本書のストーリーは、精力的な活動を続ける女性弁護士である太田氏が、ある高齢の女性より財産管理の依頼を受け、
相続発生後に相続人の1人である実子よりクレームをつけられ、それが弁護士会による業務停止5ヵ月という懲戒処分にまで発展したというものである。
太田氏のメインの主張は、巨大権力を持って1人1人の弁護士を必要以上にコントロールしようとする弁護士界に対する批判である。
この批判はもっともなものであり、弁護士会の社会的信用を守るために依頼人からのクレームに対して、必要以上に神経質になっていることはよく理解できるところである。
本来であれば弁護士会は、弁護士個人を守るために存在すべきではないのだろうか。
ただ、私のもっとも考えさせられたのは弁護士の仕事の仕方である。弁護士は、依頼人の利益のみを追求するように弁護士法で義務付けられている。
つまり、利害関係者全員がケンカせずにうまくまとまるような仕事はできないことになっているのである。
相続がからむ財産問題の処理において一番大事なことは、無用なトラブルを起こさないことにあると、私は考える。
依頼人は自分の利益よりも相続人間のトラブル回避を第一に考え、絶対に弁護士には依頼しないようにすべきであり、
弁護士自身も依頼人に弁護士業務の限界を説明し、他の専門家に依頼するように仕向けるべきではないのか。依頼人も相続人間トラブルを起こしたくないはずであろうから。
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