中川尚の飛耳長目(税理士読書日記)TEL 東京・渋谷 03-3462-6595
池田晴彦、内田樹 「 国家は葛藤する 」 (ビジネス社) 2025年4月2日(水)
<その22> ◆今、後期高齢者の独身者は部屋が借りられないんですよね。そういうのは法律で規制して、高齢者が一人暮らしできるようにして、ベーシックインカムを保障して、働きたければ働いていいんですってしておけば、そんなにシリアスな問題は起きないと思うんですけどね。 ◆軍事力を持たないと攻めてこられるというけれども、丸腰の国家を占拠してうまく統合するのは、実はものすごく大変で、コストがかかるのでそう簡単に攻めてくることはないと思う。 外国に攻められて死ぬより、食料自給率が38%の今の日本では飢え死ぬ確率のほうが高いと思う。
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池田晴彦、内田樹 「 国家は葛藤する 」 (ビジネス社) 2025年4月1日(火)
<その21> ◆今の中国には宗教や哲学がない。だから宗教と哲学を求めて、日本に来たんだそうです。 ◆たしかに、儒教も道教も仏教も文化大革命の時代に壊滅的に弾圧されましたから、もう寺院も道院も古いものは残っていない。 そのあと再建されたとしても、コンクリートのレプリカですからね。日本に来ると千年以上も前の本物のお寺が残っているでしょう。それを見ると彼らは 「 懐かしさ 」 を感じるらしい。 ◆カナダかなんかで安楽死の法案をだいぶ前に通したら、安楽死の数がどんどん増えている。だからこれから日本もそういう法案をきっと通そうとするやつが出てくるよ。
池田晴彦、内田樹 「 国家は葛藤する 」 (ビジネス社) 2025年3月31日(月)
<その20> ◆日本の行く末を心配してるような人は政権から遠ざけられた。政権に直接絡んでるような人で、日本が最終的にどういうふうな国家体制で、どういうふうに世界と張り合うかなんてことを考えてる人はほとんどいなかった。 ◆とにかく日本がアメリカの本当に隷属国になっているから、国はどんどん安くなってて、政策的に上げたり下げたりするふうなことだけで、国力がどういうことか誰も考えてない。
池田晴彦、内田樹 「 国家は葛藤する 」 (ビジネス社) 2025年3月28日(金)
<その19> ◆就職氷河期の2005年頃は、100社受けて全部落ちるとかって結構よく聞きました。今、40才代前半ぐらいの人たちですね。 ◆ 「 子どもたちの自分探しを支援する 」 という文字列が登場したのは、1997年の中教審答申の中です。子どもたちに向かって、 「 自分探し 」 をしろと言い出したのは教育行政なんです。政官財の要請として、 「 自分探し 」 が子どもたちに命じられた。
池田晴彦、内田樹 「 国家は葛藤する 」 (ビジネス社) 2025年3月27日(木)
<その18> ◆科学は真理を追求するものじゃなくて、同一性を追求するもんだっていうことに思い至ったときに、こんなことは誰も言ってなかったと思ってワクワクしましたね。 ◆ロビン・ダンパーというイギリスの人類学者がダンパー数 ( 人間が安定的な社会を維持できる上限 ) って考えたんだけど、150人以下の集団だったらルールはなくてもうまくいくんです。 ◆同質化の高い国民が1940年代までは戦争に専念し、戦後は経済活動に専念した。戦前は戦争に強くなること、戦後は金持ちになることを目指した。それが国家目標だった。でも、軍事力にしても、経済力にしても、国力を測定する 「 ものさし 」 としてシンプルにし過ぎたと思います。
池田晴彦、内田樹 「 国家は葛藤する 」 (ビジネス社) 2025年3月26日(水)
<その17> ◆中国の勢力圏に収めるために外交的な圧力はかけてくると思いますけれど、軍事侵攻はしてこないと思います。 直接統治しようとしたら、数十万規模の軍隊と行政官を常駐させなければならないですから直接統治は効率が悪い。 それより 「 辺境の富国には高度の自治を認める 」 という 「 一国二制度 」 の間接統治で臨むと思います。 ◆明治維新以降の日本の教育って、ずっと強い兵隊を作ることに特化してきたんです。
池田晴彦、内田樹 「 国家は葛藤する 」 (ビジネス社) 2025年3月25日(火)
<その16> ◆ 「 対米自立 」 というようなことを少しでも口にした政治家は、鳩山由紀夫も小沢一郎もあっという間に官民から総攻撃を受けて引きずり降ろされましたよね。だから、日本人はみんな知っているんです。 「 日米同盟基軸以外 」 を考えること自体が日本では禁忌なんです。 ◆岸田文雄に 「 首相になったら何をしたいですか? 」 って聞いたら 「 人事 」 って言ったんですからね。国家戦略というものがないんです。
池田晴彦、内田樹 「 国家は葛藤する 」 (ビジネス社) 2025年3月24日(月)
<その15> ◆アメリカ・ファーストの立場から 「 日米安保条約を廃棄する。在日米軍基地は全部撤収する。あとは自分で何とかしなさい 」 っていきなり言われたら、自民党政権はアメリカにすがりつくしかない。 「 お願いだから行かないでください 」 と泣訴して、 「 いくらでもお金は出しますからいてください 」 という他はない。
池田晴彦、内田樹 「 国家は葛藤する 」 (ビジネス社) 2025年3月21日(金)
<その14> ◆あのときに安保条約を破棄していたら、今の日本に在日米軍基地はないわけですよ。日本は憲法9条があるから 「 戦力 」 は持てない。そうなると中国とも韓国とも台湾ともアメリカともロシアとも外交的にとにかく丸く収めて自由の安全を保たなければいけない。その分、政治的に成熟しないといけない。 だからずいぶんと今とは様子の違う国になっていたと思います。安保条約があるせいで、日本の政治も政治学者も思考停止してしまった。
池田晴彦、内田樹 「 国家は葛藤する 」 (ビジネス社) 2025年3月19日(水)
<その13> ◆連合赤軍や中核―革マルの内ゲバとかの末路を見ていると、根本にあるのは 「 政治 」 ではなくて、もっとどろどろとした 「 情念 」 に駆動されているように思えます。根にすごく暗いものがある。 ◆結局、日本はあれからずっとアメリカの奴隷でしょう。今も経済が疲弊してアメリカの言うことを聞かなきゃ生きていけないからどうしようもなくなっちゃているわけだから。あそこで日米安保 ( 60年 ) で破棄しておけばアメリカに相当叩かれたろうけど、一応独立国だということなので、なんとかなったと思う。
池田晴彦、内田樹 「 国家は葛藤する 」 (ビジネス社) 2025年3月18日(火)
<その12> ◆ベトナムでは農民たちが世界最強の軍隊と地べたをはいずるようにして戦っているのに、自分たちは同じアジアの人間でありながら、侵略の片棒を担ぐことで豊かな生活をエンジョイしている。 ◆それに本当にリアルな政治闘争をするつもりだったら、分派なんかしないで、小異を捨てて大同団結して巨大な権力組織を作ればいいわけです。 でも、日本の学生運動には、そんな政権構想なんかなかった。わずかな網領的な差異を言い立てて、分裂を繰り返して、そのつど小さくなってやがて消滅してしまった。
池田晴彦、内田樹 「 国家は葛藤する 」 (ビジネス社) 2025年3月17日(月)
<その11> ◆日本がベトナム戦争に加担して、その後方基地として侵略を支援し、かつ経済的に潤うことに、学生たちは、やましさを感じていた。だから 「 大学解体 」 とか 「 自己否定 」 というスローガンを掲げていたんだと思います。あれは日本がアメリカ帝国主義のアジア侵略に加担していることへの自己処罰を意味していたと思います。
池田晴彦、内田樹 「 国家は葛藤する 」 (ビジネス社) 2025年3月14日(金)
<その10> ◆今、日本の国力を上げるもっとも簡単な方法は、国立大学の学費をゼロにすることだね。すると、貧乏でも優秀な学生が国立大学に入ってくる。国立大学のレベルが上がって学費がタダならば、優秀な学生も海外に流出しなくなる。国立大学の学生数は、約60万人。1年に係る学費は60万円だから、国で全部肩代わりしても3600億円。大した金じゃない。国家予算約112兆円だからたかが0.32%だ。
池田晴彦、内田樹 「 国家は葛藤する 」 (ビジネス社) 2025年3月13日(木)
<その9> ◆でも日本はアメリカに勝ったときにどうやってアメリカを支配するかについて、何も考えていなかった。 ◆国家戦略というものがないんです。政治学者の丸山眞男が書いていますけれど、戦犯たちの中には、 「 私が戦争を計画した 」 という人が1人もいないんです。 「 気が付いたら始まっていた 」 と、まるで自然災害のように戦争について語っている。
池田晴彦、内田樹 「 国家は葛藤する 」 (ビジネス社) 2025年3月12日(水)
<その8> ◆太平洋戦争を始めた奴だって、最終的に日本をどういう国にしようかなんていうことは何もわからなくて、ただやっただけでしょ。 ◆アメリカは、日本人はどのような価値観を持ち、どのような行動規範に律されているかについて、中立的な人類学的な研究を行っている。日本兵と戦うときだけじゃなくて、勝って日本を占領したときどう統治すればいいのかについての、きわめてプラグマティックな手口なんです。
池田晴彦、内田樹 「 国家は葛藤する 」 (ビジネス社) 2025年3月11日(火)
<その7> ◆ソ連の満州侵攻もなかった。日本列島が米軍に長期にわたって占領されることもなかっただろうし、米国の軍事的属国になることもなかった。 ◆ 「 ここで白旗をあげたら、これまで死んだ兵隊に顔向けができない 」 というような非論理的な理屈でどんどん戦線を拡大して、どんどん兵隊を無駄死にさせた。 ◆損切りができないので、次々に兵隊を注ぎ込んで死なせたわけだ。特攻が典型だ。
池田晴彦、内田樹 「 国家は葛藤する 」 (ビジネス社) 2025年3月10日(月)
<その6> ◆実際にミッドウェー敗戦の後、水面下では講和の動きは始まっていた。だからあそこでやめていれば戦死者はうまくゆけば数万人で済んだと思うんです。 ◆本土空襲が始まる前ですから空襲で都市が焼かれて大勢の非戦闘員も死ぬこともなかった。 ◆もちろん広島・長崎に原爆も落ちなかった。 満州と朝鮮半島は失ってしまうけれども、北方領土と沖縄は固有の領土ですから保全できた。
池田晴彦、内田樹 「 国家は葛藤する 」 (ビジネス社) 2025年3月7日(金)
<その5> ◆ヨーロッパでは伝統的に軍隊の損耗率が30%に達したところで白旗をあげるのがルールです。それ以上戦っても、もう組織的な戦闘ができず、死傷者が増えるだけですから無駄なことはしない。でも日本の軍隊にはそもそも 「 損耗率 」 という概念自体がなかったんじゃないかと思います。 「 玉砕 」 って損耗率100%っていうことでしょう。そんなことをしても戦況はまったく変わらないのに。
池田晴彦、内田樹 「 国家は葛藤する 」 (ビジネス社) 2025年3月6日(木)
<その4> ◆今の野党は、むしろ 「 現実的な 」 政党になろうとしている。でも今の日本で 「 現実的 」 というのは、 「 対米従属 」 を与件として丸呑みすることですからね。 ◆政権交代には 「 バルカン政治家 」 ( 状況に応じて敵味方を変えていく政治家 ) 的なキーパーソンが必要なんですよね。武村正義や小沢一郎は、臨機応変に誰も思いつかなかったような組み合わせを思いついて、 「 その手があったか 」 とひざを打つというとがありましたけれど、そういう大きな仕掛けをする人が今はいないですね。
池田晴彦、内田樹 「 国家は葛藤する 」 (ビジネス社) 2025年3月5日(水)
<その3> ◆維新はもう限界だと思いますよ。大阪万博の歴史的失敗で政党としての質の悪さが暴露されたから。 ◆立憲民主党には、僕はあまり期待できないな。広々とした国家ビジョンが提示できないんです。野党が取柄って、できるかできないかはわからないけれど、非現実的でもいいから、日本の進むべき未来像を提示することじゃないですか。
池田晴彦、内田樹 「 国家は葛藤する 」 (ビジネス社) 2025年3月4日(火)
<その2> ◆少子高齢化は期間限定の問題で、あと15年〜20年もたてば自然に解消されるので、恒久的なシステムを作らずに、その間だけに老人にベーシックインカムを配るなどのアド・ホック ( 一時しのぎ ) な政策で乗り切ればよい。 ◆外国で 「 ダムを作って 」 とか言われた場合、金は日本政府が出すけれど、ダムは日本のゼネコンが作るわけですよね。 そして、ゼネコンからバックマージンをもらう。
池田晴彦、内田樹 「 国家は葛藤する 」 (ビジネス社) 2025年3月3日(月)
両人の主張に関しては、部分肯定、否定である。学者の発言には、どうしても違和感が残る。 以下、本書より興味を引いた部分を要約して、御紹介していきたい。 <その1> ◆太平洋戦争は典型で、一度決めたことを変えることができなかったので、戦況が悪くなっても、戦争継続以外の選択肢に目を塞ぎ、ひたすらクラッシュに向かって突き進んだ。結果310万人もの日本人が殺されたわけだからひどい話である。 今、規模が小さいとはいえ、大阪万博も同じ道を歩んでいるように見える。 日本人は 「 いい加減 」 の価値がわかっていない。
深田萌絵 「NTT法廃止で日本は滅ぶ」 (かや書房) 2024年8月7日(水)
<その18> ◆萩生田議員は、その権力を使って他の競争事業者を排除したうえで、半導体不足を補うためと、外資のTSMCに1兆2110億円の助成を決定した。自動車産業の半導体が足りなかったのは事実だが、半導体不足解消のためつくられた補助金は車載半導体を製造している旭化成やルネサスには流れなかった。 ◆アメリカは郵便を民営化していないんです。赤字事業だからサービスを維持するために断念したんです。アメリカでも民営化していないのにあたかも世界中で郵便は民営化するのが当然だというウソをプロパガンダで流して、小泉元首相はかんぽと郵政という莫大な資産を国民の手から奪ったのです。
深田萌絵 「NTT法廃止で日本は滅ぶ」 (かや書房) 2024年8月6日(火)
<その17> ◆今の日本の政界で最も影響力の強い国は、アメリカでもなく、中国でもなく、台湾である。それが如実に表れたのが半導体向けの助成金だ。日本の半導体助成金の殆どは、台湾半導体大手TSMCに注がれたのだが議会で審議もなしに、そしてTSMCと日本政府の間で契約もなしに4760億円の血税を注ぐことが決定されたのだ。契約も何もないので、TSMCの熊本工場で製造される半導体は日本企業に供給されることは義務づけられていない。 ◆半導体工場は、大量の水を汲み上げ、大量の汚染水を垂れ流す。台湾の企業は日本企業と異なり、汚染水をそのまま(きれいにしない)垂れ流して、台湾現地では健康被害が深刻である。 ◆熊本県ではTSMCの水問題を金で解決できる仕組みをつくってしまった。
深田萌絵 「NTT法廃止で日本は滅ぶ」 (かや書房) 2024年8月5日(月)
<その16> ◆そして、戦後蒋介石と共に台湾に渡った中国人は、北朝鮮と連携して 「 親台湾 ・ 嫌韓プロパガンダ 」 を推進している。 ◆今の日本は、統一教会を解散させようとしているが、解散しても自民党内の彼らの勢力を弱体化させられるかどうかは分からない。その理由は自民党の秘書会には数多くの統一教会信者がいるからである。
深田萌絵 「NTT法廃止で日本は滅ぶ」 (かや書房) 2024年8月2日(金)
<その15> ◆自民党右翼議員は、 「 国際勝共連合 」 からも多くの金を借りていたことが自治省資料にも書かれている。そして国際勝共連合のバックにいるのが統一教会だったことを考えると統一教会が自民党内部に巣食っていたのも腑に落ちる。 ◆統一教会を韓国の勢力だと信じている人も多いだろうが、実際、彼らは韓国よりも北朝鮮と連携している。日本でだまし取った資金の多くを彼らが北朝鮮に流してきたところからも彼らが韓国以上に北朝鮮に思い入れを持っていることが伺えるだろう。
深田萌絵 「NTT法廃止で日本は滅ぶ」 (かや書房) 2024年8月1日(木)
<その14> ◆台湾社会を支配するのは、浙江省、江蘇省から渡ってきた中国人ばかりである。 そのため彼らは 「 善良な台湾人 」 として日本で活動し、反中、反共産党を装いながら裏で中国共産党を助ける活動を続けている。 ◆その中心となっていたのが 「 国際勝共連合 」 。そこに参加していたのが岸信介、笹川良一、蒋介石だった。蒋介石は共産党と闘うことを装うことで、一財を成した人物なので、この活動の中心にいるのは当然だ。
深田萌絵 「NTT法廃止で日本は滅ぶ」 (かや書房) 2024年7月31日(水)
<その13> ◆アメリカ政府からファーウェイに対する制裁がどんなに厳しくても、TSMCはファーウェイを支え続け、気がつけばファーウェイは通信企業として5G基地局の世界シェア1位42.6%(2021年)まで飛躍したのだ。 ◆そのファーウェイとNTTは歩調を合わせている。単に歩調が合っているだけでなくNTTとファーウェイは同じビルに入って共同研究まで行なっているのだ。
深田萌絵 「NTT法廃止で日本は滅ぶ」 (かや書房) 2024年7月30日(火)
<その12> ◆法令は、本則と附則で構成される。法令において、付随的な事項を定めた部分のことを附則と呼ぶ。附則は 「 追記 」 のような軽いものではなく、法令の本則と同じ効力を持っていることに留意されたい。 ◆TSMCとファーウェイは、それぞれ台湾と中国で同じ年に創業し、表裏一体の関係として、動いてきた兄弟のような企業である。
深田萌絵 「NTT法廃止で日本は滅ぶ」 (かや書房) 2024年7月29日(月)
<その11> ◆NTT法のあり方として、さんざん関係ない話を議論して、ほとんど触れないまま最後の最後に、NTT法を2025年に廃止する附則が自民党提言にコッソリ忍び込ませている。よく読み込まないと、見落としそうな場所に書いてあるのだ。 附則とはオマケではない。
深田萌絵 「NTT法廃止で日本は滅ぶ」 (かや書房) 2024年7月26日(金)
<その10> ◆政府が所有しているNTT株の3分の1、時価で約5兆円を現金で買える企業はどこか。 日本国民がアレルギーを起こさない中華系企業はTSMCかソフトバンクくらいしかいない。 本当はNTTの隣りにいるファーウェイが取得したいのだろうが、まず、間違いなくアメリカから横やりが入るだろう。
深田萌絵 「NTT法廃止で日本は滅ぶ」 (かや書房) 2024年7月25日(木)
<その9> ◆右派は 「 葛西帝国 」 に依存してきたのだが、その葛西氏が急逝したとなると、資金的にバックアップしてくれる経営者と資金づくりが新たに必要となったのだ。 ◆右翼が狙う本命は、NTTが保有する現在価値40兆円の通信インフラを私物化すること、ドコモを支配してドコモが生み出す1兆円の利益にタカることの2本立である。
深田萌絵 「NTT法廃止で日本は滅ぶ」 (かや書房) 2024年7月24日(水)
<その8> ◆右翼政治家と連携するのは、元NTT社長で現会長の澤田純である。社内では 「 反中派の愛国者 」 として評判である。その彼が、急にNTT法廃止を言い出したのは、右翼政治家達を長年支援してきた葛西氏が2022年5月に亡くなった後というタイミングにも関係あるのではないかと筆者は勘繰っている。 ◆葛西氏は、国鉄民営化のために右翼と組み、JR東海の会長に君臨してからは、政界に対する影響力、特に警察官僚や検察官僚とのコネを築き上げ安倍政権を支えたとされている。
深田萌絵 「NTT法廃止で日本は滅ぶ」 (かや書房) 2024年7月23日(火)
<その7> ◆国鉄を民営化する時に、JR東海 「 葛西帝国 」 が生まれ、日本の政治に大きな影響を与えた。JRの中で一番儲かる東京―大阪間の新幹線をスピンアウトさせて葛西氏が会長として君臨し、彼が死の床に就くまで支配し続けたゆえにそう呼ばれた。 ◆葛西氏はロビイングするために、国会の近くのキャピタル東急ホテルの一室を年間6000万円以上も経費を支払って借り切っていたり、右翼雑誌とも関係が深かったりして、誌面の論調にも影響を与えた。
