よい/爆風スランプ

爆風銃とスーパースランプ時代はしらないけど、この爆風スランプのデビュー盤には、いろんな意味で衝撃受けた人が多かったんじゃなかろうか?

実は、僕は音楽サークルでわりとありがちな状況、つまり、本物を聞く前に、誰か身内がコピーしてやっているのを聞いたという状況だった。これを聞く前から、コミックバンドは上手くなきゃイケナイというのには気づいてはいたけど、具体化されてしまうとはまる以外にない(苦笑)。

それで、そのコピー、同期が一人の他は皆先輩がやってたんだけど、ベースのH先輩はリッケンバッカー(じゃなかったっけ?)を持ってきて、ピックで弾いていたんで、実は、ホンモノが親指でやってるってのは、その後数週間してホンモノを聞くまでしらなかった(苦笑)。それでもって2度びっくり。

毎日聞くってところまではハマらなかったけど、実はこの後、 Jungle までは、大体聞いていたんで良く聞いた方だと思う。カシオペア他の洗礼を受けていない僕は、スラップは前述の通り、中森明菜やら、TOTOの Girl Good-bye(ほんものはピックだけど)やら、そういうので練習してきていて、そこでこれ。バンドでやった爆風の曲を覚えている限りリストしてみると:
 

週間東京「少女A」、よい、涙の陸上部、たいやきやいた、狂い咲きピエロ、びっくりミルク、無理だ!!、
せたがやたがやせ、ラクダ、(僕、私立文系とかやるのなんだったっけ?)、美人天国、映画通り
他にもやったかな?一人でコピーしただけだと、Jungleの中からさらに何曲か。特に Jungle の前半は好きな曲が多くて、一時期毎日聞いてたなぁ。

初めて聞いたときにちょうど学部の3年の冬で、自分がそれをコピーしてやらされることになったのは次の4年になる年の春の事だった。当時、スラップは僕はダウンしかできなくて、それでタイヤキを全部ダウンで弾くという暴挙に出るのだが・・・若かった・・・今はもう体力が・・・スラップをやらない人にわかりやすく説明すると(?)、ハイウェイ・スターのベースを全部ダウンでやるかオルターナティブでやるか位の疲れかたの差があるのである。ベースマガジンなんて便利な雑誌は、たしかまだなかったし、バンドスコアなんてものは使っちゃいかんということになっていたので、江川ほーじんがアップダウンでやっているって知らなかったという話はある。

その後、4年になるとちょっとは活動がおとなしくなるんで、あまり爆風スランプのコピーをする機会はなかった(といいつつ、ラクダとか「せたがやたがやせ」は院生になったり社会人になってからやってるけど)んで、全曲制覇とは行かなかったけど・・・

その4年の春、「たいやきやいた」と「びっくりミルク」中の16分音符25連続というところで死亡したのだが、その後、そこは親指のアップダウンでやっているという情報をつかみ、「あー、それなら楽だ」ということで今度はアップダウンの練習をする
毎日がまっていた。ギターや三味線をやっている人の為に、わかりやすく例えると、ギターのオルターナティブピッキングを自らの親指をピックにみたててベース弦でやる、あるいは三味の「チン」と「トン」をヘラではなく親指でベース弦でやる、という状況である。

これは、何が難しいって、まず最初は、親指の、弦にあたる場所が鍛えられていない為に、ひじょうに痛い。が、鍛えるとその痛さが快感に変わる日が・・・来るわけはないのだが、皮が厚くなり、また、良い音がする場所が実はあまり痛くならない場所だったりして、痛みを克服できるようになる日がいずれはやってくる。

その次の難しさは・・・ダウンだけの時は比較的楽だというのには、速度があがらないからというせいもあったり、ダウンだけなら真上から弦を押さえつけるように叩けば、次も真上から行けば良いのでたとえば親指を弦に対して若干の角度をつけてぶつけてやれば、空振りが少ない。アップダウンの場合は弦の下に親指を潜り込ませてからそれを持ち上げる必要があるため、弦の真上から叩くのは非常に困難ということになる。それで、弦に平行になる感じで親指を当てる事になるのだが、そのため、今度は空振りしやすいという状況が発生するのだ。

スラップには、やる人毎に、それだけのスタイルがあるとも言えるのだけど、大別して、弦を真上から叩いて鉄琴の要領でならすスラップ(僕はこちらの方が得意といえると思う)と、親指ピック状態で弦にたいして振りぬくものがあり、アップダウンをするには、振りぬく必要がある。このやり方では、弦は通常の指弾きの場合にくらべて大きく振れるため、確実に指をひっかけるためには相当深く指を弦に入れていかねばならない。今度は、深くいれた場合には、指の付け根近くきてしまって親指が受ける抵抗が大きくなって、アップができなかったり、毎回指の潜り具合が異なってしまい、毎回回転速度が違うということに。

ほんとうにこのスタイルを追求してる人は、また別なやりかたなのかもしれないけど、僕は結局、

  1. 指板が24フレットまである(当時は24Fのベースがメイン)のを使い、22fのあたりで弦の暴れを押さえつつ弾き、親指は指板に当てて、深く潜るのを回避する、あるいは
  2. リアピックアップの上の方で行い、弦があまり振れない(が、固い)場所で行う
という安直な回避策を編み出してしまったのだった。

と、まぁ、アルバムに対する思い入れというよりは、ベースの修行(ってほどでもないが)のうんちくをこれだけ書けるくらいは繰り返し聞いて試行錯誤したという、そういう思い出のアルバムなのだ。

もし、これを読んでいる方の中で、「ベースを弾くのだが、スラップのアップダウンができない」という方は、もしよければ、この「よい」を買って、たいやきやいた、びっくりミルクをコピーしてみてもいいかもしれない?
 

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