの女っ気のなさには笑うしかないなぁ……


【ここが美味しい名シーン】

マレル艦長はもと貨物船の航海士で、自分の船をドイツに撃沈され同乗していた新婚の妻を失ったという経歴の持ち主。着任以来ずっと艦長室に引きこもっていて、部下にも民間出身だからと軽く見られている。ところが、ドイツ軍のUボートに遭遇し、相手が潜行したとたん、鋭い洞察力で相手が攻撃してくるまでの時間をはじき出し、その直前に艦の進路のコースを変えてみごとに魚雷をかわす。「ウチの艦長やるじゃん」と見直す部下たち。一方歴戦の勇士であるシュトルベルク艦長、最初は「相手は馬鹿かよっぽどの利口だ」と相手の意図をはかりかねていたものの、この出方を見て「アマチュアではないな」と相手の力量を認める。

シュトルベルク艦長もこの戦争で息子二人を失い、自国の行く末にすっかり懐疑的になっており、長い付き合いの副長だけには自分の思いを打ち明ける。それぞれに心の傷を抱えながら、艦長の器たるにふさわしい力量をみせつつ部下をしっかり掌握し、戦いにのぞんでいくふたりの描写がまたいいんだなぁ。

見た目眠そうな目つきでもっさりしているのに、意外な切れ者ぶりを発揮するマレル艦長も魅力的だけど、鋭い眼光ながらはっとするようなブルーの瞳が印象的なシュトルベルク艦長も渋くて男前。このふたりが沈み行くお互いの艦上に立ってはじめて顔をあわせ、敬礼をかわすシーンもいいし、ラストの会話もさわやかで後味がいい。

全編シリアストーンながら、ユーモアがないわけではなく、かといって露骨に笑いを取るほどでないさじ加減が絶妙。アメリカ艦の攻撃をかわすため限界ギリギリまで潜航し(ここは手に汗握るシーン)、海底に着いたところでシュトルベルク艦長がぽつりともらす「ドイツの艦(ふね)は優秀だ」というセリフは思わずニヤリとさせられるし、双方相手の艦に位置を悟られないよう音を立てないようにして待機する時間、それぞれの乗組員がおもいおもいの方法で時間をすごしている場面も(読んでる本のタイトルとか)結構面白いです。


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