深田萌絵 「NTT法廃止で日本は滅ぶ」 (かや書房) 2024年7月22日(月)
<その6> ◆安倍政権時代に、官邸の意向に逆らう官僚を降格できるように公務員制度改革を行っているので、いまの政治家は官僚の意向など聞かない。自分たちの言いなりになる官僚しか出世できない仕組みになっているからだ。 ◆そもそも萩生田議員が力をつけたきっかけは、外資企業の優遇である。彼は台湾企業のTSMCに助成金を出すと決めてから、一気に総理候補に躍り出た。
深田萌絵 「NTT法廃止で日本は滅ぶ」 (かや書房) 2024年7月19日(金)
<その5> ◆NTTからすると国民が払ったのは、 「 施設設置負担金 」 であり 「 固定電話加入権 」 ではないので電話番号が要らなくなったから 「 固定電話加入権を解約したい 」 と言っても固定電話加入権というオマケを解約しても返金する義務がないという論理を主張する。 ◆彼女の消費税論である 「 消費税増税は未来への責任 」 という記事もあったが、消費税増税は未来への責任ではなく悪政の尻拭いだ。
深田萌絵 「NTT法廃止で日本は滅ぶ」 (かや書房) 2024年7月18日(木)
<その4> ◆現在価値にして40兆円規模の通信インフラをたった5兆円の防衛インフラの為に売り飛ばすというのだから正気の沙汰とは思えない。インフレ時代の今、日本が通信インフラを失えば、再構築の投資は40兆円では済まない。 ◆そもそもNTTが我が物顔で使っている通信インフラは、一般的に 「 固定電話加入権 」 と呼ばれる権利を得るためのお金を国民から徴収して築いたものなのだ。NTTはそれを 「 通信インフラはNTTの株主のものであり、国民のものではない 」 とシラを切っている。
深田萌絵 「NTT法廃止で日本は滅ぶ」 (かや書房) 2024年7月17日(水)
<その3> ◆そこで政府が保有している発行済み株式の3分の1にあたるNTT株 ( 5兆円相当分 ) を売却して、防衛財源に充てるよう求めている。 ◆日本はウクライナに対して、追加支援として6000億円の拠出を発表、半導体政策では日本企業に対しては雀の涙程度の金しか出さないが、中華企業に1.2兆円を寄贈。そして中華カジノのために1兆円以上ものカネが大阪に注がれる。外国政府や外国企業に対しては寛容な国家である割には、日本のために何かするとなると 「 財源がないから増税しよう 」 という流れになるのが常だ。
深田萌絵 「NTT法廃止で日本は滅ぶ」 (かや書房) 2024年7月16日(火)
<その2> ◆通信技術は、国家安全保障の根幹にかかわるものである。その通信インフラを失うことが国家として、どれだけ危険なことか、そのインフラ構築に国民からどれだけの資金をだまし取ってきたのか。それを外資に売り飛ばすために、現在の政治家がどれだけウソをついているのかを皆様と共有したい。 ◆自民党は萩生田光一をトップとする 「 防衛関係費の財源検討に関する特命委員会 」 を開き、防衛費の増額に必要な財源の確保に関する提言案をとりまとめた。
深田萌絵 「NTT法廃止で日本は滅ぶ」 (かや書房) 2024年7月12日(金)
2025年にNTT法を廃止するというNTT法改正に関する自民党案が、2024年に国会へ提出される予定だが、いまのところ反対勢力はいないようである。 以下、本書よりインパクトのあるくだりを要約して御紹介していく。 <その1> ◆NTT法を廃止すれば、政府保有のNTT株式と通信インフラのいずれかは外資に売却される。NTTの通信インフラを借りて、電話サービスを行っているKDDI、楽天、ソフトバンクその他の通信事業者が倒産しかねない未来が待っていること。NTTの通信インフラを手にした外資は独占的地位を濫用し、競合を消したのちに電話代が高騰するリスクがあるのだ。
泉房穂 聞き手 鮫島浩 「 政治はケンカだ!明石市長の12年 」 (講談社) 2023年10月10日(火)
<その27> ◆これもやっぱり、2009年に誕生した民主党政権の罪が大きい。革新的なマニュフェストもありました。でもそこになかった消費税増税が実施された。あれがもたらした政治不信がいまにつながっているわけですから、公約中心に政治を変えようと言ったところで、国民はもうついてこないでしょう。 ◆山本太郎さんが東京都知事を狙った戦略は、正しかったと思います。つまり、れいわ新選組という弱小政党がやってみせるには、自治体の長を取るしかないと。負けちゃったけど、戦略としては正しかった。維新とは、政策的立場は真逆ですが政治的戦略は維新に倣ったといえるでしょう。
泉房穂 聞き手 鮫島浩 「 政治はケンカだ!明石市長の12年 」 (講談社) 2023年10月6日(金)
<その26> ◆アメリカでは、州知事を経て大統領になるケースが多い。州知事としての実行力がすでに可視化されており、それが大統領選で評価されるわけです。日本でも与野党が知事や市長として目にみえる実績をあげた人を総理大臣候補に掲げて衆院選を戦うようになれば、 「 期待 」 よりも 「 実績 」 を競い合う選挙に変わり、政治の質は格段に良くなるでしょう。
泉房穂 聞き手 鮫島浩 「 政治はケンカだ!明石市長の12年 」 (講談社) 2023年10月5日(木)
<その25> ◆経営が弱りきった新聞を何が支えているかというと、政府広告、自治体広告です。電力会社なんかも含めて公的な団体、機関への依存度が上がってしまったのです。その結果、当然広告料を払ってくれる団体を批判しにくくなる。経営的にも 「 なるべく政府や自治体とことを構えるな 」 と。 ◆国家の支配から市町村を解放することがいちばんの政治改革だと確信します。国家権力は暴走しないように憲法で徹底的に縛り、各市町村は市民の声を大胆に政策に移せるように権限を拡大する。そうすれば日本の政治はずいぶん変わります。
泉房穂 聞き手 鮫島浩 「 政治はケンカだ!明石市長の12年 」 (講談社) 2023年10月4日(水)
<その24> ◆新聞記者が記者を辞めたあとに就きたい、一番憧れの職業を知っていますか?みんな大学教授になりたいんです。そういう記者が庶民目線で権力者を追及できるはずがない。 ◆官僚や外交官、政治家、弁護士、学者。どれになってもよかったけれど、試験の成績が足りなくて、新聞社に入ったという人たちが、いまの会社の中枢にいる。それが新聞社の大問題だと私は思います。
泉房穂 聞き手 鮫島浩 「 政治はケンカだ!明石市長の12年 」 (講談社) 2023年10月3日(火)
<その23> ◆なぜ、記者が権力に弱くなってしまったかというと。 実は東大から記者になった人が朝日新聞にいっぱいいるんですよ。彼らは大学時代の成績で大蔵省に行った人に負けている。最初から引け目があるんです。 ◆医師を取材する科学部の記者だって、医師になりたかったけれどなれず、でも理系にいたから科学部の記者になったという人が多いです。そういう記者は医師にペコペコして、 「 自分は馬鹿と思われたくない 」 一心でゴマをする。そういう姿勢で取材するから、医師の言っていることを垂れ流す。
泉房穂 聞き手 鮫島浩 「 政治はケンカだ!明石市長の12年 」 (講談社) 2023年10月2日(月)
<その22> ◆ホンマに 「 ちゃんと市民を取材しろよ 」 と思いますわ。だって取材してないんだもん。結局、市民、国民の側からの報道ではなくて、基本的に権力サイドからの情報を垂れ流してるんです。 コロナ報道にしたってまさに大本営発表じゃないですか。 ◆残念ながら朝日新聞の記者の8割以上は、そもそもやりたいことがないし、保身しか考えていない。 「 自分が出世したい 」 とか 「 社内の立場を守りたい 」 と考える人たちにとっては、抗議がくるような原稿はリスクでしかないんです。本当に訴えたいことがあれば、リスクを背負ってでも闘うはずですが、そもそも伝えたいことがないから、リスクを負う勇気も持てない。
泉房穂 聞き手 鮫島浩 「 政治はケンカだ!明石市長の12年 」 (講談社) 2023年9月29日(金)
<その21> ◆問題はその省庁にいる 「 お友達 」 が言っていることを、自称:専門記者が疑いもせず、そのまま書いてしまうこと。すぐに役人にだまされるんです。役人のほうは利用しようと思って付き合っているだけのことが多い。 ◆みんな、自分がいる 「 縦 」 の枠組みの中だけで生きてるんです。だから、コロナ対策の報道も腰が引けてしまう。厚労省や感染症の専門家に気に入られることが専門記者としての地位を高めると思っているから常に官僚や専門家の言いなりになる。
泉房穂 聞き手 鮫島浩 「 政治はケンカだ!明石市長の12年 」 (講談社) 2023年9月28日(木)
<その20> ◆各業界は補助金の一部を 「 中抜き 」 して、族議員への見返りとして、政治献金や選挙支援をし、官僚への見返りとして天下りを受け入れました。 ◆私も朝日新聞に長くいましたけれど、病理の根本原因は明らかで、新聞社の古い 「 縦割り 」 制。これに尽きる。これが弊害になって、新聞社の命であるはずの報道を歪めてしまっている。
泉房穂 聞き手 鮫島浩 「 政治はケンカだ!明石市長の12年 」 (講談社) 2023年9月27日(水)
<その19> ◆でもね、やる作業は実際たかが知れてるんです。みんな、ふわっと選挙は大変だと思っているけれど、大したことない。5人でも十分強い選挙ができるんだから。 要は最低限、立候補届を書いて、掲示板にポスターを貼ればいいんですよ。あとはマイク1本あればいい。車があってもいいけど、なくたっていい。その程度の話。 ◆戦後日本を主導した自民党政治は、国民生活の支援を国民一人一人に直接お金を渡すのではなく 「 業界経由 」 で行ってきました。
泉房穂 聞き手 鮫島浩 「 政治はケンカだ!明石市長の12年 」 (講談社) 2023年9月26日(火)
<その18> ◆市長はどれだけ議会で居心地が悪くても、市民の代表者としてドッシリしていればいい。半年ぐらい持ち堪えることができれば、既存の古い勢力も嫌がらせを続けられなくなってくる。だんだん自分たちの立場が危うくなってきますから。 ◆旧民主党とか立憲民主党の議員に聞くと、 「 連合が持っている組織票自体は大したことない 」 とみんな言う。 ただ、連合を切ると選挙の実務が回らないと口を揃えます。 ( 実際にポスターを貼ったり、お金の計算をしたり・・・ )
泉房穂 聞き手 鮫島浩 「 政治はケンカだ!明石市長の12年 」 (講談社) 2023年9月25日(月)
<その17> ◆1990年代に進んだ地方分権改革で、地方自治体と国は対等な立場であると法的に認められ、市民から一番遠い国家が権限を握っている時代から、地方に権限が移ってきました。でもまだ、ほとんどの権限は都道府県止まりです。 ◆通常、教育人事権は都道府県にあります。小学校、中学校の建物は明石市立なのに、働いている職員は県の管轄なんです。
泉房穂 聞き手 鮫島浩 「 政治はケンカだ!明石市長の12年 」 (講談社) 2023年9月22日(金)
<その16> ◆韓国は大統領の任期を終えたら、ほぼみんな逮捕か自殺かで毎回大変ですやん。あれって韓国が異常なのではなくて、おそらく日本も中身は一緒なんです。 韓国は政権が切り替わるから、それまでの不正が発覚する。日本は政権が代わらないからどんな不正があっても隠され続ける。 ◆いまの市を300ほどの人口20万〜60万人くらいまでの単位に置き換え、そこに権限と責任と財源を付与していく。行政体としての都道府県は、もう閉じてしまったらいいんじゃないかと。
泉房穂 聞き手 鮫島浩 「 政治はケンカだ!明石市長の12年 」 (講談社) 2023年9月21日(木)
<その15> ◆裁判所は佐川氏が改ざんを主導したという事実を認めながら、個人の法的責任は問われないという判決を下しました。公務員が公務で行った改ざんなら、法的責任を問わないというのは、官尊民卑そのものです。 ◆日本の最高裁も自民党と調整して判決を出している。今の最高裁判事にしたって森友、加計の顧問弁護士がなっているわけでしょ。本当は日弁連が推薦した方がいたのに断られたんです。
泉房穂 聞き手 鮫島浩 「 政治はケンカだ!明石市長の12年 」 (講談社) 2023年9月20日(水)
<その14> ◆財務省を通らないカネの動きではなくて、全て財務省を通る形でカネを牛耳りたい。だから 「 保険ノー 」 「 税金イエス 」 なんです。 ◆よく安倍、菅政権で官僚主導から政治主導になったと言われますが、私の取材では実はそうでもない。官僚はみな 「 安倍さん、菅さんが望むエサだけ渡すんです 」 と言っていました。
泉房穂 聞き手 鮫島浩 「 政治はケンカだ!明石市長の12年 」 (講談社) 2023年9月19日(火)
<その13> ◆明治憲法下では、公務員や官僚は天皇に仕える人々だったわけです。当時日本は天皇主権の国で、最高権力者は天皇でした。議員は一般市民・国民の代表で、公務員は天皇の奉仕者。つまり公務員の方が議員より身分が高かったんですね。 ◆あくまでも私の見立てですが戦後日本の政治史というのはある意味、財務省と厚労省の戦いの歴史だったんじゃないかと思います。
泉房穂 聞き手 鮫島浩 「 政治はケンカだ!明石市長の12年 」 (講談社) 2023年9月15日(金)
<その12> ◆私のように自由自在に人事権を行使しようとすると、副市長が止めに入ります。そして多くの市長は、副市長に丸め込まれる。市役所職員は市長を親分とは思っていません。彼らの親分は副市長なんです。 ◆何度も言っているように中央省庁はそれほど賢くないし、市民・国民のことを本気で考えているわけでもない。悲しいけど、そこをちゃんと受け止める必要があります。財務省に任せていたら日本がよくなるというのは、完全な幻想です。
泉房穂 聞き手 鮫島浩 「 政治はケンカだ!明石市長の12年 」 (講談社) 2023年9月14日(木)
<その11> ◆ただ問題なのは、何をやってもマスコミは公明党を批判しませんからね。本当は莫大な金の無駄遣いとか、利権とか、いろいろな問題があるのに。特に地方では、公明党が隠れ蓑になってその大元である国土交通系業界団体が批判されない構図になっている。 ◆かなり誤解されていると思うのですが、私は議会が揉めることがわかっていたので、それでも一度も専決したことがありませんでした。小池知事とか吉村知事は、コロナを理由に専決しまくっているんですけどね。
泉房穂 聞き手 鮫島浩 「 政治はケンカだ!明石市長の12年 」 (講談社) 2023年9月13日(水)
<その10> ◆それこそ田中角栄には成し遂げたいビジョンがありましたよね。でも西村さんの 「 総理になりたい 」 は偉くなりたいってだけでしょう。 「 何をするために総理になりたいのか 」 という話を聞いたことがない。 ◆まさに昔の旧田中派の土建選挙をバージョンアップさせたようなことを、今の時代にやっているのです。まさに国土交通の権限をフル活用した形で選挙を戦っています。 それを違法とはいいません。公明党自身の自力が弱くなっているので、国政の役割も本来の福祉行政から国土交通系に乗り換えざるをえないのでしょう。
泉房穂 聞き手 鮫島浩 「 政治はケンカだ!明石市長の12年 」 (講談社) 2023年9月12日(火)
<その9> ◆法律的、人道的、倫理的に許されるあらゆる手段を使って政局的勝利を実現し、多数派を形成して政策を実現してみせる。その覚悟のない人は、最初から政治家に向いていない。 ◆ 「 政局より政策が重要だ 」 と主張すると、アカデミックな制度論争に陥ってしまい、実際には何も実現できないまま終わってしまう。 ◆そうなると政治はますます市民から離れ、既得権益を握る一部の人のものになる。やはり政局に勝って政策を実現してみせることが政治家にとって最も重要なことなんです。
泉房穂 聞き手 鮫島浩 「 政治はケンカだ!明石市長の12年 」 (講談社) 2023年9月11日(月)
<その8> ◆原因は全部同じで不安なんです。本当はそのままで十分できるのに、当選したらすぐに不安がってしまって、市長が議会と和解したがる。その弱気によって、せっかく当選したのに、自分のやりたい政策が進められなくなってしまう。 ◆自分の政治信条を曲げて敵と折り合うのではなく、自分の優位の立場で相手に妥協を迫って引き込むことができれば、その政局は勝利です。そのためには世論を味方につける構想を打ち上げたり、敵陣営を分断する提案を投げかけたり、敵の一部を取り込む裏取引だって必要かもしれません。
泉房穂 聞き手 鮫島浩 「 政治はケンカだ!明石市長の12年 」 (講談社) 2023年9月8日(金)
<その7> ◆彼女は区長になってからも市民のデモに参加して、その姿勢も評価されていたのに、議会に叩かれてやめてしまった。 「 市民的自由の最たるものである政治的自由を奪われた 」 と愚痴っていたので、私は 「 いや、奪われてなんかないでしょ 」 と言ったんです。議会になんぼ叩かれても、にっこり笑いながらデモ行進したらいいと。それを 「 奪われた 」 と捉えていることが問題だと強く言いました。
泉房穂 聞き手 鮫島浩 「 政治はケンカだ!明石市長の12年 」 (講談社) 2023年9月7日(木)
<その6> ◆大手マスコミは、権力者批判の名のもとに首長のことは喜んで批判するけれど、議会に対する検証なんてまずしないでしょ。彼らは市議会議員の発言が事実かどうかの確認すらしません。 ◆もともと民主党系の政治家だった無所属の首長が選挙に勝った途端に自民党と手打ちする姿は全国各地で見受けられます。政策本位で政治家個人を応援するならいいけど、そうではない。議会運営のために自民党と手打ちしているわけです。せっかく選挙で勝ったのに、その時点で自民党に逆らえなくなってしまう。
泉房穂 聞き手 鮫島浩 「 政治はケンカだ!明石市長の12年 」 (講談社) 2023年9月6日(水)
<その5> ◆政治家にとって一番大事なことは、 「 クリーンでフェアに見せる 」 ことなんかじゃなく、何かを成し遂げるために闘うこと。そこを市民はしっかり見てるんだけど、政治家が自己保身に走り、反撃されることを恐れて、無難に収めようとすることが多い。 ◆泉さんを見ていると物凄く熱い部分も持ってるんだけど、 「 戦っても不毛な戦いになるなら、先手打って辞めて新しい局面を作ろう 」 という非常にクレバーな政治的判断が同居している。そこが政治家として非凡な部分かなと思います。
泉房穂 聞き手 鮫島浩 「 政治はケンカだ!明石市長の12年 」 (講談社) 2023年9月5日(火)
<その4> ◆建設業者を呼んで 「 (ビルの)中身を入れ替えてくれ 」 とお願いしたら断られた。それで、 「 私の方針に従わないなら、計画は全面中止、これまでの努力は全てパーや。その代わり市民から要望の強い図書館と子どもの施設を入れてくれたら続けさせる 」 と2択を迫った。そこまで言って、やっと私の方針に従わせることができた。たしかに荒っぽいやり方でしたが、それくらいしないと業者は従いませんから。
泉房穂 聞き手 鮫島浩 「 政治はケンカだ!明石市長の12年 」 (講談社) 2023年9月4日(月)
<その3> ◆小学5年生にして、冷たい社会と闘うことを決めたのですね。泉さんが実施した明石市長の施策を見ても 「 誰一人見捨てない 」 という思いが表れています。 ◆18歳までの子どもの医療費無料化も 「 所得制限なし 」 という部分に政治理念を感じます。支援を受ける権利を持つのは、親ではなく、子どもであるという立場を徹底すれば、親の所得に関係なく、全ての子どもが無料で医療を受けることが当然であるという社会をつくらなければならない。
泉房穂 聞き手 鮫島浩 「 政治はケンカだ!明石市長の12年 」 (講談社) 2023年9月1日(金)
<その2> ◆明石市は子ども施策だけに力を入れたと思われがちだがそうではない。 「 困ったとき 」 は誰にでも、突然訪れる。そのときに必要な支援を届けるのが行政の役割だ。少数の困りごとを切り捨てず、寄り添い解決することが多数の人々のセーフティネットになるという思いで様々な施策を 「 条例 」 にして残してきた。 ◆私はすぐカッとなりますし、人間としてできていない部分はたくさんある。でもある意味ではすごく冷めてるんです。市長引退は消耗戦に突入するより、場面転換を図ったほうが得策だというシンプルな判断です。
