渋谷区の税理士 中川尚税理士事務所

 

中川尚の飛耳長目(税理士読書日記)TEL 東京・渋谷 03-3462-6595

 

平成24年8月2日より飛耳長目をジャンルごとに分類してお届けしています。
以前の記事はページ下部及びバックナンバーをご覧ください

 


HOME

 

中川尚の飛耳長目(税理士読書日記)TEL 東京・渋谷 03-3462-6595

 

 和久井光司「放送禁止歌手 山平和彦の生涯」(河出書房新社)
201281日(水)

 

 

<その3>
◆名刺に神さまって刷っちゃうぐらいの男ですから否定しようがないところもある。僕は物心ついた時からそばにいましたから、いいとか悪いとかじゃなかった。他にはいない個性として眺めてました。不世出というか・・・そういう特別な人間、アーティストだったことは間違いないです。(マイペースの森田貢氏の発言)

◆だからいろんな意味で歌手というより外交家的手腕もあるし、政治家的な面もあるし、演出家でもあるし、なおかつアーティストでもある。というそういう面を強く持っているから、このままでいけば日本の音楽シーンに貴重な足跡を残すんじゃないかと思いますネ。エースになれる男だし、これからが恐ろしいですネ。(やつが恐ろしいのはこれから −徒党を組まない一匹狼− 三浦光紀より)

◆歌がもし生きているとしたら・・・僕は誕生間もない子供を殺されたようなものかもしれないですね。・・・あんな理不尽な規制にあうようなこともなかったら、もしかしたらまだ今も僕は歌を続けていたかもしれないな。


HOME

 

中川尚の飛耳長目(税理士読書日記)TEL 東京・渋谷 03-3462-6595

 

 和久井光司「放送禁止歌手 山平和彦の生涯」(河出書房新社)
2012731日(火)

 

 

<その2>
◆20代の著者(小室等29才、山平和彦21才)が、こんな大人だったのを単に時代のせいにすることに反対しておきたい。私は彼らの親の世代の日本人全体の感覚(思想とか哲学といったことではなく、大きな戦争を体験した皮膚感覚のようなもの)や、60年代までの学校教育が大いに関係していたと思うのだが、どうだろう。

◆僕は感動した。感動すると同時に「悪いもの」というレッテルを一方的に貼られ、世間から隔絶されてしまう音楽の存在を初めて知った。そして考えた。 「悪い物」って一体何だろう?それじゃあ「良いもの」ってなに?この世が「良いもの」ばかりになって「良いもの」に埋め尽くされてしまったら、その時が「良い世の中」だろうか?この僕はおぼろげながら「わが道」が見えたような気がした。(とうじ魔とうじ養成ギブスより)

◆フォーク・シーンから出た人間がレコード業界をそうやって動かし(フォーライフレコードの設立)、ニューミュージックを新たな産業にしてしまった時代に、秋田や岐阜で手づくりコンサートをやっていた感覚のまま六本木で独立事務所を始めた山平は、明らかに時代遅れだったのだ。


HOME

 

中川尚の飛耳長目(税理士読書日記)TEL 東京・渋谷 03-3462-6595

 

 和久井光司「放送禁止歌手 山平和彦の生涯」(河出書房新社)
2012730日(月)

 

 

<その1>
はじめにの冒頭に、山平和彦の名前に反応する人が今世の中にどのくらいいるか判らないと書かれているが、私なんぞはまさにその反応してしまった人間の一人である。
「山平はアルバム「放送禁止歌」の2曲がワイセツとされ、わずかな活動期間で音楽界から姿を消す。今世紀に入り復活を遂げた矢先、ひき逃げ事故で帰らぬ人に・・・。幻のフォークシンガーの足跡を追う」
この文章は本書の帯に書かれているものであるが、全盛期には神さまとも呼ばれた男が晩年は仕事も減りアルコールに溺れていたようである。 以下インパクトのくだりを要約して御紹介していきたい。

◆中学時代の恩師の言葉は見事に本質を捉えている。「創造よりも選択の能力を尊ぶ。そんな時代の傾向の中で、彼はいつも自分が何をしたいのかと問い掛けようとする自己への真面目さに貫かれている。」 「割ってしまったコップの破片を大切にしまっておくような、いわば古典的な種類に属する人間だと私には思われる。」というところは山平和彦を理解する重要な鍵と言えるだろう。


HOME

 

 

 大坪弘道「勾留百二十日 特捜部長はなぜ逮捕されたか」(文藝春秋)
2012727日(金)

 

 

<その2>
◆私は特捜検事として、また最後は特捜部長として過去幾多の被疑者を逮捕拘留してきた。その都度接見禁止を求め起訴後も否認する被告人に対しては、保釈に反対し可能な限り拘置所に留め置こうとした。

◆水に落ちた犬は叩け。これは組織が個人を切捨て責任を個人に転嫁する時の常套手段である。落ちた犬はそれに抗うことはできず、ただ叩かれるまで耐えなければならない。

◆厚生労働省の局長という枢要ポストにいた村木氏を逮捕起訴するにあたって、一点の誤りもあってはならない。もし失敗すれば特捜部そのものが大きく傷付くという極限の緊張感の中で、慎重且つ緻密に捜査を行い有罪判決を得られる確信をもって公判請求したのである。

これらが本書の中のインパクトのくだりの一部であるが、それにしてもエリート検事というものがこんなにも頭が悪く人間的にも未熟なのかとウンザリする思いである。 自分が逮捕されるまで本当に逮捕された人間(そのほとんどが冤罪であろう。)の心理が分からないというのは、想像力が欠如し過ぎてはいないか。 村木事件にしてもどう考えても冤罪のように思われるような事件を自信満々で起訴したなどという話を聞くと、精神が少しおかしくなっているのではないかとさえ思えるのである。


HOME

 

 

 大坪弘道「勾留百二十日 特捜部長はなぜ逮捕されたか」(文藝春秋)
2012726日(木)

 

 

<その1>
本書は「逮捕する側」から「される側」へ墜ちた人の話である。本人が無罪を主張しているためこの事件を悲劇と言えば悲劇だが、自分が冤罪を作ってきたという反省があまりにも無さ過ぎることが非常に気にかかる。 以下本書よりインパクトのあるくだりを要約して御紹介していきたい。

◆私は自己の特捜捜査の過程で、私自身が直接承知している検察の秘密を全て暴露しようと本気で思った。私は自分の美学として自分がどのような状況に置かれようと秘密は最期まで封印するつもりでいたが、最高検がそのような卑劣な手段を使うのであれば私は徹底的に抗戦してやろうと決意した。

◆囚われの身になって初めて判ったが、人間理不尽な仕業によって極限状態に置かれた場合、娯楽や趣味あるいは単なる時間つぶしの本では心は救われないということであった。 厳しい現実と向き合っている人間の心を救うのは、自分と同様あるいはそれ以上の苦難の中にあって、その身を削るような思いでそれを乗り越えようとした人々の体験であり、言葉であった。

◆幸い私には裁判所の判断で拘留中の接見禁止が付かなかったが、囚われの身にあって家族との面会や家族知人から励ましの手紙が禁じられることが、どれ程精神的に苦痛であるかもこの身をもって知った。検察から保釈請求に反対されることがいかに脅威であるかも知った。


HOME

 

 

 上杉隆「新聞・テレビはなぜ平気で「ウソ」をつくのか」(PHP新書)
2012725日(水)

 

 

<その3>
◆「「餌付け」体制を整えているスポンサー企業に対し、マスメディアはその傘下に自ら入り進んで自主規制を敷いている。原発事故に関しても多くのマスメディアが、スポンサーである東電から莫大な広告費を得て接待を受けていたことが明るみになっている。 何度でも繰り返そう。日本のマスメディアは決して「報道」ではない。単なる「広報」だ。」
日本はマスメディア(特に記者クラブの問題)が変わらなければ何も変わらないというのが、上杉氏の主張であろう。

◆「ネットの世界の本質を知らない人間は、情報は管理できるものと信じて疑わない。しかしそのような時代は既に終焉を迎えたのだ。」
コンピュータを無制限に容認してきた社会においては、個人情報保護なるものは何の意味も持たない。個人情報を護ろうとするならばコンピュータを規制する必要がある。


HOME

 

 

 上杉隆「新聞・テレビはなぜ平気で「ウソ」をつくのか」(PHP新書)
2012724日(火)

 

 

<その2>
◆「小沢一郎氏や岡田克也氏、原口一博氏などはオフレコ取材にはほとんど応じることが無い。記者クラブの問題点を認識しフリーランスや海外メディアの記者に会見を開放してきた政治家にしてみれば、番記者相手のオフレコ取材に応じることは「アンフェア」だと考えているのだろう。 一方、菅政権当時最も多くオフレコ取材を行っ
たのが官房長官の仙石由人氏であるが、番記者をコントロールしようと目論んでいたのであろう。」
仙石は番記者をコントロールすること、イコール世論をコントロールすると考えているに違いない。

◆「日本のマスメディアは原発事故の際「放射能の心配はしなくて大丈夫です。安心して下さい。」とまるで政府広報さながらの役割を果たした。本来国民の安心、安全を考えるのは政治や行政の仕事であってメディアの仕事ではない。繰り返すがメディアやジャーナリストの仕事はただ1つ、事実を取材しそれを報じることなのだ。」
官僚機構の附属物である記者クラブを解体させない限りは、日本のメディアは変わらないであろう。


