鳥は美味しそうに、僕が淹れたお茶を飲んで、すうと息をつく。
ちいさく、中心にささやかな黄色をたたえた白い花が、カップの淵に浮かぶ。
甘い香りを漂わせるその花から抽出された薄い黄色と、熱いミルクの白。
ふたつの色が溶け合ったその飲み物は、優しくほんのりと身体を温める。
−−助けてくれたお礼に、いつか、この飲み物と同じものを、貴方に届けてあげる。
「この花は、人の領域にしか咲いていない。君には、摘むことはできないよ。」
−−じゃあ、その白い花の飲み物に、よく似たものを、代わりに。
そう言って、鳥は音もなく、銀色の長い髪をなびかせて立ちあがった。
「もう、飛び立つの?」
−−冬至はもう過ぎたから。生まれる春を迎えにいくのが、わたしたちの定めだから。
−−もしも、何処かでわたしが消えてしまったら。
微かに、夜のように深い瞳を細めて笑って、最後にこう言い残して。
−−その時は、わたしから繋がった子供達がきっと届けるから。
生まれたばかりの陽が登る朝へと、暖かい春へと、鳥は夜天へと舞い上がった。
翼を持たぬ僕をおいて、ふわりと、雪のように白い軌跡だけを残して。
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