泉房穂 聞き手 鮫島浩 「 政治はケンカだ!明石市長の12年 」 (講談社) 2023年8月31日(木)
なかなか読み応えのある本である。 以下本書よりインパクトのあるくだりを要約して、御紹介することとしたい。 <その1> ◆誰もが納得する方針転換などないのだから、市長が改革を進めたらハレーションが起こり、反発する層が出てくることは当然だ。嫌われても、恨まれても、市民のために結果を出すことが政治家としての私のミッションだったから、そして多くの市民が私を信じてくれたから、ブレることなく走り切ることができた。
佐々涼子 「 ボーダー 移民と難民 」 (集英社) 2023年7月14日(金)
<その15> ◆知恵をつけてくれる人がいてね。政治家に頼めばいいって言うんですよ。それで、当時の外務副大臣に頼んだら、一発でビザが下りました。その代わり、自民党員になってパーティ券を買い政治献金しました。 ◆日本が難民条約に加入して、40年間で難民として認められたのは、わずか900人弱。国連から人権条約違反、国連憲章違反との批判に耳を貸さず、今も難民を長期収容し、強制送還し続けているニッポン。迫害から逃れて希望を持って来日した難民を友人として受け入れる用意は市民社会は出来ている。次は政治が変わる時だ。
佐々涼子 「 ボーダー 移民と難民 」 (集英社) 2023年7月13日(木)
<その14> ◆私は難民を受け入れない合理的な理由があるのでないのかと思っていたが、そんなものはどこを探してもついに何も見つからなかった。 ◆働きたいのに働けない難民がいるのに、働いてほしいのに日本から逃げていく外国人労働者がいる。どこまで探っても日本の政策は人に対する敬意がなく、ただちぐはぐなだけだった。
佐々涼子 「 ボーダー 移民と難民 」 (集英社) 2023年7月12日(水)
<その13> ◆介護職には高度なコミュニケーション能力が必要だ。また気遣いができ、異なる文化の違いを超えて、人の気持ちがわかる共感力も必要である。 ◆だが、それだけの能力を持っていれば介護職以外の分野でもいくらでも仕事がある。結局、現地の日系企業の秘書として転職してしまう場合が多い。
佐々涼子 「 ボーダー 移民と難民 」 (集英社) 2023年7月11日(火)
<その12> ◆きついのは夜勤だという。月に最低でも4回、多い時には6回というシフトがある。夜勤になると46人の高齢者を2人で受け持つ。その間、12時から2時まで1人が仮眠を取り、2時から4時まではもう1人が仮眠をとる。つまりたった1人で46人の入所者を担当しなければならない時間帯があるのだ。 ◆認知症患者は夜ほど活発に動くという。ベッドにはセンサーがそれぞれついていて、動き回るとアラームが鳴るしくみになっている。すると、1人の入所者をトイレに連れていっている間、あちこちのベッドからアラーム音が鳴るのである。
佐々涼子 「 ボーダー 移民と難民 」 (集英社) 2023年7月10日(月)
<その11> ◆インドネシアやフィリピンでは、たいていが大家族で暮らしていて、お互い世話をするのが当たり前の文化を持っています。しかもおおらかで明るい。食事の介助でも時間を気にせずにゆったりと世話をするので、外国人になじみの薄かった利用者にも家族にも思ったよりずっと評判が良かったです。 ◆日本ではよく自己主張してはいけないと言いますが、日本社会ではおとなしい外国人は差別される。弱い人間には強く出て、強く主張する人には下手に出る。そんなところがあるような気がします。
佐々涼子 「 ボーダー 移民と難民 」 (集英社) 2023年7月7日(金)
<その10> ◆ 「 難民 」 とは、 「 迫害のおそれ、紛争、暴力の蔓延など公共の秩序を著しく混乱させることによって、国際的な保護の必要性を生じさせる状況を理由に、出身国を逃れた人々 」 と定義する。 ◆日本政府は、移民を 「 入国のときにすでに永住が決まっている人 」 と解釈し、建前としては日本は移民はいないことになっている。 ◆日本人が勤勉でよく働くというのは、いつの時代の話だったのだろう。中国人の女性を雇ったある中堅企業をコンピューターの基盤を組み立てている工場は、日本人従業員を雇っているときに比べて不良品率が10分の1になったそうである。
佐々涼子 「 ボーダー 移民と難民 」 (集英社) 2023年7月6日(木)
<その9> ◆移民制度が健全であることと、難民制度が健全であること。その二つが揃ってそれぞれの制度が生きる。どちらかの蛇口が閉まれば、もう片方のに流れるに決まっている。制度の青写真がまずい。移民制度と難民制度それぞれをまっとうに位置づけられるシステムにしないとダメということです。 ◆ 「 移民 」 とは、 「 ある場所から別の場所へ、生活のため ( 多くは仕事のために ) 、一時的または、永久的に移動する人 」 のことを指す。ここに移住の理由や法的地位は関係ない。
佐々涼子 「 ボーダー 移民と難民 」 (集英社) 2023年7月5日(水)
<その8> ◆実際は入管に勤めると多くの人は職場の雰囲気に染まってしまうようなのだ。そして、その体質に耐えられない人は辞めていく。 児玉は入管の体質を 「 入管文化 」 と呼んでいる。日本は敗戦後も旧植民地時に朝鮮半島の人々を長崎の大村入管に収容した。そして、その悪しき文化は、いまだ受け継がれ、連綿と続いている。 ◆言うことを聞かない被収容者への暴行は日常的にありました。よく暴行を受けるのはイラン人、中国人、韓国人。いずれも警備官に反抗的な男性でした。殴るときは素手で殴るか蹴りつける。警棒を使用しているのは見たことがない。
佐々涼子 「 ボーダー 移民と難民 」 (集英社) 2023年7月4日(火)
<その7> ◆今、入管法が改悪されようとしています。在留資格がないこと自体を問題にする人もいます。しかし、法律のほうがおかしいんじゃないかと考えてみてほしいと思います。 ◆在留資格を出したら収拾がつかなくなると思っているのでしょうが、実際は国境を越えて大変な思いをして働いている人たちがずっとそこに住みたいと思っているかといえば、そうではなく、ほとんどの人は出身国に帰ります。 むしろ在留資格があって自由に移動できたほうが、自由に移動して帰るというのが研究上明らかなことです。
佐々涼子 「 ボーダー 移民と難民 」 (集英社) 2023年7月3日(月)
<その6> ◆同じ時期に同じような書類を出して訴えを起こした人たちに正反対の決定が出たんです。彼らは 「 なぜ自分たちは解放されないんだ 」 と言われました。 つらかったですね。でも、僕には裁判官が違ったからとしか説明のしようがなかった。 ◆ミャンマーでの軍事クーデター後、日本で難民認定されたミャンマー出身者は32人にとどまっている。 他方、日本は防衛大学校に国軍から留学生を受け入れている。つまり、市民を殺害している国軍に、兵器の扱いや軍事作戦を教えているということになる。どう言い訳をしても、虐殺に加担していると思われてもしかたないだろう。 日本政府に対して、ミャンマーの人たちは強い抗議を上げている。
佐々涼子 「 ボーダー 移民と難民 」 (集英社) 2023年6月30日(金)
<その5> ◆ 「 佐々さん、知ってる?私の国は一大帝国を作り、この国よりも高度な文明を持っていました。でも日本人はイラン人をバカにする。そういう日本人をたくさん見てきました。歴史を知らないのは、日本人じゃないですか? 」 ◆藤山雅行裁判長は、この決定の中で、5人が難民である可能性が高いとしたうえで、収容令書発付処分は難民の移動に対して、 「 必要な制限を課してはならない 」 と定めている難民条約31条2項に反していると明言した。
佐々涼子 「 ボーダー 移民と難民 」 (集英社) 2023年6月29日(木)
<その4> ◆ 「 日本人は純粋なもしくは無意識の人種差別主義者であり、彼らがこの国にも 「 人種問題 」 が存在すること、ないし、他民族に対する彼らの態度に何かが欠けていることと認めない限り、事態の改善は望めない 」 ◆日本の入管施設は全国で17カ所。2019年6月の時点で、1253名もの外国人たちが収容されていた。長期収容が増えており、うち679名が半年を超えて収容されている。3年、4年はざらで、最長はイラン人の7年4ヶ月だという。
佐々涼子 「 ボーダー 移民と難民 」 (集英社) 2023年6月28日(水)
<その3> ◆応対した入管の職員がこう言ったという。 「 先生は、こちらのトイレをお使い下さい。あいつらと同じトイレを使うのは嫌でしょう? 」 強烈な違和感があった。そんな差別発言をする公務員がいるのだろうか。 ◆ 「 入管というのは、どんな人が入れられるんですか? 」 「 オーバーステイなど非正規滞在になった外国籍の人ですね 」 「 で、その中でも悪いことをした人が閉じ込められる? 」 「 いえ、ビザが切れたりすれば、誰でも入れられちゃうんですよ 」
佐々涼子 「 ボーダー 移民と難民 」 (集英社) 2023年6月27日(火)
<その2> ◆児玉弁護士は、当初、判決でこの社会をより良いものにしたいと希望に燃えて、裁判官を志望した。だが、裁判官が良心のみによって判決を下すことができるというのは建前で、その実情はサラリーマンと同じ、あるいはもっと露骨な縦社会だった。 ◆イランでは、1978年に始まったイラン・イスラム革命以来、反米政権が国を支配し、強権を振るっていた。親米政権を通じて原油の利権を得ようとするアメリカやイギリスに怒った国民は立ち上がり、革命を起こしたのがこの政権の始まりだ。
佐々涼子 「 ボーダー 移民と難民 」 (集英社) 2023年6月26日(月)
少子高齢化が問題なのではなく、人口減少が問題なのである。その意味で移民と難民は、重要なテーマとなる。以下、本書よりインパクトのあるくだりを要約して、御紹介することとしたい。 <その1> ◆日本の難民認定率は極めて低い。2021年、日本で難民と認められたのはわずか74人。難民認定率は0.7%だ。欧米では人数で3万人から4万人、率でも15%〜65%とケタが違うのである。
西山太吉、佐高信「西山太吉 最後の告白」(集英社新書) 2023年6月2日(金)
<その14> ◆国家機密にも一定の要件があるんです。秘匿する正当性があるから国家機密として扱われるし、存在意義があるんです。アメリカの公文書によって、日本政府の虚偽が判明しましたが、その機密自体が虚偽となると、自動的に機密の要件を失うんです。 ◆国の犯罪ですから、大事件ですよ。しかし、誰一人、問題提起してないじゃないですか。西山太吉のためではなくて、日本のために。偽証を機密といって裁判を行っているのだから、もう裁判ですらない。
西山太吉、佐高信「西山太吉 最後の告白」(集英社新書) 2023年6月1日(木)
<その13> ◆ただ、起訴状というのは、本来は事実関係を構成要件に沿って書くだけなのに、それに情緒的、扇情的表現を忍び込ませた。記者が役人をたぶらかして不当に機密を入手した、というシナリオ作りをしようとした。密約をカモフラージュするために、世間の興味を誘発するような文句を入れたわけだ。 ◆そんなに悪いことですかね。国家の最高機密を入手して国民に伝えることが。手段の問題じゃない。重要なことを国民に伝える目的ですよ。大事なことは、手段と目的とを間違えて本末転倒してしまっている。
西山太吉、佐高信「西山太吉 最後の告白」(集英社新書) 2023年5月31日(水)
<その12> ◆2つの特徴がありますよね。一つは一審では勝訴しても、上告審では負ける。もう一つは、米国側の公文書と当時の外務省担当局長、吉野文六氏の証言で密約があった事実が明確になっても、いまだに政府公式答弁はそれを認めない。 ◆まず語るべきは、私の側のミス、失敗は何であったかということ。それは、電信文を提供してくれた女性事務官を情報ソースとして守れなかったことです。これだけは記者として、ジャーナリストとして取り返しのつかないことをした、と今でも頭を下げたい。
西山太吉、佐高信「西山太吉 最後の告白」(集英社新書) 2023年5月30日(火)
<その11> ◆そう78年に62億円を支出したのが最初です。以後、急増し、基地従業員の人件費、光熱水料、基地内の建設費のほとんど全額など、90年代以降は、2,000億円前後に膨れ上がっていくんです。 ◆佐藤栄作は、自分の功績のため日本の主権を事実上放棄した。あまり言いたい言葉ではないが売国奴ですよね。ノーベル平和賞をなんていうのは、消防署が放火犯を表彰するようなものです。
西山太吉、佐高信「西山太吉 最後の告白」(集英社新書) 2023年5月29日(月)
<その10> ◆沖縄返還協定に記されていた米国に日本が払った金額は、3億2,000万ドルだったが、これは表の数字、ほかにも通貨交換による1億1,200万ドルなど、協定外で払ったものもある。米公文書館で一連の密約文書の発掘作業をしてきた琉球大学の我部政明教授(当時)によると、米国は総額で少なくとも6億5,000万ドルの利益を得たという。 ◆ 「 思いやり予算 」 というのは、日米地位協定上、本来は米国側が負担すべき駐留経費の一部を日本の一種の気配りとして負担しようというものです。
西山太吉、佐高信「西山太吉 最後の告白」(集英社新書) 2023年5月26日(金)
<その9> ◆西山さんは、岸、佐藤のある種のドグマ政治、教条主義的政治は、外交において秘密のやり取り、すなわち密約を生む温床となりがちだと言われました。専制的、独裁的政治からは、必ず秘密が生まれると。 ◆必ず秘密になる。なぜかと言えば、ドグマ的であり、独断専行な人は、相手を全く無視するし、相手に寛容に接する余裕もないから、どうしても隠し事をしてしまう。その一番いい例が沖縄密約ですよ。
西山太吉、佐高信「西山太吉 最後の告白」(集英社新書) 2023年5月25日(木)
<その8> ◆私は、石橋湛山という政治家も米国に追われたと思っているんです。吉田政権の蔵相を務めた際に、対GHQへの放漫予算に批判的に容赦しなかった。 あのリベラルでずっと戦争に反対してきた人物が一時パージされたんですよ。米国は湛山の容共的スタンスが怖かったと私は見ています。 ◆現場で権力を握っているということは、それだけ頭使うし、同時に自意識が非常に強くなるから、血液の循環も良くなる。
西山太吉、佐高信「西山太吉 最後の告白」(集英社新書) 2023年5月24日(水)
<その7> ◆大平正芳は、岸の教条主義、イデオロギーが大嫌いだったんですね。大平は楕円の理論ですから、敵がいてもまずは相手を認め、こっちの主張もする。そして、激突することはある。そこまではいい。ただ、岸は激突したまま対立、突破するけれども、大平は突破しない。突破しないで相手を誘導する、引きずり込む。だから、そういう面で岸嫌いでした。 ◆角さん、金の問題で辞めてしまったけれども、もったいない。あの程度の問題でね。あの人材をつぶしてしまうことが日本にとって惜しいよ。ああいう資質と行動力を持っている政治家は他にいませんよ。角さんには米国追随なんて全くない。常に未知の魅力があったんです。彼が何をやるか分からないから、米国がつぶしたんですね。
西山太吉、佐高信「西山太吉 最後の告白」(集英社新書) 2023年5月23日(火)
<その6> ◆宏池会というのは、要するに大局というものを常に意識する。時局じゃない。大局がある。大局に立った上で、問題意識、主張、そういうものを十分聞く。聞いた上で、その間築き上げた自分の主張との間に妥協点、出口を見出していくわけです。そして、その中からクリエイトするんですよ。新しいものを。こういう共同作業ですよね。 ◆しかし、もうああいう政治家は出ないね。田中角栄、大平正芳2人ともね。田中、大平ラインというのは、日本の夜明けだったな。日中国交正常化をやりましたがすべてが明るいでしょう。信頼が置けるし、包容力があるでしょう。広範な活動力もあるでしょう。ああいうバイタリティーのある広い行動半径を持った政治家はいませんよ。それが2人でタッグを組むんだからね。強力でしたよ。
西山太吉、佐高信「西山太吉 最後の告白」(集英社新書) 2023年5月22日(月)
<その5> ◆岸政権がなければ、佐藤政権がなかった。ましてや安倍晋三政権などあり得なかったということですかね。 ◆日本長期信用銀行というのは、池田勇人がつくった銀行なんですね。宏池会の資金源とも言われていたんです。 ◆永野重雄・桜田武、そりゃ池田派の一番の後ろ盾ですよ。この2人に小林中、水野成夫を加えた財界四天王はみんな池田内閣の時のスポンサーです。いい意味でのスポンサーだった。松永安左ヱ門という人もいた。電力の。
西山太吉、佐高信「西山太吉 最後の告白」(集英社新書) 2023年5月18日(木)
<その4> ◆法律は人間を拘束する。法律は人間を縛る、支配する。これは必要最小限度にすべきことである。あくまでも話し合い、それから相手方に対する説得、寛容、忍耐、これが政治だというのが宏池会の精神ですよ。 ◆石橋湛山は病気のため2ヶ月で辞めました。そういうことを言う人は少なくなってしまったけれども、私は今でも思うことがある。湛山政権が5年もてば、次の岸政権はなかった。
西山太吉、佐高信「西山太吉 最後の告白」(集英社新書) 2023年5月17日(水)
<その3> ◆あの戦争は、新聞が煽った側面は否定できません。後から振り返ると満州事変(1931年9月)あたりがターニングポイントだった。歴史のイフではありませんが、朝日の緒方竹虎が 「 もしあの時、朝日と毎日が共同戦線を張って、軍部に対抗していたら防ぎ得たのではないか 」 という趣旨の述懐をしています。 ◆1956年当時は朝日より毎日の方が勢いが上だったんですよね。発行部数でいえば380万部と350万部ぐらいですからね。2社だけが抜きん出ており、読売なんて280万部ぐらいでした。
西山太吉、佐高信「西山太吉 最後の告白」(集英社新書) 2023年5月16日(火)
<その2> ◆あの時ね。パネラーの筑紫哲也さんが 「 私は同時代に生きたジャーナリストとして、ジャーナリズムが西山さんをきちんと守れなかったことが恥ずかしい 」 と言ってくれた時だな。 ◆そもそも米国は1960年代から辺野古に基地新設という構想をずっと練っていた。辺野古ありきなんですよ。普天間基地はむしろその口実に使われたとみるべきでしょう。
西山太吉、佐高信「西山太吉 最後の告白」(集英社新書) 2023年5月15日(月)
本書は、国家のウソをスクープした記者が語る、自民党政治の裏面史である。 以下、インパクトのあるくだりを要約して御紹介することとしたい。 <その1> ◆国家のウソを暴いた記者は、残念ながら西山だけである。そのため西山は権力の報復を受けた。 しかし、西山の挑戦はきちんと評価されていない。
増田悦佐「人類9割削減計画」(ビジネス社) 2023年5月12日(金)
<その21> ◆さらに人口10万人当たりの年間殺人事件犠牲者数上位30の国と地域を見ると、ひとつの例外もなく中南米、カリブ海地域とアフリカに位置しているのだ。つまり、15世紀末からのヨーロッパ列強による植民地化がかなり暴力的な形で進んだ国々ということになる。 ◆バフェットが完全子会社化する企業には特徴がある。独占的な特権を持っていて、べら棒に儲かる会社でほんの一部でも投資家に株を分けてやるのは、もったいない企業だということだ。
増田悦佐「人類9割削減計画」(ビジネス社) 2023年5月11日(木)
<その20> ◆これで競争が激化して優秀な人だけが残るとなればいいのだが、新聞記者の場合、一本立ちして物書きとして食べていけると思った人はどんどん辞めて、フリーランスになってしまう。残っているのは、大新聞の権威にすがって生きていくだけの人たちが多い。 ◆しかも新聞社自体もワシントン・ポストは、ジェフ・ベゾスに買収され、ニューヨーク・タイムズはWEFの協賛企業になってしまっている。 新聞業界は世の大勢に異を唱えるような気骨のある人間が働ける職場ではなくなっているのだ。
増田悦佐「人類9割削減計画」(ビジネス社) 2023年5月10日(水)