HOME

 

 

 上杉隆「新聞・テレビはなぜ平気で「ウソ」をつくのか」(PHP新書)
2012723日(月)

 

 

<その1>
以下興味深い箇所を要約して御紹介すると共に私のコメントを付していきたい。

◆「実は日本の記者は取材した人間が自分で記事を書かない。」
日本の新聞やテレビには現場感が無いのはこれが理由であろう。更に問題なのは分業体制をとることにより、責任の所在が曖昧になっていくことである。

◆「海外のメディアの間では、複数の記者達による「オフレコ取材」自体があり得ない。アメリカでは30年以上も前にこうした形でのオフレコ懇談は禁止されている。フランスに至っては遡ること200年も前からである。公人である政治家に匿名性は無い。官僚もまた然りである。」
日本のマスコミは記者クラブという名のギルドを作り、公人達となあなあの関係を続けていることを少しも恥ずかしいと思っていない。


HOME

 

 

 佐藤肇「社長が絶対に守るべき経営の定石50項」(日本経営合理化協会)
2012720日(金)

 

 

<その3>
◆「定石31 在庫適正は業種業態に関わり無く付加価値の4ケ月分以内に抑えよ。」
ここでのポイントは売上高や仕入高ではなく、付加価値を基準に判断していることである。

◆「定石37 社長は手許現預金の目標残高を年商20億円以下の会社なら日商分、年商20億円以上の場合は日商の半分と、明確な目標を定めてこれを社内のルールとして徹底させる。」
ここで言う手許現預金とは現金と当座預金のことを言う。つまり利息がつかないもののことである。

◆「定石44 総資本収益率は20年国債利回り以上、総資本回転率は1回転以上、この2つの基準を満たす経営がこれからの中小企業にとって最善の方法である。」
現在の20年国債利回りは年利1.68%なので、総資本利益率(ROA)の基準としてはどうかなあとは思うが、ROAが企業の存在価値と社長の経営力が問われる大事なチェックポイントであることには異論は無い。

◆「定石46 P/Lは見るものだがB/Sは読みこなすものである。B/Sを社長の目で読むために「社長専用のB/S」をつくれ。」
確かにそうではあるが、実際にはP/Lも社長専用のものを作っておいた方が良いと思う。


HOME

 

 

 佐藤肇「社長が絶対に守るべき経営の定石50項」(日本経営合理化協会)
2012719日(木)

 

 

<その2>
◆「定石12 企業の収益目標は付加価値に対して内部留保5%を最低目標として、できれば
10%を目標とせよ。」
これは現在の平均的なサラリーマン家庭の貯蓄率平均5%から来ている。(高度経済成長期には20%を超えていた。)

◆「定石13 営業経費は付加価値の87%未満とし、できれば80%未満に抑えるべきである。」
これは内部留保率を5%にするには営業経費は87%未満にし、10%確保するためには営業経費は80%未満にすべしという意味である。

◆「定石15 製造業で付加価値が売上に対して40%以下かつ金融費が付加価値に対して3%以上である会社は、根本的にバランスシートを直していかない限り倒産の可能性がある。」
付加価値率が40%以上であることが会社の必要条件である。

◆「定石23 設備投資は原則として減価償却費の範囲内とせよ。」
これは減価償却は資金支出の伴わない経費であるから、この範囲内で設備投資していれば、一切の資金負担が増えないという理由からである。


HOME

 

 

 佐藤肇「社長が絶対に守るべき経営の定石50項」(日本経営合理化協会)
2012718日(水)

 

 

<その1>
50項のうちインパクトのある箇所を要約して御紹介すると共に、私のコメントを付しておきたい。

◆「定石4 社長は会社の数字を意図的に創り出す人でなければならない。」
数値目標を明確に掲げ、どうすればその目標が達成できるかを考え抜いていくことが、社長業というものである。

◆「定石5 企業経営の基本は常に成長産業のなかにあるべきで、斜陽産業にいる限りいかなる経営努力も成果も得られない。」
ただ成長産業そのものは多産多死の傾向が強い。それ故に成長産業の中での隙間産業を考えておくことが重要である。

◆「定石10 経営には「攻める経営」と「守る経営」と「捨てる経営」の3つがある。」
将来性のある高額商品は攻め、ほどほどは守る。そして成長性の無い商品と利益率が低下している商品は捨てるということだが、ほとんどの経営者がこれらを分析することが出来ていない。この分析の手法は単品管理ということになるが、これが出来ないのである。


HOME

 

 

 島田裕巳「浄土真宗はなぜ日本でいちばん多いのか」(幻冬舎新書)
2012717日(火)

 

 

<その2>
また面白かったのは次のくだりである。
「重要なことは浄土真宗と日蓮宗においては、具体的な救済の手段が備わっている点である。浄土真宗では、「南無阿弥陀仏」の念仏を唱えることが極楽往生に結びつくとされる。日蓮宗では、「南無妙法蓮華経」の題目を唱えることで「利益(りやく)」がもたらされるとされている。他の宗派にはこの念仏や題目に相当するものが無い。」
全ての宗教に念仏や題目に相当するものを考えていたのでビックリである。 最後に浄土真宗の信徒の多さについて記された箇所を要約して御紹介しておく。
「浄土真宗はいくつかの宗派があり、信徒の総数は1,200万人を超えている。この数は日本の総人口のおよそ10分の1にあたる。明治に入る時点では日本全体の3分の1が浄土真宗だったという話を聞いたことがある。寺院の数を見ると浄土真宗各派の寺院の総数は2万寺を超える。寺院の総数が7万7,000寺なので、およそ26パーセントが浄土真宗の寺院だということになる。」


HOME

 

 

 島田裕巳「浄土真宗はなぜ日本でいちばん多いのか」(幻冬舎新書)
2012713日(金)

 

 

<その1>
信者の数が日本で一番多い宗教は浄土真宗である。その理由は何かというのが本書のメインの内容かと思いきや、案外そうでもない。 むしろ仏教において宗派とは何を意味するのかとか、どんな宗派が存在しそれぞれの特徴は何かというような網羅的なものとなっている。 ストレートにタイトルのなぜに答えているくだりは次の1行だけである。 「簡単に言えばそれは庶民の信仰だからである。」 これでは何のことだか分からない。 私が思うに浄土真宗の最大の強みは信者の金銭的負担の軽さであろう。 通常の宗教は毎日の支払が発生するが浄土真宗にはそれが無いため、経済状況の厳しい人達は今までの宗教をやめて浄土真宗に入信していくのである。もちろんそれだけではないのだろうが、宗教に関わる人達は経済的には弱者が多いためそういう傾向は否めない。


HOME

 

 

 八幡和郎「松下政経塾が日本をダメにした」(幻冬舎)
2012712日(木)

 

 

元通産官僚の八幡氏の著作ではあるが、内容はタイトルと異なり松下政経塾出身の政治家を評価している。松下電器の最大の不良商品は松下政経塾であるという佐高信氏の主張とは、真向から対立している。 以下本書より参考となるくだりを要約してピックアップしておこう。

◆「文藝春秋の野田論文について何よりも違和感があったのは、野田が回帰しようとする1970年代の終わりから80年代の初めというのは、政治の在り方に義憤を感じた松下幸之助が松下政経塾を開設した頃である。その時代が良かったというのなら松下幸之助が目指したのは何だったのだろうか。」
要するに野田首相は政治哲学などは持ち合わせてはいないということである。自分というものが無いから簡単に財務省の言いなりになってしまう。

◆「松下政経塾は現場主義を大切にする。経済政策でどんな問題を解決すべきかと知ることはできても、どう解決できるかを知ることはできない。解決方法を知るにはまじめなデスクワークが不可欠なのであるが、その辺は政経塾のカリキュラムでも弱い。かといって卒業後に塾生達がデスクワークに熱心に取り組んでいるかといえば、そうとも言い難い。」
全く理解できない話である。塾というものは解決策というものを教えるところではないのだろうか。


HOME

 

 

 吉澤大「一生食べていくのに困らない経理の仕事術」(かんき出版)
2012711日(水)

 

 

本書には習慣を変えてスキルを磨く46の方法が記されているが、その中から参考となるものをいくつかピックアップすると共に、私のコメントを付しておきたい。

◆「口の堅さは経理パーソンの必須条件。」
ここで大事なことは、あまりしゃべらない人イコール口が堅い人ではないということである。 しゃべらない人は案外人にしゃべらされてしまうのである。

◆「仕事の依頼人に迷惑を掛けないようにこまめな中間報告を励行する。」
これは非常に重要なことであり、これが出来る人には仕事が集中してくる。しかしながらほとんどの人がこのことが理解出来ていない。

◆「後処理よりも前準備に時間をかけよ。」
このことも重要なことの割にはあまり理解されていないことの一つである。 前準備に力を入れると仕事にスピード感が出て来るし、また顧客満足度も高まるのである。

◆「自分を必要としない仕組みをつくることに尽力する。」
経理の仕事の95%は同じことの繰り返しである。残りの5%部分だけを専門性の高い人間がやるべきなのである。


HOME

 

 

 冨山和彦「IGPI流経営分析のリアル・ノウハウ」(PHPビジネス新書)
2012710日(火)

 

 

