Keigo Yoshino
"TOY BOX"

Stage Report 3

第三部

「デビルズ」
舞台中央には鋲を打った宝箱。第3部は佐々木重直さん振付けのダンス「デビルズ」から始まった。
だしぬけに鳴り響く音楽に乗って登場する2人のトレンチコートの男。その正体は黒い羽根を生やした2匹の悪魔。探し当てた宝箱に隠されていた1つしかない天使の輪(ぱるっく)を巡ってピストルやらゲームやらで対決するが、勝負に夢中になっているうちに忍び寄ってきた泥棒(By吉田仁美)に宝物を奪われてしまう…みたいなストーリーを圭吾さんとシゲちゃんが踊りまくる。
このメンバーなので男同士のタンゴもあり(笑)、客席に飛び降りたり、いきなり「だるまさんがころんだ」はじめたり…などなど、「決め」と「遊び」が絡み合い、笑わせ緊張させ興奮させるむちゃくちゃカッコいい作品であった。この1曲だけでも「TOY BOX」って感じするよね。

間奏曲
デビルズ退場後、メフィスト仮面に黒マント姿の怪盗(16歳)が再登場。手にはソプラノリコーダー…「圭吾さん着替えてるから、その間、私の演奏をお聴き下さい」と一曲披露した(ひとみチョイス「カエルのうた」)。
やっぱりこの子もただ者ではないと思う。

告知1〜「世界中が I Love You」
ここから圭吾さんの告知。11月の「ワンス・アポン・ア・マットレス」の次は、年末年始のアートスフィアでの「世界中が I Love You」。ということで、この作品の冒頭で、ホールデンが婚約者のことを歌う曲「My Baby Just Cares For Me」を日本語で歌った。
イントロでタップを踏む圭吾さんにはびっくりした(すごく)。
歌い終わった後、「何でしょうねえ、これは…(笑)」とタップシューズを指さす圭吾さん。ほんの1時間前「ギターとタップはダメです」って言い切ったその口で「チャレンジャーなもので…」と言い訳するんだった。カッコイイよ。

告知2(重大発表)〜「夜明けの月」
「8月5日に重大発表がある!」との情報が流れたのは今年の6月くらいから。LETTER BOXやインタビューで圭吾さんが匂わせたのがきっかけだが、それ以来、浮き足立ったファンが気にすることったらなかった。
さてその重大発表。
「音楽座を出て4年、ついに外の公演で『主役』をやらせていただくことになりました!」
来年2月、博品館にて上演されるミュージカル「パウロ」で、主人公のパウロを演じるとの告知に、場内大拍手。
その「パウロ」から一曲、「夜明けの月」が披露された。

「アンヌと腕を」
「ラ・カージュ・オ・フォール」から一曲。燃えるような恋に落ちたばかりのジャン・ミッシェルが、父親ジョルジュに恋人・アンヌのことを情熱を込めて語る曲だ。
登場人物3名。ジャン・ミッシェルはもちろん圭吾さん、アンヌを踊る(回る)のは「共演券すぺしゃる」をGETした方、そして、ジョルジュは…客席からいきなりひっぱり出された圭吾さんの実のお父様・吉野純夫さん。
この演目、パパさんには完全に秘密にしておいたそうで、企画した人は(もちろん圭吾さんだが)本番で何が起こるかかなり心配だったらしい。歌いながら「アンヌ」と踊るパーマのジャン・ミッシェル、「ラ・カージュ」のこの場面と比べるとすごく開放的で、「だしぬけに」の「に」のところで指を「2」にするくらい余裕があったのだが、「パパ」に向ける眼光はかなりマジであった(笑)。「動くなよ」って(笑)。

「一人クール」
舞台には時計台。
そこに、誰かと待ち合わせているらしい4人の男女が現れる。カエル。外人。犬。(キャスティングは想像して下さい)そして、花束を持った気弱そうなメガネの男性。
しばらくすると、それぞれの待ち人が現れる。カエル。外人。おさる。さっきのくじ引きで「共演券」をGETした人たちだ。出会えたカップルたちは一組、二組と立ち去っていく。ついに、最後まで残っていた犬(なぜか「ニャン」とか鳴く)が、パートナーのおさると連れ立って去って行き、男性はひとり取り残される。時間は刻々と過ぎて行き(黒子さんが時計をみるみる進めて行く)、彼の焦りはつのるばかり…そこへ静かなイントロ。
「TOY BOX」最大の自虐的プロジェクト「一人クール」が始まった…!

