最も興味深い第3章の「60年安保闘争と全学連の真実」について述べてみたい。
1955年(昭和30年)に日本共産党が大路線転換(いわゆる暴力革命の放棄)を行ったことにより、日本共産党オンリーだった日本の反体制陣営が分派され新左翼(反代々木系)というものが生まれる。
新左翼というものは程度に差こそあれ暴力革命は必要であると考えている。
こういう状況の中で60年安保闘争というものが生まれるが、副島氏は全学連は吉田茂派の政治家や官僚たちに、そして、アメリカにあやつられていたのではないかという主張を展開している。
岸信介を政権の座から追い落すために吉田茂派が動いたことは充分考えられるが、だからといってあやつられていたというのは言い過ぎというものである。
田中清玄という元日本共産党員で国際派右翼の政界のフィクサーから資金援助を受けていたという記述があるがそれは当時から言われていたことでもあるし、恐らく事実であろう。
しかし、だからと言ってあやつられていたというのは暴論である。
ただ私も以前から疑問に思っていたことでもあるが、全学連の幹部たちの何人かが安保闘争の終了後、なんとアメリカに留学しているという事実を副島氏は指摘している。
特別なコネクションがないと簡単には留学できない時代である。
新左翼のスローガンは反米国帝国主義と反スターリン主義の2つだからアメリカがCIAを通じて新左翼を取り込み、ソ連の力を弱めて行こうと考えた可能性は充分ある。
|