<その19> ◆アメリカの現政権は認知症が日増しに重症化しつつある大統領と、他人の忠告をいっさい聞かず、提出されたレポートを読まずに、わけのわからないことを喋り散らす副大統領という最悪のコンビが頂点に立っている。 ◆それでもニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストのような一流紙は、コロナ対策・地球温暖化などでバイデン民主党べったりの姿勢を崩していない。 最大の理由は、もともと購読料収入が少なかった上に、広告料収入も激減して新聞業界全体の雇用がピーク時の4分の1にまで落ち込んでいることだ。
増田悦佐「人類9割削減計画」(ビジネス社) 2023年5月9日(火)
<その18> ◆イギリスのトラス内閣の売りは、英国内閣としては初めて白人男性がひとりも入閣しないマイノリティに開かれた人選ということだった。だが実際には黒人や移民層の支持率が低い保守党の人気取り政策の感が強い。今回の最高税率引き下げ案の撤回をめぐっても首相と財務相のあいだに信頼関係がなさそうなことは見えすいていた。 ◆移民排斥・排外主義を訴える政策を、たんに偏見によるものと考えるのは間違っている。 とくに移民と直接職を奪い合うような低所得層にとって低賃金で仕事を取っていく移民に対する反感は切実なものがあるからだ。
増田悦佐「人類9割削減計画」(ビジネス社) 2023年5月8日(月)
<その17> ◆資源枯渇について言えば、人類の需要が大きく製品からサービスに転換した今、ほとんどあらゆる資源が枯渇より在庫の滞積のほうを心配すべき商品と化している。 こういう風土の中で、空気中の二酸化炭素濃度上昇は有害だという 「 定説 」 ができてしまった以上、専門家としての資格を持たない人間が 「 植物にとって主食が増えるのだから有益じゃないか 」 といった当たり前のことをいくら丁寧に説明しても、まったくの徒労に終わる。 「 二酸化炭素有害説 」 を唱える連中には、クリーンエネルギーとか、グリーンエネルギーとかで、ひと儲けをたくらむ企業がバックについているからだ。
増田悦佐「人類9割削減計画」(ビジネス社) 2023年5月2日(火)
<その16> ◆熱波だけは、ほぼ一貫して低所得国より犠牲者率が高く推移している。低所得国ではあまり熱中症で亡くなる人はいないようだが、中高所得国では、20世紀末まで熱中症で亡くなる数は高止まりしていた。 ◆アメリカはもともと国土の大きさに比べて、ハリケーン被害が非常に少ない国だ。アメリカよりはるかに小さな島国である日本には、毎年の台風上陸件数は少なくとも、7〜8件に達しているだろう。年間2ケタということもざらにある。つくづく自然は不公平なものだと思う。だがこれだけ自然災害の少ないアメリカでは、実際に自然災害に遭うと、そのまま地域経済が低迷してしまうことも多いのだ。
増田悦佐「人類9割削減計画」(ビジネス社) 2023年5月1日(月)
<その15> ◆太陽光発電も風力発電も平均稼働率は10%〜20%で、おまけに天候が悪ければ稼働率ゼロ状態が続くこともあるからだ。それに加えて、全世界の幹線道路ばかりか副次的な役割しか来たさない道路にまで散在しているガソリンスタンドを全部電気自動車(EV)用の充電所に切り替えるというのだ。全世界津々浦々に張りめぐらさなければならない送電線網がいったい累計何百万キロに達するのか、想像もつかないほどの大事業だ。 ◆時代が進むほどあらゆる災害の犠牲者数は減っているという歴然たる事実だ。ただひとつの例外をのぞいて、どんな災害でも犠牲者率は低所得国より高所得国のほうが低くなっている。
増田悦佐「人類9割削減計画」(ビジネス社) 2023年4月28日(金)
<その14> ◆じつは産業革命が本格化する18世紀半ばまで、ヨーロッパはユーラシア大陸の既知の文明圏の中でいちばん一般庶民が貧しい暮らしをしていた地域だった。 「 それなのに南北アメリカ大陸やアジア・アフリカ諸国を侵略し、征服したのか 」 と思われるかもしれないが、むしろ自国が貧しいからこそ 「 海外雄飛 」 を図ったのだ。 ◆石油、石炭、天然ガスなどの化石燃料を全廃して、 「 再生可能エネルギー 」 という全くキャパシティのあてにならない資源を発電事業の主にするだけでも、必要な設備投資総額は少なくとも在来火力発電の4〜5倍程度になるだろう。
増田悦佐「人類9割削減計画」(ビジネス社) 2023年4月27日(木)
<その13> ◆もし、1961年〜68年の実質9.9%という成長率がそのまま続けば、2000年には1人当たりGNPがアメリカの2倍を超えてしまう。これは欧米人にとって心穏やかならぬものがあっただろう。それまでの 「 成長は実徳 」 があっさり 「 成長は人類を滅亡に追いやる害毒 」 に転換してしまったのも無理もない。このように断言せざるを得ないほど、日本の高度成長は脅威だった。
増田悦佐「人類9割削減計画」(ビジネス社) 2023年4月26日(水)
<その12> ◆ビル・ゲイツたちにとって、貧困を根絶することは、すなわち貧乏人をこの世から抹消することなのだ。そして、はた目にはどんなに異常な大量殺戮に見えようと、当人たちにとってみれば正義の闘いなのだ。 ◆たしかに高所得国ではほぼ正確に人口の7割がワクチンを接種している。一方、低所得国でワクチンを接種した人は、全体の4.3%に過ぎない。 だが、実際にコヴィッド―19の感染率・致死率が高かったのは、ジョンズ・ホプキンズ大学のデータからもわかるように圧倒的に高所得の国々だった。
増田悦佐「人類9割削減計画」(ビジネス社) 2023年4月25日(火)
<その11> ◆ビル・ゲイツのほうはもっと狂信的だ。父親であるビル・ゲイツ・シニアが家族計画の活動家だったことを誇りにし、 「 人口を大幅に削減しなければ貧乏を世界からなくすことはできない 」 と心から確信している人間だ。 ◆家族計画運動の創始者マーガレット・サンガーは1920年に刊行された主著 「 女性と新しきアメリカ人 」 で 「 子だくさんの貧しい家庭に生まれた小さな子どもにしてあげられるもっとも慈悲深いおこないは、その子をなるべく早く殺すことだ 」 と堂々と書いていた人なのだ。
増田悦佐「人類9割削減計画」(ビジネス社) 2023年4月24日(月)
<その10> ◆これに比べると西側諸国の国民は、最近のコロナ騒動や地球温暖化騒動のような悪意に満ちた宣伝扇動を経験したことがあまりないのであろう。 ◆読者の中には 「 いくらなんでも人類の6〜7割を死滅させるためのウイルスやワクチンをほんとうに世界中にばらまく人間がいるだろうか 」 と疑問を抱く方が多いだろう。 それぞれ理由は違うが、ビル・ゲイツもクラウス・シュラブも平然とそれだけの大罪を犯す人間だと私は思っている。
増田悦佐「人類9割削減計画」(ビジネス社) 2023年4月21日(金)
<その9> ◆現ドイツ連邦の旧西ドイツと旧東ドイツでは、ワクチン接種率もコヴィッド−19感染率も顕著な違いがある。具体的には、もののみごとに旧東ドイツはワクチンは接種率が低く、同一人口当たりの感染者も少ない結果が出ている。 ◆これは、一度でも社会主義諸国で生活したことのある人たちは、 「 政府の宣伝を真に受けるととんでもないことになる 」 という教訓を骨身にしみるほど学んでいるからであろう。
増田悦佐「人類9割削減計画」(ビジネス社) 2023年4月20日(木)
<その8> ◆なかでも特筆すべきは、国民の2.1%しかワクチン接種者のいないハイチが感染者数がほとんどゼロになっていることだろう。 ◆かなり昔から、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団の資金が入ったワクチンには、女性を不妊化させる成分がふくまれていると言われつづけている。だがコヴィッド−19ワクチンには、男性の精子数を減らし、精子の運動性を弱める成分も入っているのではないかという疑惑が持ち上がっている。
増田悦佐「人類9割削減計画」(ビジネス社) 2023年4月19日(水)
<その7> ◆当初、狂気と言っていいほど厳重にロックダウンをおこない、マスク着用を義務付けていたニュージーランドは、その甲斐あって 「 ゼロコヴィッド化 」 に成功したように見えていた。だが、ワクチン接種の回を重ねるにつれて、感染者が激増し、現在では人口当たり感染者数が世界一となってしまった。 ◆日本はワクチンの2回以上接種者比率では世界有数となってしまった。その結果、どうやらワクチンが誘因となって感染する人が増える傾向が濃厚なオミクロン株の大流行によって、とうとうこの10か国の中では、人口当たり感染者数がニュージーランドに次ぐ2位にまで登り詰めている。
増田悦佐「人類9割削減計画」(ビジネス社) 2023年4月18日(火)
<その6> ◆アメリカのCIAや在ウクライナ大使館が、ウクライナのネオナチをふくむ極右勢力を使って、親ロシア派の大統領を追放したのは2014年のことだった。それ以来、ウクライナ政府は一貫してドンバス地方のロシア系およびロシア語を母語とするウクライナ国民を弾圧し、正規軍や民兵によって殺傷してきたのだ。 この事実がなければウクライナ侵攻はあり得なかったのである。 ◆原油価格の騰貴は、ウクライナ戦争勃発前からあてにならない再生可能エネルギーに頼って、化石燃料による火力発電を邪魔者扱いしてきた国が惹き起こしたという要因も大きいのである。
増田悦佐「人類9割削減計画」(ビジネス社) 2023年4月17日(月)
<その5> ◆だいたい、 「 自然に優しい 」 という表現が僭越だ。人間に優しくされようと、冷たくされようと、自然はまさにあるがままに存在しつづける。自分たちが優しくやらなければ自然が滅びるなどと考えること自体、自分たち人間が自然をコントロールできるし、コントロールしようと思っている証拠だろう。 ◆現在、EUは完全にWEFの提唱する 「 温室ガス=地球温暖化の元凶 」 説に凝り固まってしまっている。彼らEU官僚は 「 何十年後かにやって来るかもしれない地球温暖化による生物全体が死滅するほどの危機を防ぐためなら、現在生きている何十億の庶民の生活水準が極端に低下することなど気にもかけない 」 という人たちだ。
増田悦佐「人類9割削減計画」(ビジネス社) 2023年4月14日(金)
<その4> ◆今でもオランダは、球根の輸出量では、世界シェアの60%を占める大国でありつづけている。その事実からも、チューリップバブルは無意味な熱狂ではなかったことがおわかりいただけると思う。むしろチューリップバブルを起こしたのは、農業生産における起業家精神の発露だったとさえ言えるだろう。 ◆世界人口がそろそろ80億人になろうかというほど大幅に増えてきた最大の理由は、化学肥料を適切に使うことによって単位面積当たりの農作物の収穫高が劇的に増加したことだ。
増田悦佐「人類9割削減計画」(ビジネス社) 2023年4月13日(木)
<その3> ◆だからこそ、オランダ人は 「 よその国では国土は神様がつくったが、オランダの国土は我々オランダ人がつくった 」 と自慢するわけだ。オランダが農業大国になったのは、手間を惜しまず注意深く作物を育てる農民たちの努力があったからこそのことだ。 ◆オランダの農業というと酪農とともに花卉栽培としてチューリップが有名だ。実用性に富んだ再生エネルギー利用としては、水力発電とこのふたつだけではないかと思われる風車(ただし動力源としての利用であって発電用ではない)を背景に整然と咲き誇るチューリップ畑はオランダの観光名所ともなっている。
増田悦佐「人類9割削減計画」(ビジネス社) 2023年4月12日(水)
<その2> ◆2010年代半ばごろから国連は大スポンサーであるロックフェラー財団やビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団の使いっ走りをするまで落ちぶれてしまった。 ◆オランダは食料品輸出額ではアメリカに次いで世界第2位の食糧輸出大国だ。だがオランダは農業に適した国土を持っていたわけではない。国土面積では明らかに小国だ。
増田悦佐「人類9割削減計画」(ビジネス社) 2023年4月11日(火)
本書は増田氏の3つのことへの異議申立書である。3つのことは 「 二酸化炭素が原因で地球が温暖化していること 」 「 新型コロナはワクチンによって救われること 」 「 悪いのはあくまでもロシアのプーチンであること 」 である。 以下、本書よりインパクトのあるくだりを要約して御紹介していきたい。 <その1> ◆読者の皆さんはマッチポンプという表現をご存知だろう。自分でマッチを擦って起こした火事を後からポンプで水をかけて消し止めて手柄顔をする人のことだ。
副島隆彦「愛子天皇待望論」(弓立社) 2023年3月29日(水)
<その9> ◆伊藤博文は日韓併合(朝鮮王国の消滅)に反対した。朝鮮王国の最後の王子である李垠を自分の手元で最後まで大事に育てた。 朝鮮・韓国人は、日本人の名を名乗らされ(創氏改名)、日本語を小学校で習い、日本の天皇と日本の神社を拝まされた。 ◆天皇制は日本の長い神道の考えから出てきたのではない。断じてちがう。イギリスが作成したものを日本に押し付けたのである。なぜなら、イギリスでは今でもイギリス国王(女王陛下)は神(ゴッド)だからである。
副島隆彦「愛子天皇待望論」(弓立社) 2023年3月28日(火)
<その8> ◆福島の会津の人たちは今でも 「 薩摩はまだいい。許す。しかし、長州だけは絶対に許せない 」 と言う。 会津戦争のとき、長州兵は会津藩士を本当に残虐極まりない殺し方をした。とても文章にして書けないような惨殺だった。美しい白虎隊の少年たちの悲劇だけでは済まない。 「 長州閥が悪い 」 と言われるのは、山縣が始まりである。
副島隆彦「愛子天皇待望論」(弓立社) 2023年3月27日(月)
<その7> ◆なぜ歴史学者たちは、山縣有朋を研究しないのか、また全くと言っていいほど、山縣は小説にも(主人公らしく)描かれない。それなのに死ぬまでずっと長く日本の最高実力者だった。 それは昭和天皇と他の3人の弟たちの本当の父親が山縣有朋だったからである。私はこのように推測する。いや断言する。 ◆伊藤博文は、 「 清国やロシアともこれ以上戦争をしない。今後は話し合い(外交)で決めていく 」 と考えた。 「 そして、ドイツとも仲良くする 」 と主張した。この伊藤の考えをイギリスは激しく嫌った。だからイギリスは山縣を使って伊藤を殺したのだ。
副島隆彦「愛子天皇待望論」(弓立社) 2023年3月24日(金)
<その6> ◆常磐会と霞山会というおそろしい団体がある。常磐会は、学習院女子部中等科・高等科卒業者の同窓会である。霞山会の方は旧貴族や公家の子孫の集まりである。 ◆戦争中の個々の戦闘中の殺人については、無罪となっている。それは国家行為だからである。国家によって訴追されない。しかし、戦争犯罪人として特別に処罰されるのは、責任者(指導者層)がとりわけひどいことをした場合である。これには大きくは、(1)平和に対する罪 と (2)人道に対する罪の2つがある。 それと、最初に手を振り上げたものの責任としての (3)戦争開始責任が問われる。
副島隆彦「愛子天皇待望論」(弓立社) 2023年3月23日(木)
<その5> ◆伊藤は日清戦争にも日露戦争にも反対であった。宗主国のイギリスの言うことを聞かなくなっていた。 だから、イギリスとしては、伊藤はもう用済みで処分すべき人間である。 ◆同世代の日本人と共通の感覚を持っていないことは、子供時代に外国で教育を受けた人たちの悲劇である。同じ国の人間として同世代らしく育つことは、大事だ。数年間でいいから同じ歌を聞いて、同じ番組を見ていないと、共通の話題が作れない。 おそらく雅子さまはこの悲劇を背負っている。
副島隆彦「愛子天皇待望論」(弓立社) 2023年3月22日(水)
<その4> ◆現代の昭和天皇(124代)はじめ4人の兄弟皇族の本当の父親は誰か。それは明治時代にずっと国民に嫌われた極悪人の権力政治家だった山縣有朋である。長州閥を作った張本人だ。この長州閥の政治家たちが、現在に至るまで日本の政治を本当に悪くした。 ◆山縣有朋はイギリスの命令に従って伊藤博文を暗殺した。山縣が自分の日本陸軍の銃殺隊を使って駅舎の2階から狙撃して殺させたのである。歴史で教えられる朝鮮人の独立運動家の安重根がピストル1発で殺したのではない。
副島隆彦「愛子天皇待望論」(弓立社) 2023年3月20日(月)
<その3> ◆このヨーロッパの国王たちと、日本の天皇では評価、評判が大きく異なる。スウェーデンも、オランダも、ベルギーも、スペインも今の国王たちは国民からものすごく評判が悪い。 もうすぐ次々に王政が廃止になるだろう。 ◆日本の天皇制を明治の初めに創作したのはイギリスである。日本の天皇家はイギリスの王家の真似をして計画的に作られたのである。イギリス国家はイギリス国教会を主宰している。 イギリス国家は現在の世界を支配しているディープステイトそのものである。ローマ・カトリック教会(ヴァチカン)と並んで、今の世界をその頂点で支配している。
副島隆彦「愛子天皇待望論」(弓立社) 2023年3月17日(金)
<その2> ◆各種の国民調査と世論調査で 「 女性の天皇でいい 」 という数字は、つねに80パーセントを超えている。 ◆77年前の敗戦によって、11宮家が廃止された。 マッカーサーの占領軍政府の 「 人権命令 」 によるところである。放っておくと何百人にも貴族がボコボコと数がふくれ上がる。このことは国民にとって不幸である。
副島隆彦「愛子天皇待望論」(弓立社) 2023年3月16日(木)
いずれはなくすべきは天皇制なのだが、簡単にはなくせないので女性天皇にいうのが副島氏の主張である。 以下、本書よりインパクトのあるくだりを要約して、御紹介していきたい。 <その1> ◆この本は日本の体制批判と反権力の側から書かれた、日本の天皇家への激励の本である。日本国民は天皇という国王の下で団結して生きてゆくべきなのだという考えである。
及川幸久「そして第三次世界大戦が仕組まれた」(ビジネス社) 2023年2月28日(火)
<その20> ◆円高不況に襲われるなか、わが国は必死にビジネスモデルを転換してきました。儲かるけれどもハイリスクの半導体市場は旧通産省の怠慢で、米国そして台湾・韓国に明け渡すことになりますが、周辺部品、半導体製造装置で他の追随を許さない品質で 「 オンリーワン 」 となって生き残ったのです。 ◆成長が頓挫した日本経済を象徴しているものの1つが、私は年金制度だと思います。政府は 「 年金は100年安心 」 と言っていましたが、実態は年金支給は徐々に目減り、現役世代の社会保険料は毎年増加。この15年で倍に。
及川幸久「そして第三次世界大戦が仕組まれた」(ビジネス社) 2023年2月27日(月)
<その19> ◆わが国のGDPのピークは1997年でした。あれから25年。この間、わが国の経済成長はゼロ、米国は2.7倍、中国は20倍にもかかわらずです。GDPを購買力単価で換算しますと、中国23兆ドル、米国19.8兆ドル、インド8.4兆ドル、日本5.2兆円、ドイツ4.2兆ドルの順となります。 ◆1985年のプラザ合意、87年のルーブル合意。91年のソ連崩壊。冷戦が終わると、米国の真の敵は・・・・・・日本だとばれてしまいました。以来、円高是正を強要されてきました。
及川幸久「そして第三次世界大戦が仕組まれた」(ビジネス社) 2023年2月24日(金)
<その18> ◆結論からいえば、 「 ドル買い金売り 」 がバイデン政権の政策です。金よりドル投資を盛んにしてほしい。 これはFRBの政策です。 ◆利上げ展開中、サプライチューン問題が改善しなければ、インフレはまったく沈静化しないでしょう。利上げで解決できるインフレではないからです。方向音痴のバイデン政策であり、FRBの行動です。
及川幸久「そして第三次世界大戦が仕組まれた」(ビジネス社) 2023年2月22日(水)
<その17> ◆金本位制の下では、金準備以上には経済は膨張できません。だからこそ、経済のボリュームが膨張し続ける現代、金本位制は現実的ではない、と指摘するエコノミストは少なくありません。 ◆わが国は米国ほどではありませんが、貿易依存度30%程度の 「 内需国家 」 です。トータルで考えますと、通貨が高い(円高)ほうがいいに決まっています。とくに国民目線ではそうだと思います。80年代ではあるまいし、いまどき円高で困る輸出企業などありません。海外に工場を移転するなり、超円高でも売れる高付加価値の素材や製品開発にシフトして生き残ってきたのです。