<その2>
◆「経営分析はまず数字から。数字をもとに背後にある企業実態を想像する。また仮説を現場に足を運んで検証して企業の実像に迫る。その繰り返しで分析の質を高める。」
現場実践主義と言っても数字が読み解けないとコンサルティングは出来ない。いや経営そのものが出来ないと言って良い。私はそこそこの会社をつくりたいと考えている人は、創業時において日商簿記の1級程度まで勉強しておくべきだという意見を持っている。昔は簿記の初歩でも良いと考えていた。 しかし企業経営の世界に30年もいて高収益会社の実情を分析していると、経営者はもっともっと数字に強くないとダメだと思うようになってきている。


HOME

 

 

 冨山和彦「IGPI流経営分析のリアル・ノウハウ」(PHPビジネス新書)
201279日(月)

 

 

<その1>
IGPI流とは冨山氏が作った組織「経営共創基盤」の英語名の略称である。 経営コンサルタントの冨山氏の主張の中で、インパクトのある箇所を本書より紹介していきたい。

◆「隠された病気を発見し、今後の治療と将来の予防に役立てるのがリアルな経営分析であって過去を評価するためのものではない。目線は常に未来に向いている。」
この主張には半分賛成で半分反対である。経営分析は徹底的に過去のものとしてやるべきで、中途半端に未来のことなど考えない方が良い。 確かに過去はどんなに頑張っても変えられないのだから、投資家向けの財務分析に限界があるのも事実である。しかし時間軸を活用した収益性分析は、会社を高収益体質に変えることは間違いない。 「時間軸を活用した」とはどういうことか。 通常収益性分析とは、売上高と売上高から変動費を差し引いた粗利益の関係をチェックしている。物品販売であればこれでも良いが、サービス業や製造業となるとその粗利益を稼ぐのにはどのくらいの時間がかかったかが重要となってくる。 要するに従業員1人が1時間でいくらの粗利益を稼げるかをチェックし、高収益な商品を見つけ出すのである。


HOME

 

 

 スティーブ・シーボルド「金持ちになる男、貧乏になる男」(サンマーク出版)
201276日(金)

 

 

<その4>
◆貧乏になる男は「お金があれば幸せになれる」と考え、金持ちになる男は「お金と幸せはほぼ無関係だ」と考える。

◆私は長年にわたって富裕層の研究をしてきて彼らの成功の大きな要因は「目標への集中力」「職務への専念」「ひたむきな努力」であると断言できる。

◆お金を稼ぐことは単純であり、お金は無限にあり、もっとお金を稼ぐには考え方をレベルアップすれば良いというのが金持ちになる男に共通する考え方である。

◆客観的に言うと「安定」というものは存在しない。安定とは感情であり、自分は安定していると思えばそれによって心の平安を得ることができる。

◆私は今までマザー・テレサがカルカッタで貧しい人々に奉仕しているという話を何度も聞いた。確かにそれは事実だが、マザー・テレサはもの凄い経済的支援を受けていた世界で最も影響力のある指導者の1人だったということはあまり知られていない。

◆貧乏になる男は「友達をつくって人気者になる」ように子供に教え、金持ちになる男は「人脈をつくって成功者になる」ように子供に教える。


HOME

 

 

 スティーブ・シーボルド「金持ちになる男、貧乏になる男」(サンマーク出版)
201275日(木)

 

 

<その3>
◆自分で財産を築いた金持ちにとって仕事と遊びの境界線はほとんど無い。たいていの場合彼等は仕事が大好きなのでそれを労働とみなしていない。

◆むやみにお金を分け与えることは、働いてお金を稼ぐことで得られる充実感を人々から奪うことになる。多くの裕福な家庭の子供に莫大な財産を贈与するという間違いを犯し、結果的に子供の自立を阻んでいる。

◆結局のところ人間は二つの方法で知恵を得るしかない。一つは読書、もう一つは自分より賢い人との付き合いだ。

◆収入を増やすための最も効率的な方法は他の誰も解決できない問題の解決方法を考えついて、画期的なモノやサービスを提供することである。

◆金持ちは自分にとって最も重要な目標に集中しこれを実現する期日を設定する。彼等はそうやって財産を築く。

◆仕事がつらくなってフラストレーションが溜まると、貧乏になる男は社交や趣味、週末のレジャーに逃避する。一方金持ちになる男はフラストレーションが溜まるとますます意欲的に仕事に取り組む。彼等は試練が大好きなのだ。


HOME

 

 

 スティーブ・シーボルド「金持ちになる男、貧乏になる男」(サンマーク出版)
201274日(水)

 

 

<その2>
◆貧乏になる男は無能なのではなく、自分の能力を信じていないのだ。

◆貧乏人が死の床について必ず後悔するのは「思い切って自分の好きなことをすればよかった。」ということである。

◆金持ちが幸せなのはお金があるからではない。彼等にとって幸せとは「誰かが助けに来てくれることを待たずに自分で目標を設定し、ひたむきに努力してゲームに勝つこと」なのだ。お金はそのための目安に過ぎない。

◆私たちが問うべきことは「自分がどんなに優れているか」ではなく、「自分はどんな点で優れているか」である。

◆金持ちになる秘訣は財産を築いた人を観察しお金についてどんな信念を持っているかを学ぶことだ。

◆金持ちは「得意なこと」ではなく「大好きなこと」を仕事に選ぶ。愛情と豊かさに溢れた意識で働き、目標に向かって前進する。

◆信じ難いかもしれないが、会社に勤めることは事業を起こすことに比べて安全というわけではない。


HOME

 

 

 スティーブ・シーボルド「金持ちになる男、貧乏になる男」(サンマーク出版)
201273日(火)

 

 

<その1>
本書はアメリカの経営コンサルタントの著作の翻訳本である。 以下インパクトのある箇所を要約して御紹介していきたい。

◆貧乏になる男は時間をお金に交換して稼ごうとするばかりで、社会に役立つ創造的なアイデアを考える努力をしない。

◆資本主義社会の素晴らしさは誰もが自由に考え方を変えられることである。ところがほとんどの人はそれをしない。

◆貧乏人は当たりくじを引いて一攫千金を狙う。一方金持ちは世の中の問題を解決することに尽力する。

◆この世の中は問題解決に対して報酬が支払われる仕組みになっているので、問題を解決すれば誰でも金持ちになれる。

◆貧乏になる男は「自分の功績」を認めてもらうことに関心を寄せる。しかし金持ちになる男はチームに功績を譲り、自分の功績より「全体の利益」を優先する。

◆私が長年にわたって話を聞いた金持ちの大半は、「大好きなことをするまでは、たくさん稼ぐことはできなかった。」と言う。


HOME

 

 

 石川知裕「雑巾がけ−小沢一郎という試練−」(新潮新書)
201272日(月)

 

 

<その5>
◆これまでの小沢さんの発言などを振り返ってみればはっきりするのだが、常に攻撃対象にしているのは政策である。増税やTPP交渉等について批判を加えることはあっても、それを決めた人の性格云々を言うことは無い。逆に小沢さんの「人格が冷たい」とか「政治手法が問題だ」といった政策とは別の論点で批判されることは多い。

◆私は小沢さんに仕えた理由、そして今でも首班格名で「小沢一郎」と書く理由は単純だ。現在の政治家の中で最も政策が優れていて実行力があると考えているからである。

◆よく「金の力」「ポストの力」が小沢さんの力の全てであるかのような解説をする人がいるが、それだけでは「無役」になりお金の配分もしていない。そして完全に「悪役」になった今でも「チルドレン」が多いことの説明にはならないのではないか。

◆誰もが認めるところだがもう四半世紀も小沢さんは政界の中心にいた。そしてあらゆるトラブルを経た今でも強い影響力を持っている。そのメカニズムを完全に解明した者はいない。「小沢一郎」という巨大な謎に向かい合うことが、私にとっての雑巾がけの意味なのかもしれない。


HOME

 

 

 石川知裕「雑巾がけ−小沢一郎という試練−」(新潮新書)
2012629日(金)

 

 

<その4>
◆当選後に特に小沢さんに祝ってもらったことはない。「小選挙区で当選してこそ本物」という持論があるため、「お前はまだ本物の国会議員じゃない。」と言われたことは2回程あるのだが。

◆とにかく当選3回くらいまでに地元をまめに回って、自分がどんな政策を提案してもついてきてくれる後援会を作らなければ駄目だ。」

◆ある会社が「民主党に1億円寄附したい。」と言ってきたことがあった。秘書としては有り難い話なのだが「断れ。」と小沢さんは即座に言う。理由を聞くと「そういうところは絶対後になって参議院の比例上位に誰それを置けとか言ってくる。」ということだった。

◆小沢さんの予定がびっしりだと書いたが、一方で実は常に「抜き」の時間は確保していた。余程のことが無い限り、正午から午後二時までは食事も兼ねて昼休みの時間を取らねばならなかった。 仕える立場としてやるべきは、限られた時間にどれだけ予定を詰め込めるかではない。どのくらいの忙しさが最も能力が発揮できるか。その最適解を考えることなのだろう。


HOME

 

 

 石川知裕「雑巾がけ−小沢一郎という試練−」(新潮新書)
2012628日(木)

 

 

