猪狩氏を最近はTVで見なくなったなあと思っていたが8月の下旬旅先のフィリピン・マニラで自殺したそうである。1949年生まれなので、享年60才か61才と言ったところであろう。本書は猪狩氏の検事生活約10年、弁護士生活約20年を中心とする回顧録がその内容になっている。
目次には、闘う検察官としてとか闘う弁護士としてとか反社会勢力と渡り合うと言ったタイトルが並んでいる。
最も興味深いのは政治家新井将敬氏の自殺について書かれたところである。「何もあんな微罪で死ぬことはないだろう。たとえ逮捕されても、特捜部の利益供与要求罪の犯罪構成には無理があることは分かっているのだ。・・・」とつぶやき、さらに、新井氏が自殺したという衝撃とその反面、特捜部と全面対決することを約束して、この半年以上闘ってきた新井氏に裏切られたという気持ちが複雑に交錯したと記述している。
私自身にとっても新井氏の自殺は平成10年のことだから12年以上昔のことになるが、衝撃的な事件であった。
このような優秀な政治家をマスコミ的正義によって葬り去ってしまう構造を何とか変えていかないと、誰も社会や国家のいために働こうと考えなくなってしまうであろう。
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