及川幸久「そして第三次世界大戦が仕組まれた」(ビジネス社) 2023年2月21日(火)
<その16> ◆米国の景気がいいと金価格は低迷。米国が戦争で混乱したり、不況で経済が収縮したりすると、金価格が高騰するというシンプルな法則性があります。 ◆ニクソンショックで変動相場制になり、1ドル360円から308円になり、70年代は170円の円高になります。その後、80年は220円台に戻ります。85年のプラザ合意あたりで1ドル240円。それから2年間で1ドル120円の超円高になっていきます。
及川幸久「そして第三次世界大戦が仕組まれた」(ビジネス社) 2023年2月20日(月)
<その15> ◆サウジはすでに人民元を決済通貨として認める方向で動いています。みかじめ料もロシアに払うようになります。イスラエルも含めて、米国は中東から蛇蝎の如く嫌悪されているのです。イラン、イラクはもちろんサウジ、UAEも反米嫌米です。 ◆ヨーロッパは英国を除いて対米面従腹背。英国にしても米国の寝首をかくことに余念がありません。 ◆日経平均株価と金先物の相関性をチェックすると、マイナス0.94。すなわち完全な逆相関です。株価が下がると金価格は上昇するという関係です。
及川幸久「そして第三次世界大戦が仕組まれた」(ビジネス社) 2023年2月17日(金)
<その14> ◆株式市場など消えても国家としては、たいしたことありません。しかし、債券市場がき損したらアウトですから米財務省もFRBも必死に守ろうとします。 ◆株式市場など潰れたところで泣くのは、投資家や上場企業だけです。債券市場が崩壊したら国家が消えるのです。 ◆世界単一市場、世界統一市場を目指すディープステートにとって、米国が破綻してしまうか、戦争でがれきの山になろうがどうでもいいのです。国家を持たないグローバリストにとって、国家主権など障害以外のなにものでもありません。
及川幸久「そして第三次世界大戦が仕組まれた」(ビジネス社) 2023年2月16日(木)
<その13> ◆プーチンが大統領に就任した1999年末の原油価格は1バレル10ドルでした。それがいまや100ドル超と10倍増です。 ◆ロシアはこれまでもそうですが、米国債を売却して金準備にシフトしてきました(中国、トルコ等の反米非米国家も同じ)。 米国債をすべて売却、あるいは米ドルをすべて処分したらどうなるでしょうか? 米国債は大暴落します。 もし中国や中東がこの戦略に相乗りしたら? 米国は終わりです。即死です。
及川幸久「そして第三次世界大戦が仕組まれた」(ビジネス社) 2023年2月15日(水)
<その12> ◆カスピ海という湖があります。その名の通り海なのか?カスピ海の面積は日本国土とほぼ同じです。これが湖ならば、沿岸国の共同管理になります。資源は周辺5ヵ国で平等に分配しなければなりません。海ならば国連海洋法条約が適用されて、各沿岸国に領海が割り当てられ、資源は自国の領海内にあるものしか、開発できないことになります。 ◆ロシア産エネルギーは、西側向けではなく、中国向けなのです。中国一国相手の貿易ではリスクがあるので、 「 ついでに 」 西側にも輸出しているにすぎません。
及川幸久「そして第三次世界大戦が仕組まれた」(ビジネス社) 2023年2月14日(火)
<その11> ◆フランスはGMOトウモロコシ輸入を禁止しています。1200万トンを米国産動物実験で健康被害が明らかになったからです。一方、日本政府は国民への説明が致命的に足りません。混入許可率はEUでは0.9%以上のGMO混入が確認されれば、 「 遺伝子組換え原料使用 」 と明示しなければなりません。わが国では5%未満ならば、 「 この商品は遺伝子組換えではありません 」 と表示できます。 ◆中国国家環境保護総局によりますと、7大水系のうち60%は汚染されているといいます。毎年100万人超の障害児が生まれているといいます。原因は、食料、水、土壌そして悲惨な空気汚染。PM2.5どころの話ではありません。
及川幸久「そして第三次世界大戦が仕組まれた」(ビジネス社) 2023年2月13日(月)
<その10> ◆軍隊のないサウジは、いったいどうすればいいのでしょうか?米国から離れてロシアにアプローチするしかありません。シリアのアサド政権が 「 アラブの春 」 で転覆されずに済んだのは、ロシアのおかげです。 ◆エネルギー自給率4%のわが国にとって、エネルギーの安定供給確保は死活問題です。米や小麦がいくらあっても電気やガスがなければ食べられません。エネルギー資源こそが食料や水資源とともに人間生活には必須です。 ◆ 「 石油を支配できれば、その国を支配できる。だが食料を支配できれば、その国民を支配できる 」 キッシンジャーの言葉です。
及川幸久「そして第三次世界大戦が仕組まれた」(ビジネス社) 2023年2月10日(金)
<その9> ◆シェールオイルとシェールガス生産は、かつて原油価格70〜80ドルでなければ採算が取れなかったのですが、採掘技術の飛躍的向上でバレル40ドルでも採算がとれるようになりました。 ◆いまや世界一の産油国は米国です。ロシアや中東ではありません。原油市場ではライバルなのです。 米国が何を考えているかといえば、原油市場の独占です。独占するには二つの方法があります。一つはサウジアラムコの買収です。もう一つは戦争で奪い取ることです。
及川幸久「そして第三次世界大戦が仕組まれた」(ビジネス社) 2023年2月9日(木)
<その8> ◆インフレとは原油価格の上昇と言い換えてもいいでしょう。原油価格が100ドル超のいま、インフレは過熱気味です。普通ならば好況と判断できるのですが、価格高騰の真因はロシア産エネルギーのボイコットで自分の首を絞めているだけです。 制裁されているロシアは、中国やインドがいくらでも買ってくれるのでまったく困っていません。 ◆原油価格高騰はいつまでも続きません。これから暴落します。暴落の理由は世界中に油があり余っているからです。
及川幸久「そして第三次世界大戦が仕組まれた」(ビジネス社) 2023年2月8日(水)
<その7> ◆いかに米国が必死か。ロシアなど問題にならないほど、巨大で強力な敵=中国に慌てて対露制裁協力を求めていますが、プーチンと義兄弟の契りを結んでいる習近平がバイデンごときの説得に乗るはずがありません。 ◆ゼレンスキーはディープステートの操人形です。彼の演説を聞いて、米国の選挙専門スピーチライターが書いたシナリオだと気づいた人は少なくないと思います。 ◆ロシア・ウクライナ軍事衝突の実態は、米国が工作してロシアの軍事行動を引き出した。ウクライナに軍事侵攻を開始したのはロシアですが、そうするように 「 煽り運転 」 と 「 幅寄せ運転 」 を続けたのは米国です。
及川幸久「そして第三次世界大戦が仕組まれた」(ビジネス社) 2023年2月7日(火)
<その6> ◆ 「 日本には言論の自由はあるけど、言論そのものは不自由だね 」 と米国の友人が指摘していました。わが国民の 「 同調能力 」 には驚くばかりです。みなが 「 醜いアヒル 」 なら私もそれでいい? ◆いやいや、ワクチン、マスクもそうですが、大切なのは自分の頭で考えることです。 ◆すでに第三次世界大戦は始まってしまった。米英からロシアに停戦合意を持ちかけるのは、 「 ドル基軸通貨体制 」 の崩壊、すなわち米国覇権崩壊につながるとわかってしまった。
及川幸久「そして第三次世界大戦が仕組まれた」(ビジネス社) 2023年2月6日(月)
<その5> ◆米国は大東亜戦争と同じことを何回も繰返ししています。ロシアを見ていると 「 ああ、米国はまたいつものやり方で戦争を始めたのか 」 「 ロシアは戦闘に追い込まれてしまった 」 と感じざるを得ないのです。 ◆むかしトランプ、いまプーチン。そして近々、習近平がディープステートの的にかけられると思います。 ◆ 「 ロシア・ウクライナの軍事衝突 」 の真因はウクライナにあるという意見など、メディアでは無視され 「 非国民扱い 」 される始末です。
及川幸久「そして第三次世界大戦が仕組まれた」(ビジネス社) 2023年2月3日(金)
<その4> ◆どうしてディープステートは、政府を米国を支配できるのか?正解は 「 利権 」 です。ディープステートの狙う利権、政治家やメディアが狙う利権との一致です。 ◆あの時、米国に 「 戦争 」 を仕掛けられたわが国は、追い込まれた挙句しかたなく 「 戦闘 」 を始めました。米国は原爆を落としたにもかかわらず、いまだに戦争犯罪の裁きを何一つとして受けていません。オバマ大統領は広島に来ましたが、謝罪は一切していません。
及川幸久「そして第三次世界大戦が仕組まれた」(ビジネス社) 2023年2月2日(木)
<その3> ◆ディープステイトの存在を暴露したのは、ドナルド・トランプです。 「 わが国には民主主義プロセス(選挙)によって成立する政府以上に、権力と特権をもつ支配勢力がある 」 影の政府 = 裏政府 = ディープステイトというわけです。 ◆ディープステイトは米国の軍事、経済、金融、メディア、なによりも政府を支配しています。構成員は軍産複合体、国際金融資本、そしてグローバルに展開する多国籍企業。
及川幸久「そして第三次世界大戦が仕組まれた」(ビジネス社) 2023年2月1日(水)
<その2> ◆ 「 新聞記事に賛同する人間が増えるほど日本は危うくなる 」 こう述べたのは、松本清張です。メディアに洗脳されるほど怖いものはない。真実、真相をつかんで、自分の頭で考えることが重要なんだというわけです。 ◆ネットにアクセスすると、いきなり 「 ウクライナに募金を 」 という広告が出てきてびっくり。 この募金の行方は? 武器の購入です。だれか喜ぶのでしょうか? 武器商人です。武器商人=軍産複合体、すなわちディープステートなのです。
及川幸久「そして第三次世界大戦が仕組まれた」(ビジネス社) 2023年1月31日(火)
おどろおどろしいタイトルの本だが内容はそれなりにしっかりしている。 以下、本書よりインパクトのあるくだりを要約して御紹介したい。 <その1> ◆当事国ウクライナのゼレンスキー大統領は、新任二年で1,000億円もの蓄財をなくしていますが、不審に思うオランダの政党から情報公開を求められてもなしのつぶて。それでいてオランダでもビデオ演説しては盛んにカネの無心をしていました。
池田清彦「SDGsの大嘘」(宝島社新書) 2023年1月24日(火)
<その19> ◆本来最も日本に向いているのが、石炭による火力発電だ。日本には二酸化炭素の排出量を従来より抑える高機能な火力発電施設をつくれる独自の技術をもっているが、西側諸国の脱炭素キャンペーンによって完全に 「 宝の持ち腐れ 」 状態になっている。 ◆SDGsの美辞麗句や 「 いいことをして気持ちがいい 」 という快感に惑わされることなく、この壮大な詐欺話の本質を見極めてほしい。ウクライナ支援と同じで、気がついたときには後戻りができない破滅の道を突き進んでいることになるかもしれないのだ。
池田清彦「SDGsの大嘘」(宝島社新書) 2023年1月23日(月)
<その18> ◆世界的には農業といえばかんがい農業が一般的だが、実は、これは 「 持続可能なものではない 」 のである。なぜかというと、川の水を引いて畑に水を撒いていると、最初のうちは作物がたくさんとれるのだが、排水が十分でないと水が蒸発したあとに、水分中のごく微量な塩分が地表面に残り、これが積もり積もって、徐々に作物が育たなくなってしまう。いわゆる 「 塩害 」 が起こるからだ。 ◆地震大国の日本にとって、原発の稼働はメリットよりもデメリットのほうがはるかに大きい。太陽光発電は、太陽光パネルを敷き詰めることで、日本の農地や山村を破壊して食料自給率の低さをさらに悪化させてしまう。海中の稜線の風力発電にしても、結局は風下の生態系に影響を及ぼすのでそんなに大量に設置できるものではない。
池田清彦「SDGsの大嘘」(宝島社新書) 2023年1月20日(金)
<その17> ◆科学的にみれば二酸化炭素というのは、一定以上増えると地球の気温上昇に及ぼす影響はさほどないということがわかってきている。 ◆それは布団をイメージしてもらえばいい。寒いからといっていくら布団を重ねたって、一定以上になるとなかの暖かさはそんなには変わらないことは誰でもわかる。
池田清彦「SDGsの大嘘」(宝島社新書) 2023年1月19日(木)
<その16> ◆革命だとかクーデターだとか言われることもあるが明治維新だって、実は薩長など一部武士たちが成し遂げたことだし、戦後の民主主義の定着にいたっては、太平洋戦争で無条件降伏したのち、GHQの指示に従った結果である。どれも一部の人たちが決めたことについて、一般国民は素直に従っているだけだ。 ◆世界中にはSDGsがインチキ臭いとか、人為的地球温暖化はデタラメだという問題提起をしている科学者や専門家は山ほどいて、本当は日本にもそれなりにいる。ただ、そういう人たちは、ほとんどマスコミで取り上げられることがない。
池田清彦「SDGsの大嘘」(宝島社新書) 2023年1月18日(水)
<その15> ◆日本では一度できてしまったシステムは、それがどれほど不条理で非科学的でも、そして多くの人々が犠牲になってもなかなかやめられない。それどころか必死になって守り抜こうとしてしまう。 ◆なぜこうなってしまうのかというと、ひとつには日本人は自分たちで社会システムをひっくり返した成功体験が皆無だということがあるんじゃないかなと思っている。 ◆日本では怒った民衆が為政者を追いつめて処刑するなどというフランス革命のようなことは起きていない。ほかにも日本の民衆が立ち上がって革命を起こして、なんらかの権利や自由を勝ち取ったことは歴史上一度もない。
池田清彦「SDGsの大嘘」(宝島社新書) 2023年1月17日(火)
<その14> ◆そんなふうに長いものに巻かれながら突き進んだ戦争で、死ななくてもいい人たちがたくさん殺されてしまって、最終的には戦争にも負けてしまったわけだから、アホみたいなものだ。 ◆ 「 らい予防法 」 がまさしくこの最悪のパターンであった。1907年(明治40)にできたこの法律のせいで 「 らい病は空気感染するので、患者は療養所で死ぬまで隔離される 」 という政策がとられていたのだけれど、戦後に空気感染などまったくしないことがわかった。普通に考えればこんな非人道的な政策は速やかに撤廃されなければいけないはずだが、なんと感染にまつわる真実がわかってからも隔離政策がとられて、この法律が廃止されたのは1996年だった。さらに廃止したときも、国は謝罪しただけで人生を奪われたらい病患者やその家族へのケアをほとんど行わなかったため、国家賠償請求などの裁判がたくさん行われた。
池田清彦「SDGsの大嘘」(宝島社新書) 2023年1月16日(月)
<その13> ◆人為的地球温暖化はインチキだということをしっかり主張されている日本の研究者のなかに、東大名誉教授の渡辺正さんという光合成の専門家がいる。光合成の専門家からすれば温度が高くて水がたくさんあって、しかもそこに二酸化炭素がいっぱいあると、ものすごく植物の生産性が高くなるので、温暖化はむしろ好ましいというのは当然の帰結だ。 ◆私が生まれたときはすでに戦争は終わっていたけれど、父親なんかに話を聞くと、当時は口には出さないけれど、腹のなかで 「 戦争なんかやりたくない 」 って思っていた人はたくさんいたという。でもまわりがみんな戦争に賛成しているなかで、反対などと言って 「 非国民 」 と叩かれるのは嫌だから、とりあえず従っていた。
池田清彦「SDGsの大嘘」(宝島社新書) 2023年1月13日(金)
<その12> ◆原発は維持費やリスクを踏まえれば、ちっともサステナブルじゃないし、むしろ社会的なデメリットのほうが多いというのは、賢い人たちはとっくに気づいていて、日本と同様に地震が多い台湾などは 「 もう原発はやめる 」 と言っているし、地震大国のイタリアにも原発はない。 ◆そもそもソーラーパネルなんて置かないで、空いている土地があるのなら、そこにたくさん木を植えておけば、その分だけ二酸化炭素を吸収するわけだし、生物の多様性だって守れる。
池田清彦「SDGsの大嘘」(宝島社新書) 2023年1月12日(木)
<その11> ◆たとえば、欧州ではガソリン車を厳しく規制して、どんどん電気自動車を広めているけど、電気自動車にはバッテリーやハイテク機器がたくさん必要であって、それを大量に製造すれば当然その過程で二酸化炭素はめちゃくちゃ出ていくわけだ。 ◆原発というのは、うまく稼働している間は石炭と同じくらいコストの安いエネルギーなのだが、何か事故が起きたときは、ほかの発電施設とは比べものにならないほど甚大な被害が出る。しかもメンテナンスや廃棄物の処理にもそれなりの費用と技術力が必要だ。
池田清彦「SDGsの大嘘」(宝島社新書) 2023年1月11日(水)
<その10> ◆こういう 「 資源を持たざる国 」 が 「 資源を大量に持っている国 」 に対して立場が弱くならず、むしろ優位になるためにはどうすればいいのか。最も簡単で効果的なのは 「 ゲームのルールを自分たちに有利なものへと変えること 」 だ。 ◆エネルギーでいえば、石油や石炭、シェールガス・オイルをたくさん持っている国はもう時代遅れで、ほかのエネルギーに力を入れている国のほうが将来有望だというふうに 「 世界の常識 」 を変えてしまう。それこそがヨーロッパの進めている太陽光、風力、水力という再生可能エネルギーへのシフトの価値を高めていく戦略なのだ。
池田清彦「SDGsの大嘘」(宝島社新書) 2023年1月10日(火)
<その9> ◆MDGs(ミレニアム開発目標)は、あくまでも途上国を対象にしたものであって、これは正直先進国がお金を出し合って途上国に投資をすれば、ある程度のところまでは目標を達成できる。 「 環境問題 」 というややこしいテーマも盛り込まれているけれど、基本的にMDGsで掲げられている目標はインフラ整備だからだ。 ◆なぜ、EUがそんなことをするのか。それはズバリ自分たちが生き残るためだ。日本にはエネルギー資源がないとよく言われるけれど、実はヨーロッパも同じくエネルギー資源に乏しい。
池田清彦「SDGsの大嘘」(宝島社新書) 2023年1月6日(金)
<その8> ◆これが世界の 「 真実 」 というのは、日本と同じように人口が減り続けている欧州をみればわかる。イギリスやドイツなどは続々と移民を受け入れている。これは人道支援的な観点に基づいた政策ではなく、国内に安い労働力が減ったからだ。アメリカがいつまでも世界一の経済大国の座をキープできているのは、今も移民を受け入れて人口が増え続けているからだ。
池田清彦「SDGsの大嘘」(宝島社新書) 2023年1月5日(木)
<その7> ◆グローバル企業というのは、基本的に安い商品をたくさんつくって、世界中の消費者に向けて売っていくというビジネスモデルであって、そのためには 「 安い労働力 」 が欠かせない。じゃあ、どうして労働力が安いのかというと、途上国などで人口が増えているからだ。人がたくさんいるから、貧しい人や子供たちを安い賃金でこき使うことができる。
池田清彦「SDGsの大嘘」(宝島社新書) 2023年1月4日(水)
<その6> ◆昔、アサリは熊本だけでなく全国各地でとれていた。2020年、最盛期の2%くらいの4,305トンまで減った。国産アサリはもはや絶滅危惧種となっているのだ。 ◆ 「 SDGsが大切だ 」 「 サステナビリティを目指すんだ 」 と言うのなら、まず食糧危機に備えて、日本人が飢え死にしないように国内自給率を上げていくほうが日本にとって本当の意味でのSDGsになるはずだ。 ◆人間の頭数を限りある資源に合わせて、減らしていけば余計な自然破壊も生態系の破壊も起こらない。ある意味 「 究極のSDGs 」 だと言っていいかもしれない。
池田清彦「SDGsの大嘘」(宝島社新書) 2022年12月29日(木)
