著者の辰濃氏は朝日新聞社の社会部を私立医科大学の補助金の不正流用事件によって追われた人物である。
疑惑の大学教授への取材中、無断で録音しそれが怪文書とともに出回ってしまったことへの責任を取らされたのである。
国民世論は無断録音を好ましくないものと考えているが、ジャーナリストたる者この程度のことはやっておかないと、言った言わない論争に巻き込まれてしまうのである。
それはさておき、本書の内容は日本医師会の権力闘争について書かれたものである。
日本医師会は1916年に発足し、初代会長はあの北里柴三郎氏であり、医師数約28万人のうち、6割に相当する約16万人が加入している。
16万人のうち開業医(社会保険医が中心)と勤務医の比率はほぼ半分ずつである。
ただ、役員や幹部は開業医が占めているためか、開業医のための団体というイメージが強いのではないか。
そして、権力闘争についてであるが、本書に限らず、マスコミ関係者はどうも権力闘争というものを悪いイメージで捉え過ぎてしまっているのではないかという意見を私は持っている。
誰も好き好んで権力闘争に明け暮れているわけではなく、何かを成し遂げるための手段として、やらざるをえないからやっているのである。
私は権力闘争というものを単純に悪だと切って捨てる思想は間違いだと考えている。
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