渋谷区の税理士 中川尚税理士事務所

「姉歯問題」について思うこと

 

昨年の後半、マンション・ホテルの構造計算書の偽装問題(以下、「姉歯問題」という)が発覚した。

要するに地震が起きれば簡単につぶれてしまうようなマンションやホテルを買わされてしまった人達が大勢いたということである。

マスコミ、評論家、専門家などでいろいろな議論が飛びかっているが、今月号では私の意見を整理しておきたい。

 

不動産の売買の世界では売り手と買い手にそれぞれに不動産業者が仲介業者として介在するのが一般的である。

ただ売り手側の業者が直接買い手を見つけてくれれば、双方の仲介業者になることもある。

いずれにしても、買い手側につく業者は買い手の立場に立って仕事を行ない、不動産価格の3%程度の報酬をもらうのである。

ただし一つだけ例外がある。実はこれが問題なのである。

それはマンションや一戸建ての新築売買のケースで、この場合は買い手側の業者が介在しないのが一般的である。つまり買い手は売り手の販売代理を行なっている業者を信用して高額の買い物をしてしまうのである。

例えば、新築マンションが1億円で売りに出されていれば仲介手数料300万円を支払わなくてよいのである。中古マンションであれば買い手側の仲介業者に300万円支払うのにもかかわらずである。

中古に比べて新築は仲介手数料を支払わなくてよいという経済的メリットはあるが、反面売り手の立場に立って仕事をする売り手の代理人たる仲介業者にすべてを委ねてしまうという大きなリスクがあるのである。

 

ここに今回の「姉歯問題」の本質がある。

売り手側についている業者をそう簡単に信用してもよいのだろうか。

 

不動産のトラブルは通常、購入する側に出てくる。売り手側にトラブルはない。売り手はお金をもらえればそれで終わりだが、買い手はそうはいかないのである。こういう意味からも不動産購入に関しては、自分の側に立った代理人の存在が絶対に必要であるというのが、私が昔から主張していることである。

裁判になるようなトラブルが起きた時に相手側の弁護士の言い分を我々は簡単に信用しない。相手側の弁護士は相手の側の利益を中心に動いていると思うからである。

不動産の購入に関しても全く同じように考えるべきであると思う。要するに簡単に信用するなということである。

 

他にも似たような事例はある。

納税者が税理士に相談せずに、税務署に相談して税務申告を行なった場合において、もし税務署が間違って指導したらどうなるのだろうか。

過去の裁判においてはすべてにおいて税務署は責任をとらなくてよいことになっている。つまり税務署における相談は無料相談であり、税理士と違って有料ではない。つまり無料なのだから参考意見の一つにすぎず、そこに責任はないというのが一般的な解釈である。

税務署での相談は税金を支払っているのだから無料ではないだろうという主張もある。

ただし申告納税制度においては納税者本人ないしはその代理人たる税理士が申告書を書き、税務署は事後チェックするというのが原則なのである。         

さらに言うと、これも非常に重要なことであるが租税法の解釈権は税務署サイド、つまり行政にのみあるのではなく納税者サイドにもあるのである。税務署の言いなりになる必要など全くないのである。

税務署は国家の側に立って仕事をしている。その税務署の主張を納税者は鵜呑みにしてはいけない。

 

この記事は2006年1月に書かれたものです

 

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