<その3>
◆小沢さんは 「お前に三つ言い渡すことがある。」と話し始めた。一つ目「お前はこの後いろ
んな人と会う。その人について悪く言う人もいれば、いいことを言う人もいるが、最後は自分で評価しなければならない。」ということ。 二つ目には、節約の大切さを説き、三つ目として「もっと経営者の感覚を持て。年間いくらかかって、いくら入るといった感覚をちゃんと持たなければ駄目だ。」

◆選挙運動の母体となる後援会をどう作るか、小沢さんから教わったのは「三役をしっかり作っておけばいい。」ということだった。三役とは会長、幹事長、事務局長である。闇雲に人を集めるよりもまず要所を押さえておくというのは、これまでに述べた選挙のノウハウとも通じている。 つまり選挙運動で最も大切なのは後援会等の組織作りであり、「空中戦」はその次だというのが小沢事務所で学んだことである。「三役をしっかり作っておけばいい。」というのもこの考え方の延長線上にある。 朝から晩まで演説をしたりあちこちに足を運んだりするのは、一見「地上戦」のようだが実は「空中戦」である。 同じ1日を使う場合「できるだけ多くの人に多くの地域に挨拶に行く。」と「丸1日費やしてでも重要な組織のキーマンに挨拶に行く。」のどちらを選ぶか。候補者心理としてはついつい前者を選んでしまいがちだ。しかし後者が正解なのである。


HOME

 

 

 石川知裕「雑巾がけ−小沢一郎という試練−」(新潮新書)
2012627日(水)

 

 

<その2>
◆旧来からの自分のルールは変えなかった。「多数のコメンテーターや大勢の政治家と議論するようなものには出ない。」「政治家相手でも一対一ならばいい。」「勝手な編集をするものは不可。」等。

◆普通の若者だったらそうした時に怯えたり震え上がったりするのかもしれない。しかし幸いにも私にはそれまでの3年間ほどの修行経験があった。結局のところ小沢さんよりも怖い存在はいなかったのである。小沢さんにつけてもらった胆力のようなものが役立ったのだと思う。

◆機会があれば政治家に何か言っておきたい。聞いて欲しいと考えている人もいる。その中には御自分から積極的には手を挙げないが、頼まれれば喜んで手伝いたいと考えている方がいらっしゃるのだ。まめに回ればそういう人に出会うこともできるし、それは大きな力になる。

◆小沢一郎は人を信じて用いる。即ち「信用」することはあっても、人に頼ること即ち「信頼」はしない政治家だと思う。


HOME

 

 

 石川知裕「雑巾がけ−小沢一郎という試練−」(新潮新書)
2012626日(火)

 

 

<その1>
「今の民主党の欠陥は俗に言う「雑巾がけ」、基礎的な鍛練、基礎的な勉強をしないで偉くなっちゃったヤツばっかなんだよ。だから危機が起きるとどうしたらいいか分からなくなるんだよ。・・・」
このくだりは著者の石川氏と小沢一郎氏の対談における小沢氏の発言(別の本にも収録されている)であるが、本書はその雑巾がけについて書かれたものである。 以下インパクトのあるくだりを要約して御紹介していこう。

◆こんな私に冷水を浴びせたのが父だった。「お前を見ていると誘われたから行くとか、自分に能力があるから選ばれたんだとか思っているような感じがするが、それは全然違うな。給料をもらえるということはもっと大変なことだと思わなきゃ駄目だよ。」

◆答える時に「だったと思います。」と言うと必ず叱られた。「思いますじゃないだろう。調べろ。」「知らないのに知ったふりをするな。」

◆今の若い奴は工夫しない。壊れたらなんでも買えば済むと思っている。こうした言動から感じるのは「執着」である。私は小沢さんのことを「執着の人」だと捉えている。


HOME

 

 

 高橋洋一「日本経済の真相」(中経出版)
2012625日(月)

 

 

<その7>
◆「規制の一つは再販制度(再販売価格維持制度)で、独占禁止法適用除外のカルテルによってデフレ下でも値下りを免れている。」
新聞業界は小沢一郎がこの再販制度を廃止しようと目論んでいると考えている。そのため延々と小沢バッシングを続けるのである。

◆「例えば、国家予算。一次情報である予算書は2,000ページに及んで数字が羅列され、普通の人にはとても読み切れない。だから新聞に頼るのだが、新聞記者がその予算書を読んでいるかというと実は読んでいない。新聞用に役所が原稿を作っており、それをそのまま書いているのが現状である。つまり都合の悪い話は隠され、役所に都合のいいところだけが解説されている。」
官僚が優秀でないことは今の日本の状況を見れば明らかだが、それをきちんとチェックすることも出来ないマスコミは度し難い存在である。

◆「自分の頭で考える知的な人間には組織を出て泳ぐ力がある。」
戦後の日本を作ってきたのはエリート官僚である。 つまり組織の人間である。頭の悪い官僚達に日本の基本構造を作らせてしまったのである。その仕事を一刻も早く国民が選んだ政治家にバトンタッチさせる必要がある。これこそがまさに脱官僚の実現である。


HOME

 

 

 高橋洋一「日本経済の真相」(中経出版)
2012622日(金)

 

 

<その6>
◆「まずは最下層の所得を上げる。格差の是正よりそっちの方が不満は減る。所得税には所得再配分機能があるので経済全体のパイを大きくして税収を増やせば、所得格差はある程度是正できる。」
所得税も所得の再分配機能があると言っても、富裕層への課税をかなり強化しないと格差社会は是正されない。1年間で株の配当金を100億円もらっても、たった10%しか税金を払わなければ話にならない。

◆「デフレの状態で消費税増税など愚の骨頂であり、日本経済を疲弊させる愚策でしかない。しかし新聞には消費税の増税に賛成している論調が目立つ。」
新聞社は経済状態が厳しくどこも赤字である。それなのに消費税の増税を賛成しているのは、諸外国と同様に新聞は生活必需品として軽減税率を適用してもらえるとの密約があるのかもしれない。ここのところ毎年のように新聞社に税務調査が入り申告漏れが指摘されているが、完全に財務省のコントロール下に入っていることは間違いない。ある大手新聞社には前財務省事務次官が監査役として天下っている。


HOME

 

 

 高橋洋一「日本経済の真相」(中経出版)
2012621日(木)

 

 

<その5>
◆「日本もTPP交渉に加わることが決まったが、分かり易く言えばTPPは合コンと同じで参加しなければ損である。TPPを含め自由貿易に経済的メリットがあることは約200年の歴史が証明している。」
今日の日本の不況の最大原因の一つが、途上国との為替の差にあることを著者は認識できていない。 これは現実の経済社会が理解できていないからである。海外で安く作ったものを無規制で輸入していたのでは、日本の企業は破壊されてしまいデフレ不況は永続化してしまう。関税を引き上げて国内産業を守らなければならない。 関税という税の意味をきちんと考え直す必要を感じる。よって原則規制無しで行われるTPPへは参加してはならないことになる。

◆「日本には1,000兆円近い借金があるが膨大な資産もあり、その額は650兆円にも及ぶ。つまり純借金は約350兆円である。この350兆円は対GDP比で見た場合世界的に低い数字とは言えないものの、突出して高いわけでもない。」
この主張に異論は無く当然の話である。問題は資産350兆円がアメリカへ回ってしまい、もう返って来ないのではないかという心配である。


HOME

 

 

 高橋洋一「日本経済の真相」(中経出版)
2012620日(水)

 

 

<その4>
◆「原発を再稼働させないと電力が持たないと言いたいがために、供給能力を過小に申告していたのではないか。」
「申告していたのではないか」ではなく明々白々なのである。資源エネルギー庁のデータを見れば、火力発電所の稼働率は50%程度、水力発電所の稼働率は18%程度に過ぎないことはすぐ分かる。 火力の稼働率を50%から70%に引き上げただけで、原発分は充分に補えることは容易に推察できる。以上は原発に反対している専門家の全員が理解していることでもある。 また、今日においては優秀な原発専門家は全て反原発の立場にあると考えて良いと思う。

◆「原発事故によって広く知られるようになったが、原発はコストが安いというのは嘘で原発をつくりたいがゆえに「他の電力が高い」と言っているだけである。」
この主張は正しいが問題の本質は昔からこのことは分かっていたことで、今回の事故で初めて分かったことではないということにある。


HOME

 

 

 高橋洋一「日本経済の真相」(中経出版)
2012619日(火)

 

 

<その3>
◆「円に対してモノの量が多ければモノに希少価値が無いということだから、モノの価値は低くなる。 逆にお金は少ないから価値が高くなる。これがデフレという状態だ。」
つまり著者は日本のデフレの原因を人口減少と考えるのは誤りであると主張しているのである。 私も人口減少そのものが絶対的なデフレの原因とは思わない。ただし一番お金を使いそうな年代の人達が減少しているのも事実で、原因の一つと考えてもおかしくはない。 何故デフレになるのか。それは不況のため物が売れないため、価格を下げざるを得ないからである。要するに経済社会全体においてお金が動かなくなっている。お金が無いわけではなく回らなくなっているのである。何故お金が動かないのか、回らないのか。個人ベースで見れば将来に対する不安感が強いからであるし、企業ベースに見れば仕事そのものが無いからである。断じてお金が無い訳ではない。 お金の量を増加させても回らなければ景気は良くならないし、デフレも解消はしない。


HOME

 

 

 高橋洋一「日本経済の真相」(中経出版)
2012618日(月)

