渋谷区の税理士 中川尚税理士事務所

『不動産管理会社について考える』

 

相続税の増税気運の影響なのか節税会社としての不動産管理会社を作る動きが活発化しているようである。そこで今月号では不動産管理会社について述べてみたい。

ここでいう不動産管理とは、オーナーの推定相続人である子供達が株主であり代表取締役であることを前提としている。つまりオーナー自身は株主にも取締役にもならないのである。

 

不動産管理会社には次の3つのパターンがある。

【1】管理型

これはオーナーが不動産管理会社に管理を委託して、賃料の20%程度の管理料を支払う方法である。20%程度と書いたが、税務上は適正管理料としてこれが上限であるという意味である。その根拠は平成13年9月25日の大阪国税不服審判所の裁決である。またこの場合、管理実態があることは当然でペーパーカンパニーは論外である。

【2】一括借上型

俗にサブリースとよばれているもので、オーナーが不動産管理へ一括で貸付けそれを管理会社から各々のテナント等へ貸付けるやり方をいう。この場合の不動産会社の利幅は20%とするため、収益性は【1】の管理型と同じである。ただし一括借上型では、家賃保証をするという特徴がある。

【3】建物所有型

これはここ近年流行ってきている手法で、オーナーの所有している建物を管理会社に売却するというやり方である。つまりテナント等からの賃料は全て管理会社が収受することになる。オーナー自身が全く賃料をもらわないことが税務上(所得税にしても今後の相続税にしても)かなり大きなメリットになるのである。ただし土地の所有はあくまでもオーナーであるため、借地権の権利金や地代の問題は当然出てくる。 借地権の課税問題(※注1)はかなりややこしいがその反面、地代は多額に払うことも、また全く払わないようにすることも一定の手続きを踏めば案外自由にできるものである。つまりオーナーの土地に対する借入金が多い場合には、地代を高額にしたり、またオーナーが無借金状態であれば地代を0円にしてしまうのである。

(※注1)

借地権の課税関係は税務の3大トラブルの一つである。他は海外取引と代表者の退職金である。

 

以上3つのパターンのうち、最も節税効果が出るのが【3】の建物所有型であるため、不動産物件の全てを所有型でやることが理想である。理想であると書いたのは借入先の銀行の判断次第で所有型ができない場合があるからである。また【1】の管理型で管理料を20%にすると税務上のリスク(税務署に否認される)があって不安と思われる人は、【2】の一括借上げ型を使った方がいいのかもしれない。(家賃保証をしている分税務上のリスクが少なくなるから)ただし空室割合の多い人は【1】の管理型にならざるを得ないだろう。20%で税務上のリスクがあるというのは、同族会社ではない一般の不動産管理会社での管理料は5%〜10%が相場となっているからである。しかし私は仕事の中味が全く違うので、つまり節税会社は経営まで深く関与するから何ら問題が無いと考えている。

 

最後にサンプル事例を一つあげておきたい。従来は年間3,600万円の賃料をもらい経費を差し引くと利益が約1,800万円であった。この場合の税負担は約650万円である。去年より不動産管理会社を作り節税対策を行った。中味は一括借上と建物所有の混在型となっている。管理会社の社長は長男(株主も長男)がなり、年間600万円の給与をとると、オーナー個人、 不動産管理会社、 社長の長男の全ての税負担の合計で約290万円まで下がったのである。つまり節税効果が所得税だけ(相続税は除く)で年間約360万円もあることになる。

 

 

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