<その1>
私は会計の諸問題についてのもっとも面白い論客は著者の田中教授であるという考えを持っている。
以下は、本書の中よりインパクトのある箇所を要約して御紹介していきたい。
・国際会計基準(IFRS)の本当のねらいは「物づくり」では稼げなくなった英米が、
IFRSという「平和的武器」と金融工学という「マジック」を使い、世界の富を手に入れようとしていることにある。
そのシンボルが「時価会計」と「当期純利益廃止、包括利益一本化」の構想である。
当期純利益は日本を含むアジアやEU諸国が得意とする「物づくり」の成果であり、これまでに「実現した利益」を意味している。
それに対して、包括利益には有価証券やデリバティブの含み益などの未実現利益がたっぷり含まれている。
さらにここで問題となるのは、評価益を計算する場合の時価は「市場価格」だけではなく「経営者が合理的と考える金額」でもよいことになっている。
要するにIFRSは自由に粉飾してくださいという基準なのである。
・IFRSは、本来、欧州生まれの欧州育ちであるが、米国で開発された基準を取り込む形で編成されてしまった。
IFRSと名前を変えた米国基準が世界を支配するようになれば、
欧州諸国の富もアジアの富も会計基準という公的な姿をまとった政治的手法を用いて、「合法的に移転」させられてしまう。
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