書名:沈まぬ太陽(一)アフリカ編
著者:山崎 豊子
発行所:新潮社
発行年月日:2005/9/10
ページ:645頁
定価:5,076円+税
書名:沈まぬ太陽(二)御巣鷹山編
著者:山崎 豊子
発行所:新潮社
発行年月日:2005/10/10
ページ:373頁
定価:4,104 円+税
書名:沈まぬ太陽(三)会長室編
著者:山崎 豊子
発行所:新潮社
発行年月日:2005/11/10
ページ:699頁
定価:5,076 円+税
この本をノンフィクションと思って読むとかなり間違え、偏見の混じった本です。こんなジャンルは何と呼べば良いか?山崎豊子の作品にはこの手の作品が多い。有る一方的な見方で善悪をきっちり分けている。読者には判りやすいが、事実とはかなり違ったものになってしまう。社会派フィクションの世界とでも言うのか?
日本航空(この本では国民航空)をモデルに御巣鷹山墜落の前後を題材に取り上げていることから、発売当初から物議を醸し出した本です。最初のアフリカ編では主人公恩地元(小倉寛太郎氏をモデル)。1960年代日本航空労働組合委員長時代の1960年代前半に経営陣と厳しく対決し、日本航空初のストライキを指導し会社側、運輸省、政府からも危険視されあかとレッテルをはられた。その後の人事異動で社内規定を大幅に越える約10年間の海外(カラチ、テヘラン、ナイロビ)での勤務を強いられる。組合活動、海外での生活、残った組合つぶしなどを描いている。1970年代前半に国内勤務に戻る。
1985年の日本航空123便墜落事故後、社内改革のため総理大臣から三顧の礼をもって招聘された国見会長(伊藤淳二がモデル)が作った会長室の部長に抜擢された恩地元、新体制の下、社内改革に力を注ぐ。利益の追求、役得、利権争い、派閥争い、御用組合の利権争いで安全は全く考えていない。
起こるべくして起こった世界最大の航空機事故、その腐りきった国民航空の絶対安全を一義として乗り込んできた国見会長、それに御用組合の反対、社内の重役たちの非協力、子会社へ出向したOBの妨害、政権党の議員の妨害、御用マスコミの批判など、その一つ一つに真面目に対応していく国見会長。
「手術室に入ってみたら医者は自分一人だった」改革途中で更迭されてしまう。そして恩地元はナイロビ勤務を命ぜられる。恩地元、国見会長を極端に持ち上げた書き方がちょっと鼻につく。フィクションとして読めばそれなりに楽しめるが、事実として読んでしまうと間違った判断になってしまう。しかし山崎豊子はフィクションを事実として読ませる力は凄い。文章力は抜群の作家、後世に間違った理解がされるのを憂う。忠臣蔵、義経、大岡越前、水戸黄門など歴史物語などもこうして後世の長けた作家によって物語が作られてきた。本当の事実とは違う、でも読者が喜ぶものが残っていくのか?
実際に起こった事件、登場人物、会社などが散りばめられているので読んでいるものにとってはノンフィクションのような錯覚を与えてしまう。これは罪な本かもしれない。
1999年駒場祭講演会・小倉寛太郎「私の歩んできた道」 - みんせい東大駒場
http://minseikomabahongo.web.fc2.com/kikaku/99ogura.html
論談:「沈まぬ太陽」を私は許せない
http://www.rondan.co.jp/html/ara/jal2/asahi.html
論談:「沈まぬ太陽」、週刊新潮の反論
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論談:小説「沈まぬ太陽」余話(Ⅲ)
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