<その5> ◆穀物生産量が飛躍的に増えているというのは、狭い農地でたくさんの収穫量を得られるようになったからである。つまり、農業の効率が上がっているのだ。 これは作物を守るための殺虫剤が強力になったこともあるが、何よりも大きい要因は、害虫や天候不順などにも強い品種改良や、遺伝子組み換え作物が普及して農業の手間が省けたことである。 ◆日本は世界のなかでも珍しく養殖よりも実際の漁業が占める割合のほうが多い。比率にすると養殖は25%で漁業が75%くらいである。それで漁獲量が減少しているということは、船を海に出すような漁業ではどんどん魚がとれなくなっているからだ。
池田清彦「SDGsの大嘘」(宝島社新書) 2022年12月28日(水)
<その4> ◆私たちが利用できるエネルギーのなかで、採掘可能な化石燃料と原発を動かすためのウランの埋蔵量と、利用可能な地熱以外はすべて太陽の活動に依存している。 ◆つまり、再生可能エネルギーというのは、実は太陽エネルギーの奪い合いなのである。 ◆79億もの人があふれるこの地球で、すべての人の貧困や飢餓を解決しようとすれば、今以上にたくさんの炭水化物が必要になる。しかし、それには 「 上限 」 があるので、足りない分はほかの動植物から収奪しなくてはいけない。当然、陸や海の生物多様性は減少することになる。 「 飢餓をゼロに 」 という目標と、 「 海の豊かさを守ろう 」 「 陸の豊かさも守ろう 」 という目標はトレード・オフの関係にあるのだ。
池田清彦「SDGsの大嘘」(宝島社新書) 2022年12月27日(火)
<その3> ◆そこに加えて、このSDGsというものが胡散臭いのは、17もの目標を並べているわりには、地球の持続可能性を考えるうえで、およそ欠かすことのできない目標が含まれておらず、その解決策にもまったく言及していないことだ。 それは人口問題である。 ◆世界の人口は20世紀初頭には約16億5000万人だったが、この100年で爆発的に増えて、現在は79億人まで膨れ上がっている。長期的には減少に転じるという話もあるが、発展途上国も多いので、しばらくは増え続けていくだろう。
池田清彦「SDGsの大嘘」(宝島社新書) 2022年12月26日(月)
<その2> ◆「地獄への道は善意で敷き詰められている」 このヨーロッパのことわざは、最初は善意から始まった社会運動や、誰もが反対できないような理想的なスローガンを掲げた政策が、のちに多くの人々の生活を苦しめる悲劇的な結末を生むときに用いる。 ◆素晴らしい話をどれだけ語られても、それがまったく実現できないおとぎ話ならば、それは「嘘」と変わらない。私がSDGsは嘘だという理由はここにある。
池田清彦「SDGsの大嘘」(宝島社新書) 2022年12月23日(金)
「 脱炭素は欧州のペテン 」 というのが本書のサブタイトルである。 以下、本書よりインパクトのあるくだりを要約して御紹介することとしたい。 <その1> ◆本当はプラスチックを燃やしてしまえば、海洋汚染は起きないので、レジ袋有料化は無意味なのだけれどね。
大石あきこ「維新ぎらい」(講談社) 2022年12月16日(金)
<その9> ◆私は少人数学級を実現する活動とともに、すべての子どもが普通学級で学べる公教育(インクルーシブ教育)の実現を目指す活動に関わっています。 ◆岸田政権の掲げる 「 新しい資本主義 」 は、これまでの新自由主義路線の延長をケチな装飾でごまかしているにすぎず、維新はそうしたケチな装飾よりも 「 これまで来た道を貫け。国際競争に打ち勝て。解雇規制の緩和だ 」 と逆方向から政権を揺さぶろうとしています。
大石あきこ「維新ぎらい」(講談社) 2022年12月15日(木)
<その8> ◆吉村氏は2015年大阪市長選に立候補するために、衆議院議員を辞職した際、自身もたった1日で100万円を受け取っていた過去を棚に上げ、 「 身を切る改革 」 の一環として勇ましくアピールしていたのです。 ◆日本の政治についても同じことを感じます。私は政治を良くするには何をさておき市民が政治活動に関心が持てる時と心の余裕が必要だと感じます。 ◆日々の生活の中に、もう少しその余白があれば世の中は変わっていくと信じます。今の日本社会は、みんなが生きるのに汲々として、政治参加以前の状態にあると思うのです。これは権力者にとって、とても都合のよい状況です。
大石あきこ「維新ぎらい」(講談社) 2022年12月14日(水)
<その7> ◆ 「 身を切る改革 」 に加え、維新がテレビでよく言う 「 二重行政の解消 」 とは実は市民に必要な身近な行政サービスを打ち切ることでした。 ◆結果としては、 「 二重行政の問題 」 ではなく 「 ムダなビル建設や開発はダメ 」 という問題です。それに対して、1つならムダなビルを建てても良いとするのか、何とも維新流です。 「 だまし絵 」 で問題の構図を錯覚させ、斜め上の代替案をいくつも出してくるのです。
大石あきこ「維新ぎらい」(講談社) 2022年12月13日(火)
<その6> ◆ロシアのウクライナ侵攻に乗じて、 「 核共有 」 や防衛費増額を主張する人たちは、米中戦争のアメリカ側の当事国になるシナリオを描いています。 「 この国を守る 」 と言って国民をだまし、若者を戦争に駆り立てようとしているのです。 ◆だからこそ、 「 この国を守るとは、あなたを守ることから始まるのだ 」 と叫び、戦争当事国になることを拒否して、所得の向上と安定した仕事、国内生産の復活を求めることが、今、必要なのです。
大石あきこ「維新ぎらい」(講談社) 2022年12月12日(月)
<その5> ◆交渉して要求が勝ち取れなかったら決裂すればいいのに、 「 不当だがこれで終結する 」 などと毎回のように声明を出すので、しっかり決裂せよ!と、つきあげる末端組合になっていき、幹部からは鼻つまみものになりました。 ◆大石あきこは返し技一本を絶対決めたろって、手ぐすね引いて待ち構えているっていう感じがすごくある。政治の世界で何かを実現したいと考えた時、どうしても闘いになる。今は維新が一番強く、それとの闘いの局面で、ただ正論を述べているだけの人だと全然手応えがない。だけど大石あきこは常にかかってくる相手に対して、一本決めるために待ち構えている。だから僕らはある意味ワクワクしながら、ついていけるっていうところがある。
大石あきこ「維新ぎらい」(講談社) 2022年12月9日(金)
<その4> ◆その人は 「 あれはある意味でのアメリカへの怒りの鉄槌じゃないか 」 と言いました。 そしていろいろ本を読むようになり、アメリカがこれまで世界中でやってきた恐ろしいまでの、覇権主義と軍事介入について知りました。アメリカ政府の言うことが必ずしも正義ではない。むしろ、疑う必要があると強く思うようになったのです。 ◆労働組合というと、どんな印象を持たれるでしょうか。ほぼ死滅してしまったというイメージか、あるいは、権利ばかり主張している古い世代の人たちという印象でしょうか。私はあえて 「 労働者が自分たちの権利を要求することこそが社会を前に動かす 」 という点を強調しておきたいと思います。
大石あきこ「維新ぎらい」(講談社) 2022年12月8日(木)
<その3> ◆進歩的な大人のアドバイスに私の自治や権利への意識はどんどん成長していきました。 ◆政治の世界に足を踏み入れると闘争心が湧くのですが、権力者以外の誰かと政治以外のことでバトルしたいとは思えないんです。 ◆父とマルクスの資本論について話をした時も 「 マルクスの理論はおそらく誰も反証できないだろう。でも、だからと言って現実がそのようになるとは限らない。世の中の多くの人が考えていることと違うことを考えてしまうとしんどいで 」 と諭されました。
大石あきこ「維新ぎらい」(講談社) 2022年12月7日(水)
<その2> ◆私が入庁した2002年当時、世の中にはすでに 「 公務員は楽をしている 」 というマイナスイメージが浸透していたように思います。入庁前は私自身も似たような印象を漠然として抱いていました。 しかし、実際に働き始めると、ほとんどの職員は想像していたよりずっと勤勉で我慢強く、学生時代の私の認識がいかに偏ったものであるかを思い知らされました。 ◆母は母で校則への不満などを話していたら 「 ルールは変えられるもんなんやで 」 と言ってくれました。
大石あきこ「維新ぎらい」(講談社) 2022年12月6日(火)
サブタイトルは 「 維新と橋下徹氏の圧力に私が抗う理由 」 となっている。 以下、本書よりインパクトのあるくだりを要約して、御紹介していきたい。 <その1> ◆橋下氏のケンカの目的は、度しがたいものがありますが、ケンカの仕方については、 「 ほんまに勝ちたかったら、絶対にひるんではいけない 」 というものであり、野党は少しは見習ったらどうだと思っています。
鮫島浩「朝日新聞政治部」(講談社) 2022年10月28日(金)
<その23> ◆私は自分自身が問われていると感じていた。このまま会社員として生きていくのか、自立したジャーナリストとして生きていくのか。 「 吉田調書 」 で処分を受けた時、私は自分自身がサラリーマンであることを思い知った。ここで 「 会社の論理 」 を受け入れて、自らの発信を控えるようでは、もはや自立は不可能だ。そもそもサラリーマンであるとジャーナリストであることは相容れないのかもしれない。 ◆自由な社風はすっかり影を潜めた。2014年の 「 吉田調書 」 事件後、社内統制は急速に厳しくなり、今や大多数の記者が国家権力を批判することにも朝日新聞を批判することにも尻込みしている。息苦しい会社になってしまった。
鮫島浩「朝日新聞政治部」(講談社) 2022年10月27日(木)
<その22> ◆それでも私は一切ブロックしないことにした。他者を批判する以上、自分への批判も受け入れる。それが当たり前だと思った。 ◆新聞記事への批判を始めるとフォロワー数はぐんぐん伸びた。会社はそれを見逃さなかった。上司から 「 編集局室が君のツイッターに怒っている 」 などと自制を促された。私は 「 これは職務外活動です 」 と受け流した。 ◆ 「 吉田調書 」 以前の朝日新聞はもっと寛容だった。私は朝日新聞の記事を社内外で公然と批判してきたし、遠慮せず異論を唱えてきた。上司もそのような現場のエネルギーを社内改革の原動力にしようという姿勢があった。いつの間にこんな抑圧的な会社になってしまったのだろう。
鮫島浩「朝日新聞政治部」(講談社) 2022年10月26日(水)
<その21> ◆毎朝起きて新聞を読むのをやめた。まずはツイッター界の言論を読み漁り、ネットサーフィンをしてニュースを集めて、のちに、批判的な眼差しで朝日新聞に目を通してみたのである。 ◆私は朝日新聞の記事がネット情報に比べて速さにも広さにも深さにも劣っていることを実感した。 社員は朝日新聞をタダで購読していたが毎月4000円超のお金を出してもらう価値があるのか疑わしかった。新聞記者には読者にお金を払ってもらっているという意識が薄い。私自身もそうだったと反省している。
鮫島浩「朝日新聞政治部」(講談社) 2022年10月25日(火)
<その20> ◆そうか朝日新聞はこれに屈したのだ。ネットの世界からの攻撃に太刀打ちできず、ただひたすらに殴られ続け、 「 捏造 」 のレッテルを貼られた。それにもかかわらず朝日新聞はネット言論を軽視し、見下し、自分たちは高尚なところで知的な仕事をしているというような顔をした。 ネット言論の台頭から目を背けた。それがネット界の反感をさらにかき立て、ますますバッシングを増幅させたのだ。
鮫島浩「朝日新聞政治部」(講談社) 2022年10月24日(月)
<その19> ◆特別報道部の一部の記者は、社員集会で 「 吉田調書を取り消すべきではない 」 「 記者を処分すべきではない 」 「 最大の失敗は池上コラム問題だ 」 などと擁護してくれたが、その動きは社内に広まらなかった。朝日新聞の大半は、木村社長が発表した内容をそのまま受け入れ、私たち3人こそ朝日新聞を奈落の底に突き落とした 「 戦犯 」 とみなしているように思えた。 ◆公安は監視対象を見失うと自殺情報を流して、所属組織に生存確認させるんだよ。それが手っ取り早いから。いつもの手口だ。君は監視対象なんだよ。
鮫島浩「朝日新聞政治部」(講談社) 2022年10月21日(金)
<その18> ◆朝日新聞社は私たちを守るどころか放置した。ネットにあふれる 「 捏造記者 」 などの名誉棄損に対して、抗議や撤回を求めることなく、私たち家族を含めて標的にされることに何の対応もせず黙殺した。 会社上層部にとっては、世間のバッシングが経営陣ではなく、取材班に向かうほうが都合がよかったのかもしれない。実際に木村社長が主導した 「 慰安婦 」 「 池上コラム 」 の失敗は 「 吉田調書 」 へのバッシングで希薄された。 ◆新聞社が現場の記者をここまで露骨に切り捨てることは夢にも思わなかった。私は木村社長が記者会見した2014年9月11日に朝日新聞は死んだと思っている。
鮫島浩「朝日新聞政治部」(講談社) 2022年10月20日(木)
<その17> ◆木村伊量社長が吉田調書報道を 「 誤報 」 と断じて取り消し、 「 関係者を処罰する 」 と表明したことで歴史の闇に埋もれようとしていた吉田調書を独自入手して白日の下にさらした2名の記者は、 「 捏造記者 」 のレッテルを貼られ、世間から激しくバッシングされた。デスクである私も含めて、私たちの個人情報はもれ出し、ネット上でさらされ、週刊誌に追いかけられた。まるで 「 公開処刑 」 のようであった。木村社長が正式に辞任する公示まで数か月にわたりそれは続いた。
鮫島浩「朝日新聞政治部」(講談社) 2022年10月19日(水)
<その16> ◆店内に入った途端、その場にいた社員たちが私を一べつし、そそくさと目を逸らした。誰もが私を避けているように感じた。わずか4か月前、私は吉田調書の第一報を報じた日に、このローソンで握手攻めにあったのだ。いまは声をかけてくれる人は、誰一人いない。私はこの時はじめて自らの 「 転落 」 は想像以上に厳しいものなると実感した。
鮫島浩「朝日新聞政治部」(講談社) 2022年10月18日(火)
<その15> ◆ 「 吉田調書 」 報道が取り消された後、木村・宮崎記者はほどなくして退社した。私も遅れて、2021年に退社した。今や朝日新聞に取材源を知る人はいない。朝日新聞が国家権力に屈したジャーナリズム史に残る事件だったが、取材源の秘匿という最低ラインは死守することができた。 ◆3年にわたって東電の隠蔽体質と戦ってきた2人には 「 ついに東電が隠蔽していた事実を突き止めた 」 という思いがあったのだろう。 「 吉田所長の待機命令に反して所員の9割が第一原発から離脱していた 」 という事実は、吉田所長の 「 東日本壊滅 」 発言よりも重大であり、 「 吉田調書入手 」 の第一報として記事化すべきであるというのが彼らの主張だった。
鮫島浩「朝日新聞政治部」(講談社) 2022年10月17日(月)
<その14> ◆取材源の秘匿は私たち報道に携わる人間が、もっとも守らなければならないことだ。吉田調書のような国家機密を暴くスクープの場合は、特に国家権力は総力をあげて情報の流出元を探る。徹底した 「 犯人探し 」 が行われることが予想された。 ◆今の新聞が読者から見放されている最大の要因は、 「 怒り 」 や 「 悲しみ 」 といった記者の心の震えや息づかいがまったく伝わらず、客観中立の建前に逃げ込んで、差し障りのない傍観的な記事を量産していることにあるのではないか。国家権力が隠蔽してきた 「 吉田調書 」 を入手して歴史の検証にさらすことができたのは、原発事故の真相を隠蔽してきた東京電力や政府に対する木村・宮崎記者の 「 怒り 」 があったからこそだ。
鮫島浩「朝日新聞政治部」(講談社) 2022年10月14日(金)
<その13> ◆私たち特別報道部は、記者クラブに入っていません。使命は他社との競争に打ち勝つことではなく、埋もれた事実を発掘することです。新聞社は競争することも必要ですが、社会の不公正に対しても手を取り合って挑むことも必要です。 ◆木村社長に辞任を迫る声が社内外から湧き上がるなかで、私が出稿した 「 吉田調書 」 報道を取り消す決定を主導したのは、この持田常務だったのである。
鮫島浩「朝日新聞政治部」(講談社) 2022年10月13日(木)
<その12> ◆私たちは、@警察や検察を含む当局は回らない Aたれ込みは扱わない ―――二大原則を決めた 当局情報もたれ込み情報も所詮は他の誰かに取材テーマを設定される受動的なものだ。新聞社の調査報道は 「 端緒 」 を重視するあまり、主体的にテーマを設定して深掘りするジャーナリズムの基本を忘れていた。これでは世論操作に利用されるだけである。 ◆社会部の警戒感はさらに強まった。社会部の調査報道では、警視庁担当記者と連携して警視庁に情報を持ち込み、その代わりに 「 あす逮捕へ 」 という特ダネをリークしてもらう裏取引が行われる。私たちはそのようなことはしたくなかった。
鮫島浩「朝日新聞政治部」(講談社) 2022年10月12日(水)
<その11> ◆朝日新聞の社長職は政治部と経済部が入れ替わりで担ってきた。記者数で多いのは社会部だが経営や編集の実権は政治部と経済部が握ってきた。 ◆朝日新聞には役所以上に内向きで足を引っ張り合う官僚体質がある。私が敬愛していた曽我さんの何かが変わった。快活さが影を潜め、言葉の節々に会社組織や人間への不信がにじむようになった。
鮫島浩「朝日新聞政治部」(講談社) 2022年10月11日(火)
<その10> ◆政治家は権力闘争を有利に進めるため政治記者を使って日々「情報戦」を仕掛けている。政治家に食い込んだと思ってうつつを抜かしていると、気づかぬうちに 「 情報操作の手先 」 と化す。 ◆闘争心の激しい政治家ほど自らの政敵を 「 嫌いです 」 と言われると悪い気はしない。 「 あなたが好きです 」というお世辞よりも政敵について 「 あの人は〜が足りないんですよ 」 と的確な批判を言われるほうが親近感を抱くものだ。
鮫島浩「朝日新聞政治部」(講談社) 2022年10月7日(金)
<その9> ◆国家機密を圧倒的に多く握るエリート官僚に気に入られて、特定の情報をごっそりもらう取材より、政治家同士の権力闘争の渦中に割り込んで幅広い情報を様々なルートから収集して分析する取材のほうが私には向いているらしかった。 ◆経済部の記者が私を担当しているのですが、誰も記者会見以外で取材してくれないんです。経済部は大臣より官僚を重視する。大臣が何を言っても事務次官が言うことを信じる。
鮫島浩「朝日新聞政治部」(講談社) 2022年10月6日(木)
<その8> ◆外務省を心の底から憎んだ。外交官って一体なんなんだ。国民の税金で豪勢に社交し、政治記者に連日のようにおごられ、情報を振りまいて楽しんでいる。 ―――当時の私にはそう映った。 ◆ある外交官は 「 外交に 『決着』 はないんです。どんな合意をしても必ず課題は残る。外交は 「 決裂 」 か 「 継続 」 のどちらかなのです。 「 決裂 」 したら国交断絶か戦争になる。これは外交の失敗です。 「 継続 」 こそ外交の成功なんです。 」 と言った。
鮫島浩「朝日新聞政治部」(講談社) 2022年10月5日(水)
<その7> ◆留学経験のある国際派エリート官僚がひしめく財務省で細川興一氏は異例の 「 英語の話せない事務次官 」 だった。 中央省庁再編で「大蔵省」が「財務省」に変わったことを根に持っている。 「 朝日新聞も夕日新聞になればいいんだ! 」 と私にしばしば当たり散らした。 ◆ワインをあけながら話す外務官僚の話は、当時の私には机上の空論のように聞こえた。アメリカや中国の動きをアカデミックに解説してくれるのだが、まるで大学の講義のようで結局はアメリカに追従しているだけではないかと思うことが多かった。
鮫島浩「朝日新聞政治部」(講談社) 2022年10月4日(火)
<その6> ◆権力とは「経世会、宏池会、大蔵省、外務省、そしてアメリカと中国だよ」と昔は言われた。 ◆私は自民党の同期で政務官になったのがいちばん遅かった。いちばん出世が遅かったのですよ。なぜだかわかりますか!私が清和会だからです。日本の政治はずっと経世会が牛耳ってきたんです。経世会は最初に宏池会に相談する。次に社会党に根回しする。社会党がNHKと朝日新聞にリークする。我々清和会はNHKと朝日新聞の報道をみてはじめて、何が起きているかを知ったのです。これが日本の戦後政治なんですよ!
