本書は端的に言えば、「キャッシュフロー経営の勧め」ということだろう。
これは、損益を重視するよりも資金繰りを重視せよということなのだが、こういう発想に私はもともと疑問を持っている。(ここで勘違いしてはいけないのは資金繰りが良ければ赤字でも良いという意味ではない。赤字は絶対悪である。)
何故ならすべての経営はキャッシュフロー経営だからである。
資金繰りよりも損益を重視する経営などというものはありえない。
事業経営において、資金が回ることは必要条件(あるいは前提条件)、より高収益を追求することは、十分条件として考えるべきである。
つまり、ある事業をやる場合において、資金が回ることを前提に進めていく。
当然その事業は儲かると思ってやるわけだが、実際にはたいして儲からない。
いや赤字になることもあり、その時は即撤退である。
たとえ失敗しても、その後資金が回っていくことが大前提である。
また本書の全体の流れとは離れるが、井上氏がある税理士にピントはずれのいちゃもんを付けているくだりがある。
これは井上氏が税法に無知であるが故の誤解である。
井上氏は、この税理士は案件を投げ出したなどど悪罵を投げつけているが、この税理士の対応は私は立派だったと思う。
私も同じ立場であれば、この仕事を降りてしまうと思う。
どうやら、井上氏は顧客指向の意味を誤解しているようである。
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