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自殺でも生命保険金はおりる

 

 

平成16325日に、自殺でも生命保険金は支払わなければならないという最高裁判所(3審)の判決が出た。

 この経営者の自殺は、平成71031日のことであるから、8年半にも渡り20億円近くの生命保険金の支払いが止められていたことになる。

この裁判は、1審(つまり地方裁判所)では原告(つまり保険加入者の遺族)が勝ったが、2審(つまり高等裁判所)では生命保険会社が勝ち、そして最後にまた遺族が勝ったという経緯をたどってきた。   

そもそも「商法」では保険の支払いをしなくてよい事由の1つとして、「被保険者が自殺、決闘、その他の犯罪また死刑の執行によって死亡したとき」と規定している。つまり「商法」では、契約から何年経とうと自殺では保険金は支払わなくてよいと言っている。

しかしながら、生命保険会社は、加入者との契約(約款)において、1年経てばよいとか、2年経てばよいとかという個別に規定を設けている。(最近では3年の会社もある) 

 それでは、商法と加入者との契約のどちらが優先されるべきかであるが、原則は、加入者との契約である。

しかしながら、2審の東京高等裁判所の判決では保険加入時にすでに自殺することを予定していた場合には、公序良俗に反するものとして、商法の規定を優先させたのである。

しかしながら、最高裁では、生命保険会社は、商法の規定を知りながら、あえて保険加入者との個別契約を行なっているわけであるから、当然に個別契約が優先されるのだという判断を下したのである。

この判決は、商法に規定する公序良俗に反するという社会通念よりも個別の契約を優先させるという大変興味深いものである。

以下、事実の概要を記しておく。

 

事実の概要

・被保険者Aは、平成71031日午後230分頃、埼玉県北足立郡吹上町の吹上団地の屋上防水工事現場において、屋上から落下し、脊髄損傷等により即死した。

・Aは、防水建築請負を主たる目的とする原告会社を設立し、その代表取締役として本件事故により61歳で死亡するまで経営全般を取り仕切ってきた。

・原告会社の経営状態はかなり厳しい状況にあり、平成6年度末において27,194万円の借入金があった。

Aは、昭和578月に被告Y5生命の養老保険に加入後、他の保険に加入しようとしなかったが、平成64月以降、10件の生命保険契約と5件の傷害(損害)保険契約を締結した。

本件各保険契約は、いずれもA自身が家族等に相談することなく積極的に加入手続を行ったものであり、契約締結後にも家族に一切報告していない。

・本件保険契約の合計保険金額は198,500万円であり、養老保険・傷害保険をあわせた保険金額は258,500万円(原告会社の年間売上高の6倍以上)に上った。

・原告会社及びAが支払う保険料は、総額(月額)225万円を超える金額に達しており原告会社の経営状況等からすると、平成711月以降も上記保険料の支払を継続することはかなり困難な状況にあった。

(生命保険契約法 続・最新実務判例集 西嶋梅治・長谷川仁彦共著 保険毎日新聞社より引用)



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