れんが
Current News 8 Oct,2008

 

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2008年「宝塚BOYS」再演及び、9月15日に発売された写真集「BORN」について伺いました。

(2007年版インタビュー)

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-2007年版とは少し違った雰囲気の星野丈治になりましたね。
圭吾:台詞も脚本もいろいろ変わってたしね。演出家にも、いい意味で「この一年で何があったの?」って言われた。本人はそんなに意識しないんだけど、そんなに違うのか…と思いました。でも「人の話」が聞けるようになったと思う。それは実感してるから、そこが良かったんだろうな。「でも、それは去年の『宝塚BOYS』をやってからですよ」…って話したんだけど。
やっぱり、聞き逃せないじゃない。ああやって大勢で芝居してく上で「人がしゃべってることに対してどう思うか」っていうことが凄く大事になってくる芝居だから。 「それを『宝塚BOYS』で学びました。それから一年やってきました。」って話した。今回、それが嬉しかったな。
-「それぞれの場面で誰のことをどう思っているか」は去年も重要な要素でしたが、今年はさらに、それぞれとの関係性に深みが見えましたね。
圭吾:今回「助け合い」が大きかったと思うんだ。もちつもたれつ、甘えるところは甘え、それをフォローしてもらえるっていう信頼感があり。誰かがしゃべった台詞にフォローが入ったりとか、フォローしてもらって初めてお客さんにわかってもらえるところとか、誰かが言ったことに対して俺がフォローして「あ、そういうことだったのか」ってわかったりとか。そういうことが、うまくできたんじゃないかな。 芝居がうまく回ったんだと思う。決して自分ひとりの力ではないと思うんだよね。そういう風に見えたっていうのは。演出の力であり脚本の力であり、それを納得した上での役者の力、でもあるかもしれない。

-女子との接触を禁じられて星野も「えっ」と思っているところがあるようでしたが…。
圭吾:あるある、それはある。みんなそうなんだよ(笑)。
-でもなぜか、直後に山田を威嚇するわけですね。
圭吾:「あっ」と思った顔を見せたくないっていう(笑)。
-竹田の彼女の話でもムッとしていましたが、昨年の「女には不自由していない」とは違うのでしょうか。
圭吾:ていうか、あの自信満々さ加減にちょっとイラっと来てるんです(笑)。
-山田を威嚇する動きも、どんどん濃くなっていきましたね。
圭吾:あの、宝塚にふさわしくないヤクザな格好をしているヤツに、とっても興味が沸いてるんだよね、「なんだこいつは」と。後半になって発見しちゃったんだよ…「この手があったか」と。あの動きだと池田さんの「これは遊びじゃない!」っていうところに繋がって、台詞の意味がとっても通ってくるなと、理解しました。

-「青き春」練習のシーンの「マリー、ここへ座れ」の日替りポーズが評判でしたが。
圭吾:そんなにパターンないじゃん(笑)。やりすぎないようにと思いながらやってました(笑)。
-ジャン(長谷川)の台詞の間も、演技指導が細やかでしたね。
圭吾:竹内がすぐ立つから、その行動に対して後からつけたんだよね。そうか、じゃあここで「屈め屈め」とか「もっとジワジワ寄ってほしい」とか、そこでの指示になったらな、みたいな計算もあって。で、そのまま「抱き合え」と(笑)。
-おばちゃんがマリーになった後、みんなが動物になって吠え出すのは、星野には予想外だったのでしょうか。
圭吾:予想外(笑)。おばちゃんがしゃべりだすだけのはずなのに、竹内がアオーンていうし、山田は猿とかになるし、わけがわからない(笑)。

-後半、「落ち着いて考えるのはお前たちだろう」で帽子を脱ぎ捨てるようになりましたね。
圭吾:「ここでみんな何をやってるんだ」っていう台詞がそれぞれにちゃんと届くには、どういうふうにしたらいいかって考えて。凄く大事な台詞だから、それは試行錯誤した。「とうとう言ってしまった」っていう言葉だもんね。みんなに止めを刺すナイフをどう出したらいいか、ということをいろいろ考えてきて、ああなりました。
-全員が現実を自覚する場面ですね。
圭吾:やっぱり、今まで自分たちがどれだけキラキラしてきたかっていうことがないとね。おばちゃんと踊るシーンっていうのはすごく大事なシーンなんですよ。「宝塚BOYS」っていうお芝居の中で一番、みんながキラキラしていないといけないシーン、一番の幸せなシーンなんだよ。あそこでどれだけキラキラしてるか、今まで貯めていたものを、どれだけ、あそこでキラキラ出せるかが大事なんです。

-竹内が「小林先生に会わせて下さい!」と詰め寄る場面では、星野も同じ気持ちなのでしょうか。
圭吾:最後はね。みんなそうです。その前は「いや竹内、それは無理だ」「なんてこと言うんだ」っていうリアクションがまずある。でも竹内が掴みかかってって、それを聞きながら同じ思いになっていくっていう。
-一人で決めているようでいて、星野も男子部のみんなの気持ちの中にいるわけですね。
圭吾:うん。だって最後は、それぞれ表現は違っても「宝塚男子部でやりたい」っていうことだしね。

