<その1>
本書より興味深いくだりを要約して御紹介していこう。
◆「現代に笑いが少ないのは、失敗はいけないんだということを子供の時から教えられているから仕方ないでしょうが、失敗して当たり前というふうに育っていかないと笑えないですよ。」 (江戸風俗研究家杉浦日向子)
◆ロッキード裁判をめぐって、立花隆は渡部昇一の言い掛かり的批判を完膚なきまでに論破した。
残念ながら今立花は渡部のように思い込みで書いているのではないか。「取材をしないジャーナリストが生存できる時代は終わった」と論難する上杉隆に立花は無言のままでいるのか。退き際が難しいのは政治家や経営者だけではない。
◆椿山荘をはじめ九つもの別荘を持っていた明治藩閥政府のボス山県有朋が亡くなった時、ジャーナリストだった石橋湛山は「死もまた社会奉仕」と痛言した。死んでくれてよかったということである。
◆人間を上下関係でしか見られない安岡正篤がしきりに持ち上げたのが孔子であり、「論語」だった。君に忠、親に孝の儒教道徳である。つまり国や親へのアイを強制したのだが、アイは強制されて湧いてくるものではない。
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