 

 

<その2>
◆「過去30年間の推移を見ても円を安くするとGDPが高くなることは明らかだが、これは輸出企業やその関連会社が儲かるからである。円安になれば輸入企業は大変だが、国際競争にさらされている輸出企業は生産性が高く、輸入企業よりも輸出企業に恩恵を与えた方が日本全体の経済効果は大きくなる。」
全く発想が逆で、本当は円を安くするとGDPが高くなるという事実を問題としなければならないのである。輸出は日本のGDPの20%弱である。その20%弱の輸出企業が円安で伸びたところで根本的な景気回復にはつながらないのである。GDPの60%は個人消費である。この個人消費を活性化させない限りは本当の意味での景気回復にはつながらない。現実の社会を直視すれば上記のようなことはすぐ理解できそうな気もするが、それにしてもリアリティの無い主張である。 後もう一つ現実の社会が見えていないと思うのが輸出企業と輸入企業の比較である。国際競争にされされている輸出企業の方が輸入企業よりも優秀であるという認識を持っているようだが、これは間違いである。本当は輸出企業の方が全然楽して商売をしていて、国内企業の方が厳しい競争にさらされているのである。輸出企業のお客は経済成長が著しい新興国であるため物が売り易いのに対して、国内企業は永久不況の中で戦わなければならないし、日本の消費者は見る眼が厳しいのである。 また経営力をチェックするときに生産性という物差しを使う人がいるが、これはその供給する企業の問題というよりもお客さんの経済状況によって変わってしまうものなのである。 良いお客を持っている企業は勝手に生産性が上がってしまうのである。これは現実の事業経営を知っていれば誰でも分かることである。


HOME

 

 

 高橋洋一「日本経済の真相」(中経出版)
2012615日(金)

 

 

<その1>
本書の構成は一般的に信じられている「俗論」に対して、「真相」として著者の意見をぶつけるというスタイルになっている。 著者の主張は大変分かり易い書き方をして参考にはなったが、反面元官僚というか学者ゆえなのか、現実の社会が分かっていないなあという感想も持った。 以下著者の主張でインパクトのあるくだりを紹介すると共に、私のコメントを付してみたい。

◆「大まかに言えば、日本の円の量を米国のドルで割ると為替レートが計算できる。ここではざっくりとした数字を使うが、日本のマネタリーベースはおおよそ130〜140兆円。米ドルは2兆ドルで、130〜140兆円を2兆円で割り算すると1ドルはおおよそ65〜70円だ。信じ難いだろうが意外とシンプルなのである。」
おカネの量で為替が決まるというこの主張には異論は無いが、だからと言って円安誘導のため円を刷れという主張には異論がある。


HOME

 

 

 柴野たいぞう「検察に死の花束を捧ぐ」(三五館)
2012614日(木)

 

 

<その4>
◆障害者団体の代表が一度も役所に来たことが無いのにもかかわらず、「4回も来て村木局長と挨拶していた。」と言う。全くでたらめの供述を厚生労働省の関係者40〜50人が同じくしている。 また鹿児島の志布志の選挙違反事件でも、何十人もが同じ嘘の供述調書を提出している。 私は被疑者取り調べの完全可視化はもとより、参考人の取り調べの全面可視化も実施すべきだと思う。

◆ロッキード事件やリクルート事件の際には、東京地検特捜部は総理大臣や大物議員でも逮捕・起訴するものだと驚いたし、日本はたいした法治国家だと思っていた。金丸信氏が、村上正邦氏が、鈴木宗男氏が、いろいろ声を上げその主張を聞いてきたが、彼らが逮捕された犯罪者なのだとの前提に立って物を考えてきた。 本当に無知であったと思う。そしてこの無知が罪であったと思う。 私は法務委員でありながら役人の話をそのまま鵜呑みにし、特捜検察の暴走にたいした問題意識も持たなかったことを反省している。 拘置所や刑務所に入っている人から議員会館によく手紙等が来ていたが、忙しさにかまけてあまりまともに読まなかった。

◆私は中央大学を受験し法学部に合格した。何も法律を学ぶために入学したのではない。当時は真面目に「職業革命家」を目指し若さゆえか理想主義に燃え、レーニン、トロッキー、毛沢東、ゲバラといった革命家を信奉していた。今日からするととんでもないことを考えて入学したわけだが、当時は彼等に一歩でも近付きたいと思っていた。


HOME

 

 

 柴野たいぞう「検察に死の花束を捧ぐ」(三五館)
2012613日(水)

 

 

<その3>
◆刑事訴訟法においては被疑者、被告の長期拘留は認めず、裁判官は証拠隠滅の恐れがある場合などを除いて保釈を許可しなければならない。がしかし、その際には検察官の意見を聞かなければならないとされているため、これがいわゆる人質司法になっているのである。 今世界の主要国はほぼ全面取り調べの可視化状況にある。一部録画では検察に都合のいいところだけが採用される問題点があり、なんといっても全面可視化(弁護士の立ち会いも含めて)を断行すべきである。昔我が国は経済は一流、政治は三流と言われたが、現状では司法・検察行政は五流と言わざるを得ない。

◆現在法務省で「検察の在り方検討会議」が行われ、その主な意見や議論が新聞に随時出ている。私は政治の世界に30年近くいて、審議会や諮問機関の議論や提言等というものを信じていない。 官僚が自分達の意に沿った結論を出すための便宜機関なのである。法務省を支配しているのは検察庁であり、主要なポストは全て検察が占めている。事務局を法務省がやっている限り、たいした案は出て来ないと思う。


HOME

 

 

 柴野たいぞう「検察に死の花束を捧ぐ」(三五館)
2012612日(火)

 

 

<その2>
◆裁判所はまた保釈申請に対して不許可を出した。全く日本の裁判所はどうしようもないところで、事実上保釈権は検察に握られているのである。私を保釈することによって裁判を覆すような供述の変更があることを恐れているのである。 私を担当する検事が恐ろしいことを言った。 「堀江にしても、村上にしても、木村剛にしても、我々が当初想定していた奴は皆やった。」 特捜案件は犯罪があって証拠によって立件されているわけではないのである。まず「こいつをやってやる」から始まるのだ。

◆「犬になれなかった裁判官」(安倍晴彦著)によれば、同氏は東大法学部を卒業し司法修習をトップクラスの成績で終えながら、最高裁の判例を覆した無罪判決を出したことから現職であった36年間、全くと言ってよい程出世できなかったと記述している。

◆裁判官にリクルートされるのは年齢が若く成績抜群で、しかも従順な人間、成績上位者が裁判官になる可能性が高い。上級庁はなんといっても上級庁に逆らわない、従順な裁判官を求めているのである。


HOME

 

 

 柴野たいぞう「検察に死の花束を捧ぐ」(三五館)
2012611日(月)

 

 

<その1>
やっぱり冤罪だったのかというのが本書を読んでの第一の感想である。マスコミ報道では相変わらずの検察リークの垂れ流ししかないため、あたかも犯罪があったかの印象を受けるが、私は柴野氏が衆議院議員や評論家としての活動を知っていたため、実は当初よりどうせ特捜部のデッチ上げであろうと推測していたのである。 村木事件が冤罪であることがハッキリしてきた辺りから柴野事件は始まっているが、検察が事件をつくり上げていくことに関して当の検察もマスコミも全く反省していないのである。それにしても平成23年9月5日に第一審判決のくだされる前に自殺してしまったことは誠に残念である。 以下本書よりインパクトのある箇所を要約して御紹介していきたい。

◆検事の発言「検察は地裁で負けても最高裁までなら7〜8年はかかる。公判が終わっても保釈しない。それでいいの?答えろ、このバカヤロー。」


HOME

 

 

 安田佳生「私、社長ではなくなりました。」(プレジデント社)
201268日(金)

 

 

<その3>
◆「会社を大きくするために投資をすれば、その分リスクはあるし、投資しなければしないで別のリスクがある。結果的に会社をつぶしてしまうことになったが、投資したこと自体が間違っていたとは思っていない。」
事業経営における投資とは、仮にその投資に失敗したとしても、会社が倒産しない範囲でしかやってはいけない。これが投資の原則である。 この大原則を安田氏は全く理解できていない。安田氏のやっていることはただのバクチである。 本書を読んでいると安田氏が全く反省していないことがよく分かるし、そもそも事業経営のことを必死で考えてきたという事実が無いのである。 事業経営とは需要があっての供給である。需要があるのかないのかの調査もせず、また需要をつくり出すための努力もしていない。安田氏は本当の意味での事業経営などしていないのである。 では何故一時的にせよ彼の様な男が経営者として持ち上げられるのか。それはあまりにも多くの経営者が儲かりもしない現業に埋没し、何ら新しいことをやらずにジリ貧状態のまま会社を倒産させてしまっているからではないだろうか。 ハデな投資をしての倒産よりもジリ貧倒産の方が圧倒的に多いのである。それにしても事業経営の世界はハデにやるか、全くやらないかの両極端の世界なのである。


HOME

 

 

 安田佳生「私、社長ではなくなりました。」(プレジデント社)
201267日(木)

 

 

