書名:縮小社会への道
原発も経済成長もいらない 幸福な社会を目指して
著者:松久 寛
発行所:日刊工業新聞社
発行年月日:2012/4/25
ページ:216頁
定価:1600円+税
この本は成長至上主義から縮小社会への提案です。人類の進歩ともに資源を潤沢に使って経済成長することが善という時代が続いてきた。ところが化石資源も環境も食料も水も生物の多様性も人口も資源の枯渇と地球環境の包容力を超えた成長であり、従来どおりの成長を続けることは自明の事となってきた。この課題に対して大胆な提案。経済成長はいらないと主張する。年に2%の成長を続けると50年後には2.6倍、100年後は7.1倍になる。
化石燃料の資源は100年分あるとされるが、年3%成長なら46年後には枯渇する。年率何%という指数関数的な成長を続けることは不可能である。100年分ある資源の使う量を毎年1%づつ縮小すると100年後にも100年分残っていることになる。これかの人口減少とともに大きな痛みを伴わずに縮小社会に持っていくことが出来ると述べている。今までの成長社会で問題になっているいろいろな課題を挙げて、改善する提案を行っている。未来の予測は難しいのでこれからの社会のあり方、方策についてはたたき台を提示した程度ですが、大きな問題提起を行っている。人間とは、生きるとはを深く問われる一書です。成長至上主義から頭を切り替えて縮小社会を考えてみる。そんな本です。
自動車についても先進国では2人に1台、世界中でも10人に1台保有している。でも他のものに比べて多くに命を奪っている。日本では年間4800人死亡、90万人が怪我。こんな危険な技術をそのままにしている社会は正常ではない。必要以上の大きさ、スピード。超小型化と低速化をまじめに考えてもいいのではないか。
自転車と歩行者が優先の道路、自宅の近くを移動する手段としての自動車であれば、速度もすぐ止まれる時速30km以下、燃費も100km/1L程度の自動車でゆっくりと半径5km位の移動に使う。地元の人が地元の道路を使う。ただ通り抜けだけの人は別の道路を使う。それより遠い場合は鉄道、バス等の公共交通機関を。と今まで当たり前と考えていたことを考え直すことも縮小社会には必要。人間の幸福度、満足、生きがいがどこにあるのか。技術の使い方、選択の仕方等についてについてはいろいろ考えることが出来る。自由にみんなで考えてみるためのたたき台を提示してる。
徳川家康は江戸幕府を開いたときに、当時の最新技術で作られた鉄砲を削減することを決めている。技術的に優れたものであっても幕府には不要のものと判断している。科学技術は必要だけれど、科学技術を使うのは人間の判断というこを知っておかないと飛んでもない社会が出現する。本の一部の勝者と大部分お敗者をつくる競争社会、成長至上主義ではやっていけないことを感じてしている人は多いと思うけれど、それを本書は論理的に説明してくれている。この本は図書館で借りてもいいが、自分で購入しておきたい本だと思う。日刊工業新聞社から発行しているだけあって技術用語など専門的な言葉が多くて素人にはちょっと難しい感じする本ですが、じっくり読むと理解できる。自分でゆっくり考えるにはいい本だと思います。