関岡氏は「拒否できない日本」という著書で、日本で改革、改革と呼ばれているものは、そのすべてがアメリカからの要求事項であることを明らかにしたことにより、一躍有名になった人物である。その「拒否できない日本」は知識人の間は大ベストセラーになったものと思われる。
和田氏は、本職は精神科医ではあるが、言論活動も活発に行っている人物である。
医療、安全、教育の3テーマについて改革の名のもとに今後どの様になっていくかについて、2人がそれぞれの主張を述べているのが本書の中味である。インパクトのある部分を何点か要約して引いておきたい。
まずは混合診療についてのくだりである。混合診療とは保険が利く「保険診療」と保険が利かない「自由診療」を同一の患者に行うことを意味するが、これによって自由診療の範囲が広がり所得による格差が生まれてしまうと関岡氏は危惧している。
次は1988年にイギリスの心理学者が主張した日本の教育の強みについてのくだりである。政府の教育費用負担が少ないにもかかわらず、優秀な教育を行ってきた理由について、次の5つを挙げている。
@能力より努力を重視する親
A高校入学と大学入学という2つの学習への動機づけ
B年間の平均登校日数の多さ
C文部省により細かく規定された全国統一カリキュラム
D能力の高い教師と私学セクターのウェイトの高さ
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