<その2>
◆「資金さえあれば、いくらでも会社を大きくできる。私は事業で得た利益を残すことよりも、どこに使うかを考えるようになった。資本主義社会では資本力がある会社が強いということもみえてきた。」
事業経営とは限られた資源の中での戦いである。これが大前提であるが、このことが分かっていないと上記のような発言をしてしまうのである。 資金があれば会社が大きくなるというのであれば、大企業は絶対につぶれないはずであるが現実は違う。 会社の業績は良い時もあれば悪い時もある。つまり利益の中から一定の金額を内部蓄積させておく必要がある。そうしておかないと業績の悪化した時に簡単につぶれてしまうのである。 資本力のある会社が強いというのは事実だが、それは内部蓄積のことを意味するのであり銀行借入のことではない。

◆「会社が社員を大事にすれば社員はきっと顧客を大切にする。そうすれば売上も伸びる。福利厚生を充実させても会社は絶対につぶれない。そう信じていた。」
福利厚生とは会社に余裕があればやる。せいぜいその程度のものである。余裕も無いのに不必要に福利厚生を充実したり給与を上げていくことは、社員を甘やかすだけ、つまり百害あって一利なしである。 もう一つ福利厚生で大事なことは、将来の退職後のことを中心に福利厚生を考えるべきだということである。在職中は給与が出ているわけだから余計なことは考えてはいけない。


HOME

 

 

 安田佳生「私、社長ではなくなりました。」(プレジデント社)
201266日(水)

 

 

<その1>
著者の安田氏はワイキューブという人材関連の会社を経営していたが、倒産させてしまった。 私は以前よりこの安田氏の言動には引っ掛かるものがあり、ああ、やっぱりこうなったかという感想を持っている。負債総額は42億円でそのうち銀行が約31億円であるが、この気狂い経営者にここまで貸し込んでしまった銀行の責任はかなり重いと思うが、銀行の責任者が処分されたという話は聞いていない。以前にも板倉雄一郎というバカ社長がいて「社長失格」などという本を出していたが、安田氏と同レベルの人間である。彼等は社長失格というよりもはっきり言って人間失格である。 そしてもっと問題なのは、この社長達を持ち上げてしまう金融機関の存在である。 以下本書より安田氏の経営者としての考え方で特徴的な箇所を紹介すると共に、私のコメントを付していきたい。


HOME

 

 

 若宮健「パチンコに日本人は20年で540兆円使った」(幻冬舎新書)
201265日(火)

 

 

若宮氏の著書「なぜ韓国はパチンコを全廃できたのか」を以前読んだことがあるが、(もしかしたらこの読書日記でも紹介したことがあるかもしれない)その続編の一つが本書である。 一つと書いたのは、(30分で1万円以上失う)パチンコ問題について書かれた類書が何冊かあるからである。 以下インパクトのあるくだりを要約して御紹介しておく。

◆日本のパチンコ台が海外で広く受け入れられていないのはなぜか。中国は「日本のパチンコは絶対に許可しない」 という強い姿勢を貫いている。 日本の実情を知っていて、このギャンブルが国を没落させると警戒して許可しないのだろう。欧米の人々には、パチンコのような受け身でじっと当たりを待っているようなチマチマしたギャンブルは性に合わないようである。韓国では全国1万5,000店という過熱振りを見せて、犯罪や自殺などで被害が頻発したあげく2006年に禁止されている。 日本のパチンコ業界(市場規模は約20兆円、ピークは15年前で約30兆円)は、退潮気味とはいえ国内トップのパチンコホール、マルハンの2010年度の売上は2兆円を超える。これはラスベガスのカジノの売上約5,000億円の4倍である。


HOME

 

 

 日下公人×増田悦佐「それでも、日本が1人勝ち!」(WAC)
201264日(月)

 

 

<その3>
◆増田「日本人にはアイデンティティは要りません。なぜならば日本人はウイデュティティがあるからです。アイデンティティの世界対ウイデュティティの世界を象徴しているものがあります。ボクシング、レスリングなど世界中どこの格闘技でも最後に勝ち残った1人がチャンピオンになります。ところが相撲という格闘技は横綱が2人以上いる方が安定的で、1人しかいないと「1人横綱」と言われるなど異常事態だと大騒ぎします。」

◆日下「原発が危険である理由は原発の設計思想そのものに問題があるからで、はじめから無理があるんですね。核エネルギー炉は化学プラントですから、燃料は液体でなければいけないんです。これは科学者なら誰もが同意するはずです。ところが現実の炉は開発初期から液体ではなく固体燃料が選ばれました。核燃料が液体なら炉の構造はシンプルになりますし、保守点検が容易でロボットで遠隔管理や修理もできます。東日本大震災並の大地震と大津波が同時に発生しても十分対処できます。

◆増田「「もう石油は無くなる。」といくら脅しをかけても全く効果はありません。誰もそんなことを信じていないからです。これでは石油の値上げはできません。 ところが石油を使うと二酸化炭素が出る。二酸化炭素が出ると地球が温暖化する。これは悪いことだといきなり罪悪感に結び付けてしまう。すると値上げをしても誰も文句を言わず追認してくれるんです。こんなにおいしいビジネスはありません。」


HOME

 

 

 日下公人×増田悦佐「それでも、日本が1人勝ち!」(WAC)
201261日(金)

 

 

<その2>
◆増田「元々原発は、アメリカにおいて潜水艦を長期間にわたって潜水航行させるためのエネルギー源として開発されたものです。しかし陸上の原発ではスケールがあまりにも違います。どうしても技術がうまく継承できません。だからなんとか日本には細々とでも原発技術を維持させ、これを脅せばいつでも導入できるような状態にしておきたいとアメリカは考えているのです。」

◆日下「欧米の仕事観では仕事は自分のため、収入のためですが、日本では協力の楽しさや達成の喜びが先にあって、その結果、ひと仕事終わった後には自分への誇りが生まれるものです。正しい仕事観を教えてくれるのがリーダーの役目。だからこそリーダーである親方や先輩には尊敬と感謝が集まる。」

◆増田「日本は地方自治が発達していない。全て東京一極集中だとマスメディアは批判していますが、フランスは県知事は全て大統領が任命します。 各地方の条例もこの知事が拒否権を持っています。つまり箸の上げ下ろしまで、大統領に絶対な権限が集約されているわけです。」


HOME

 

 

 日下公人×増田悦佐「それでも、日本が1人勝ち!」(WAC)
2012531日(木)

 

 

<その1>
超楽観論者のお2人の対談集であるが、以下インパクトのあるくだりを要約して御紹介していきたい。

◆日下「日本人の国際関係論は、貿易や投資などのお金の出入りを国別に見た話ばかりですが、世界には宗教や部族や歴史に縛られている人がたくさんいて、それを知らない日本の外交は宙に浮いたものになっています。」

◆日下「財務省と国税庁・税務署を分離せよ。これは私が一貫して主張してきたことです。欧米諸外国は全て分離しています。他人の財布のひもを合法的に握っているわけですから、これ以上の権力はありません。警察権力以上に強大です。」

◆増田「要するに官公需法という悪法があって、いまや公共事業の50%近くは中小企業に発注しなければならないという縛りがかかっています。そうしますと中小建設会社という看板を掲げた名義だけの建設会社が、特権で受注した公共事業を大手に「上請け」するわけですね。そういう上請けだけで食べている会社が全国にたくさんあるんです。」


HOME

 

 

 佐藤優×石川知裕「小沢一郎はなぜ裁かれたか」(徳間書店)
2012530日(水)

 

 

<その3>
◆石川「その本の中で釧路のことが取り上げられているんです。生活保護を受けている人達の消費が釧路の経済を回転させていると。年金よりも生活保護の方が多くのカネが行くということなんです。」

◆佐藤「政治は少しエキセントリックなところがないと勤まりませんからね。でもそれは計算ずくのエキセントリックさじゃないとならない。素手でトラと闘っちゃうような人とは政治活動の上でも組まない方がいい。」

◆石川「もしも小沢さんが強制起訴されていなかったら、日本はどうなっていたかを考えることがあります。当然首相になっていたでしょうから、いろいろな意味で変わっていたでしょう。」

◆佐藤「暴力団排除条例は怖い。要するに近代法じゃないんですよ。「この組織に属している人間は犯罪を起こす蓋然性が高いから付き合ってはいけない」という発想でしょう。罪を犯したら罰することができるが、罪を犯そうと思っただけでは罰してはいけないというのが近代法なんです。


HOME

 

 

 佐藤優×石川知裕「小沢一郎はなぜ裁かれたか」(徳間書店)
2012529日(火)

 

 

<その2>
◆佐藤「重要なのは「小沢がこのまま政権に居座ったら自分達がやばいことになる。だから消してしまえ」と検察が自覚しているのではなく、無意識のうちにやっているということなんです。無意識のうちに自分達にとって都合の悪い者が「犯罪者」に見えてくるんです。無意識だから軌道修正は非常に難しい。」

◆佐藤「絶対にメディアとケンカしちゃ駄目なんです。メディアは「商品」として使えるものに関しては絶対に潰さないから。石川さんも「悪党へ」を出すことで、きちんとメディアにとっての商品になったわけですよ。」

◆石川「エリートによくある話として自分の主張が世の中に受け入れられないとか、順調だった人生が一旦レールから外れてしまうと、どうしていいか分からなくなる人も多いと思います。」