鮫島浩「朝日新聞政治部」(講談社) 2022年10月3日(月)
<その5> ◆警察は記者同士の競争意識につけ込み、警察に批判的な記者には特ダネを与えない。他の記者全員にリークし、批判的な記者だけ 「 特オチ 」 させることもある。記者たちはそれに怯え、従順になる。 こうした環境で警察の不祥事や不作為を追及する記者が出ることは奇跡に近い。 ◆政治家への 「 密着 」 は 「 癒着 」 として切り捨てられる時代である。もちろん癒着はいけない。だが政界の内実を知り尽くす政治記者が激減したのも事実だろう。政治家の発言をただ報じるばかりの新聞各紙をみれば明らかだ。 政治家と距離を置いて表面的な事象を伝えるだけで政治報道の役割を果たしたといえるのか。私を政治部に導いた橘さんはその記者人生を通じて 「 政治記者はどうあるべきか 」 という課題を私に投げかけた。
鮫島浩「朝日新聞政治部」(講談社) 2022年9月30日(金)
<その4> ◆迷走はここから始まる。 「 鉄 」 に限らずビジネスの世界で生きる将来の自画像がまったく浮かんでこなかったのだ。 ◆内定を断った会社の中で、唯一 「 今からでもいいよ 」 と答えてくれたのが朝日新聞社だった。 ◆新聞記者は人の人生を書く。所詮は人の人生だ。主役になれない。我々は自分自身が人生の主役になる。新日鉄に入って一緒に主役になろう。
鮫島浩「朝日新聞政治部」(講談社) 2022年9月29日(木)
<その3> ◆木村社長が 「 吉田調書 」 報道を取り消した2014年9月11日は 「 新聞が死んだ日 」 である。日本の新聞界が権力に屈服した日としてメディア史に刻まれるに違いない。 ◆朝日新聞の東京本社や京都支局にうかがって現役の新聞記者にも会ったが興味のわく人はいなかった。キャリア官僚と同じ匂いがした。 ◆私は朝日新聞の内定を断った。代わりに選んだのが新日鉄である。この会社は会う人会う人が魅力的だった。私は新日鉄にのめり込んでいった。・・・キャリア官僚や新聞記者より輝いて見えた。
鮫島浩「朝日新聞政治部」(講談社) 2022年9月28日(水)
<その2> ◆朝日新聞の実権を握ってきたのは政治部だ。特別報道部は、政治部出身の経営陣が主導して立ち上げた金看板だった。私は政治部の威光を後ろ盾に特別報道部デスクとして、編集局内で遠慮なく意見を言える立場となり紙面だけではなく人事にまで影響力を持っていた。それが一瞬にして奈落の底へ転落したのである。 ◆私は27歳で政治部で着任し、菅直人・竹中平蔵・古賀誠・与謝野肇・町村信孝ら与野党政治家の番記者を務めた。29歳で政治部デスクになった時は、「異例の抜擢」と社内で見られた。その後、調査報道に専従する特別報道部のデスクに転じ、2013年に現場記者たちの努力で福島原発事故後の除染作業の不正を暴いた。この「手抜き除染」キャンペーンの取材班代表として新聞協会賞を受賞した。
鮫島浩「朝日新聞政治部」(講談社) 2022年9月27日(火)
朝日新聞の販売部数は20年前の半分程度にまで落ちている。その半面、朝日を辞めた人たちの書いた本には面白いものが多い。そのうちの一つが本書である。 以下、本書よりインパクトのあるくだりを要約して紹介していきたい。 <その1> ◆巨大組織が社員個人に全責任を押し付けようと、上から襲いかかってくる恐怖は、体験した者でないとわからないかもしれない。それまで笑みを浮かべて私に近づいていた数多くの社員は、蜘蛛の子を散らすように遠ざかっていった。
樋田毅「彼は早稲田で死んだ」(文芸春秋) 2022年9月26日(月)
<その21> ◆事態が変化したのは1994年に奥島孝康総長が就任してからだった。「革マル派が早稲田の自由を奪っている。事なかれ主義で続けてきた体制を変える」と就任後に表明し、翌95年に商学部自治会の公認を取り消した。その時点まで、商学部は約6000人の学生から毎年1人2000円ずつの自治会費を授業料に上乗せして集め、革マル派の自治会に渡していた。 ◆奥島総長は革マル派から脅迫、吊るし上げ、尾行、盗聴など様々な妨害を受けたが、これを屈することなく所期の方針を貫いた。 川口君の虐殺事件から実に25年の歳月を経て、早稲田大学は革マル派との腐れ縁を絶つことができた。あまりにも遅かったが、奥島総長の決断と覚悟がなければ、癒着体制は今も続いていたに違いない。
樋田毅「彼は早稲田で死んだ」(文芸春秋) 2022年9月22日(木)
<その20> ◆国家だって考えようによっては限りない暴力ですよ。日本にはいまだに死刑制度が存続し、国民から支持されているじゃないですか。日本に限らず、 「 正しい暴力 」 が世界各地でばっこしている。様々な社会問題が世の中にあるけれども、 「 正しい暴力 」 という考え方が常にその根源にはあるような気がします。 ◆人間の本質というのは残酷で、暴力的で、そして利己的で競争的でというのが、いまだに世界の一番人気の哲学なんですよ。
樋田毅「彼は早稲田で死んだ」(文芸春秋) 2022年9月21日(水)
<その19> ◆ただ、いろんな経験をされた今だからこそ、当事者の視点で学生運動とは何だったのかを未来に向けて語っていただきたいんです。川口君の事件が大きなきっかけとなって、政治セクト間の内ゲバもさらに激化して多くの学生が殺されたわけですよね。 ◆理屈っぽいと思われるかもしれませんが、そこを情緒だと片付けられてしまうと、僕はどうしても納得できないんです。革マル派に限りませんが、それぞれの政治思想や理念を実現するための手段として暴力を正当化することは間違いです。
樋田毅「彼は早稲田で死んだ」(文芸春秋) 2022年9月20日(火)
<その18> ◆当時大岩さんたちの暴力に怯えていた一般の学生が私も含めて多くいたわけですよね。大岩さんは中核派に襲撃を受けたときのことを、恐ろしくて夢にまで見たとおっしゃっていましたが、僕にもその気持ちはよくわかります。それは革マル派に襲われて、鉄パイプでメッタ打ちにされたときのことをこれまで何度も夢に見て、恐怖の記憶がいまでも心の傷になっているからです。 ◆そのことについては、僕が直接やっていなかったにしても、僕自身の行動が何らかの形で関係していたわけですから、ここで樋田さんにお詫びします。許してください。
樋田毅「彼は早稲田で死んだ」(文芸春秋) 2022年9月16日(金)
<その17> ◆謝罪とは言わないけれど、なぜあの事件が起きて、川口君が死に至らしめられなくてはならなかったのか。あるいはあの事件の重みというのか、その辺りについて、当時組織の幹部であった大岩さんからもっとしっかりと語ってほしかったという思いが残っています。 ◆自分の関わったそういう事態の一つ一つについては、ある意味もう取り返しがつかないんです。でも僕には責任がないということにならない。まずなかったことにしない。そして、何らかの形で応答していくことを諦めてはいけないと思います。どう応えることができるかという問いと向き合っていなければならない。人間が生きていくというのは、そういうことだと思っています。
樋田毅「彼は早稲田で死んだ」(文芸春秋) 2022年9月15日(木)
<その16> ◆自分はもう人生の表舞台には出ないというその考え方自体はわかります。そういう美学があってもいいんじゃないですか。それぞれの生き方があるわけだから。ただ、それで責任を取ったことになるのかといえば、僕は責任なんてそもそも取りようのないものだと思っているんです。責任というのも人間が作った一つの理屈じゃないですか。 ◆確かに理屈かもしれませんが、過去があって現在があるわけですよね。人はそのつながりの中で生きているのだから、個々の出来事は断絶していませんよね。
樋田毅「彼は早稲田で死んだ」(文芸春秋) 2022年9月14日(水)
<その15> ◆僕はプラグマティズムに惹かれていたのですが、それはすごく簡単に言えば、何事にも絶対的な正しさというものはないという考え方です。正しい人間が間違って悪いことをするのではなく、むしろ僕たちの人生そのものは間違い得るものであり、人間というのはそういう存在なのだと。僕は学生運動での体験をそこに重ね合わせようとしたわけではなくて、今まで僕が無意識に避けていた、考えないようにしていたことを考える筋道があるとそこから学んだんです。だから、僕はスッキリしたと思うんですよ。
樋田毅「彼は早稲田で死んだ」(文芸春秋) 2022年9月13日(火)
<その14> ◆その背景には鶴見俊輔さんが日本に広めたアメリカのプラグマティズムという考え方があるのですが、僕たちはみんな一生の間に何度も転向しながら生きているわけです。これは日々刻々と言ってもいいぐらい。そして僕たちは筋書き通りの辻褄の合う生き方をしているわけではない。 ◆僕は自分の転向についてそこまで深く考えてはいませんでしたが、そこでもある種のトラウマを抱えていたのだと思います。その中の1つは川口君の事件だったかもしれません。直接あの事件に関わってはいませんでしたが、僕はどこかで罪の意識を抱えていたのではないかと思うのです。ただ、それをなるべく意識しないようにして、そこから逃げていたわけですね。忘れることはできないけれど、ちゃんと向き合っていない。そんな時に鶴見さんの言葉に出会って違う筋道での生き方があるかもしれないと思うことができたんです。
樋田毅「彼は早稲田で死んだ」(文芸春秋) 2022年9月12日(月)
<その13> ◆僕が入っていったら、その房を仕切っているヤクザが 「 学生さん 」 と呼んで僕に親切にしてくれて、 「 俺たちは自分の利益のためだけど、この学生さんは社会のために法を犯してここに入ることになったんだぞ 」 なんて紹介してくれるわけです。 ◆樋田さん、因果関係を論理的に考えて、 「 こういう結論が出た 」 というそんなわかりやすいことじゃないんです。これは、その後の僕の思想というか、生き方にもつながっているのですが、人間ってそんなにいつも筋道を立てて考えて、その通り生きているわけでもないでしょう。だから僕は残念ながら、そういう因果関係をうまく説明できないんですよ。
樋田毅「彼は早稲田で死んだ」(文芸春秋) 2022年9月9日(金)
<その12> ◆大岩さんにとっては美学に基づく行動だったのかもしれませんが、革マル派は組織として学生たちの学ぶ自由や政治的な発言の自由を暴力で抑えつけてきました。 大岩さんはどの組織でもやっているとおっしゃいますが革マル派は独善性の度合いが高いから、そこまでやったのではないかと僕には思えるんです。 確かに国家だって、どの党派だって自己の暴力を正当化し組織を守るために手段を選ばないという理屈も成り立ちます。 でも、そこにはおのずと目指すものと、そのための手段がどうあるべきかという自制がある程度は働いている。革マル派はその自制が働いていなかったのではなにのでしょうか。
樋田毅「彼は早稲田で死んだ」(文芸春秋) 2022年9月8日(木)
<その11> ◆僕たちにとって大岩さんの暴力が怖かったのは、大岩さん個人の暴力だけでなく、大岩さんの背後に暴力を肯定し、行動する革マル派という組織があったからです。いろんな内ゲバがあり、すでに何人も殺されていましたから。 ◆いずれにしても、当時僕が暴力を振るっていたのは確かです。さらに言えば、その頃、僕はもっと暴れたいとすら思っていました。組織に入るとすぐに、 「 こいつは高校の時からの叩き上げだ 」 という触れ込みで僕は役職に就かされてしまったんですね。それで組織の表の顔を担わされて、なかなか暴力的な現場の最前線には出してもらえなかったんです。
樋田毅「彼は早稲田で死んだ」(文芸春秋) 2022年9月7日(水)
<その10> ◆僕の高校にも新左翼のセクト、民青、ノンポリなどの様々な立場の人間がいましたが、思想的な背景が違っても自由に議論できる土壌がそこにはありました。 ところが早稲田に入学したら革マル派の自治会系の学生だけが我が物顔でキャンパスを闊歩していて、それ以外の学生には発言の自由がなかった。それどころか共産党系の活動家や教員がキャンパスで革マル派に暴力的に吊し上げられる光景が日常茶飯事でした。 そういう暴力的な学内支配を許せないと思っているところに川口大三郎さんの虐殺事件が起きました。
樋田毅「彼は早稲田で死んだ」(文芸春秋) 2022年9月6日(火)
<その9> ◆僕はこれまで学生運動が自分の原点だと考えたことがないんです。実はその辺りというのは僕の中でもポッカリと開いているエアポケットのようなもので、不思議なことですが。 ◆その意味では、僕は世間でよく言われる挫折感だとか、転向の傷みたいなものをこれまで感じたことがないんです。 ◆バリケードを築くとこっちが主人ですよね。教員が 「 中に入れてくれ 」 と僕たちに頼んできて、バリケードの中に入れると、こっちは成績の悪い劣等生なのに、 「 君たちの気持ちを聞かせてほしい 」 なんてすごくていねいに対応してくれる。そういうのが快感でね。 人間としてリスペクトされているようで、一種の権力を味わえた。
樋田毅「彼は早稲田で死んだ」(文芸春秋) 2022年9月5日(月)
<その8> ◆音楽が人生を変える。そんなことが人生には確かにある。しかし大岩圭之助さん ( 当時の革マル派の一文自治会副委員長 ) は川口君虐殺事件の実行犯として立件された5人には含まれていなかったものの、事件当時の自治会の幹部だった人物である。川口君の事件に触れず、 「 当時はやりの学生運動 」 と気楽な感じで書いていることに私は強い反感を抱いた。 ◆昨年、上梓した 「 最後の社主 」 も朝日新聞社という言論組織の矛盾に目をつぶらないという姿勢で書きました。これまでの人生を振り返ると僕は大学時代の学生運動での経験を原点として生きてきたんだと思います。
樋田毅「彼は早稲田で死んだ」(文芸春秋) 2022年9月2日(金)
<その7> ◆田中敏夫さんは革マル派の人間として、ただ一人出席したあの学生祭の日、会場の埋めた学生たちの怒りと悲しみを一身に受け止めていた。 政治セクトの指導者としての言葉と思考が学生たちの怒りを鎮めるには、何の役にも立たないことを直視せざるを得なかったのではないか。 ◆あの内ゲバが激化した時代の恐ろしさを伝えるには、かつて重大な過ちを犯さざるを得ない状況に追い込まれていた人間の言葉こそ説得力があると考えていた私は、なんとか翻意してほしいとの願いを返信した。その後も2度ほど手紙のやりとりをしたが、Sさんの意志は固く、結局インタビュー掲載の了承は得られなかった。
樋田毅「彼は早稲田で死んだ」(文芸春秋) 2022年9月1日(木)
<その6> ◆大阪本社の編集局長からもこう叱責された。 「 君は闘犬センターの社長を後ろから斬りつけ、返り討ちにあった。記事で相手を斬る時は正面から堂々と切る。それが鉄則だ。 」 ◆言葉で人を斬る。早稲田で理不尽な暴力に対して言葉で闘ってきた私にとって、心に鋭く刺さる指摘だった。言葉は暴力にもなり得る。この失敗を教訓として、私はその後の記者生活を続けていくことになる。 ◆私は怒りで体が震えていた。記者が政治的テロによって殺されるのは国内で初めてのことだった。
樋田毅「彼は早稲田で死んだ」(文芸春秋) 2022年8月31日(水)
<その5> ◆履歴書で革マル派との闘いについても正直に触れていたため、役員たちから当時の様子を根掘り葉掘り聞かれることになり、鉄パイプで襲われた経緯なども説明することになってしまった。 運動について一通り話した後、役員から 「 何のために新聞記者になるのか? 」 と聞かれ、私は 「 社会正義のためです 」 と答えた。その回答が生意気だと思われたのか、すかさず別の役員から 「 君、正義感だけで取材はできないぞ。知事の家に夜討ち朝駆けをする覚悟はあるのか 」 と強い口調で問われた。私は 「 あります 」 と即答したがその時は 「 夜討ち朝駆け 」 という言葉の意味も知らなかった。
樋田毅「彼は早稲田で死んだ」(文芸春秋) 2022年8月30日(火)
<その4> ◆「 でも私にも彼は最後まで心を開くことはありませんでした 」 出所後、田中さんは学生運動から距離を置き、故郷で世捨て人のようにひっそりと生きた。 そして自らの心の内を抱え込んできたものを、誰にも見せることなく、この世を去った。 ◆みなさん、学生運動でヘルメットをかぶりますね。 これは九州の三池炭鉱の労働運動で炭鉱労働者たちが機動隊と対峙する時、自身の身を守るためにヘルメットをかぶったのがそもそもの始まりです。
樋田毅「彼は早稲田で死んだ」(文芸春秋) 2022年8月29日(月)
