TKCとはもともと栃木計算センターの意味で公認会計士・税理士の故飯塚先生が設立した、会計事務所向けのコンピューターソフトを販売している会社のことである。
ただし、その株式会社TKCと併設して、税理士の任意団体組織をTKCと呼び、その会員税理士の追悼文が本書の内容である。
まず興味深いお教えの部分を2点ほど引いておく。
「人間の行動はある根元的原理に従うもので、それが人間の行動を決定するのだ。真の自己発見が変革の可能性をもたらすのだ。」
さらにもうひとつ。
「座禅で静かに瞑想するのも良いが、日々の業務の動きの中で自己探求する方がより優れた座禅なんだよ。つまり『動中の禅は静中の禅に優る』ということなんだよ」
飯塚先生といえば、昭和38年の不当弾圧を伴う税務調査、いわゆる飯塚事件について触れておく必要があろう。
裁判は昭和45年に結審し、被告は全員無罪になっている。
問題は飯塚先生のその後の対応である。
「憎悪の子は憎悪でしかない」とか「相手の一切を許して、超越底して生きよ」と言った理由を付けて権力との闘いをすべて放棄してしまったのである。
私としては、誠に残念である。
上記のような対応でも相手に悪意がなく、かつ、相手が反省していれば正しいと思うのだが・・・。
そして、その姿勢はその後のTKCの運営にも、色濃く表れているのである。
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