サブタイトルが『政治家・官僚・メディア − 本当の権力者は誰か』となっているが、長谷川氏のその答えは「官僚」である。
答えそのものは私も異論はない。
しかし、こんなことが30年以上も新聞記者をやるまでわからないというのも少し情けない気もする。
それは、自民党時代から形式的な権力は政治家に、実質的な権力は官僚にという構造は延々続いているからである。
さらに問題なのは、長谷川氏にはだから実質的な権力も政治家に移すべきだという強い意見が感じられないことにある。
長谷川氏は中日新聞(東京新聞)のやり手経済記者で、自分はかつて官僚のポチ(つまり御用ジャーナリスト)であったことについては自己批判しているが、そこまでである。
国民が選んだ政治家が主導を持つ社会(脱官僚の社会)に向けてのマスコミ人がやるべきこととは何かと言った前向きな話は一切この本書には出てこない。
官僚の力を弱めるための法改正や官僚の人事問題、更に記者クラブ制度についてラディカルに踏み込んでほしかった。
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