*** 解説 ***(知ってる方は飛ばして下さい)
「クール」とは「ウェストサイドストーリー」の中の有名なナンバーで、決闘を前に焦るジェット団の面々が必死に心を落ち着かせようとする場面。少年たちが指を鳴らしながら静かに踊る中、気分の高揚した少年(曲の要所要所でバラバラに)が一瞬ずつ激しい振りを決めていくという、緊迫感にあふれたダンスである。
「一人クール」は、この「それぞれの決めを一人で全部やっちゃおう」という企画なんだそうで。…チャレンジャーに喝采を送ろう…。

来ない彼女を待ち続け、「来る…来る!」と念じながら舞台上で踊りまくる圭吾さん。
跳ねっぱなし回りっぱなし飛びっぱなし。たまに止まると観てる方も大汗かいていることに気付く。キャラ的には情けないメガネくんのまま、膝ターンや猫ジャンプを決めていく姿はなんかもう凄いとしか言いようがなかった。彼女、早く来てやれよ…。
あ、ラストどうなったかというと、待ち人(共演券の人)は待ち合わせに14時間遅れて現れ、ふたりは楽しげに去っていったんだった。めでたしめでたし。大丈夫か、このカップル。

「スマイル」
「モダン・タイムス」の中の曲。チャップリンが作曲し、さまざまなアーティストが歌っている音楽がピアノで演奏され、それをバックに圭吾さんが客席に語りかける。ピアノの椅子の背もたれを抱えて腰掛けて、「どんなに辛いことがあっても、笑ってごらん」と語る言葉のひとつひとつを、聞き手の誰もが、自分に向けられた言葉として感じられたんじゃないかと思う。

「デザイン」
(このあたりになるともうあんまり冷静に書けない。ご容赦…)
「とってもゴースト」から「デザイン」。
荒井美乃里さんとのデュエットで高らかに歌われる中、既に落涙してる方があちこちに。いろんな人にとって大事な曲だよね。

カーテンコール「出逢えた人たちへ」
圭吾さんから最後のあいさつ。
「BORN」や「TOY BOX」のように、圭吾さん自身が自分ですべてにかかわって作る中、いろんな人との出逢いがあって、大勢の人からいろんな形での協力を得、最後に観客がそれを受け止めてくれる。そんな「自分一人じゃできない」ことへの感謝の気持ちを語りつつ、ちょっと泣いちゃったりして。(こっちはもうパニックと言っていい精神状態だったんだけど、声も顔もちゃんと覚えてるから不思議だなあ)。
そうして、今回のために圭吾さんと(謎のヒデヨシ仮面こと)川越真也さんが作って下さった曲「出逢えた人たちへ」を歌った。
ここまで読んでくれたかたへ。ありがとうございます。最後にぜひ歌詞を見て、感じて下さい。

最後のプレゼント
幅3m以上の"TOY BOX"用イラストを描く圭吾さん、宝箱から飛び出すシャボン玉、圭吾さんの制作ノート、「クリスマスの夜」や「デビルズ」の練習風景、夜の公道で踊るお月様ブラザース、「犬」の札にスタンプを押す吉野家の人々、リハーサル中のかなやんはじめスタッフの人々、「出逢えた人たちへ」を歌う圭吾さん…。
"TOY BOX"の片隅から出てきた一本のビデオから映し出された光景を最後に、終演。
客電が点きドアが開く。緊張の糸が切れた客席は泣く人、笑う人、倒れる人、さまざま。
ドアの向こうには圭吾さんはじめ、このライブを作ってくれた出演者の皆さんが待っている。最後の一人まで送り出しを終えて、2000年のスーパーお茶会ライブは終わりを告げた。

…お疲れさまでした。ぜひ、ご意見、ご感想をここここへお寄せ下さい。


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