2人の対論の中で、何点か興味を引いた箇所を要約して引いておきたい。
ひとつは、寺島氏がイギリスという国は支配者としての美学をもっていると主張するくだりがある。
つまり、大英帝国として支配した国々といまでもイギリス連邦という形で穏やかな共同体を形成している事実を指摘している。
そのシンボリックな例として、南アフリカはアパルトヘイトを撤廃し、マンデラが大統領になった後、イギリス連邦に復帰したことをあげている。
また、シンガポールには、日本の植民地支配に対する反日的モニュメントがたくさんあるが、大英帝国の支配に対する反英的モニュメントは全くない、という指摘にも考えさせられてしまった。
もうひとつは、やはり、寺島氏の発言になるが、
「戦後、日本人が自分で物を見たり、考えたりすることを見失い、アメリカを通じてしか世界を見なくなってしまったことへの危機感が僕にはあるからです。」
のくだりである。
これは何故、自分が戦後というものにこだわるのかに対する回答としての発言であるが、戦後の日本というものは、一言で言えば徹頭徹尾、アメリカナイズされてしまったというのであろう。
実質的にはアメリカから独立できたわけではないのに、外務省などという役所があるために錯覚してしまうのである。
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