この本を読むと、「リクルート事件」と称されるものは、実は犯罪でも事件でもなかったということがよく分かる。
犯罪は正に、メディアや検察が作り出すという感じである。
印象的な箇所を何点か引いておく。
【政治家との交わりを深めた失敗】
− いまにして思えば愚かであったが、政治家に経済的支援をすることで、少しでも国政をよくする上で役に立っている、との思いを私は抱いていた。それが間違いであると知ったのは事件後だった。また、『見返りを期待しない政治献金はない』が一般人の常識と知ったのも、事件後であった。
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【特捜とメディア】
− あるとき、私は検事に聞いてみた。
江副氏 「どうして『新聞にはこう書いてある』とか『夜回りの新聞記者がこう言っていたけど、どうか』と、記事や記者の話をもとに私にされるんですか」
検事 「特捜の人員はたかだか三十数名。新聞やテレビ、週刊誌などの記者は我々の数十倍いるんだ。こちらは手が足りないんだよ。特捜がどこかに犯罪がないかと探しに行ったって見つかるわけがないじゃないか。疑惑があると報道された中から挙げられそうなものを選んで立件するしかない。リクルート事件も報道が続いているから、立件することになった。新聞は世論。特捜は世論に応えなければ、権威が失墜する」
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【ロッキード事件・伊藤宏さんの教訓】
− そう言った後、伊藤さんは私に尋ねた。
伊藤氏 「ところで、奥さんとはうまくいっているの?」
江副氏 「うまくいってないんです」
伊藤氏 「奥さんはとかく被害者意識にかられるんだよ。僕の場合も、この店の女将に来てもらって『仕事上の巡り合わせでそうなった』と話してもらい、やっと収まったんだよ。よければ、僕が奥さんに会って話をしようか」
江副氏 「ありがとうございます。ですが、関係修復は難しいと思います」 −
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