渋谷区の税理士 中川尚税理士事務所

『日本経済にとって最大の危機とは何か』

 

 

今月号では、日本経済が直面している最大の危機とは何かについての私見を述べてみたい。

 

昨年の12月に再度政権交代が行なわれ、安倍自民党が政権を取った。アベノミックスと言われる経済政策は3本の矢(「大胆な金融政策」、「機動的な財政政策」、「民間投資を喚起する成長戦略」のこと)から成り立っているが、その目的はデフレからの脱却となっている。

 

デフレとはインフレの対極概念で、物価が下がり続けていることをいう。実際日本の物価はこの15年で20%程度、下落してしまっている。デフレはまたデフレ不況とも言われるが、デフレをインフレにしたとしても、景気が良くなって来ないのであれば全く意味がない。不況のままでインフレになるというのは最悪の状況である。インフレイコール好景気とはならないというのが現実であり、輸出大企業の業績が良くなることイコール好景気でもない。そもそもインフレとは、景気が良くなってきていることへの結果としておきることである。安倍首相は因果関係を取り違えているようである。

 

バブル経済崩壊後、失われた20年と言われるがその間、日本経済にとって最大の危機は財政赤字の累積増だと主張する論者と、いやデフレ(こちらは財政出動が伴なう)だと主張する論者が対立してきた。

 

そもそもこの対立こそが間違いであるというのが私の主張である。つまり問題認識そのものが誤りで、本当の危機とは「雇用問題」にあるというのが私の意見である。ここで言う雇用問題とは、失業問題のみならず職には就いているが、不当に安い給与で働かされていることも含むと考えるべきである。

 

雇用問題が解決されれば、日本経済つまりGDPの60%を占める個人消費が活性化され、本当の意味での好景気となってくる。(ちなみに個人消費を活性化させるためには、医療・年金・雇用の3つがカギとなるが、特に雇用は重要である。)

 

それではどうやって雇用を安定させるかであるが、私は関税を引き上げて外国から安くモノが入ってくるのを止めるしかないと考えている。関税とは、モノを外国から輸入するときに課税する税金のことで、国内産業を保護する目的でつくられている。

 

なぜ失業者がふえているのか。それは、日本国内でモノを作らず、人件費の安い外国で作ろうとしたり、購入するという流れが出来上がってしまったからである。日本でモノを作る方向に舵を切り直さないと雇用を維持していくことは絶対に無理である。

 

要するに経済のグローバル化を止めることである。保護主義しかないのである。そして、世界では少しずつではあるが保護主義への流れは出来つつあると思われる。

 

そもそも第一次世界大戦にしても、第二次世界大戦にしても、経済のグローバル化の行き着く先が、あの戦争だったのである。

 

自由貿易というのは、一定の条件のもとでしかうまく機能しない。一定の条件とは、物価や人件費が同程度ということである。つまり自由貿易は国力が同様の国同士でしかうまくやっていけないものである。

 

この大原則は歴史が教えてくれるものであり、この大原則を知らない人たちが無条件に、グローバル化・自由貿易はすばらしいと信じ込み、人々を不幸にしているのである。

 

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