◆石川「日本も戦後すぐはGHQが警察の力を弱めたから、それを補うかたちで山口組がいわゆる不良外国人から日本人を守るという体制がありましたよね。その後に正業として港湾や芸能の会社を作っていった。それが普通に文化として受け入れられていました。」


HOME

 

 

 佐藤優×石川知裕「小沢一郎はなぜ裁かれたか」(徳間書店)
2012528日(月)

 

 

<その1>
以下本書よりインパクトのある箇所を要約して御紹介していこう。

◆石川「小沢さんの魅力を一言で言うと「実現力」ですかね。国民の皆さんの「小沢ならやってくれる」という期待をそばで手助けできるのが、秘書のモチベーションの最大の理由だと思います。」

◆佐藤「最大の情報操作は「民主党は官僚を使いこなしていない。」という話。これもウソです。民主党の出す課題に対して官僚に応える能力が無いだけですよ。官僚の仕事とは「できる」「できない」を決めることじゃない。政治で「普天間基地を県外に出す」と決まったら、それをどうやって実現するかを考えるのが官僚の仕事なんです。」

◆佐藤「民主党は結構ちゃんとやっているんです。自民党政権の「負の遺産」が大き過ぎるから簡単に事は進まない。また劣化した官僚達は、今の場所にしがみつかないと生きていけない。そのためには民主党は邪魔で、特に小沢さんがいると非常に面倒くさい。 小沢さんの考え方は政治家は国民のために政治をやっている、つまり社会の代表であるから、官僚は当然に政治家の言うことを聞かなければならない。これは官僚にとっては非常にややこしい存在になる。」


HOME

 

 

 田原総一朗×佐高信「激突!朝まで生対談」(毎日新聞社)
2012525日(金)

 

 

<その4>
◆田原発言「榊原英資達に会って官僚は知識の量と深さが全く違う。それぐらいのショックを受けた。」
マスコミの人間は官僚から情報を無料で得て商売をしている。つまりマスコミ人は感覚というか感性が官僚と同化してきてしまう。それ故上記のような発言が出てくる。 官僚もマスコミも現実の社会を本当の意味では理解していない。もし官僚が田原が考える様に優秀であるとすれば、今日の日本の諸問題はそもそも生じていないはずである。

◆田原発言「僕が橋下を評価しているのは実行力があるからです。日本人というのは話し合いはする。ところが誰が実際に物事を決めるのか、実際にやるのかという段になると誰も動かない。この国には決断力と実行力のある人間が少ないんです。だから橋下は少々強引でも自分が決断して実行しなければならないと考えている。」
田原は決断力と実行力と簡単に言うが、政治家の場合はその中味がとてつもなく重要である。例えば企業社会では、経営者が決断して実行した内容に不満があれば社員はやめることもできる。 しかし政治の世界ではそれは非現実である。民主政治とは話し合いに基づいて行われるものだから、そう簡単には前に進まないものなのである。 多くの人の利害や意見を調整するわけだから、イライラするぐらい時間がかかる。そもそも民主主義とはそういうものである。


HOME

 

 

 田原総一朗×佐高信「激突!朝まで生対談」(毎日新聞社)
2012524日(木)

 

 

<その3>
◆田原発言「権力者というのは、こっちが突っ込めば向こうからアイデアを返してくると思っていたんです。ところがそうでないことが分かってきたので、こっちから突っ込む時には対案を用意しなければ意味が無いと考えるようになったんです。」
一見もっともらしい発言だがやはり違和感がある。例えば経営者と経営コンサルタントの関係であれば、田原の言う通りコンサルタントも対案を用意しておかないと実践的なアドバイスにならないと思う。 この場合のアドバイスは経営者がやりたい経営の延長線上での戦略となる。つまり経営者とコンサルタントは一体となって戦うものなのである。コンサルタントは経営者の立場に立ってものを考えることが重要なのである。 しかし、政治家や官僚とジャーナリストの関係は全く違う。ジャーナリストは彼等のアドバイザーではなく、監視する人間なのである。絶対に一体化してはならないのである。 突っ込みを入れても反論できない政治家は失脚しても当然である。むしろ問題なのは、本当にアイデアのある政治家に権力を持たせないように動くマスコミの存在である。


HOME

 

 

 田原総一朗×佐高信「激突!朝まで生対談」(毎日新聞社)
2012523日(水)

 

 

<その2>
◆田原発言「僕は原発の被害を認めないなんて言っていない。未来への責任といっても、それを実証的に語れないという難しさが放射能にはあるということを言いたいだけです。」
広島や長崎で被爆した人達でも案外長生きしていると主張する人もいるが、反面その子供達は身体障害者として生まれてきたりしている。被害の状況は複雑ではあるが、放射能被害そのものは明確な事実である。

◆田原発言「小泉は財務省(旧大蔵省)と喧嘩する必要は無かったんですよ。小泉の「痛みを伴う構造改革」は、公共事業をはじめいろんな予算を削減したけれどもそれに財務省は賛成だったわけだから。」
田原は財務省を見方にした方が改革がやり易かったと小泉を擁護する。しかし財務省そのものを変えようとしないものは改革ではない。権力の中枢を変えないで何故それを改革と呼ぶのか、田原の主張には全く説得力が無い。


HOME

 

 

 田原総一朗×佐高信「激突!朝まで生対談」(毎日新聞社)
2012522日(火)

 

 

<その1>
田原の言論人としての堕落ぶりを佐高が追求するという形の対談だが、かなり読み応えのある内容となっている。 以下インパクトのある箇所を要約して御紹介すると共に、私のコメントを付していきたい。

◆田原発言「原発反対派は使用済み核燃料の処理にどれだけ時間が必要か、そしていかに優秀な技術者を育成しなければならないか、このことを全く考えていない。」
このように田原は原発反対派が無責任であるとあちこちで吠えている。これは典型的な屁理屈である。田原は自分が原発賛成派に回ってきたための苦しい言訳をしているのである。 使用済みの核燃料の処理の問題は、原発を推進してきた当事者が考えるべき問題であって、反対派が考えるべきことではない。現にフランスではその技術が完成しているのだから、それを導入すればよい。ただそれだけのことである。


HOME

 

 

 飯島勲×大下英治「官僚」(青志社)
2012521日(月)

 

 

<その3>
◆「官僚には非常に優秀な人材が多い。どんな大企業のエリートよりも人的ネットワークや情報量では霞が関の官僚にはかないません。また霞が関の官僚の優秀な点は、30代や40代で法案を作成するという点です。・・・」
この手の馬鹿げた発言には本当にウンザリである。本当に官僚が優秀ならば日本の財政危機と称されるものなど起きていないだろうし、飯島が支えた小泉の構造改革と称されるものも、そもそも必要無かったのでないか。官僚の持つ人的ネットワークや情報量は素晴らしいものがあると言っているが、そもそも官僚が情報を独占してきたことそのものが問題なのである。 全く認識が狂っている。30代や40代で法案を作るから優秀だと言っているが、政治家ではなく官僚が法案を作ること自体が違法であるし、その出来た法律というのが実に程度が低いのである。もしかすると飯島氏は法律というものをきちんと読んだことが無いのではないだろうか。現実社会を知らない官僚が作った法律というものは、本当に現実離れしているのである。


HOME

 

 

 飯島勲×大下英治「官僚」(青志社)
2012518日(金)

 

 

<その2>
◆「強さやそういったイメージではなくて政策で結果が出せるかどうかが、本当に今の時代に必要なトップリーダーだと指摘したい。政治家自身のキャラクターにイメージを抱くのではなく、結果主義で自らが掲げた政策に対していかに結果を出せるかを、政治家に対する評価軸とするべきだと訴えたい。」
これもまたウンザリするような発言である。結果そのものが重要なのではなく、どういう政策なのか、政策の中味が重要なのである。良くない政策であれば、むしろ結果など出ない方が良いのである。

◆「記者クラブに入っていた既存のメディアは百年近くやって、またいい意味での取り決めや規則などに縛られながら報道する。ところがフリージャーナリストは自分の興味のあることだけを取材し、時にはその興味に従い裏を取らずに勝手なニュアンスで活字にする可能性が高い。」
権力の中枢にいた人間というのは、このように自分に都合の良い発想しかしない。政府が垂れ流したニュースを裏も取らずにそのまんま書き散らしているのは、記者クラブメディアであってフリージャーナリストではない。これはもう常識である。もう少し勉強してもらいたいものである。


HOME

 

 

 飯島勲×大下英治「官僚」(青志社)
2012517日(木)

 

 

<その1>
小泉内閣総理大臣の首席秘書官であった(つまり参謀)飯島氏にフリージャーナリストの大下氏が、官僚問題についてインタヴューしているというのが本書の内容である。 飯島氏の発言については、ほとんどの部分で私は賛成できない。
以下本書より発言内容を要約して御紹介すると共に、私のコメントを付していきたい。

◆「「批評はしても批判はしない。」これが私の信条だ。批判とは無責任な会話で終わってしまうことが多い。提言がない。期待もない。批評には「こういうふうにやってもらいたい」という提言も入っている。」
つまり対案の無い批判はするなということであるが、全く間違っている。私は批判者は代案など考えずに徹底的に批判すべきであると思うし、そうしないと批判そのものが鈍ってしまうのである。 飯島氏の発言は一種の言論封鎖である。例えば脱原発の主張に対して無責任であるとか代案を出せなどというのは、全くおかしな話である。具体的な案は当事者つまり政府や電力会社が考えるべきである。彼等はそのための地位、権限、報酬を得ているのである。


