鳥は鳥に 〜Camomile Milk Tea〜 / page3


鳥は美味しそうに、僕が淹れたお茶を飲んで、すうと息をつく。 ちいさく、中心にささやかな黄色をたたえた白い花が、カップの淵に浮かぶ。 甘い香りを漂わせるその花から抽出された薄い黄色と、熱いミルクの白。 ふたつの色が溶け合ったその飲み物は、優しくほんのりと身体を温める。 −−助けてくれたお礼に、いつか、この飲み物と同じものを、貴方に届けてあげる。 「この花は、人の領域にしか咲いていない。君には、摘むことはできないよ。」 −−じゃあ、その白い花の飲み物に、よく似たものを、代わりに。 そう言って、鳥は音もなく、銀色の長い髪をなびかせて立ちあがった。 「もう、飛び立つの?」 −−冬至はもう過ぎたから。生まれる春を迎えにいくのが、わたしたちの定めだから。 −−もしも、何処かでわたしが消えてしまったら。 微かに、夜のように深い瞳を細めて笑って、最後にこう言い残して。 −−その時は、わたしから繋がった子供達がきっと届けるから。 生まれたばかりの陽が登る朝へと、暖かい春へと、鳥は夜天へと舞い上がった。 翼を持たぬ僕をおいて、ふわりと、雪のように白い軌跡だけを残して。  ***

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