-本番を通しての発見もあるのですね。
圭吾:長くやってると「はてな」だったところが、腹に落ちる。初日にお見せするときには腹に落としてやりたいなとは思うんだけど、でもよりいっそう、腹に落ちて、その台詞の深さとか意味とかに、すごく納得する時がある。時には、それまで思ってやっていたこと、ある思いでそれを出してたのが、やってってやってってやってった時に、違う意味の台詞になったりもするわけですよ。たぶん自分の技量では、その部分はやってってやってって…ってしないと、そういう意味にとらえられなかった、っていうのもあるし。 だって芝居は生き物だから、みんなでその話の3時間っていう中を生きていくと、そのひとつの台詞が、違う意味に感じられることがあるんだ。そこで発見したりするの。それがいいのか悪いのかはわからないんだけど、自分としては腹に落ちたな、っていう瞬間があるわけですよ。
-その役として生きていくから。
圭吾:そうだね。やっぱり、このお芝居を作っていった時に何が出るかって話だから。生き物だからね。演出家だって、決めないでおいた部分てあるわけですよ。そこを発見出来る。みんなで作っていって、生きて生きてやっていくと、答えが見つかる。

-最後のレビューシーンは、どんな気持ちで作り上げられているのでしょうか。
圭吾:レビューの存在として、本当に「これがやりたかったんだ」っていう思いをそれぞれがあそこにぶつけるしかない。それが表現したかったのね。 今回も、あれはレビューのシーンっていうことじゃなくて、芝居の一部として意識した。決して「ああ美しい、素敵」っていうシーンではない。
-男子部の最後の。
圭吾:うん。たった一回限りの夢を自分たちで叶えてみた。例えば星野が振付をして、竹内が歌の指導をし、太田川が台詞をしゃべるところをやったりし、そういう感じで、一回限りのショーをみんなで作って、やってみた。 本当は他のシーンみたいに、お客なんていやしない。いやしないけど、自分たちの想像の中で、見えてるお客さんがいる。で、終わって幕が閉まった瞬間に、どうなってしまうか…っていう。
とにかくやりたくてたまらなかった、この8年間9年間ていうものの集大成を、あそこで表現するっていうシーンだよね。だから普通に「レビューやってます」とか、ただ踊ってますっていうシーンではなかった。
-演出は池田さんでしょうか。
圭吾:そうじゃないかな…きっとそうだよね。 だからもう、本当は振りなんかどうでもよくて「どうなっちゃってもいい」っていう演出だったの。最後もそうだし、中身もね。誰かが踊ってる間、今までそいつと接してきた思いとかが、表情に表れたりとか。
自由なんですよ。「こいつとこういう思い出があったな」って、誰かが踊ってるときに思い出しながら囃し立ててさ。全部、芝居の一部なんですよ。
-客席では大拍手が起きていますが、最後の幕が下りた後には…。
圭吾:聞こえないでしょ。もう、幕が閉まった瞬間、俺にはもう何も聞こえない。…「すみれ」を歌ってる時、「もう終わるのか」って思うもんね。もうじき自分の「宝塚BOYS」としてやれる時間っていうのはどんどん終わりに近づいて、タイムリミットが迫ってくる。だから、幕が閉まった瞬間っていうのは、もう「…プーーー…」(沈黙)ですよ。

-濃い数週間になりましたね。
圭吾:良かったんだと思う。俺、(公演が)終わってから何日も夢見たもん。寝る前にも眠れなくって。絶対考えるもんね、みんなのことを。こうだったなあ、ああだったなあ、とか。懸命に、俺も生きたんだなって、思った。
-本当の男子部にいたんだなと。
圭吾:うん。…と思いました。
-千秋楽のカーテンコールで柳家花緑さんが、実際の男子部の解散のような気持ちだと仰っていましたね。
圭吾:そうだね。本当に最後は「解散」だったな、芝居ではなく。 あれだけ、泣いて笑って叫んで。とっても体力を消耗する芝居だった。でも、すごく勉強になったし。本当に、またやれてよかったなと思いました。

-9月に発行された写真集について。「BORN」というタイトルは最初から?
圭吾:うん。作ることになった時、やっぱり何かテーマがあったほうがいいよ、って。じゃ「BORN」にしましょう…と。いろんなところで撮るし、いろんな写真があるし、それで今まで僕がやってきたことを表現するわけだから、「BORN」だな、と。
-場所も表情も、さまざまな雰囲気の写真がありましたね。
圭吾:一年ぐらいかけて、いろいろ撮って。いろいろなところで撮ると、いろんな感情が生まれてくるもんだなあと思いました。
写真集を作るにあたって、できるだけいろんな表情の写真を載せたかったんだよね。 (1998年の)「BORN」の時にも大事にしたことを。そのシーンごとに出てくる「匂い」とか、感情だとか、不思議な雰囲気とかさ。そういうものを写真で表したかった。
-初の写真集、素敵な作品になりましたね。
圭吾:はじめ「この年で写真集ですか!」って言ったもん(笑)。でももっと若い時じゃ出せないものってあるじゃない。ギリギリ良かったのかなと(笑)。

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