HOME

 

 

 牧野洋「官報複合体」(講談社)
2012516日(水)

 

 

<その2>
◆ウィキリークスは報道機関としての体制を備えておらず、単独では力不足だ。ジャーナリズムのプロ集団である報道機関に告発内容の分析・編集や当局との折衝などのアウトソースをし、実質的に分業体制を築くことで存在感を高めている。

◆内部告発は権力側が国民に隠しておきたい秘密を暴く「反権力型」である。権力側が発信したい情報を漏れなく報じる「親権力型」の記者クラブとは、本質的に相容れない。
権力のチェック役として情報源(内部告発者)を守り「政府の悪事」究明に全力を上げる。 −こんな姿勢を見せない限り、ウィキリークスは日本の大新聞にはあまり期待しないだろう。

◆元財務官僚の高橋洋一氏は、自分自身の官僚時代を振り返り「正直言ってマスコミの扱いは簡単。私の思惑のまま当局の側の言う通りに報道してもらえた。」とした上でこう指摘する。 「海外との比較などについて紙の資料に書いて渡すととても喜ばれ、そのまま転記して記事になっていた。当然メディアに流す情報は、役所にとって好都合のものばかりになった。」


HOME

 

 

 牧野洋「官報複合体」(講談社)
2012515日(火)

 

 

<その1>
サブタイトルが権力と一体化する新聞の大罪となっているが、新聞だけでなくテレビ局を含めての記者クラブに加入している大手メディアを批判しているのである。もともとこの官報複合体という言葉を使い出したのは、フリージャーナリストの上杉隆氏であるが、本書の著者は日本経済新聞の元記者である。 以下本書よりインパクトのある箇所を要約して御紹介していきたい。

◆政府が国民の目から隠れて悪事を働いている。ある時内部告発者が現れそれを暴露する。政府は「内部告発者は犯罪人。だから信頼できない。」と反撃する。こんな状況下で新聞はどう対応すべきか。アメリカでは「政府の悪事」が明らかに重大であるのに「内部告発者の犯罪」を一面トップとして伝えたら政府の御用新聞と見なされかねない。

◆ニューヨーク・タイムズなど三大メディアは「ウィキリークスは信頼できる」との判断から一面トップ扱いにしたわけではない。内部告発者が誰でどんな経緯でウィキリークスに垂れ込んだかなどは基本的に無関係だ。独自の調査でそれが本物でニュース性があるからこそ、大きな扱いにしたのである。


HOME

 

 

 ベンジャミン・フルフォード「仕組まれた円高」(青春出版社)
2012514日(月)

 

 

<その2>
◆日本の既得権益の中心にいるのは、財務省を筆頭とした金融行政の利権だ。時の首相もその枠組みの中での自由しか与えられていない。だが何故財務省が巨大な利権を持っているのか。そのカラクリのカギは日本銀行に隠されている。 日本銀行は日本銀行券を刷るという「無からお金を作り出す権利」を持つ。では無から出現した日本銀行券を世の中にどう配分していくのか。その決定に関わるのは誰なのか。

◆マネーサプライは表面上は日本銀行が決めることになっている。日本銀行はジャスダックに上場している株式会社であり、その大株主はアメリカの最大財閥であるロックフェラーと、ヨーロッパの最大財閥であるロスチャイルドなのである。つまり現実には日本のマネーサプライは欧米の要望に基づいて行われることになってしまう。

◆アメリカの圧力によって日本のルールの多くがアメリカに利するように改正、制定、開放された。 その結果、たとえば輸入住宅は1,300戸から10万戸に増えた。労働派遣法で非正規雇用が増え、男性の30%、女性の20%が結婚できなくなった。 正規雇用から非正規雇用に切り替えた大企業は、浮いたお金を外国人株主に還元した。 大店舗立地法で外資が進出し、地方が廃れた。日本企業は第3分野の保険を扱えず、アメリカ企業に独占され、日本の「危ない保険」はことごとく外資に買収されてしまった。


HOME

 

 

 ベンジャミン・フルフォード「仕組まれた円高」(青春出版社)
2012511日(金)

 

 

<その1>
以下本書よりインパクトのあるくだりを要約して御紹介していきたい。

◆アメリカをはじめ各国がドルを、EU各国がユーロを発行し過ぎた結果、円高が起こっている。経済の原則として自国通貨を刷り過ぎれば貨幣の価値は下がりインフレになる。お金の価値が下がることで国の借金も事実上目減りする。だから財政破綻寸前の国はわざとインフレを誘導し、財政の立て直しを図るのだ。

◆しかしながらインフレになって困るのは富裕層である。当然、彼等は国家にインフレ政策を止めるように迫る。だが欧米各国はインフレ政策を止めるわけにはいかないため、富裕層は財産を目減りさせないためのシェルター(避難場所)として金や円を購入している。これが仕組まれた円高の意味するところである。

◆日本政府も円高を止めるためには、円を次々と刷ればいい。ところが日本政府は円供給を増やすことを頑なに拒んでいる。それはアメリカからマネーサプライを増やすなと厳命されているからである。アメリカの富裕層のお金のシェルターが無くなってしまうことを避けたいのである。


HOME

 

 

 小宮一慶「「読む」「書く」「考える」は5分でやりなさい!」(大和出版)
2012510日(木)

 

 

<その2>
◆私は読書法は目的別に「速読」「通読」「熟読」の3つに分けることができると思っています。
「速読」とは情報を「選んで」「素早く得る」ことです。
「通読」とは2種類に分けられ、一つは読書を楽しむ、全体像をぱっと掴む、ある一定の知識を得るのを目的とした読み方です。二つ目は論理的思考力を高めたり自分の考えをより深めたりなど、学習することを目的にした読み方です。
「熟読」とは専門書を専門家のレベルまで読み込む読み方のことをいいます。

◆二流が一流になるにはどうすればいいのでしょうか。唯一の方法は仕事の一番奥深いところを追求することです。一人前に満足せず、一流を目指さなければなりません。

◆仕事を速くするには、まずは時間がかかっても完璧なものを仕上げることから始めて下さい。


HOME

 

 

 小宮一慶「「読む」「書く」「考える」は5分でやりなさい!」(大和出版)
201259日(水)

 

 

<その1>
小宮式の最速仕事術というのが本書の内容である。以下インパクトのある箇所を要約して御紹介していきたい。

◆仕事の遅い人はスタートが遅い。これは仕事のできない人の典型的な特徴の一つです。またスタートダッシュの遅い人は、スケジュールや仕事の所要時間の把握の仕方が曖昧です。

◆仕事をする人は、その量が多かろうが少なかろうが与えられた時間内でやろうとします。つまり時間があり過ぎる状況をなくさなければならないということです。

◆仕事が遅い人の机の上は失礼ですが大抵汚いです。机の上をきれいに保つには、とにかく要らないものを捨てることです。

◆「読む力」や「考える力」というインプットに磨きをかけることが、良質なアウトプットにつながるのです。

◆「読む力」を高めるには、まずは基本的な知識を得ることです。そして更に常識を疑って、深くものを考えることが必要になります。


HOME

 

 

 安達誠司「円高の正体」(光文社新書)
201258日(火)

 

 

<その2>
また彼にはもう一つ根本的に理解できていないことがある。 日本は通貨供給量が少ないから供給量を増やせと主張し、そうなれば日本経済は良くなると説いている。
典型的なマネタリストである。まだこんなことを言っている人がいるのである。しかも堂々と本まで出している。もしマネタリストの言うように世の中に通貨供給量が増えれば経済が良くなるのであれば、日本よりも通貨供給量の多いアメリカやヨーロッパの経済はとっくの昔に良くなっているはずである。
お金をたくさん刷っても経済は良くならない。通貨を増やすとそれが世の中全体に流れるというのは大誤解である。 お金が足らないから不況なのではなく、仕事が無いから不況なのである。仕事を増やすための政策が重要で金融に偏重した政策では不況からの脱出はできない。それはこの20年の日本経済を見れば明らかである。


HOME

 

 

 安達誠司「円高の正体」(光文社新書)
201257日(月)

 

 

<その1>
安達氏は根本的なことがわかっていない人である。彼は円高は明確に悪であると主張し、良い円高などは存在しないという。 円高は輸出企業にとっては悪いことかもしれないが、輸入企業にとっては良いことだという主張は間違いだという。なぜならば輸出企業も輸入企業も含めた日本の産業全体で考えると悪以外の何ものでもないからという。 この根拠は円高になるとGDP(経済規模)が減少するという事実にあるとしている。
この主張は正しいのだろうか。私は間違っていると思う。GDPの中に占める輸出は20%にも満たない。円高になれば当然に輸出企業の業績は悪化する。 それでもって日本経済全体が
20%にも満たない輸出というものに日本経済が依存していること自体が誤りなのである。 円高が悪いのではなく、輸出に依存していることそのものが悪なのである。
GDPの中でもっと大きなものは、個人消費で約
60%ある。この個人消費を活性化させる政策こそが日本経済にとって最重要である。 個人消費を活性化させる政策を行わず20%にも満たない輸出というものに依存しているという事実こそが批判されるべきである。


HOME

 

 

Copyright(C)2004 HISASHI-NAKAGAWA All Rights Reserved.