<その1>
「法令遵守」という意味のコンプライアンスは、「社会の要請に応える」という視点が重要であるというのが、郷原氏のかねてからの主張である。
以下、郷原氏のユニークな主張のうち、ポイントとなる部分を紹介していきたい。
◆司法が、社会内の問題解決の中心的手段とはなってこなかった日本の社会においては、法令を単純に「遵守」するだけのコンプライアンスは、多くの弊害をもたらす。
法令だけではなく、その周辺にある社会的規範・倫理等に基づく「偽装」、「隠ぺい」、「改ざん」、「捏造」等に対する批判・非難についても、
「なぜそのようなルールがあるのか」とか「何が悪いのか」を考えないで、禁止が自己目的化することの弊害が顕著になっている。
◆「上から下へ押し付ける」だけだった従来の「法令遵守」としてのコンプライアンスから脱却し、
「下から上に突き抜けるコンプライアンス」を行っていくことが、今後は重要であり、それが組織全体が社会的要請に応えていくパワーを生みだすことにつながる。
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