<その1>
本書は30年ほど前、原発一辺倒への幕開けの時代、「原発への警鐘」と題してまとめた分厚い単行本と同文庫の一部を復刻したものであると、著者の内橋氏は述べている。
以下、本書よりインパクトのある箇所を要約して御紹介しておきたい。
◆昭和29年初め、原子力研究に当てるための予算が突然可決成立した。この予算を指して、我が国原子力開発のすべての始まりであると事情通はいう。
その成立のウラには何があったのか。一説には当時の政界の大物、正力松太郎の危機意識があったという。
「正力さんは原子力発電によって日本の共産主義化が防げると信じていたフシがある。」「貧しさの中に閉じ込められてしまうと日本は共産主義化する。
生活水準の上昇を阻むエネルギー不足問題を原子力発電によって解決できる」と正力は信じていたようである。
◆原子力技術は技術者が二代にも三代にもわたって継続していかなければ完成しない。これまでとは全く異質の技術です。
技術の研究開発から廃棄物処理の完了までゆうに百数十年はかかる。確実さを心がける以外安全を守る方法はない。
原子力発電は異質の巨大技術であるがゆえに、その確実さにおいて宿命的に欠落部分がつきまとう―それが現実である。
というのであれば、われわれはいまこそ「原発絶対安全論」を問い直さねばならない。
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