<その3> ◆革マル派の幹部でもあり、一文の自治会の委員長でもあった田中敏夫さんは、川口君の事件からほぼ1年後の73年11月7日に 「川口君事件に対する私の態度と反省」 と題した 「自己批判暑」 を書いていた。そこには 「暴力には人間の腐敗性に通じる入口が用意されている」 「当時の自治会の責任者として社会的責任を負う」 「学生運動から完全に手を切る」 などとあり、それまでの自分の思想を否定し転向を宣言する内容であった。
樋田毅「彼は早稲田で死んだ」(文芸春秋) 2022年8月26日(金)
<その2> ◆その事件をきっかけに一般の学生による革マル派糾弾の運動が始まり、私もその渦中に巻き込まれていった。私たちは自由なキャンパスを取り戻すため、自治会の再建を目指したが仲間たちが理不尽な暴力にさらされ、私も革マル派に襲われ、重傷を負うことになった。一年数か月続いた闘いの末、運動は挫折し、終えんを迎えた。
樋田毅「彼は早稲田で死んだ」(文芸春秋) 2022年8月25日(木)
これは早稲田の一文、4人の1人が革マル派と言われた時代の悲惨なはなしである。 以下、本書よりインパクトのあるくだりを御紹介していきたい。 <その1> ◆1972年11月8日、第一文学部2年生だった川口大三郎君が革マル派という政治セクトの学生たちによるリンチにより殺された。
池上彰 佐藤優 「激動 日本左翼史 学生運動と過激派 1960-1972」(講談社) 2022年5月31日(火)
<その23> ◆新左翼はロマン主義であるがゆえに現実から遊離していった。ただ、だから新左翼は面白いのも事実なんですよ。リーダーたち一人ひとり個性が豊かで、それぞれの党派にも個性がある。ゆくゆくは日本の中枢から動かせるくらいの知的能力も意欲も備えながら、社会の矛盾を正したい一心で自分の人生全部を棒に振る覚悟でロマンを追求したからです。 ◆これは別の言葉で言い換えるなら「官僚化する」ということです。新左翼の強さであると同時に最終的に命取りになったのは、彼らが官僚化しないことでした。現代の政治は官僚化しないとできないものなのです。
池上彰 佐藤優 「激動 日本左翼史 学生運動と過激派 1960-1972」(講談社) 2022年5月30日(月)
<その22> ◆だから「朝日ジャーナル」のようなものすごく細かい字で難しいことが書いてあるような雑誌を読むことがカッコいいと思われていた。高橋和巳「邪宗門」にしても「朝日ジャーナル」の連載小説であるがゆえにみんなが競って読みたがり、一定の教養を要する難しい小説であるにもかかわらず、ベストセラーになった。そういう時代が全共闘を境にして変わってきましたね。そのあとは、全共闘の中にあったゴロツキ文化のほうだけが発展していった。
池上彰 佐藤優 「激動 日本左翼史 学生運動と過激派 1960-1972」(講談社) 2022年5月27日(金)
<その21> ◆日本人を「総ノンポリ」化してしまった面は間違いなくあったでしょうね。若い人が政治に口を出すことや、政治参加することに対して、大変危険なことだとというイメージを多くの人がもつようになってしまった。70年代に我が子を東京の大学に行かせていた日本各地の親たちは、 「頼むから学生運動だけはやらないでくれ」 「政治的なことには関わらないでくれ」 と本気で願っていましたから。
池上彰 佐藤優 「激動 日本左翼史 学生運動と過激派 1960-1972」(講談社) 2022年5月26日(木)
<その20> ◆パリの五月革命をきっかけに劇的に男女平等の意識が高まったんです。だから選挙結果という現実政治の動向とは別に五月革命には女性の権利向上、社会的地位向上に関して、国民の意識を変えたという功績がありました。 ◆日本の新左翼も暴力に走らなければ、あるいは、暴力に走ったとしても権力に対する暴力に走ったとしても、権力に対する暴力にとどめていれば、一定の存在感を残せていた可能性もあったのでしょうが、内部での殺し合いに走ったことが致命的でしたね。
池上彰 佐藤優 「激動 日本左翼史 学生運動と過激派 1960-1972」(講談社) 2022年5月25日(水)
<その19> ◆哲学、思想の面で新左翼にすぐれたものがあったのは間違いありません。しかし、政治的には全く無意味な運動だって言わざるを得ないでしょうね。革命を成就させられなかったというだけでなく、その後の日本社会に何らかのポジティブな影響を及ぼしたわけでもありませんでした。 ◆正義感と知的能力に優れた多くの若者たちが必死に取り組んだけれども、その結果として彼らは相互に殺し合い、生き残った者の大半も人生を棒に振った。だから、彼らと同形態の 異議申し立て運動は今後決して繰り返してはいけない、ということに尽きると思います。
池上彰 佐藤優 「激動 日本左翼史 学生運動と過激派 1960-1972」(講談社) 2022年5月24日(火)
<その18> ◆よく言われることではありますが、イスラム過激派の自爆テロも赤軍派がルーツというのは本当でしょう。奥平らはイスラエル国際空港で銃を乱射すれば生還を期待できないことは当然知っており、最初から自分の命を引き換えに革命の成果を獲得しようとしていました。それが教義で自殺を禁じられているパレスチナの人たちにはものすごく衝撃的であり、これがやがて自爆テロというジハードのあり方にアレンジされていった。
池上彰 佐藤優 「激動 日本左翼史 学生運動と過激派 1960-1972」(講談社) 2022年5月23日(月)
<その17> ◆よど号グループが北朝鮮にわたったのは北朝鮮で軍事訓練を受け、ひいては北朝鮮を世界同時革命の拠点とするためでしたがそれは実現しませんでした。 そもそも赤軍派は全員が反スターリン主義者でしたが金日成主席はスターリン主義者なので話が合うはずもありませんでした。そのあたりも含め北朝鮮がどういう国なのか彼ら自身もまだよく分かっていなかったのでしょうね。
池上彰 佐藤優 「激動 日本左翼史 学生運動と過激派 1960-1972」(講談社) 2022年5月20日(金)
<その16> ◆だから左翼というのは始まりの地点では非常に知的でありながらも、ある地点まで行ってしまうと思考が止まる仕組みがどこかに内包されていると思います。 ◆私の考えではその核心部分は左翼が理性で世の中を組み立てられると思っているところにあります。理想だけでは世の中は動かないし、理屈だけで割り切ることもできない。
池上彰 佐藤優 「激動 日本左翼史 学生運動と過激派 1960-1972」(講談社) 2022年5月19日(木)
<その15> ◆たしかにあの当時の学生運動リーダーたちの知的水準は今考えると驚くほど高かったですね。さきほど言ったように60年代末期は大学の大衆化の始まりの時期ではありましたが、そうは言っても今と違い、大学生は紛れもなく知的エリートでした。 ◆末端のほうは継承できるだけの知力がありませんから次第に殺しの話しかしなくなってしまったかもしれないけれど、それでもやっぱり運動を始めた人たちは非常に賢かった。ですからなおのこと、これほど多くの知的な人たちが運動を指導した半世紀後の日本がこうなっていることが不思議です。もはや社会で交わされる言葉に思想性なんて欠片もありませんから。
池上彰 佐藤優 「激動 日本左翼史 学生運動と過激派 1960-1972」(講談社) 2022年5月18日(水)
<その14> ◆斎藤幸平さんがまさにそうなのですが、彼のようにヨーロッパでマルクス主義を学んでいると、基本的にはレーニンは傍流でローザが主流なので、自然と「外部収奪論」に注目するようになるんです。日本みたいに資本主義国でありながら、スターリン主義系のマルクス主義が強い国はかなり珍しいのです。 ◆資本主義においては資本家が労働者から搾取するだけでなく、富裕層が貧困層からというように常に社会の中枢に近い側が周縁からの収奪を行っています。これが上記の「外部収奪論」のことを意味します。
池上彰 佐藤優 「激動 日本左翼史 学生運動と過激派 1960-1972」(講談社) 2022年5月17日(火)
<その13> ◆私たちがいま敢えて左翼史を若い人たちに学んでもらいたいと考え、こんな対談をしているのだって、その理由の1つは影響を受けることで自分の命を投げ出しても構わない、そして、いざとなれば自分だけでなく他人を殺すこともためらうまいと人を決意させてしまうほどの力をもつ思想というものが現実に存在することを知ってもらいたいからです。 ◆人間を最終的には殺し合いに駆り立てる思想にしても、その始まりにおいては殺人とは無縁の、むしろこの世の中を良くしたいと真剣に考えた人たちが生み出したものであるわけで、だからこそそれが、どういう回路を通ることで殺人を正当化する思想に変わってしまうのかを示したいのです。
池上彰 佐藤優 「激動 日本左翼史 学生運動と過激派 1960-1972」(講談社) 2022年5月16日(月)
<その12> ◆黒田寛一の疎外論の特徴はいまを生きている我々一人一人が疎外された人間であり、真の問題は、その自分が疎外されている状況にさえ気づいていないことなのだと指摘したこと、そして、その「気づく」ということはすなわちプロレタリア的な人間になること以外にないと言い切ったことにありました。 ◆松崎が黒田に次ぐ最高幹部として指導力を発揮したことにより、革マル派は警察側の資料によれば現在も約5500人の勢力をもつ組織となることができ、共産党や社会党とも別の自立した運動体を作ることにも成功したわけです。もっとも現在のJR総連は革マル派とは別の組織になっていると私は見ています。
池上彰 佐藤優 「激動 日本左翼史 学生運動と過激派 1960-1972」(講談社) 2022年5月13日(金)
<その11> ◆メディアも朝日新聞と毎日新聞、共同通信は優秀でさえあれば逮捕歴があろうと採用するという姿勢でしたね。NHKと読売は逮捕歴があるとNGだけど、学生運動をやっていたこと自体は別に構わないという感じでした。 ◆要するに企業という組織は二重忠誠をものすごく嫌うんですよ。会社以上に忠誠を誓っている対象を持っている人を採りたくない。
池上彰 佐藤優 「激動 日本左翼史 学生運動と過激派 1960-1972」(講談社) 2022年5月12日(木)
<その10> ◆当時の日銀は全共闘など新左翼系の学生は採用していたそうです。なぜかというと、彼らからみると一番来てもらいたくないのは日本共産党だから。その点で新左翼運動をやっていたやつは日共じゃないことだけ確かだから採用しておくというんです。 ◆学生時代にある程度の正義感があり、運動でリーダーシップを発揮していた人間というのは体制側に来たら、逆にすごく使えるというのは少なくとも外務省とか大蔵省、通産省などの役所は発想として確実に持っていましたね。
池上彰 佐藤優 「激動 日本左翼史 学生運動と過激派 1960-1972」(講談社) 2022年5月11日(水)
<その9> ◆しかし、そんな定員の何倍もの学生を入れてしまうようなシステムで質の高い教育などできるはずなく、そのことに学生たちはもともと不満を感じていました。その不満が大学当局の使途不明金の存在が明らかになったことで爆発したということですね。 ◆東大全共闘の場合は、東大という機構が帝国主義的な階級意識を再生産する役割を担っていることに対する強い疑念と、そこで学んでいる自分たち自身もまた、そのシステムの一部であるがゆえに自己否定しなければいけないという内在的動機が学生たちの側にありました。
池上彰 佐藤優 「激動 日本左翼史 学生運動と過激派 1960-1972」(講談社) 2022年5月10日(火)
<その8> ◆そしてその裏金は教職員組合へのスト破りに使う「組合対策費」や学生運動を妨害する目的で体育会や応援団に特別に充てられる「学生対策費」、そして、日大のトップである古田重二郎を通じて政財界に献金される「社交渉外費」などとして使われていたこともわかりました。 ◆そのための資金となると日大にかぎらず、当時の私立大学の大半が学生の授業料に依存していました。今でこそ国が私学に対しても様々な助成をするようになりましたが、昔はそんな制度はなかったので学生を定員の何倍も入学させてなるべく多くの入学金や授業料を徴収し、そのお金でまた次の学部をつくるというスキームだったのです。
池上彰 佐藤優 「激動 日本左翼史 学生運動と過激派 1960-1972」(講談社) 2022年5月9日(月)
<その7> ◆今の大学生の感覚なら警察官が学内をパトロールしてい、あたりまえの感覚で受け入れてしまうかもしれませんが、当時は大学の自治というものが今とは比べ物にならないほど尊重されていましたからね。大学当局が大学の敷地に警官隊を招き入れ、学生を実力で排除させるなどということは許されないという感覚は、一般学生の間でも広く共有していました。 ◆当時の日大では各学部が独立採算制を敷いており、各学部は入学金や授業料、寄付金の一部だけを本部に納め、残りの収入の一部を裏の帳簿で運用していました。その事実を国税局がかぎつけて、監査したところ大学全体での使途不明金が1963〜68年までの5年間で約20億円、最終的には34億円もあったことが発覚しました。
池上彰 佐藤優 「激動 日本左翼史 学生運動と過激派 1960-1972」(講談社) 2022年5月6日(金)
<その6> ◆それぞれの大学でストライキなどを打つ場合、参加者が定足数を満たしている学生大会を開催して、そこで過半数の賛成を得るなど一応は民主的な手続きを踏まなければいけない。でもそれだと完全に大衆的な運動しかできずそれ以上の規模には広げようがないので、「戦う意志」を持った人間だけが集まって、前衛的に物事を決めて実行していくための組織として全学共闘会議ができた。 だから、全共闘の特徴は近代的な代議制「ではない」というところにこそあります。自治会のように多数決で物事を決めるのではなく、「意識が高い」者だけで集まったほうがよい、そしてそこでは個々の議題についても投票ではなく、拍手さえ起これば承認されたものとし、実践していくという思想です。
池上彰 佐藤優 「激動 日本左翼史 学生運動と過激派 1960-1972」(講談社) 2022年5月2日(月)
<その5> ◆総評は元々は右寄りの組合だったのがあれよあれよという間に左傾化し、三池闘争をはじめとした数々の争議で 「闘う組合」 としての存在感を示しました。 これは当時「ニワトリからアヒルへ」と評されるほどの変化でした。しかしこうした争議を通じて社会党が共産党よりも戦闘化していき、労働者が社会党に引き寄せられていくことを、共産党はものすごく嫌がっていました。 ◆差別問題は共産党にとってある意味では最大の仮想敵なんです。なぜならば日本における差別問題は、基本的に日本国内に存在する日本人同士の問題であるがゆえに、これがあまり強調されると「真の敵はアメリカ帝国主義である」という問題意識を見失わせてしまいかねないと彼らは考えるからです。
池上彰 佐藤優 「激動 日本左翼史 学生運動と過激派 1960-1972」(講談社) 2022年4月28日(木)
<その4> ◆共産党は暴力革命に踏み切るかどうかは相手の出方しだいで変わる 「敵の出方論」 であったのに対して、社会党の理論面を一手に引き受けていた社会主義協会は平和革命絶対主義でした。 ◆新左翼は、権力は暴力から生じるのだから暴力によらない革命などありえないと考えていました。しかし、この考え方はリアリズムを欠いた一種のロマン主義です。彼我の力の差を考えれば、火炎瓶や手製爆弾では、自衛隊はもとより機動隊にも対抗できないですから。
池上彰 佐藤優 「激動 日本左翼史 学生運動と過激派 1960-1972」(講談社) 2022年4月27日(水)
<その3> ◆安保条約の改定にしても、アメリカに命じられて嫌々やっているわけではなく、日本の保守政権と日本の財界が結託し、自分たちの得になると値踏みした上で、彼らの意思によって強行しようとしているんだと考えたわけですね。 ◆そうです。社会党や新左翼がそう考えたのは、日本の資本主義が復活を遂げた1960年代という時代にあって、かつてアジアを侵略した日本帝国主義もまた甦りつつあるという認識を強く持っていたからでした。
池上彰 佐藤優 「激動 日本左翼史 学生運動と過激派 1960-1972」(講談社) 2022年4月26日(火)
<その2> ◆なぜ左翼は失敗したのか。この本では一貫してこの問いに立ち返ることになるでしょう。そして、左翼のてん末を歴史の教訓として総括することは、最も学生運動が盛り上がっていた1968年に大学生になった私の使命でもあります ◆なぜ過去の遺物と化した新左翼の思想を今読むのか。それは自分の命を投げ打ち、時には他人を殺すことも正当化した思想の力というものを現代に生きる読者に反省的に学んで欲しいからです。危機の時代には必ず激しい思想が現れます。こういう過去があったということを知るだけで、危険な思想への免疫ができるはずです。